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四人目の探偵、門谷鹿角
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私の目の前で、たった今、人が殺された。
殺人ゲームに参加させられるまで死体を見たことすらなかった私が、今度は人が殺される瞬間を目にしてしまった。距離が離れていたとはいえ、その衝撃は凄まじかった。知的遊戯且つフィクションであるミステリの中の装置として行われる殺人ではない。現実の殺人はかくもあっけなく、そして酷いものなのだ。殺人事件を話のタネにしていたかつての自分を、私は心の内で激しく恥じた。
しかし、私と樺川先生が力なく頽れる中、桃貫元警部だけは迷うことなく、転がり落ちた生贄を追って階段を降りて行ったのだ。いつまでもこうして座り込んではいられない――先に立ち上がった樺川先生に続いて、私も長い廊下の先にある階段へと急いだ。
階段の踊り場で仰向けになった坊主頭の男。大きく見開かれた両目はまばたきすらせず、その額の中央には仏像の白毫のように丸く赤い点が穿たれている。
遺体に手を合わせながら、桃貫元警部が呟いた。
桃貫「正面から頭部を撃たれて即死、ですな……」
西野園「即死……」
桃貫元警部に倣い、樺川先生と私も遺体に手を合わせて瞑目する。人が殺される瞬間を見たのは、きっと樺川先生も初めてなのではないだろうか。彼の表情から窺える落胆の大きさは、ただ早く帰れるチャンスを逃してしまったことによるものだけではないように見えた。
と、その時、桃貫元警部が腕時計を確認しながら叫ぶ。
桃貫「これは……まだ、まだ十五分経っていないじゃないか!」
樺川「……えっ?」
桃貫元警部の言葉に、樺川先生も慌てて腕時計の文字盤を見た。腕時計をしていない私は急いでバッグからスマートフォンを取り出し、時刻を見る。
樺川「……本当だ。あと三十秒もある……この男が殺された時には、少なくともまだ一分以上時間が残されていた計算になりますね」
桃貫「おい! どうなっているんだ! お前が決めたルールだろう!? そうまでして人を殺したいのか!」
嗄れ気味の声を張り上げて桃貫元警部が非難すると、ゲームマスターの返事は早かった。
『ルールをよく聞いていなかったのかね、諸君。私は十五分後とは一言も言っていない。十五分以内に行われる殺人を防ぐことができたら――と、既に三度も同じ説明を繰り返している。十五分は猶予があると勝手に解釈したのは君たちの方ではないか』
西野園「十五分……以内……?」
あれ……そうだったかしら……?
言われてみれば、そのような気も――。
私たち三人は顔を見合わせる。
一人目の探偵としてこのゲームに放り込まれ、三回も同じ説明を聞いている私こそが、これは最初に気付かなければいけなかった点なのだ。
桃貫「そ、そんなものは……ただの言葉遊びではないか!」
桃貫元警部は苦々しい表情で言い返すが、ゲームマスターの声はまるでそれを嘲笑うかのようだった。
『言葉遊びは嫌いかね? 桃貫元警部。さあ、こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎてゆくぞ。言葉遊びも一興ではあるが、諸君にはそのような余裕はあるまい。四人目の探偵が到着次第、次のゲームが開始される。今後の方針を決めなくてよいのかね?』
ブツッ、という小さな音と共にゲームマスターの声は途切れ、再びオーケストラの勇壮な響きが廃墟を満たす。
私は二人に頭を下げた。
西野園「ごめんなさい……一番多くルールの説明を聞いているはずの私が、真っ先に気付いていなければいけなかったのに……」
樺川「いや、僕も同じ説明を二回は聞いているんだし、君を責めることはできないよ。僕だって、最初は何が何だかわからなかった。十五分は余裕があると楽観的な方に解釈してしまったんだろう」
