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ゲームマスター
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西野園「事実上、既にゲームは終わっています。もう無駄な抵抗はやめてください。あなたがもし本当に探偵なら、それがいかに愚かな行為なのか、十分にわかっているはずです」
西野園がそう語りかけたのは、ここに集った探偵たちのなかでも最年長である、桃貫元警部だった。
その場に居並ぶ名探偵たちは、皆驚きのあまり絶句した。それは、このゲームに参加したばかりでまだよく事情が呑み込めていない真理も同様であった。未だ新参者の彼女にも、人情派の刑事ドラマの登場人物のようなその老人がゲームマスターの一味だとは到底思えない。
しかし、西野園以外にももう一人、全く表情を崩さなかった者がいた。それは研究者というより学生に近い雰囲気の樺川である。
西野園に指名された桃貫は、怒る気配も狼狽える様子もなく、全く無表情のまま彼女を見返す。いかに数多の修羅場を経験してきた老警部とはいえ、突然犯人だと指名されたらもっと驚くのではないか――?
真理が桃貫の態度に不審な気配を感じたその直後、ずっと腕時計を眺めていた門谷が告げる。
門谷「3……2……1……0。時間です」
西野園と桃貫が睨み合っている間に、30秒という時間は一瞬にして過ぎ去った。この意味不明な殺人ゲームが終わり、探偵たちが勝利した瞬間でもあったが、それを喜ぶ者は誰一人いない。全員が西野園と桃貫の次の発言を待っていたのだ。
だが、次に口を開いたのはそのどちらでもなかった。
樺川「桃貫元警部……あなたが合流した直後に起こった殺人のことを覚えていますね。あの時、私は現場に妙な違和感を持ちました。ですが、その違和感の正体が何なのか、恥ずかしながらついさっきまで気付かなかった。西野園さんにも先程確認をとり、私の疑問点について同意を得ることができました。探偵の中に紛れている殺人者が一人とは限らない。しかし少なくとも、三人目の生贄を殺したのは、桃貫警部、あなただと思います。違いますか?」
桃貫はそれでも冷静な態度を崩さなかった。
桃貫「……私が犯人だと思われる、その理由を伺いましょうか」
樺川は頷き、室内をゆっくりと歩きながら続けた。
樺川「我々三人が逃げる生贄を追いかけ、生贄が階段に差し掛かったときのことです。その時、最も彼に近かったのは桃貫元警部でしたね。我々の姿を見た生贄は怯えるように階段を降りようとして、その瞬間銃声が鳴った。そして階段を転がり落ちた。そうでしたよね?」
桃貫「ええ、いかにも」
樺川「私はその時咄嗟に、下り階段の方向……つまり踊り場に相手がいて、そこから撃たれたのだ、と思いました。生贄は足元を見ていたから、仮に昇り階段の方に殺人者がいたとしても、生贄の額を正面から撃つことはできませんからね。が、今にして考えれば、この状況には妙なところがある。当時は味方であるはずの探偵の中にゲームマスターの一味が紛れ込んでいるとは想定していなかったから、それに気付けなかったのです」
門谷「はぁん……そういうことね。樺川先生、それをもっと早く私たちに話してくれていたら、死ななくて済んだ人が何人かいたかもしれないわよ」
と、二人の会話を聞いていた門谷が相槌を打つ。いや、樺川が提示した疑問点に気付いたのは彼女だけではない。
川矢「つまり、その時階段の踊り場には既に銃を構え生贄に銃口を向けた殺人者がいた可能性が高い。にもかかわらず、生贄は迷わず階段を降りようとした」
織田「不自然な点はもう一つ。他の殺人ではサプレッサー付きの銃が使われていたが、その時だけは銃声がはっきりと聞こえていることだ。単に殺人犯が複数の銃器を持ち歩いていたのかもしれないが、やはりその一件だけ銃声が聞こえたという点は看過できない」
銀田二「と考えると、また新たに一つの疑問が生じますな。すなわち、それは本当に銃声だったのか……? その破裂音は本当に発砲された銃器から発せられたものだったのか? ひょっとすると……」
銀田二はおもむろに右手の人差し指を立て、天井を指差す。
水村「そう、スピーカーだ。生贄の殺害や探偵の到着のたびに大音量の音楽を鳴らし続けてきたスピーカー。もしもその銃声が、銃撃によるものではなく、このスピーカーによって鳴らされたダミーだったと仮定したら」
