アンダンテ

浦登みっひ

文字の大きさ
54 / 126
My Funny Valentine ジャンル:恋愛

Ne bois pas ton chocolat avec tes doigts ―ココアを指につけて舐めてはだめよ―

しおりを挟む
 腕を組んでみたはいいものの、それからしばらく、私達はお互いに無言のまま公園内を歩き回った。
 やっぱりまだぎこちない。同じように腕を組んで歩いているカップルと比べると密着感がないし、何よりお互い体が強張っている。監獄島の時は人目もなかったし、歩きづらい(わざとヒールを履いた)、というもっともらしい理由があったためにくっついていられたが、今回は事情が違う。普段のデートとは異なる緊張感。なんとなく気恥ずかしさもあるし、瞬が何も言ってくれないのが少し怖かった。いつもはどちらからともなく会話が始まるんだけど……。さすがにこのままじゃまずいな、と思い、私から話を切り出す事にした。

「瞬、今日はどこ行くの?」
「う~ん、そうだな……」
 急かしたような会話の流れになってしまい焦ったが、瞬はちゃんと考えてくれていたらしい。
「動物園、とか、どう?」
 動物園! いかにもカップルらしいデートスポットだ。それに私は、未だかつて動物園というものに行ったことがなかった。動物は好きだし興味はあったのだが、なかなか機会がなかったのだ。両親も、ああいうところは不潔だから、とか理由をつけて、連れて行ってはくれなかった。私は二つ返事で答えた。
「いいね、動物園! 私、まだ行った事ないの。行こう!」
「えっ、そうなの? 意外だな……じゃあ、初体験になるのか」
「ぷっ……そうね、初体験」
 私は思わず噴き出してしまった。初体験という言葉には何故、こんなに甘美な響きがあるのだろう。
「じゃあ、今日は車持って来てるから」
 彼はそう言い、園内の外れにある駐車場の方向を指差した。これまでのデートは大体市内の徒歩圏内で済ませてきたため、ドライブデートも初体験だ。運転免許を持っているとは聞いた事があったが、車を持っているという話は初耳だった。
「瞬、車持ってるの?」
「この間買ったんだよ。中古だけどな。高校の時バイトして貯めてた金で」
 意外と計画的な一面もあるんだな、と、私は正直言って驚いた。

「ほら、乗って」
 駐車場までやって来て瞬が指し示した車は、初心者マークが映える、黒いコンパクトカーだった。彼が助手席のドアを開けて私を招く。まるで専属の運転手みたいだな、と思った。でも、助手席に乗るのはこれが初めてかもしれない。実家の車は黒塗りの高級車だし、運転手も折り目正しいスーツ姿で、しっかり教育を受けたプロフェッショナルだったけれど、こんなに嬉しく感じた事はなかった。彼に軽く一礼して、腰からシートに座り、脚を揃えて車に乗り込む。
 瞬は、ドアを閉めるとフロントから回り込んで運転席につき、ミラーを確認してからキーを差し込んだ。心地よいエンジン音が響き、車はすぐに動き出す。

 まだ免許も取りたて、しかも慣れない車である割には、瞬の運転は安定していた。窓外の風景がみるみるうちに後ろへ流れていく。運転に集中しているのか、走り始めてから彼は一言も言葉を発していなかった。二人だけの密室となった車内は、沈黙とエンジン音、そして僅かな緊張感でぴったりと満たされている。会話がない事を少し寂しく感じたけれど、瞬の運転の邪魔をしたくなかったので、窓から見える街並みを眺めながら、昨日の事を思い出していた。





「じゃあ瞬、また明日ね」
「ああ。それじゃ」
 私が住むマンションの前で瞬は、軽く手を振って帰って行った。

 買い物のついでに、ちょっとした忘れ物を取りに大学に寄ったところ、先輩に呼び出されて大学に来ていた瞬とばったり遭遇したのだ。彼はもう用事を済ませて、これから帰るところだ、と言った。私はまだ寄りたいところがあったのだけれど、彼と話したい事もあったので、用事は後回しにして、一緒に帰る事にした。
 大学から私のマンションまでは、徒歩で15分ほどかかる。瞬の家も大学から徒歩圏内で、私のマンションとも歩いて10分ほどの距離だ。ちなみに、彼の家から道路を挟んだ向かいにあるのが小雨の家だ。