桃貫「樺川先生の言う通りだ、西野園さん。あまりお気になさるな。それより、これから我々がどう動くべきかを考えねばならない。今回のようなミスを避けるためにも、やはり四人目の探偵を出迎え、ルールをきっちり説明する必要があるとは思われますが、しかし、ここからエントランスまで戻ってそこからまた探索を始めるのは、時間的に効率が悪すぎる」
桃貫元警部の意見を、樺川先生も首肯した。
樺川「うん、私もそう思います。当初我々が考えていたよりずっと、時間的猶予は少ないようだ。それに僕たちはまだこの建物の構造すら完全には把握していない。ここは、四人目の探偵を出迎える者と探索を続ける者を分けるべきでしょう。西野園君の意見は?」
西野園「ええ……はい、お二方の仰る通りだと思います」
十五分後だと思いこんでいたルールが、実は十五分以内だったとわかったことで、時間的余裕は全くなくなったと言っていい。十五分以内、という言葉の定義をそのまま受け取るならば、例えば四人目の探偵が到着してから一分後に次の殺人が行われてもおかしくないのだ。
桃貫「うむ。意見は一致しましたな。ではこうしましょう。私と樺川先生は、このまま建物内の探索を続けます。西野園さん、貴女はエントランスに戻り、新たにやってくるであろう四人目の探偵に、この下らんゲームの趣旨と現在の状況を説明してください。こう言っては失礼かもしれないが、ここにいるメンバーの中で貴女が最も疲れているようだ」
桃貫元警部が指摘した通り、一番若いはずの私が、この場では完全に足手まといになっている。こんなことに巻き込まれると知っていたら、ヒールの高い靴は履いてこなかったのに。いや、仮に靴が動きやすいスニーカーだったとしても、戦力になれたかはわからない。何しろ私は元ひきこもりの超インドア派で、運動なんてかれこれ十年以上もしていないのだから。
西野園「すみません。完全に足を引っ張ってますよね……」
桃貫「いや、いや、そういうことじゃないんですよ、お嬢さん。適材適所、というやつです。さ、いつまでもこうして喋ってはいられない。西野園さんはエントランスへ、樺川先生は、私と一緒に探索を続けましょう」
私は二人と別れ、一人エントランスに戻って四人目の探偵を待った。玄関の前にはやはり大柄の男が二人、金剛力士像のような存在感を放って聳え立ち、本当に彫刻なのではないかと思ってしまうほど微動だにしない。もしかして、真っ黒いサングラスの向こうで居眠りでもしているのではないだろうか――しかし、そんな淡い期待は、玄関の前に黒塗りの高級車が滑るようにやってきた瞬間、脆くも打ち砕かれた。
高級車のドアが開き、そこから一人の女性が降り立つと、見張りの二人はさっと背筋を伸ばしてその女性を出迎える。
女性は怪訝そうな表情で二人の大男を一瞥すると、玄関ポーチを上がり、ガラス張りのエントランスへと足を踏み入れる。
「何なの? ここ……」
女性は周囲を見回しながら言った。
年齢は三十代半ばぐらいだろうか。眼力が強い切れ長の目。整った顔立ちに、毛先を遊ばせたブラウンのロングヘア。メイクはかなり手が込んでいる。深いワインレッドのシックなドレスの上に、襟に高級そうなファーのついたグレーのコートを羽織り、足元は黒いストッキングに黒いハイヒールという装い。ピアスやネックレス、指輪など煌びやかなアクセサリーを多数身に着けているけれど、左手の薬指に指輪は嵌められていない。
私の姿に気付いたその女性は、眉間に皺を寄せ、詰るように誰何した。
「あんた、受付の子? ……にしちゃ、なんか服装が変ね。まるで田舎の学生みたいな……」
女性は私の頭からつま先までねめつけるように何度も視線を往復させる。その横柄な態度にムッとした私は、思わずキツめの口調で言い返してしまった。
西野園「あの、私、受付嬢じゃないし、大学生なのは事実ですけど、出身は都内です!」
すると、女性はますます不審そうな目で私を見る。
「あら、そうなの……? じゃあ、あんた誰? あたしは推理作家協会の会合に来たんだけど……?」
ああ、この人はそういう理由で連れてこられたのか。ということは、この人はミステリ作家?