糊口「なるほど。ではこういう仮説が成り立ちますね。生贄は三人から逃れるため階段を降りようとした。しかしその瞬間に鳴り響いたスピーカーの銃声に驚いて足を踏み外し、踊り場まで転がり落ちてしまった。その姿が、西野園さんたちには踊り場から銃撃を受けて転がり落ちたように見えた」
安西「すると……」
真理が思わず口を開くと、生贄の男を除く全員、十一人の探偵たちの視線が一斉に彼女に注がれた。真理は新参者の自分がいきなり発言するべきではなかったかと一瞬躊躇したが、むしろ探偵たちの彼女を見る目はその言葉の先を促しているように感じられる。
軽く息を整えて、真理は先程呑み込んでしまった自分の推理を告げた。
安西「実際に生贄が殺されたのは、銃声が鳴り踊り場に転がり落ちてから西野園さんたちに発見されるまでのごく僅かな間。そして、生贄を殺すチャンスがあったのは、その間に一人で生贄に近付くことのできた人物――桃貫元警部、となりますね」
真理の推理に、西野園は大きく頷いた。
西野園「まあ一応、生贄が階段を転がっている間に殺人犯が階段を昇って来て、速やかに生贄を殺害した後、桃貫元警部が階段に辿り着くまでの一瞬の隙に姿を消したという可能性も考えられなくはないけど。でも、そうなるとわざわざスピーカーから偽の銃声を流した理由が不明」
樺川「そう……だから私は、桃貫元警部、あなたが犯人なのではないかと考えました。私の推理は、どこか間違っていますか?」
樺川の問いに対して、桃貫は暫し瞑目した後、それまでの彼とは別人のような、地の底から響いてくるが如く重々しい声でこう述べた。
桃貫「……西野園君の言う通り、既にゲームは終わった。今更隠す必要もあるまいな――さよう、私がこのゲームにおける全ての殺人の実行犯であり、また計画を主導したゲームマスターでもある」
桃貫の告白に、西野園を除く十人の探偵たちは驚きを隠さなかった。殺人の実行犯が自分たちの中に紛れ込んでいることはわかっていたが、まさかそれがこの殺人ゲームを主導するゲームマスターだとは思いもよらなかったからだ。
桃貫「驚いたかね? スピーカーから流れていた声は、予め録音しておいたものだ。交通機関等の遅れで順番がずれたらどうしようかと思っていたが、皆無事に予定通り到着してくれてよかった。仲間とは、これで連絡を取り合っていたよ。マイクもここまで小さくなる時代なのだな」
桃貫はそう言うと、スーツの襟に留められていた小さなピンを指差した。
愚藤「ま、マジかよ……この爺さんが……?」
探偵たちの推理が始まって以降しばらく会話に参加できていなかった愚藤が、思い出したように呟く。だがその素朴な一言は、探偵たちの総意でもあった。捜査一課の刑事として定年まで職責を全うした、正義感に溢れる元刑事。桃貫元警部は、西野園や樺川に指名されるまで、犯罪行為や殺人とは最も遠い存在に思われていたのだ。
桃貫「実行犯は私一人だ。明かされない共犯者のいるミステリーほどアンフェアなものはない。そうだろう? 私はフェアプレー精神を何よりも重んじる。それに、私が計画したこのゲームで、私以外の人間に手を汚させたくなかったからね」
織田「このような酷いゲームを企てておいて、フェアプレーとは笑止千万。いったい貴方は何故殺人ゲームなどという下らないものを企図したのです?」
水村「たしかに動機も理解しがたいですが、それ以上に疑問なのは、この廃墟を改修し、多数の人員を動かして、さらにはヘリコプターまで呼びつける組織力と資金力です。桃貫元警部一人の力とはとても思えない。生贄がどのように選ばれどうやってここに連れて来られたのかも気になります。既に十一人もの無辜の人間の命が失われたわけですからね」
糊口「ミステリ作家の端くれとして、フェアプレー精神を掲げられるのは御立派だと思います。むしろ共感すら覚える。しかし、敗れた犯人にはまだ仕事が残っています。最後の役目として、あなたが計画した殺人ゲームの全てを明かしては頂けませんか、桃貫元警部」
桃貫「それは、私の口から話しても構わないのだが……西野園君は、もう薄々感付いているようだ」
という桃貫の言葉に、皆が西野園を注目したが、ここで声を発したのは意外な人物だった。
東條「幽閉……監視……まさか、あの時私が視たものは……」
川矢たちの目前で屋上から飛び降りて死んだ生贄。その際に視たビジョンを、東條は思い出していた。一時的に霊能力を失っているはずの彼女の意識に飛び込んできた強烈な残留思念。その時はただ驚くばかりだったが、今にして思えば、あれは生贄が彼女にどうしても伝えたかったこと、つまり殺人ゲームの真相に関するものだったのではないか。東條は突然そう思ったのだ。
