アンダンテ

浦登みっひ

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京谷小雨の日常&Fall in the moonlight ジャンル:コメディ&ホラー

9月15日(5) 小雨

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 0.03……0.02……0.01?
 いやそれはちょっと怖いなあ……。
 バイトを上がり、スーパーで夕飯のおかずを買って、私は近くのドラッグストアに寄った。コンドームがなくなったからである。
 昨日の夜は6枚入りの箱を用意してあったのだが、なんと、昨夜から今朝にかけて、つまり半日で使いきってしまった(一枚は途中で破けた)のだ。特に朝の分が完全に誤算だった。多分瞬も買ってくるだろうとは思うけど、万が一の時のために自分でも用意しておこうと、こうして自らドラッグストアに足を運んだわけだ。健気な彼女だと思わない?
 ……あ、そもそも彼女じゃなかった。

 たがが1/100ミリの差でいったい何が変わるんだろう。ちなみに今まで使っていたのは0.03のものだ。男のあれってそんなにミクロな変化を感じられるほど敏感なんだろうか。それとも、私のほうでも感じ方が変わるのかしら。引っ掛かりがよくなるとか? でも、あんまり薄いとすぐ破れそうで怖い。

 初めてのときは、私も泥酔していたし、瞬にも用意がなかった。要するに生でしてしまったのだが、それから次の生理が来るまでの数週間は、まさに生きた心地がしなかった。体温の上昇とか下腹部痛とか、PMSと妊娠の超初期の症状がよく似ていて、紛らわしいのだ。
 それ以来、必ずコンドームを使うようにしている。
 色々悩んだあげく、結局三種類全てを一箱ずつ購入した。使ってみなきゃわからんもん。今夜はどれを使おうかな。

 瀬名家に帰ると、家はまだ真っ暗だった。瞬は帰ってないんだろうか。とはいえ、瞬の場合、一人の時は蝋燭の明かりだけで過ごしていることが多いから、まだわからない。奴は蛍光灯の明かりが苦手なのだ。

「ただいま〜! 瞬! いないの〜?」
 返事がない。ただの空き家のようだ。家庭教師のバイトは明日のはずだし……。
 私はすぐさまスマホを取り出し、瞬にLINEした。
「今日の夕飯は肉じゃがです。早く帰ってきて」
 すると、珍しくすぐに既読がついた。本当に珍しく。
「ごめん、永井先輩に捕まっちゃって。今夜は遅くなる」

…………………!!

!!!!!!!!!!?!?

 永井先輩とは、監獄島の際に、以下略。 

 これは嘘だ。
 私はそう直感した。
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