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夢遊少女は夜歩く ジャンル:ヒューマンドラマ
三日目 昼
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朝食のあと、真紀は『ちょっと用があるから』と、一人で葉子女史の部屋に向かった。
さて、この館に着いてから初めて単独行動の機会が与えられたわけだが、他人の家を一人でうろつくのはさすがにためらわれる。それに、ここ数日の寝不足、特に昨夜はまったく眠れなかったので、俺はまっすぐ自分の部屋に戻り、睡眠をとることにした。
いつもと何も変わらない真紀の笑顔を見て安心したのかもしれない。泥のような深い眠りだった。不安の種が取り去られたわけでもないのに、我ながら気楽なものだと思う。
昼食はカルボナーラのスパゲッティで、こってりとした濃厚なクリームとチーズの風味が舌を喜ばせた。これだ、これだよ、俺が求めていたものは。山根さん最高。
午前中あれだけ寝たにも関わらず、昼食後には再び激しい眠気が襲ってきた。普段の生活リズムとは真逆になってしまっているため、寝ても疲れがとれないのだろう。縺れる足をどうにか運んで部屋に戻った俺は、そのままソファの上でぐったりと横になっていた。ベッドに入ってしまったら、またそのまま夕方まで眠ってしまうような気がしたからだ。まさかこんなに時間が余るとは思っていなかったので、暇を潰せるようなものを何一つ持ってきていない。それに、スマホは通信速度制限がかかっている。もともと山奥のため電波が不安定で、速度制限がなかったとしても満足に使えるかは不明だ。
普段の俺がどうやって余暇時間を潰しているかといえば、適当にスマホをいじり、気が向いたら本を少し読んで、大体十頁ほど読むと眠くなるので、そのまま寝る。そんなところだ。もちろん、蝋燭の明かりで。しかし、昼間から蝋燭を灯してしまうとさすがに勿体ない。灯火は夜に眺めてこそ味があるものだ。
ところで最近、人をダメにするソファ、という言葉を時折目にするが、あれは要するにダメ人間による責任転嫁に過ぎない。そう前置きをした上であえて言おう。俺は人をダメにするソファの上でうたた寝をしていた。これだとベッドと変わらないではないか。
コンコン
その時、突然ノックの音が聞こえてきた。どうも、ここ数日の出来事のせいで、ノックの音に対して過敏になっているような気がする。ソファでダメになった体をどうにか叩き起こして、のらりくらりと扉を開けた。
「じゃ~~~ん、どう?」
そこに立っていたのは、メイド服に身を包んだ真紀だった。
俺はまず、ダメになった頭をフル回転させて状況の把握に努めていた。ええと、今日はコスプレ大会だったっけ……?
「ちょっと、反応薄いなあ。もしかして寝起き?」
彼女は少し不服そうな表情をしたが、すぐにまた明るく笑顔を作り、スカートを少し持ち上げてポーズをとった。メイド姿もとてもよく似合っている。メイド喫茶にこんな子がいたら、その店はたちまち大繁盛だろう。
「すごく似合ってるよ。でも、どうしたの? その衣装」
「うふふ♡ 黒木さんに借りたの。瞬、見てみたいって言ってたじゃない? ほら、あの時、観覧車で」
俺は記憶を遡る。観覧車ということは、おそらくバレンタインのデートの話だろう。確かにそんな話題になったような気がするが、見たいと言ったかどうかは記憶が定かではない。上機嫌な真紀は、その場でくるりと一回転して見せた。
「だから、どうしても着てみたくて、お願いしちゃったの。黒木さんだったら、きっとサイズもぴったりだと思って」
「うん、きっとそのままメイド喫茶に行ったら、行列ができるだろうね」
すると彼女は、声のトーンを少し上げて、微笑みながら言った。
「『おかえりなさいませ、ご主人様』……こう?」
「そうそう、なんか随分板についてるじゃない?」
「メイド喫茶でバイトしちゃおっかな……」
まんざらでもない、といった風である。
それから俺達は、暇潰しのために遊戯室へ移動した。
遊戯室と言っても、無論テレビゲームやアーケードの筐体が置いてあるわけではなく、ビリヤードやダーツといった大人の遊具が中心だった。チェスやバックギャモン等のボードゲームも一通り揃っていて、奥のほうには何故かグランドピアノまで置いてある。俺達はその中からチェスを選び、ボードを挟んで向かい合った。
さて、誘われるまま始めてはみたものの、チェスに関しては駒の動かし方と基本的なルールしかわからない。一方の真紀は、駒を扱う手つきが既に素人のそれではなかった。この時点で最早結果は見えており、俺は全く相手にならない。そりゃあ苦手だったら自分から誘ってはこないよな、と思いながら、俺のナイトやルークが真紀のポーンにあっさりと屠られていく様を見守っていた。
「チェックメイト」
最終的にはほぼ全ての駒を剥がされて、あまりにもあっけない終局だった。これは、なんというんだっけ。舐めプ?