その時、再び不気味なゲームマスターの声が、四人目の探偵の名を告げた。
「我が殺人ゲームへようこそ、四人目の探偵、門谷鹿角くん」
ゲームマスターによってこの『殺人ゲーム』のルールが説明されている間、門谷鹿角と呼ばれたその女性はずっと眉を顰め、不可解そうに首を傾げていた。それはそうだろう。こんなルール、理解しろという方が無理である。
説明が終わっても、彼女はまだ自分の置かれた状況をよく飲み込めていない様子。コートの内ポケットからおもむろに煙草とライターを取り出した門谷は、煙草に火を点け、ゆったりとした動作でそれを口に運んで、大きく煙を吐き出してから、不機嫌そうに言った。
門谷「……つまり、どういうこと? 要するに、今この廃墟で連続殺人が行われてて、あたしにそれを食い止めろと?」
西野園「ええ、正確に言えば、ここには今私を含めて三人の探偵……門谷さんを含めれば四人の探偵がいて、力を合わせて殺人を食い止めろ、ということのようです」
門谷「え? あんたも探偵なの?」
西野園「まあ、その……厳密に言えば違うんですけれど、とりあえず頭数には入れられているようです」
門谷「へぇ……キャラもののアマチュア臭いショボいミステリならまあありそうな設定だけど、あんたみたいな子も探偵か……なんか、世も末ね……」
西野園「ちょっと、それってどういう意味――」
門谷「ああ、ごめんごめん。今のは推理作家としての愚痴。あんたみたいに若くてかわいくて人当たりのいい子が探偵なんて、素人が書いたラノベじゃあるまいし、と思っただけよ。ごめんなさい、忘れてちょうだい」
門谷は頭を抱えて溜め息をつき、やや疲れたような表情で頭を振った。褒められているのか貶されているのか微妙な表現だったけれど、なんだか怒るわけにもいかない。私はやり場のない感情をそっと胸にしまい込み、本題に入ることにした。
西野園「門谷さん、立ち話をしている余裕はありません。歩きながら、現状の説明をさせてください」
殺人ゲームに参加させられるまで死体を見たことすらなかった私が、今度は人が殺される瞬間を目にしてしまった。距離が離れていたとはいえ、その衝撃は凄まじかった。知的遊戯且つフィクションであるミステリの中の装置として行われる殺人ではない。現実の殺人はかくもあっけなく、そして酷いものなのだ。殺人事件を話のタネにしていたかつての自分を、私は心の内で激しく恥じた。
しかし、私と樺川先生が力なく頽れる中、桃貫元警部だけは迷うことなく、転がり落ちた生贄を追って階段を降りて行ったのだ。いつまでもこうして座り込んではいられない――先に立ち上がった樺川先生に続いて、私も長い廊下の先にある階段へと急いだ。
階段の踊り場で仰向けになった坊主頭の男。大きく見開かれた両目はまばたきすらせず、その額の中央には仏像の白毫のように丸く赤い点が穿たれている。
遺体に手を合わせながら、桃貫元警部が呟いた。
桃貫「正面から頭部を撃たれて即死、ですな……」
西野園「即死……」
桃貫元警部に倣い、樺川先生と私も遺体に手を合わせて瞑目する。人が殺される瞬間を見たのは、きっと樺川先生も初めてなのではないだろうか。彼の表情から窺える落胆の大きさは、ただ早く帰れるチャンスを逃してしまったことによるものだけではないように見えた。
と、その時、桃貫元警部が腕時計を確認しながら叫ぶ。
桃貫「これは……まだ、まだ十五分経っていないじゃないか!」
樺川「……えっ?」
桃貫元警部の言葉に、樺川先生も慌てて腕時計の文字盤を見た。腕時計をしていない私は急いでバッグからスマートフォンを取り出し、時刻を見る。
樺川「……本当だ。あと三十秒もある……この男が殺された時には、少なくともまだ一分以上時間が残されていた計算になりますね」
桃貫「おい! どうなっているんだ! お前が決めたルールだろう!? そうまでして人を殺したいのか!」
嗄れ気味の声を張り上げて桃貫元警部が非難すると、ゲームマスターの返事は早かった。
『ルールをよく聞いていなかったのかね、諸君。私は十五分後とは一言も言っていない。十五分以内に行われる殺人を防ぐことができたら――と、既に三度も同じ説明を繰り返している。十五分は猶予があると勝手に解釈したのは君たちの方ではないか』
西野園「十五分……以内……?」
あれ……そうだったかしら……?