ゲームマスターが警察の関係者であるという事実、監禁されていると思しき状況、不遜な態度の生贄たち、そして死という結末。これらの情報から導き出される結論は――。
戸惑った様子で呟く東條に、西野園は重々しく頷き返す。そして、人形のように整った顔立ちの中でもとりわけ目を引く大きな瞳で、その先の言葉を促すようにじっと彼女を見つめた。西野園に小さく頷き返した東條は、眦を決して彼女の推測を述べた。
東條「もしかして、ここに連れて来られた生贄たちは皆、囚人……いえ、死刑囚なのではないですか?」
すると、桃貫は口辺に満足げな笑みを浮かべる。
桃貫「いかにも。彼奴等はすべからく、刑の執行を待つ死刑囚であったよ」
探偵たちは、部屋の片隅で自分たちを睨み付ける男をしげしげと眺めた。死刑囚と言われると、彼ら生贄の不遜な態度にも納得がいく。
樺川「死刑囚……なんと。彼らはこのゲームの趣旨を知らされていたのですか?」
桃貫「日本を代表する探偵たちとの鬼ごっこ、という程度にはな。だが、彼らには一つ、実際とは異なる条件を一つ伝えてあった。十五分間、自分を追ってくる探偵たちから逃げ切れば、晴れて無罪放免というものだ。もちろん全くの嘘だがね」
織田「なるほど、だから彼らは必死に逃げ回ったのか。地上四階の屋上から飛び降りてまで……。彼らにとっては、正に死に物狂いだったわけだ」
桃貫「現在収監されている死刑囚の中には、君達が解決した事件の犯人も含まれているが、当然その者たちは生贄としては使えない。人選にはなかなか苦労したよ」
銀田二「しかし、死刑囚といえば、拘置所に収監されているはず。いかに退職した刑事とはいえ、これだけの人数を連れてくることなど……はっ、まさか!」
川矢「そのまさかだろうな。それならば、いやそうでなければ、この組織力に説明がつかない」
西野園「そう……つまり、桃貫警部。あなたには、現役の刑事及び警察官の協力者がいる。そうですね?」
桃貫「その通り。たしかに仲間の一部は現役の警察官や職員であるが、大部分は私と同じく退職した刑事たちだ。例えば、この廃墟の出入りを監視している者は現役の刑事や刑務官だし、諸君をここまで連れて来た車の運転手は、元刑事や警察官ばかりだな」
愚藤「マジで? あのブタゴリラ野郎が現役の警察官……」
自分を羽交い絞めにした大男が現役の刑事だと聞いた愚藤は、露骨に顔を顰めた。
桃貫「廃墟の改修や諸々の費用には、我々の退職金を充てた。おかげで私の口座はもうすっからかんだ。尤も、今後普通の生活に戻れるとは微塵も思っていないがね」
樺川「しかし、いかに死刑囚といえども、彼らにも人権はあるはずです。ゲーム感覚――という言葉が私は嫌いですが、このような形で命を奪うことに躊躇いはなかったのですか?」
桃貫「諸君は収監中の死刑囚がどのような生活を送っているかご存じかね? 通常の懲役囚と違い、死刑囚には労働作業がない。所得格差の拡大によって餓死する者さえいる現在の日本で、我々が苦労して逮捕した凶悪犯が、三食昼寝付きの優雅な生活を送っているというわけだ。この無念さがわかるかね? 現役の職員から協力者を募ることができたのも、現在の制度に同じ疑問を抱いていた者が数多くいたからだ。彼らを救えなかったという君達の自責の念も、これで幾分和らいだのではないかな」
門谷「まあ、そうね。死刑囚なら別にいいかもとは思える。普通に刑を執行されるよりよほど辛い死に様だったでしょうね。でも、最大の疑問はそこじゃないわ。死刑囚をさっさと自分の手で裁きたいだけなら、わざわざこんな大掛かりな舞台を作って私たちを呼びつける必要はどこにもない。私たちは、何故ここに招かれたのかしら?」
この殺人ゲームに参加させられた探偵たちが最初から最も疑問に思っていたことを門谷が尋ねると、桃貫は深いため息をつき、ゆっくりと言葉を選ぶように言った。
桃貫「では……私からも質問しよう。名探偵諸君。君達は、我々警察のことをどう思っているかね?」
桃貫の突然の問いに、探偵たちは顔を見合わせる。警察のことをどう思うか。改めて問われると、すぐさま返答できる者は少ない。が、普段から警察と協力して捜査にあたっている真理は、彼女にしては堂々とした口調で答えた。
安西「私は、普段警察の要請を受けて、警察の皆さんと共に捜査に当たっています。顔見知りもたくさんおりますし、私の力だけで解決した事件は一つもないと言っても過言ではないと思っています」
桃貫「ふむ。安西探偵、たしかに君は県警と素晴らしい協力体制を築いていると聞く。全ての警察官を代表して、感謝しよう」