 道すがら、世間話が尽きたところで、私は本題を切り出した。
「瞬、明日の午後空いてる?」
「明日……? ああ、特に予定はないよ」
 今日は二月十三日。つまり、明日はバレンタインデーだ。本当はもっと早いうちに瞬の予定を確保しておきたかったのだが、肝心のチョコ作りが上手くいかなかったために、なかなか言い出せずにいた。でも、一週間ほど悪戦苦闘した末に、昨日ようやく、何とか形になるものが出来上がったのだ。
「じゃあ、明日、デートしない?」
 いつものデートと同じ体を装って、さりげなく言った。
「ああ、いいけど……どこに行く?」
「いつも私が行きたいところについてきてもらってばっかりだから、明日は瞬がエスコートしてよ。たまには、ね?」
 瞬は、うーん、と呻った。
「どこがいいかなぁ……まあ、ちょっと明日まで考えさせて」

 瞬の姿が見えなくなったのを確認してから私は、たった今歩いてきた道を引き返してスーパーへと走った。チョコレートの材料を昨日の練習で使い果たしてしまったので、買い出しに行かなければならないのだ。
 時刻はもう夕方の五時半を過ぎ、空は深い群青色に染まり始めている。車道は帰宅ラッシュで溢れ、ヘッドライトを点灯する車が増えていく。夜間営業の飲食店もそろそろ目を覚ます時間だ。私は早歩きで商店街を通り過ぎ、香しい香りを漂わせるレストラン街を抜けて、目的のスーパーまでやってきた。
 こんな時に自転車があれば便利なのに、とは思うのだが、生憎私は自転車にも乗ったことがないのだ。

 スーパーの店内へと足を踏み入れ、買い物かごを引っ提げた私は、他のものには目もくれず、まっすぐにお菓子コーナーへ向かった。手作り用の板チョコや、調理器具、デコレーション用の小さなチョコチップなど、ここに来れば一通りのものが手に入る。バレンタイン前日だけあって、私の他にも女の子が数人、かごを提げながら品物を物色している。私は既に買うものが決まっていたのだが、なんとなく、そのコーナーを一通り見て回った。この一隅には、女の子を足止めする不思議な引力が確実に存在する。私はミルク、ブラック、ホワイトの三種の製菓用チョコレートと、生クリーム、ココアパウダーを購入して、後ろ髪引かれる思いでスーパーを後にした。

 私の部屋は、31階建て高層マンションの最上階にある。2LDKで、一人で住むには広すぎる部屋だと常々思っていた。リビングだけで30畳近くあるので、リビングにベッドを置いて寝起きしているぐらい。だから寝室は使っていないし、食事はほとんど外で済ませるからキッチンもあまり使わない。父が買ってくれた物件で、水道光熱費等も全て払ってもらっているから、文句を言えた筋合いではないんだけど。
 両親の下を離れて一人暮らしをしてみたかった。その一心で、両親の反対も押し切ってわざわざ東北の大学まで来たのに、生活費も親のカードだし、何から何まで、結局親に頼りっきりになってしまっている。私も何かアルバイトをしようかな……と、求人を見たりはしているものの、未だに踏ん切りがつかないでいた。
 この物件で一番気に入っているところは、バルコニーから瞬の家が見えることだ。もちろん、ここからでは米粒ほどの大きさにしか見えないけれど、時々ふと寂しくなった時には、バルコニーに出て瞬の家の辺りを眺めながら、彼は今頃どうしているかな、と考えるのが習慣になっていた。
 瞬の部屋は二階で、窓もこちら側に向いているため、望遠鏡を買えば瞬の部屋を覗けるかもしれない、などと考えたりもするが、さすがにそれは良心が咎める。まあ、見下ろせるだけでもいいじゃない、と自分を宥めているのだった。

 さて、エレベーターで最上階まで昇り、部屋に帰ってきた私は、早速チョコレート作りに取り掛かった。
 脱いだコートをソファーの上に放り投げて、リビングと直結したキッチンへと直行する。私はほとんど自炊をしない。使うのは電子レンジと、飲み物を作る際に使うヤカン、そしてクッキングヒーターぐらい。だから、今回チョコを作るにあたって、まず包丁やまな板、鍋、ボウルといった、基本的な調理用具から買い揃えなければならなかった。それに加えて、温度計やゴムべらなど、チョコ作りに必要と思われるものまで……もしかしたら、来年のバレンタインデーまで、包丁すら使わないかもしれないな。