言われてみれば、そのような気も――。
私たち三人は顔を見合わせる。
一人目の探偵としてこのゲームに放り込まれ、三回も同じ説明を聞いている私こそが、これは最初に気付かなければいけなかった点なのだ。
桃貫「そ、そんなものは……ただの言葉遊びではないか!」
桃貫元警部は苦々しい表情で言い返すが、ゲームマスターの声はまるでそれを嘲笑うかのようだった。
『言葉遊びは嫌いかね? 桃貫元警部。さあ、こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎてゆくぞ。言葉遊びも一興ではあるが、諸君にはそのような余裕はあるまい。四人目の探偵が到着次第、次のゲームが開始される。今後の方針を決めなくてよいのかね?』
ブツッ、という小さな音と共にゲームマスターの声は途切れ、再びオーケストラの勇壮な響きが廃墟を満たす。
私は二人に頭を下げた。
西野園「ごめんなさい……一番多くルールの説明を聞いているはずの私が、真っ先に気付いていなければいけなかったのに……」
樺川「いや、僕も同じ説明を二回は聞いているんだし、君を責めることはできないよ。僕だって、最初は何が何だかわからなかった。十五分は余裕があると楽観的な方に解釈してしまったんだろう」
桃貫「樺川先生の言う通りだ、西野園さん。あまりお気になさるな。それより、これから我々がどう動くべきかを考えねばならない。今回のようなミスを避けるためにも、やはり四人目の探偵を出迎え、ルールをきっちり説明する必要があるとは思われますが、しかし、ここからエントランスまで戻ってそこからまた探索を始めるのは、時間的に効率が悪すぎる」
桃貫元警部の意見を、樺川先生も首肯した。
樺川「うん、私もそう思います。当初我々が考えていたよりずっと、時間的猶予は少ないようだ。それに僕たちはまだこの建物の構造すら完全には把握していない。ここは、四人目の探偵を出迎える者と探索を続ける者を分けるべきでしょう。西野園君の意見は?」
西野園「ええ……はい、お二方の仰る通りだと思います」
十五分後だと思いこんでいたルールが、実は十五分以内だったとわかったことで、時間的余裕は全くなくなったと言っていい。十五分以内、という言葉の定義をそのまま受け取るならば、例えば四人目の探偵が到着してから一分後に次の殺人が行われてもおかしくないのだ。
桃貫「うむ。意見は一致しましたな。ではこうしましょう。私と樺川先生は、このまま建物内の探索を続けます。西野園さん、貴女はエントランスに戻り、新たにやってくるであろう四人目の探偵に、この下らんゲームの趣旨と現在の状況を説明してください。こう言っては失礼かもしれないが、ここにいるメンバーの中で貴女が最も疲れているようだ」
桃貫元警部が指摘した通り、一番若いはずの私が、この場では完全に足手まといになっている。こんなことに巻き込まれると知っていたら、ヒールの高い靴は履いてこなかったのに。いや、仮に靴が動きやすいスニーカーだったとしても、戦力になれたかはわからない。何しろ私は元ひきこもりの超インドア派で、運動なんてかれこれ十年以上もしていないのだから。
西野園「すみません。完全に足を引っ張ってますよね……」
桃貫「いや、いや、そういうことじゃないんですよ、お嬢さん。適材適所、というやつです。さ、いつまでもこうして喋ってはいられない。西野園さんはエントランスへ、樺川先生は、私と一緒に探索を続けましょう」
私は二人と別れ、一人エントランスに戻って四人目の探偵を待った。玄関の前にはやはり大柄の男が二人、金剛力士像のような存在感を放って聳え立ち、本当に彫刻なのではないかと思ってしまうほど微動だにしない。もしかして、真っ黒いサングラスの向こうで居眠りでもしているのではないだろうか――しかし、そんな淡い期待は、玄関の前に黒塗りの高級車が滑るようにやってきた瞬間、脆くも打ち砕かれた。