銀田二「私も、警察に知己は多いですし、警察から提供された情報を元に推理を進めることが多いですな」
水村「同じく。私のフィールドワークは、警察からの依頼によるものがほとんどです」
織田「警察との信頼関係は、探偵としての活動の上では欠くべからざるものだと考えておりますが」
桃貫「なるほど、織田探偵、銀田二探偵、水村准教授、君たちにも感謝しよう。では――例えば、川矢探偵、君はどうだ?」
唐突に話を振られた川矢は、険しかった表情からさらに眉間に皺を寄せる。
川矢「まあ、率直に言って、おつむが足りないと思っている。警察が行う単純な捜査では、知能犯が企てる高度に洗練された犯罪を解決に導くことはできないな」
桃貫「そうか。他の諸君はどうかな?」
門谷「あたしは……どうでもいいってところかしらね。犯人を法で裁くということに、元々あまり興味がないから」
糊口「私の場合、身内に警視庁の幹部がいるので情報を得る際には便利ですが、推理そのものは独自に行うことが多いですね」
樺川「強いて言えば、門谷先生に近い立場かもしれないですね、私は。できる限り自分の研究に没頭したいので、本来ならあまり関わりたくない、というのが正直なところです」
東條「警察は、私の分野とは永久に相容れない存在でしょうね。呪いとか霊とかいう話をしても、警察には鼻で笑われるだけでしょうし」
愚藤「お、俺は……たまにワイドショーとか呼ばれるせいか、なんか不祥事ばっかり起こしてる印象しかないっすね」
探偵たちがそれぞれの見解を述べ、まだ返答を終えていない西野園へ自然と視線が集まる。
彼女は冷徹と評するにも冷たすぎる、仮面のような無表情のまま言った。
西野園「私は川矢探偵に近い立場ですね。我々一般市民の安全のために、警察が日夜職務に励んでいることはもちろん理解しています。でも、私は一ミステリファンとして、足と科学と人力だけに頼った捜査は邪道だとも思っています。ルーチン化された捜査だけでは解決できない、深い洞察力を要する犯罪もこの世には存在する。洞察力という点において、警察の能力は著しく不足していると言わざるを得ません」
西野園の厳しい指摘に、桃貫は思わず苦笑を浮かべた。
桃貫「これは手厳しい。こういう意見が出ると予想していたとはいえ、面と向かって言われると堪えるものがあるな。しかし――探偵諸君。警察と良好な関係を築いている者であっても、大なり小なり、川矢くんや西野園くんと同じ見解を抱いているのではないかね?」
桃貫の問いかけに、頷く者こそいなかったものの、敢えて否定する者もいなかった。
桃貫「うむ、そうだろう。私の現役時代、刑事として様々な凶悪事件の捜査にあたる中で、君たちのような『名探偵』と呼ばれる人間に協力を求めたことが何度かあった。探偵たちは正に快刀乱麻を断つ名推理で事件を解決し、我々も大いに助けられたが、一方で鼻についたのが、我々に対する探偵たちの態度だ。皆が一様にそうだったとは言わないが、私たちの地道な捜査を小馬鹿にして、さも自分一人の力で解決に導いたかのような口ぶり。腹に据えかねるものがあったのは私だけではない。だからこそ、今回私はこれほど多くの仲間を集めることができたのだ」
川矢「ちょっと待て。探偵の態度が警察を軽んじるものだったことと、それに君たち警察が腹を立てたことまでは理解できる。だが、それが何故この殺人ゲームに繋がるんだ?」
川矢が問うと、桃貫はそれまでの重々しい表情から一転、不敵というより悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
桃貫「つまりこういうことだ……私たちは、君たち名探偵が我々のように汗を流してヒイコラ言いながら駆けずり回る姿を見たかったのさ」
西野園がそう語りかけたのは、ここに集った探偵たちのなかでも最年長である、桃貫元警部だった。
その場に居並ぶ名探偵たちは、皆驚きのあまり絶句した。それは、このゲームに参加したばかりでまだよく事情が呑み込めていない真理も同様であった。未だ新参者の彼女にも、人情派の刑事ドラマの登場人物のようなその老人がゲームマスターの一味だとは到底思えない。
しかし、西野園以外にももう一人、全く表情を崩さなかった者がいた。それは研究者というより学生に近い雰囲気の樺川である。
西野園に指名された桃貫は、怒る気配も狼狽える様子もなく、全く無表情のまま彼女を見返す。いかに数多の修羅場を経験してきた老警部とはいえ、突然犯人だと指名されたらもっと驚くのではないか――?