 まずは、ミルクチョコレートを刻む。
 今回チョコの手作りを決心するまで包丁を持った事がなかった私にとっては、ここがいきなりの難関である。
 最初の試作の際、チョコレートに初めて包丁を当てた時、私はチョコレートの固さに驚いた。私は普段チョコレートを食べる際、口の中で溶かして食べている。だからあまり噛んだことがなく、チョコレートといえば固体というより液体のイメージが強かった。その上、包丁を持つのも初めてなのである。私の腕力ではスムーズに刻むことができず、体重を乗せながらどうにかこうにか砕いた。まな板がずるっと動いて、チョコレートを床に撒き散らした事も何度かあった。しかし、練習を重ねることで、少しずつ安定して砕けるようになってきた。

 刻んだチョコレートを一旦ボウルに入れて湯煎しながら、今度は生クリームを鍋にかけ、沸騰させる。煮立ったらすぐに火を止め、少し冷ましてから、チョコレートと混ぜ合わせる。最初はこれだけの作業にも手こずったものだ。何しろ全く経験がないものだから、チョコレートの湯煎と生クリームの加熱という、二つの作業を同時に進めるのが難しかった。
 湯煎から外してさらにかき混ぜながら、少しずつ温度を下げ、冷やしていく。最終的には氷水で冷やし、ある程度の固さになったら、スプーンで適量をすくってトレーに並べていく。並べ終わったら、それを冷蔵庫に入れて冷やし、固まるまで待つ。しっかりとかき混ぜなければならないので、この時点で私の腕は既にパンパンになっていた。うまく固まってくれたら、ひとまずガナッシュの部分は完成である。

 冷やす時間はおよそ一時間ほど。退屈になった私は、音楽でもかけようか、と思い、コンポにウォークマンを繋いだ。何を聴こうかな。ヴォーカルが入った曲だと気が散りそうだから、やっぱりクラシックか。
 昔ピアノを習っていたせいか、私が聴くのは専らピアノの曲である。中でも最近は、ドビュッシー、サティ、ラヴェル、フォーレといった、フランスの作曲家の曲をよく聴いている。この四人の曲のプレイリストを作って、全曲シャッフルで聴くのがマイブームだ。
 ソファに寝そべって音楽を聴きながら、時間が来るまでファッション雑誌を眺める事にした。明日はどんな服装で行こうかな。やっぱり清楚に行くべきか。でも、あまりに甘々なコーデはさすがに抵抗があるし……。
 結論が出る前に、時間が来てしまった。雑誌をテーブルに置いて、冷蔵庫からガナッシュを取り出す。この時点ではまだ形がバラバラであるため、丸めて整えなければならないのだ。ココアパウダーを手につけて、掌の上でコロコロと転がし、球体に近づけていく。
 よし、これでガナッシュは完成。

 その時ふと、コンポから聴き慣れない曲が流れてきた。これは……誰だろう。サティかな?
 何となく気になった私は、一旦手を洗い、ウォークマンを操作して曲名を確かめる。
 「Ne bois pas ton chocolat avec tes doigts」
 液晶画面には、フランス語でそう表記されていた。ええと、chocolatはチョコレート、ne と pas は確か否定文で……まあ、いいか。後で調べよう。

 ここからが最難関の工程になる。すなわち、コーティング用のチョコレートのテンパリングだ。
 この温度管理が曲者で、温度計を使ってきっちりと行わなければ、艶と食感が悪くなってしまう。最初に挑戦した時、ただ溶かしてコーティングすればいいんだろう、と思っていた私は、出来上がったチョコレートを見て大いに落胆した。表面に白い模様が浮いて、ちっとも美味しそうに見えなかったのだ。

 コーティングには、ブラックチョコレートとミルクチョコレートを混ぜたものを使う。両方のチョコレートを刻んでボウルに入れ、湯煎しながら混ぜ合わせる。ここまではさっきと同じ。問題はここからで、ちゃんと温度を測りながらきっちり45度まで上げなければならない。
 45度になったら、今度はボウルを氷水に当てて冷やしていく。目標の温度は27度。27度まで下がったら、今度はまた湯煎をして30度まで上げなければならないのだ。非常に面倒くさいけれど、細心の注意を払って温度管理を行った。
 28度……29度……30……よし。