高級車のドアが開き、そこから一人の女性が降り立つと、見張りの二人はさっと背筋を伸ばしてその女性を出迎える。
女性は怪訝そうな表情で二人の大男を一瞥すると、玄関ポーチを上がり、ガラス張りのエントランスへと足を踏み入れる。
「何なの? ここ……」
女性は周囲を見回しながら言った。
年齢は三十代半ばぐらいだろうか。眼力が強い切れ長の目。整った顔立ちに、毛先を遊ばせたブラウンのロングヘア。メイクはかなり手が込んでいる。深いワインレッドのシックなドレスの上に、襟に高級そうなファーのついたグレーのコートを羽織り、足元は黒いストッキングに黒いハイヒールという装い。ピアスやネックレス、指輪など煌びやかなアクセサリーを多数身に着けているけれど、左手の薬指に指輪は嵌められていない。
私の姿に気付いたその女性は、眉間に皺を寄せ、詰るように誰何した。
「あんた、受付の子? ……にしちゃ、なんか服装が変ね。まるで田舎の学生みたいな……」
女性は私の頭からつま先までねめつけるように何度も視線を往復させる。その横柄な態度にムッとした私は、思わずキツめの口調で言い返してしまった。
西野園「あの、私、受付嬢じゃないし、大学生なのは事実ですけど、出身は都内です!」
すると、女性はますます不審そうな目で私を見る。
「あら、そうなの……? じゃあ、あんた誰? あたしは推理作家協会の会合に来たんだけど……?」
ああ、この人はそういう理由で連れてこられたのか。ということは、この人はミステリ作家?
その時、再び不気味なゲームマスターの声が、四人目の探偵の名を告げた。
「我が殺人ゲームへようこそ、四人目の探偵、門谷鹿角くん」
ゲームマスターによってこの『殺人ゲーム』のルールが説明されている間、門谷鹿角と呼ばれたその女性はずっと眉を顰め、不可解そうに首を傾げていた。それはそうだろう。こんなルール、理解しろという方が無理である。
説明が終わっても、彼女はまだ自分の置かれた状況をよく飲み込めていない様子。コートの内ポケットからおもむろに煙草とライターを取り出した門谷は、煙草に火を点け、ゆったりとした動作でそれを口に運んで、大きく煙を吐き出してから、不機嫌そうに言った。
門谷「……つまり、どういうこと? 要するに、今この廃墟で連続殺人が行われてて、あたしにそれを食い止めろと?」
西野園「ええ、正確に言えば、ここには今私を含めて三人の探偵……門谷さんを含めれば四人の探偵がいて、力を合わせて殺人を食い止めろ、ということのようです」
門谷「え? あんたも探偵なの?」
西野園「まあ、その……厳密に言えば違うんですけれど、とりあえず頭数には入れられているようです」
門谷「へぇ……キャラもののアマチュア臭いショボいミステリならまあありそうな設定だけど、あんたみたいな子も探偵か……なんか、世も末ね……」
西野園「ちょっと、それってどういう意味――」
門谷「ああ、ごめんごめん。今のは推理作家としての愚痴。あんたみたいに若くてかわいくて人当たりのいい子が探偵なんて、素人が書いたラノベじゃあるまいし、と思っただけよ。ごめんなさい、忘れてちょうだい」
門谷は頭を抱えて溜め息をつき、やや疲れたような表情で頭を振った。褒められているのか貶されているのか微妙な表現だったけれど、なんだか怒るわけにもいかない。私はやり場のない感情をそっと胸にしまい込み、本題に入ることにした。
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