真理が桃貫の態度に不審な気配を感じたその直後、ずっと腕時計を眺めていた門谷が告げる。
門谷「3……2……1……0。時間です」
西野園と桃貫が睨み合っている間に、30秒という時間は一瞬にして過ぎ去った。この意味不明な殺人ゲームが終わり、探偵たちが勝利した瞬間でもあったが、それを喜ぶ者は誰一人いない。全員が西野園と桃貫の次の発言を待っていたのだ。
だが、次に口を開いたのはそのどちらでもなかった。
樺川「桃貫元警部……あなたが合流した直後に起こった殺人のことを覚えていますね。あの時、私は現場に妙な違和感を持ちました。ですが、その違和感の正体が何なのか、恥ずかしながらついさっきまで気付かなかった。西野園さんにも先程確認をとり、私の疑問点について同意を得ることができました。探偵の中に紛れている殺人者が一人とは限らない。しかし少なくとも、三人目の生贄を殺したのは、桃貫警部、あなただと思います。違いますか?」
桃貫はそれでも冷静な態度を崩さなかった。
桃貫「……私が犯人だと思われる、その理由を伺いましょうか」
樺川は頷き、室内をゆっくりと歩きながら続けた。
樺川「我々三人が逃げる生贄を追いかけ、生贄が階段に差し掛かったときのことです。その時、最も彼に近かったのは桃貫元警部でしたね。我々の姿を見た生贄は怯えるように階段を降りようとして、その瞬間銃声が鳴った。そして階段を転がり落ちた。そうでしたよね?」
桃貫「ええ、いかにも」
樺川「私はその時咄嗟に、下り階段の方向……つまり踊り場に相手がいて、そこから撃たれたのだ、と思いました。生贄は足元を見ていたから、仮に昇り階段の方に殺人者がいたとしても、生贄の額を正面から撃つことはできませんからね。が、今にして考えれば、この状況には妙なところがある。当時は味方であるはずの探偵の中にゲームマスターの一味が紛れ込んでいるとは想定していなかったから、それに気付けなかったのです」
門谷「はぁん……そういうことね。樺川先生、それをもっと早く私たちに話してくれていたら、死ななくて済んだ人が何人かいたかもしれないわよ」
と、二人の会話を聞いていた門谷が相槌を打つ。いや、樺川が提示した疑問点に気付いたのは彼女だけではない。
川矢「つまり、その時階段の踊り場には既に銃を構え生贄に銃口を向けた殺人者がいた可能性が高い。にもかかわらず、生贄は迷わず階段を降りようとした」
織田「不自然な点はもう一つ。他の殺人ではサプレッサー付きの銃が使われていたが、その時だけは銃声がはっきりと聞こえていることだ。単に殺人犯が複数の銃器を持ち歩いていたのかもしれないが、やはりその一件だけ銃声が聞こえたという点は看過できない」
銀田二「と考えると、また新たに一つの疑問が生じますな。すなわち、それは本当に銃声だったのか……? その破裂音は本当に発砲された銃器から発せられたものだったのか? ひょっとすると……」
銀田二はおもむろに右手の人差し指を立て、天井を指差す。
水村「そう、スピーカーだ。生贄の殺害や探偵の到着のたびに大音量の音楽を鳴らし続けてきたスピーカー。もしもその銃声が、銃撃によるものではなく、このスピーカーによって鳴らされたダミーだったと仮定したら」
糊口「なるほど。ではこういう仮説が成り立ちますね。生贄は三人から逃れるため階段を降りようとした。しかしその瞬間に鳴り響いたスピーカーの銃声に驚いて足を踏み外し、踊り場まで転がり落ちてしまった。その姿が、西野園さんたちには踊り場から銃撃を受けて転がり落ちたように見えた」
安西「すると……」
真理が思わず口を開くと、生贄の男を除く全員、十一人の探偵たちの視線が一斉に彼女に注がれた。真理は新参者の自分がいきなり発言するべきではなかったかと一瞬躊躇したが、むしろ探偵たちの彼女を見る目はその言葉の先を促しているように感じられる。