「もう一回する?」
真紀はとても楽しそうだ。前からうすうす感じていた事ではあるが、彼女はサディストに違いない。この時、そう確信を持った。
そうしていると、突然得雄氏が遊戯室に姿を見せた。
「おや、先客ありか。私も、退屈で仕方なくてね……チェスをしているのかい? ……ん? 真紀ちゃん、その格好は……」
「あら、伯父様。これ、黒木さんに借りたんです。どうかしら?」
「いやあ、とてもよく似合ってるよ」
得雄氏は真紀の姿をしげしげと眺めたあと、盤面を覗きこんで、ぷっ、と吹き出した。
「……いや、失礼、何だいこりゃ? ……真紀ちゃん、もう少し手加減してやらないと、そのうち相手してもらえなくなるぞ」
「一人っ子だから、手加減は苦手なんです」
「真紀ちゃん、昔から頭を使うものでは圧倒的に強かったからなあ。……そういえば真紀ちゃん、最近ピアノは弾いているの? 昔はとても上手だったじゃないか。真紀ちゃんが小学生の時、ピアノコンクールを見に行った覚えがあるよ。あの時、結果はどうだったっけ……」
ピアノ。真紀がピアノを弾くとは初耳だ。真紀は苦笑を浮かべた。
「あの時は、準優勝でした。でも、最近は、あまり……」
「でも、簡単なやつならいけるんじゃない? ほら、ジムノペディとかさ」
「ええ、まあ、それぐらいなら……」
「是非頼むよ、久しぶりに聴いてみたいな」
真紀はあまり気乗りしなさそうな様子ではあったが、得雄氏のたっての頼みとなると断り切れないのだろう。それから彼女は、こちらを振り返り、目顔で何かを伝えてきた。この信号は、『瞬も聴いてみたい?』という意味に違いない。俺は笑って頷いた。クラシックのことは皆目わからないが、真紀の演奏には興味があったからだ。
真紀はまた苦笑いをして席を立ち、ピアノの前に移動した。
「山根さんがたまに弾いているみたいだから、調律はしてあるはずだよ」
「はい……なんだか、緊張するわ」
彼女は手際よく鍵盤のカバーと上部の板を開け、椅子の高さを少し調整してから腰掛けた。背筋をぴんと伸ばし、大きく深呼吸。こちらに背を向けているため、表情は見えない。白い鍵盤の上に置かれた彼女の細い指が、その表面を撫でるように優美に、そして滑らかに動き始める。
彼女の指の動きに合わせて、素朴で心地よいメロディーが流れ出した。どこかで聴いたことがある曲だ。
「ジムノペディ一番。瀬名君は、クラシックはどうだい、聴くかね?」
得雄氏は、真紀が奏でるピアノの調べに目を細めながら言った。インテリを演じる上で、ここは知っているふりをするべきだろうか……いや、ここで肯定してしまうと、さらに突っ込んだ話を振られれそうな気がする。君子危うきに近寄らず、だ。
「いえ、あまり……彼女の影響で、最近少し興味を持ち始めたという程度です」
「そうか、そうか。最近の若者は、音楽そのものをあまり聴かないらしいね。でも、クラシックに興味を持つってことは素晴らしいと思うよ。私も若い頃はロックとか、そっち方面にのめり込んだこともあったけれど、年と共にだんだん馬鹿らしく感じるようになってきてね。その点、クラシックは考えながら聴く楽しみがある。最近ではもう、趣味で聴くのは専らクラシックだよ」
「……考えながら聴く、ですか」
頭を使いながら音楽を聴いて何が楽しいのか、と思ってしまう俺は、やはり若いのだろうか……しかし、それはそれとして、真紀のピアノは、聴いていてとても心が安らぐ。もちろん、演奏の良し悪しは俺にはわからないが、なるほど、生演奏で聴くクラシックはなかなかいいものだな、と感じ始めていた。メイド服姿でピアノの演奏というギャップも面白い。
そんなことを考えながら耳を傾けていると、不意に曲調が変わった。これも、どこかで聴いた事がある曲だ。
「これは、サティのジュ・トゥ・ヴだね。日本語にすると、『あなたが欲しい』かな。どこかで聴いたことがあるだろう?」
「はい、おそらく、テレビか何かで……」
「うん。真紀ちゃんの演奏、ノってきたな……」
そう、素人の俺の耳にもわかるぐらい、この曲に変わってから、真紀の演奏には熱が篭もり始めている。得雄氏は突然俺に耳打ちした。
「なあ、瀬名君。真紀ちゃんとはどこまでいった?」
意表を突かれた質問、しかもそれが、まさに今とてもデリケートな問題についてのものだったので、俺は激しく面食らった。
「いや、伯父としてこんなことを訊くのもどうかとは思うんだがね……まあ、君のことを割と気に入っているから聞いているんだよ」
「……キスまでです」
これは本当。
「へえ、なるほど……近頃の若者にしては、なかなか奥手じゃないか。それはそれで結構だが、でもね、言葉ではどうにもならなくなることが、いつか必ずある。そんな時、残されたコミニュケーション手段はアレしかなかったりするんだよ。私の立場で、急かすようなことを言ったらおかしいかもしれないけどね、いざという時にスムーズにできるように、ある程度、経験しておくというのも一つの考え方だと私は思うよ。もちろん、心理的な抵抗がなければの話だが」
「……はあ」
彼女の伯父にけしかけられている。いったい何なんだ、この妙な状況は……。真紀と得雄氏が実は裏で結託しているのではないか、という可能性がふと脳裏をよぎる。いや、さすがにこれは穿ちすぎか。
「大人しくニコニコしている女の子ほど、えてして心の中にとんでもないものを抱え込んだりしているものだからね……私も、若い頃は何度か痛い目に……」
そこまで言いかけて、得雄氏は一度言葉を切った。
「……い、いや、私の話はいいんだ。まあ、真紀ちゃんがそういうタイプだと言うわけじゃないがね。あくまで一般論さ」
一般論か?