 30度になったチョコレートに、先程丸めて形を整えたガナッシュを放り込んで、チョコフォンデュのように丁寧に、満遍なくコーティングしていく。綺麗にコーティングできたら、一度取り出して乾燥させ、表面が程よく固まったところで再度コーティング。

 さて、ここからいよいよ最後の仕上げ、表面の処理だ。
 二度目のコーティングが済んだもののうち、三分の一を網の上に乗せ、少し表面が落ち着いたところで、網の上を転がして凹凸をつけていく。トリュフらしい表面のツノができたら、そのまま冷蔵庫に入れて固まるのを待つ。
 次に、残りの三分の二を取り出して、今度はそのままトレイに乗せて乾かす。程よく固まったところで、そのうち半分をココアパウダーの中に入れ、転がしながら表面にパウダーを馴染ませていく。これで、二種類のトリュフの完成だ。
 最後に、ホワイトチョコレートを刻んで再びテンパリング。ホワイトチョコは、先程と微妙に温度が違って、40度まで熱した後に25度まで下げ、28度まで上げて使わなければならない。ああ、面倒くさい……。テンパリングが済んだら、残りのトリュフを放り込んでホワイトチョコでコーティング。これが乾いたら、先程使ったブラックとミルクのコーティングの余りを再び湯煎して溶かし、絞り出し袋に入れて表面にデコレーションしていく。
 白いトリュフに、黒のデコレーション。これで三種類目。ようやく全工程の終了だ。長かった……。

 全てのトリュフを冷蔵庫に入れると、私は大きく息を吐いて、ソファーに倒れこんだ。
 ああ、疲れた……。
 疲労と安堵感で、そのままぐったりと眠ってしまいそうになる。だめだめ、まだメイクを落としてないし、お風呂にも入っていないんだから。
 鉛のように重くなった体をどうにか起こして、足を引きずりながら洗面台へと歩いた。鏡に映り込んだ私の顔は、疲労の色が濃かったけれど、ほんの少し、充実感が浮かんでいるような気がした。

 明日は頑張ろうね。

 鏡の中の私にそう声をかけて、クレンジングオイルを手に取る。

 私の意識はそこで途切れた。






 翌朝(つまり今朝)、私は化粧台の前で目覚めた。

 私が目覚める時にはいつも、既にメイクが終わっている。もう一人の私が、完璧に化粧を施してくれるのだ。そして、それが私の覚醒のための儀式にもなっている。
 私と彼女は直接言葉を交わすことができない。でも時々、彼女の施すメイクから、メッセージを感じる事がある。
 今日は、いつもと比べてナチュラルメイクだな、という印象を受けた。アイラインもアイシャドウも控えめで、チークもほんのり。口紅もベージュ系で、それでもグロスはしっかりと塗ってある。これは、自然体で行け、というアドバイス?
 髪はミルクティーアッシュのナチュラルボブ。元々、稀にハーフだと間違われる事のある私だが、この髪色にしてから更にその傾向が強まったように思う。母方の祖母がロシア人のクオーターらしく、母も私もその血を受け継いでいるのだそうだ。

 服を選ぶのは私の仕事だ。薄いグレーのタートルネックセーターに、黒のタイトスカートと黒いタイツ。その上に、膝まである白いAラインロングコートを羽織り、グレーのマフラーを巻いた。足元はキャメルカラーのブーツにする予定。
 姿見の前に立って、くるりと回ってみた。どうだろう……気に入ってもらえるかな。

 それから一度コートを脱いで、チョコレートの準備にとりかかる。
 冷蔵庫の中で冷え固まった三種類のトリュフ。一つずつ口に含んで、その味を確かめる。

 口の中でほどけていく、芳醇なカカオの香り。
 その中から、濃厚なミルクガナッシュの甘さが溶け出してくる。
 甘い甘い恋の味。
 よし。これならいける。
 今日だけは、スイーツ(笑)なんて揶揄されても構わない、そう思えるぐらい、気分が高揚している。

 一つ一つ丁寧に、頼むぞ、と念じながら色とりどりの小さな包装紙で包み、白い小箱に入れて、最後にリボンを結んだ。このチョコレートが私の運命を決めると言っても過言ではない。

 どうか、この気持ちが伝わりますように……。

 チョコレートと想いのぎっしり詰まった小箱をバッグに入れて、再びコートを羽織り、キャメル色のショートブーツを履いて、私は部屋を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...