軽く息を整えて、真理は先程呑み込んでしまった自分の推理を告げた。
安西「実際に生贄が殺されたのは、銃声が鳴り踊り場に転がり落ちてから西野園さんたちに発見されるまでのごく僅かな間。そして、生贄を殺すチャンスがあったのは、その間に一人で生贄に近付くことのできた人物――桃貫元警部、となりますね」
真理の推理に、西野園は大きく頷いた。
西野園「まあ一応、生贄が階段を転がっている間に殺人犯が階段を昇って来て、速やかに生贄を殺害した後、桃貫元警部が階段に辿り着くまでの一瞬の隙に姿を消したという可能性も考えられなくはないけど。でも、そうなるとわざわざスピーカーから偽の銃声を流した理由が不明」
樺川「そう……だから私は、桃貫元警部、あなたが犯人なのではないかと考えました。私の推理は、どこか間違っていますか?」
樺川の問いに対して、桃貫は暫し瞑目した後、それまでの彼とは別人のような、地の底から響いてくるが如く重々しい声でこう述べた。
桃貫「……西野園君の言う通り、既にゲームは終わった。今更隠す必要もあるまいな――さよう、私がこのゲームにおける全ての殺人の実行犯であり、また計画を主導したゲームマスターでもある」
桃貫の告白に、西野園を除く十人の探偵たちは驚きを隠さなかった。殺人の実行犯が自分たちの中に紛れ込んでいることはわかっていたが、まさかそれがこの殺人ゲームを主導するゲームマスターだとは思いもよらなかったからだ。
桃貫「驚いたかね? スピーカーから流れていた声は、予め録音しておいたものだ。交通機関等の遅れで順番がずれたらどうしようかと思っていたが、皆無事に予定通り到着してくれてよかった。仲間とは、これで連絡を取り合っていたよ。マイクもここまで小さくなる時代なのだな」
桃貫はそう言うと、スーツの襟に留められていた小さなピンを指差した。
愚藤「ま、マジかよ……この爺さんが……?」
探偵たちの推理が始まって以降しばらく会話に参加できていなかった愚藤が、思い出したように呟く。だがその素朴な一言は、探偵たちの総意でもあった。捜査一課の刑事として定年まで職責を全うした、正義感に溢れる元刑事。桃貫元警部は、西野園や樺川に指名されるまで、犯罪行為や殺人とは最も遠い存在に思われていたのだ。
桃貫「実行犯は私一人だ。明かされない共犯者のいるミステリーほどアンフェアなものはない。そうだろう? 私はフェアプレー精神を何よりも重んじる。それに、私が計画したこのゲームで、私以外の人間に手を汚させたくなかったからね」
織田「このような酷いゲームを企てておいて、フェアプレーとは笑止千万。いったい貴方は何故殺人ゲームなどという下らないものを企図したのです?」
水村「たしかに動機も理解しがたいですが、それ以上に疑問なのは、この廃墟を改修し、多数の人員を動かして、さらにはヘリコプターまで呼びつける組織力と資金力です。桃貫元警部一人の力とはとても思えない。生贄がどのように選ばれどうやってここに連れて来られたのかも気になります。既に十一人もの無辜の人間の命が失われたわけですからね」
糊口「ミステリ作家の端くれとして、フェアプレー精神を掲げられるのは御立派だと思います。むしろ共感すら覚える。しかし、敗れた犯人にはまだ仕事が残っています。最後の役目として、あなたが計画した殺人ゲームの全てを明かしては頂けませんか、桃貫元警部」
桃貫「それは、私の口から話しても構わないのだが……西野園君は、もう薄々感付いているようだ」
という桃貫の言葉に、皆が西野園を注目したが、ここで声を発したのは意外な人物だった。
東條「幽閉……監視……まさか、あの時私が視たものは……」
川矢たちの目前で屋上から飛び降りて死んだ生贄。その際に視たビジョンを、東條は思い出していた。一時的に霊能力を失っているはずの彼女の意識に飛び込んできた強烈な残留思念。その時はただ驚くばかりだったが、今にして思えば、あれは生贄が彼女にどうしても伝えたかったこと、つまり殺人ゲームの真相に関するものだったのではないか。東條は突然そう思ったのだ。