それはさておき、さっきの口ぶりから、得雄氏も若い頃は相当の色男だったことが窺える。うっかり、俺にも身に覚えが、などと口走りそうになり、慌てて口を噤んだ。
ジュ・トゥ・ヴの演奏が終わると、真紀はこちらを振り返った。得雄氏が拍手を送り、俺もそれに倣う。
「素晴らしい演奏だったじゃないか。昔は、とても上手だったけれど、なんというのか、精密機械のような演奏だった。それに比べたら、今はとても感情のこめられた演奏をするようになったね」
得雄氏の手ばなしの称賛に、真紀はあからさまな照れ笑いを浮かべた。
「ありがとうございます……なんだか、久しぶりに弾いたら、とても楽しくて。お二人は、何を話していらしたんですか?」
俺と得雄氏は一瞬ぎょっと顔を見合わせるが、すぐに気を取り直して答えた。
「得雄さんに、曲の解説をしてもらってたんだよ。まだ、クラシックは初心者だからね」
「そうそう、そうなんだ。真紀ちゃん、もしよかったら、もっと色々弾いて聴かせてくれないか」
ちょうどその頃、山根さんも遊戯室にやってきた。
「あら、皆さまお揃いで……お嬢様が、ピアノを弾いていらしたのですか?」
「そう、真紀ちゃんの演奏なんだ。よかっただろう?」
「ええ、先程廊下を歩いていたら、ピアノの音色が聞こえて……」
「山根さんもピアノを弾くそうだね? どんな曲を弾くんだい?」
得雄氏の質問に、山根さんは赤面して答えた。
「いえ、私は、猫ふんじゃったとか、エリーゼのためにしか弾けなくて……だから、ああ、このピアノってこんなにいい音がするのねって、思っていたところなんです」
「はは、そうかそうか。ところで、真紀ちゃんのメイド姿も、なかなか様になっているだろう?」
「ええ、私なんかよりずっとお似合いですわ……あ、これ、失礼にあたります?」
「いえ、そんな……ありがとうございます」
「じゃあ真紀ちゃん、山根さんにも一曲、聴かせてやっておくれよ」
真紀は照れくさそうに呟いた。
「なんだか、随分おおごとになっちゃったなぁ……」
真紀は再びピアノに向き直り、演奏を始めた。次の曲は、これまたどこかで聴き覚えのある旋律だ。
「これは、ドビュッシーの『月の光』だね」
真紀の奏でる柔らかなピアノの調べが、音の粒となって遊戯室を満たしていく。夜空に浮かぶ満月の光が静かな夜を優しく包み込み、水面に映り込んだ満月はそよ風を受けて揺らめく。月の光は夜空を見上げる全ての人々に等しく降り注ぎ、その心に安らぎの雫を落としてゆく。そんな情景が目の前に浮かんでくるようだ。
その時、ふと背中に視線を感じた。誰だろうと振り返ってみると、そこにいたのは蒼太君だった。遊戯室の前の廊下から、ピアノを演奏する真紀の背中を一心に見つめている。おそらく彼も、このピアノの音色に引き寄せられてきたのだろう。
「おお、蒼太。お前もこっちに来て、一緒に聴きなさい」
得雄氏も彼に気付いたらしく、しきりに手招きしている。だが、蒼太少年はそれに答えずに、ぷい、とそっぽを向いた。
「親父もな、クラシックが好きだった。親父みたいな立派な大人になるために、ちゃんと聴いておきなさい」
「またそれか……親父親父親父……いい加減やめてくれないかな? 僕はお祖父様とは違うんだよ!」
蒼太君が突然声を荒げた。ピアノの音はピタリと止み、真紀も驚いて彼の方を振り返った。その場にいた全員の視線が蒼太君に集まり、和やかだった場の空気が、一気に張り詰める。
一斉に視線を浴びてさすがにいたたまれなくなったのか、蒼太君はきまりが悪そうにその場を後にした。一同の間に気まずい沈黙が流れる。しかしそれは、蒼太君と入れ違いに入ってきた黒木さんによって破られた。
「……何か、あったのですか?」
蒼汰君が去って行った方向と遊戯室の中を交互に見ながら黒木さんが言う。さっきの蒼太くんの怒鳴り声が聞こえたのか、あるいはすれ違いざまに蒼太君の表情を見たのかもしれない。しかし、それでなくとも、この場の空気を見れば何かがあったことは容易に察せられるだろう。得雄氏が浮かない表情で答える。
「……いや、なんでもない。恥ずかしいところをお見せして、申し訳ないね……」
「いえ、私は何も見ておりません」