ゲームマスターが警察の関係者であるという事実、監禁されていると思しき状況、不遜な態度の生贄たち、そして死という結末。これらの情報から導き出される結論は――。
戸惑った様子で呟く東條に、西野園は重々しく頷き返す。そして、人形のように整った顔立ちの中でもとりわけ目を引く大きな瞳で、その先の言葉を促すようにじっと彼女を見つめた。西野園に小さく頷き返した東條は、眦を決して彼女の推測を述べた。
東條「もしかして、ここに連れて来られた生贄たちは皆、囚人……いえ、死刑囚なのではないですか?」
すると、桃貫は口辺に満足げな笑みを浮かべる。
桃貫「いかにも。彼奴等はすべからく、刑の執行を待つ死刑囚であったよ」
探偵たちは、部屋の片隅で自分たちを睨み付ける男をしげしげと眺めた。死刑囚と言われると、彼ら生贄の不遜な態度にも納得がいく。
樺川「死刑囚……なんと。彼らはこのゲームの趣旨を知らされていたのですか?」
桃貫「日本を代表する探偵たちとの鬼ごっこ、という程度にはな。だが、彼らには一つ、実際とは異なる条件を一つ伝えてあった。十五分間、自分を追ってくる探偵たちから逃げ切れば、晴れて無罪放免というものだ。もちろん全くの嘘だがね」
織田「なるほど、だから彼らは必死に逃げ回ったのか。地上四階の屋上から飛び降りてまで……。彼らにとっては、正に死に物狂いだったわけだ」
桃貫「現在収監されている死刑囚の中には、君達が解決した事件の犯人も含まれているが、当然その者たちは生贄としては使えない。人選にはなかなか苦労したよ」
銀田二「しかし、死刑囚といえば、拘置所に収監されているはず。いかに退職した刑事とはいえ、これだけの人数を連れてくることなど……はっ、まさか!」
川矢「そのまさかだろうな。それならば、いやそうでなければ、この組織力に説明がつかない」
西野園「そう……つまり、桃貫警部。あなたには、現役の刑事及び警察官の協力者がいる。そうですね?」
桃貫「その通り。たしかに仲間の一部は現役の警察官や職員であるが、大部分は私と同じく退職した刑事たちだ。例えば、この廃墟の出入りを監視している者は現役の刑事や刑務官だし、諸君をここまで連れて来た車の運転手は、元刑事や警察官ばかりだな」
愚藤「マジで? あのブタゴリラ野郎が現役の警察官……」
自分を羽交い絞めにした大男が現役の刑事だと聞いた愚藤は、露骨に顔を顰めた。
桃貫「廃墟の改修や諸々の費用には、我々の退職金を充てた。おかげで私の口座はもうすっからかんだ。尤も、今後普通の生活に戻れるとは微塵も思っていないがね」
樺川「しかし、いかに死刑囚といえども、彼らにも人権はあるはずです。ゲーム感覚――という言葉が私は嫌いですが、このような形で命を奪うことに躊躇いはなかったのですか?」
桃貫「諸君は収監中の死刑囚がどのような生活を送っているかご存じかね? 通常の懲役囚と違い、死刑囚には労働作業がない。所得格差の拡大によって餓死する者さえいる現在の日本で、我々が苦労して逮捕した凶悪犯が、三食昼寝付きの優雅な生活を送っているというわけだ。この無念さがわかるかね? 現役の職員から協力者を募ることができたのも、現在の制度に同じ疑問を抱いていた者が数多くいたからだ。彼らを救えなかったという君達の自責の念も、これで幾分和らいだのではないかな」
門谷「まあ、そうね。死刑囚なら別にいいかもとは思える。普通に刑を執行されるよりよほど辛い死に様だったでしょうね。でも、最大の疑問はそこじゃないわ。死刑囚をさっさと自分の手で裁きたいだけなら、わざわざこんな大掛かりな舞台を作って私たちを呼びつける必要はどこにもない。私たちは、何故ここに招かれたのかしら?」