黒木さんは澄まして答えた。
「そんな、気を使わないでおくれよ。ところで黒木さん、その格好は?」
今度は黒木さんに視線が注がれる番だった。そう、彼女はなんと、白衣を着ていたのだ。白衣の天使と呼ぶにはやや眼光が険しすぎるが、元看護婦というだけあって、さすがに板についている。膝まであるスカート、白いストッキングに包まれたすらりとした脹脛。ナースシューズのデザインも意外と凝っていて、その全身の白さは蛍光灯のように眩しかった。白といえば膨張色のはずだが、白衣はメイド服よりも体のラインに沿っている上、腕と脚が露出しているせいか、黒木さんの華奢な体型がより強調されている。ともすると冷徹にさえ感じる彼女のきりっとした表情が純白のナース服をさらに引き締めており、その姿は全くコスプレに見えなかった。
「あら、黒木さん、もしかして着替えがないのでは……」
真紀が目を丸くしている。たしか、彼女の衣装は黒木さんから借りたものだったはずだ。
「いえ、着替えならまだ何着かございますので、お気遣いなく……看護をする時は、この服装の方が落ち着くんです、動きやすいですし」
「なんだか、今日は仮装パーティみたいだな……やっぱり、白衣が一番よく似合うね。お袋の様子はどうだい?」
「はい、今はぐっすりと眠っておられます。大事には至らないものと」
「そうか……それはよかった」
「お坊ちゃまのことは……よろしいのですか?」
再び蒼太君の話題になり、明るさを取り戻しかけていた得雄氏の表情が再び曇る。
「仕事で忙しくて、普段なかなか一緒にいてやれないから……どう接したらいいのかわからないんだ。昔から神経質なところはあったけれど、思春期になってからそれに拍車がかかってね。私は小さい頃、ずっと親父の背中を見て育ってきたんだ。親父はあまり口うるさく説教するようなタイプじゃなかったけれど、それでも私にとっては学ぶところがたくさんあった。でも、私は親父の真似はできないし、理想的な父親を演じてやることもできない。どうしたものかね……」
「蒼太くん、あまり学校に行っていないと聞きましたけれど……」
真紀は、昨日の朝食の席での彼の発言を持ち出した。もちろん俺もその場にいたのだが、どこか自嘲気味な表情で、確かに彼はそう言っていた。顔立ちの幼さと表情とのギャップに、その時は随分驚いたものだ。
「ああ、そうなんだよ……去年あたりから休みがちになってね。最近は全く……」
「今、14歳……中二ですか? そろそろ高校受験も視野に入り始める時期ですよね……」
「うん、だからちょっと心配でね……まあ、元々賢い子だから、勉強の方はあまり心配していないんだが……」
そこで蒼太くんの話題は自然と終わったのだが、一同にはまだ何となく気まずい空気が漂っていた。またピアノ演奏を再開しようと言い出す者もおらず、黒木さんと山根さんは持ち場に戻り、得雄氏も部屋に引き上げて行った。
さて、再び二人きりになった俺と真紀が何をしたかと言うと……笑うなかれ、メイド服に身を包んだ真紀の一人撮影会である。
真紀が色々なポーズをとり(エロティックなものではない)、俺はスマホのカメラにそれを収める。アングルには意外と細かい注文があって、特に顔を写す際には厳しい指導が入った。どの角度から見ても真紀はかわいいと思うのだが、彼女なりに色々と拘りがあるらしい。やや俯瞰する角度で、上目遣いに……なるほど、これが女の子の自撮りのテクニックなのか。
撮った写真の枚数はおよそ五十枚ほどに上り、その中のベストショットをスマホのロック画面にすることを強要された。
そこには、グランドピアノの前でロングスカートを軽く持ち上げ、少し首を傾いで満面の笑みを浮かべている真紀の姿があった。
さて、この館に着いてから初めて単独行動の機会が与えられたわけだが、他人の家を一人でうろつくのはさすがにためらわれる。それに、ここ数日の寝不足、特に昨夜はまったく眠れなかったので、俺はまっすぐ自分の部屋に戻り、睡眠をとることにした。
いつもと何も変わらない真紀の笑顔を見て安心したのかもしれない。泥のような深い眠りだった。不安の種が取り去られたわけでもないのに、我ながら気楽なものだと思う。
昼食はカルボナーラのスパゲッティで、こってりとした濃厚なクリームとチーズの風味が舌を喜ばせた。これだ、これだよ、俺が求めていたものは。山根さん最高。
午前中あれだけ寝たにも関わらず、昼食後には再び激しい眠気が襲ってきた。普段の生活リズムとは真逆になってしまっているため、寝ても疲れがとれないのだろう。縺れる足をどうにか運んで部屋に戻った俺は、そのままソファの上でぐったりと横になっていた。ベッドに入ってしまったら、またそのまま夕方まで眠ってしまうような気がしたからだ。まさかこんなに時間が余るとは思っていなかったので、暇を潰せるようなものを何一つ持ってきていない。それに、スマホは通信速度制限がかかっている。もともと山奥のため電波が不安定で、速度制限がなかったとしても満足に使えるかは不明だ。
普段の俺がどうやって余暇時間を潰しているかといえば、適当にスマホをいじり、気が向いたら本を少し読んで、大体十頁ほど読むと眠くなるので、そのまま寝る。そんなところだ。もちろん、蝋燭の明かりで。しかし、昼間から蝋燭を灯してしまうとさすがに勿体ない。灯火は夜に眺めてこそ味があるものだ。
ところで最近、人をダメにするソファ、という言葉を時折目にするが、あれは要するにダメ人間による責任転嫁に過ぎない。そう前置きをした上であえて言おう。俺は人をダメにするソファの上でうたた寝をしていた。これだとベッドと変わらないではないか。
コンコン
その時、突然ノックの音が聞こえてきた。どうも、ここ数日の出来事のせいで、ノックの音に対して過敏になっているような気がする。ソファでダメになった体をどうにか叩き起こして、のらりくらりと扉を開けた。
「じゃ~~~ん、どう?」
そこに立っていたのは、メイド服に身を包んだ真紀だった。
俺はまず、ダメになった頭をフル回転させて状況の把握に努めていた。ええと、今日はコスプレ大会だったっけ……?
「ちょっと、反応薄いなあ。もしかして寝起き?」
彼女は少し不服そうな表情をしたが、すぐにまた明るく笑顔を作り、スカートを少し持ち上げてポーズをとった。メイド姿もとてもよく似合っている。メイド喫茶にこんな子がいたら、その店はたちまち大繁盛だろう。
「すごく似合ってるよ。でも、どうしたの? その衣装」
「うふふ♡ 黒木さんに借りたの。瞬、見てみたいって言ってたじゃない? ほら、あの時、観覧車で」
俺は記憶を遡る。観覧車ということは、おそらくバレンタインのデートの話だろう。確かにそんな話題になったような気がするが、見たいと言ったかどうかは記憶が定かではない。上機嫌な真紀は、その場でくるりと一回転して見せた。
「だから、どうしても着てみたくて、お願いしちゃったの。黒木さんだったら、きっとサイズもぴったりだと思って」
「うん、きっとそのままメイド喫茶に行ったら、行列ができるだろうね」
すると彼女は、声のトーンを少し上げて、微笑みながら言った。
「『おかえりなさいませ、ご主人様』……こう?」
「そうそう、なんか随分板についてるじゃない?」
「メイド喫茶でバイトしちゃおっかな……」
まんざらでもない、といった風である。
それから俺達は、暇潰しのために遊戯室へ移動した。
遊戯室と言っても、無論テレビゲームやアーケードの筐体が置いてあるわけではなく、ビリヤードやダーツといった大人の遊具が中心だった。チェスやバックギャモン等のボードゲームも一通り揃っていて、奥のほうには何故かグランドピアノまで置いてある。俺達はその中からチェスを選び、ボードを挟んで向かい合った。
さて、誘われるまま始めてはみたものの、チェスに関しては駒の動かし方と基本的なルールしかわからない。一方の真紀は、駒を扱う手つきが既に素人のそれではなかった。この時点で最早結果は見えており、俺は全く相手にならない。そりゃあ苦手だったら自分から誘ってはこないよな、と思いながら、俺のナイトやルークが真紀のポーンにあっさりと屠られていく様を見守っていた。
「チェックメイト」
最終的にはほぼ全ての駒を剥がされて、あまりにもあっけない終局だった。これは、なんというんだっけ。舐めプ?
「もう一回する?」
真紀はとても楽しそうだ。前からうすうす感じていた事ではあるが、彼女はサディストに違いない。この時、そう確信を持った。
そうしていると、突然得雄氏が遊戯室に姿を見せた。
「おや、先客ありか。私も、退屈で仕方なくてね……チェスをしているのかい? ……ん? 真紀ちゃん、その格好は……」
「あら、伯父様。これ、黒木さんに借りたんです。どうかしら?」
「いやあ、とてもよく似合ってるよ」
得雄氏は真紀の姿をしげしげと眺めたあと、盤面を覗きこんで、ぷっ、と吹き出した。
「……いや、失礼、何だいこりゃ? ……真紀ちゃん、もう少し手加減してやらないと、そのうち相手してもらえなくなるぞ」
「一人っ子だから、手加減は苦手なんです」
「真紀ちゃん、昔から頭を使うものでは圧倒的に強かったからなあ。……そういえば真紀ちゃん、最近ピアノは弾いているの? 昔はとても上手だったじゃないか。真紀ちゃんが小学生の時、ピアノコンクールを見に行った覚えがあるよ。あの時、結果はどうだったっけ……」
ピアノ。真紀がピアノを弾くとは初耳だ。真紀は苦笑を浮かべた。
「あの時は、準優勝でした。でも、最近は、あまり……」
「でも、簡単なやつならいけるんじゃない? ほら、ジムノペディとかさ」
「ええ、まあ、それぐらいなら……」
「是非頼むよ、久しぶりに聴いてみたいな」
真紀はあまり気乗りしなさそうな様子ではあったが、得雄氏のたっての頼みとなると断り切れないのだろう。それから彼女は、こちらを振り返り、目顔で何かを伝えてきた。この信号は、『瞬も聴いてみたい?』という意味に違いない。俺は笑って頷いた。クラシックのことは皆目わからないが、真紀の演奏には興味があったからだ。
真紀はまた苦笑いをして席を立ち、ピアノの前に移動した。
「山根さんがたまに弾いているみたいだから、調律はしてあるはずだよ」
「はい……なんだか、緊張するわ」
彼女は手際よく鍵盤のカバーと上部の板を開け、椅子の高さを少し調整してから腰掛けた。背筋をぴんと伸ばし、大きく深呼吸。こちらに背を向けているため、表情は見えない。白い鍵盤の上に置かれた彼女の細い指が、その表面を撫でるように優美に、そして滑らかに動き始める。
彼女の指の動きに合わせて、素朴で心地よいメロディーが流れ出した。どこかで聴いたことがある曲だ。
「ジムノペディ一番。瀬名君は、クラシックはどうだい、聴くかね?」
得雄氏は、真紀が奏でるピアノの調べに目を細めながら言った。インテリを演じる上で、ここは知っているふりをするべきだろうか……いや、ここで肯定してしまうと、さらに突っ込んだ話を振られれそうな気がする。君子危うきに近寄らず、だ。
「いえ、あまり……彼女の影響で、最近少し興味を持ち始めたという程度です」
「そうか、そうか。最近の若者は、音楽そのものをあまり聴かないらしいね。でも、クラシックに興味を持つってことは素晴らしいと思うよ。私も若い頃はロックとか、そっち方面にのめり込んだこともあったけれど、年と共にだんだん馬鹿らしく感じるようになってきてね。その点、クラシックは考えながら聴く楽しみがある。最近ではもう、趣味で聴くのは専らクラシックだよ」
「……考えながら聴く、ですか」
頭を使いながら音楽を聴いて何が楽しいのか、と思ってしまう俺は、やはり若いのだろうか……しかし、それはそれとして、真紀のピアノは、聴いていてとても心が安らぐ。もちろん、演奏の良し悪しは俺にはわからないが、なるほど、生演奏で聴くクラシックはなかなかいいものだな、と感じ始めていた。メイド服姿でピアノの演奏というギャップも面白い。
そんなことを考えながら耳を傾けていると、不意に曲調が変わった。これも、どこかで聴いた事がある曲だ。
「これは、サティのジュ・トゥ・ヴだね。日本語にすると、『あなたが欲しい』かな。どこかで聴いたことがあるだろう?」
「はい、おそらく、テレビか何かで……」
「うん。真紀ちゃんの演奏、ノってきたな……」
そう、素人の俺の耳にもわかるぐらい、この曲に変わってから、真紀の演奏には熱が篭もり始めている。得雄氏は突然俺に耳打ちした。
「なあ、瀬名君。真紀ちゃんとはどこまでいった?」
意表を突かれた質問、しかもそれが、まさに今とてもデリケートな問題についてのものだったので、俺は激しく面食らった。
「いや、伯父としてこんなことを訊くのもどうかとは思うんだがね……まあ、君のことを割と気に入っているから聞いているんだよ」
「……キスまでです」
これは本当。
「へえ、なるほど……近頃の若者にしては、なかなか奥手じゃないか。それはそれで結構だが、でもね、言葉ではどうにもならなくなることが、いつか必ずある。そんな時、残されたコミニュケーション手段はアレしかなかったりするんだよ。私の立場で、急かすようなことを言ったらおかしいかもしれないけどね、いざという時にスムーズにできるように、ある程度、経験しておくというのも一つの考え方だと私は思うよ。もちろん、心理的な抵抗がなければの話だが」
「……はあ」
彼女の伯父にけしかけられている。いったい何なんだ、この妙な状況は……。真紀と得雄氏が実は裏で結託しているのではないか、という可能性がふと脳裏をよぎる。いや、さすがにこれは穿ちすぎか。
「大人しくニコニコしている女の子ほど、えてして心の中にとんでもないものを抱え込んだりしているものだからね……私も、若い頃は何度か痛い目に……」
そこまで言いかけて、得雄氏は一度言葉を切った。
「……い、いや、私の話はいいんだ。まあ、真紀ちゃんがそういうタイプだと言うわけじゃないがね。あくまで一般論さ」
一般論か?
それはさておき、さっきの口ぶりから、得雄氏も若い頃は相当の色男だったことが窺える。うっかり、俺にも身に覚えが、などと口走りそうになり、慌てて口を噤んだ。
ジュ・トゥ・ヴの演奏が終わると、真紀はこちらを振り返った。得雄氏が拍手を送り、俺もそれに倣う。
「素晴らしい演奏だったじゃないか。昔は、とても上手だったけれど、なんというのか、精密機械のような演奏だった。それに比べたら、今はとても感情のこめられた演奏をするようになったね」
得雄氏の手ばなしの称賛に、真紀はあからさまな照れ笑いを浮かべた。
「ありがとうございます……なんだか、久しぶりに弾いたら、とても楽しくて。お二人は、何を話していらしたんですか?」
俺と得雄氏は一瞬ぎょっと顔を見合わせるが、すぐに気を取り直して答えた。
「得雄さんに、曲の解説をしてもらってたんだよ。まだ、クラシックは初心者だからね」
「そうそう、そうなんだ。真紀ちゃん、もしよかったら、もっと色々弾いて聴かせてくれないか」
ちょうどその頃、山根さんも遊戯室にやってきた。
「あら、皆さまお揃いで……お嬢様が、ピアノを弾いていらしたのですか?」
「そう、真紀ちゃんの演奏なんだ。よかっただろう?」
「ええ、先程廊下を歩いていたら、ピアノの音色が聞こえて……」
「山根さんもピアノを弾くそうだね? どんな曲を弾くんだい?」
得雄氏の質問に、山根さんは赤面して答えた。
「いえ、私は、猫ふんじゃったとか、エリーゼのためにしか弾けなくて……だから、ああ、このピアノってこんなにいい音がするのねって、思っていたところなんです」
「はは、そうかそうか。ところで、真紀ちゃんのメイド姿も、なかなか様になっているだろう?」
「ええ、私なんかよりずっとお似合いですわ……あ、これ、失礼にあたります?」
「いえ、そんな……ありがとうございます」
「じゃあ真紀ちゃん、山根さんにも一曲、聴かせてやっておくれよ」
真紀は照れくさそうに呟いた。
「なんだか、随分おおごとになっちゃったなぁ……」
真紀は再びピアノに向き直り、演奏を始めた。次の曲は、これまたどこかで聴き覚えのある旋律だ。
「これは、ドビュッシーの『月の光』だね」
真紀の奏でる柔らかなピアノの調べが、音の粒となって遊戯室を満たしていく。夜空に浮かぶ満月の光が静かな夜を優しく包み込み、水面に映り込んだ満月はそよ風を受けて揺らめく。月の光は夜空を見上げる全ての人々に等しく降り注ぎ、その心に安らぎの雫を落としてゆく。そんな情景が目の前に浮かんでくるようだ。
その時、ふと背中に視線を感じた。誰だろうと振り返ってみると、そこにいたのは蒼太君だった。遊戯室の前の廊下から、ピアノを演奏する真紀の背中を一心に見つめている。おそらく彼も、このピアノの音色に引き寄せられてきたのだろう。
「おお、蒼太。お前もこっちに来て、一緒に聴きなさい」
得雄氏も彼に気付いたらしく、しきりに手招きしている。だが、蒼太少年はそれに答えずに、ぷい、とそっぽを向いた。
「親父もな、クラシックが好きだった。親父みたいな立派な大人になるために、ちゃんと聴いておきなさい」
「またそれか……親父親父親父……いい加減やめてくれないかな? 僕はお祖父様とは違うんだよ!」
蒼太君が突然声を荒げた。ピアノの音はピタリと止み、真紀も驚いて彼の方を振り返った。その場にいた全員の視線が蒼太君に集まり、和やかだった場の空気が、一気に張り詰める。
一斉に視線を浴びてさすがにいたたまれなくなったのか、蒼太君はきまりが悪そうにその場を後にした。一同の間に気まずい沈黙が流れる。しかしそれは、蒼太君と入れ違いに入ってきた黒木さんによって破られた。
「……何か、あったのですか?」
蒼汰君が去って行った方向と遊戯室の中を交互に見ながら黒木さんが言う。さっきの蒼太くんの怒鳴り声が聞こえたのか、あるいはすれ違いざまに蒼太君の表情を見たのかもしれない。しかし、それでなくとも、この場の空気を見れば何かがあったことは容易に察せられるだろう。得雄氏が浮かない表情で答える。
「……いや、なんでもない。恥ずかしいところをお見せして、申し訳ないね……」
「いえ、私は何も見ておりません」
黒木さんは澄まして答えた。
「そんな、気を使わないでおくれよ。ところで黒木さん、その格好は?」
今度は黒木さんに視線が注がれる番だった。そう、彼女はなんと、白衣を着ていたのだ。白衣の天使と呼ぶにはやや眼光が険しすぎるが、元看護婦というだけあって、さすがに板についている。膝まであるスカート、白いストッキングに包まれたすらりとした脹脛。ナースシューズのデザインも意外と凝っていて、その全身の白さは蛍光灯のように眩しかった。白といえば膨張色のはずだが、白衣はメイド服よりも体のラインに沿っている上、腕と脚が露出しているせいか、黒木さんの華奢な体型がより強調されている。ともすると冷徹にさえ感じる彼女のきりっとした表情が純白のナース服をさらに引き締めており、その姿は全くコスプレに見えなかった。
「あら、黒木さん、もしかして着替えがないのでは……」
真紀が目を丸くしている。たしか、彼女の衣装は黒木さんから借りたものだったはずだ。
「いえ、着替えならまだ何着かございますので、お気遣いなく……看護をする時は、この服装の方が落ち着くんです、動きやすいですし」
「なんだか、今日は仮装パーティみたいだな……やっぱり、白衣が一番よく似合うね。お袋の様子はどうだい?」
「はい、今はぐっすりと眠っておられます。大事には至らないものと」
「そうか……それはよかった」
「お坊ちゃまのことは……よろしいのですか?」
再び蒼太君の話題になり、明るさを取り戻しかけていた得雄氏の表情が再び曇る。
「仕事で忙しくて、普段なかなか一緒にいてやれないから……どう接したらいいのかわからないんだ。昔から神経質なところはあったけれど、思春期になってからそれに拍車がかかってね。私は小さい頃、ずっと親父の背中を見て育ってきたんだ。親父はあまり口うるさく説教するようなタイプじゃなかったけれど、それでも私にとっては学ぶところがたくさんあった。でも、私は親父の真似はできないし、理想的な父親を演じてやることもできない。どうしたものかね……」
「蒼太くん、あまり学校に行っていないと聞きましたけれど……」
真紀は、昨日の朝食の席での彼の発言を持ち出した。もちろん俺もその場にいたのだが、どこか自嘲気味な表情で、確かに彼はそう言っていた。顔立ちの幼さと表情とのギャップに、その時は随分驚いたものだ。
「ああ、そうなんだよ……去年あたりから休みがちになってね。最近は全く……」
「今、14歳……中二ですか? そろそろ高校受験も視野に入り始める時期ですよね……」
「うん、だからちょっと心配でね……まあ、元々賢い子だから、勉強の方はあまり心配していないんだが……」
そこで蒼太くんの話題は自然と終わったのだが、一同にはまだ何となく気まずい空気が漂っていた。またピアノ演奏を再開しようと言い出す者もおらず、黒木さんと山根さんは持ち場に戻り、得雄氏も部屋に引き上げて行った。
さて、再び二人きりになった俺と真紀が何をしたかと言うと……笑うなかれ、メイド服に身を包んだ真紀の一人撮影会である。
真紀が色々なポーズをとり(エロティックなものではない)、俺はスマホのカメラにそれを収める。アングルには意外と細かい注文があって、特に顔を写す際には厳しい指導が入った。どの角度から見ても真紀はかわいいと思うのだが、彼女なりに色々と拘りがあるらしい。やや俯瞰する角度で、上目遣いに……なるほど、これが女の子の自撮りのテクニックなのか。
撮った写真の枚数はおよそ五十枚ほどに上り、その中のベストショットをスマホのロック画面にすることを強要された。
そこには、グランドピアノの前でロングスカートを軽く持ち上げ、少し首を傾いで満面の笑みを浮かべている真紀の姿があった。
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