この殺人ゲームに参加させられた探偵たちが最初から最も疑問に思っていたことを門谷が尋ねると、桃貫は深いため息をつき、ゆっくりと言葉を選ぶように言った。
桃貫「では……私からも質問しよう。名探偵諸君。君達は、我々警察のことをどう思っているかね?」
桃貫の突然の問いに、探偵たちは顔を見合わせる。警察のことをどう思うか。改めて問われると、すぐさま返答できる者は少ない。が、普段から警察と協力して捜査にあたっている真理は、彼女にしては堂々とした口調で答えた。
安西「私は、普段警察の要請を受けて、警察の皆さんと共に捜査に当たっています。顔見知りもたくさんおりますし、私の力だけで解決した事件は一つもないと言っても過言ではないと思っています」
桃貫「ふむ。安西探偵、たしかに君は県警と素晴らしい協力体制を築いていると聞く。全ての警察官を代表して、感謝しよう」
銀田二「私も、警察に知己は多いですし、警察から提供された情報を元に推理を進めることが多いですな」
水村「同じく。私のフィールドワークは、警察からの依頼によるものがほとんどです」
織田「警察との信頼関係は、探偵としての活動の上では欠くべからざるものだと考えておりますが」
桃貫「なるほど、織田探偵、銀田二探偵、水村准教授、君たちにも感謝しよう。では――例えば、川矢探偵、君はどうだ?」
唐突に話を振られた川矢は、険しかった表情からさらに眉間に皺を寄せる。
川矢「まあ、率直に言って、おつむが足りないと思っている。警察が行う単純な捜査では、知能犯が企てる高度に洗練された犯罪を解決に導くことはできないな」
桃貫「そうか。他の諸君はどうかな?」
門谷「あたしは……どうでもいいってところかしらね。犯人を法で裁くということに、元々あまり興味がないから」
糊口「私の場合、身内に警視庁の幹部がいるので情報を得る際には便利ですが、推理そのものは独自に行うことが多いですね」
樺川「強いて言えば、門谷先生に近い立場かもしれないですね、私は。できる限り自分の研究に没頭したいので、本来ならあまり関わりたくない、というのが正直なところです」
東條「警察は、私の分野とは永久に相容れない存在でしょうね。呪いとか霊とかいう話をしても、警察には鼻で笑われるだけでしょうし」
愚藤「お、俺は……たまにワイドショーとか呼ばれるせいか、なんか不祥事ばっかり起こしてる印象しかないっすね」
探偵たちがそれぞれの見解を述べ、まだ返答を終えていない西野園へ自然と視線が集まる。
彼女は冷徹と評するにも冷たすぎる、仮面のような無表情のまま言った。
西野園「私は川矢探偵に近い立場ですね。我々一般市民の安全のために、警察が日夜職務に励んでいることはもちろん理解しています。でも、私は一ミステリファンとして、足と科学と人力だけに頼った捜査は邪道だとも思っています。ルーチン化された捜査だけでは解決できない、深い洞察力を要する犯罪もこの世には存在する。洞察力という点において、警察の能力は著しく不足していると言わざるを得ません」
西野園の厳しい指摘に、桃貫は思わず苦笑を浮かべた。
桃貫「これは手厳しい。こういう意見が出ると予想していたとはいえ、面と向かって言われると堪えるものがあるな。しかし――探偵諸君。警察と良好な関係を築いている者であっても、大なり小なり、川矢くんや西野園くんと同じ見解を抱いているのではないかね?」
桃貫の問いかけに、頷く者こそいなかったものの、敢えて否定する者もいなかった。
桃貫「うむ、そうだろう。私の現役時代、刑事として様々な凶悪事件の捜査にあたる中で、君たちのような『名探偵』と呼ばれる人間に協力を求めたことが何度かあった。探偵たちは正に快刀乱麻を断つ名推理で事件を解決し、我々も大いに助けられたが、一方で鼻についたのが、我々に対する探偵たちの態度だ。皆が一様にそうだったとは言わないが、私たちの地道な捜査を小馬鹿にして、さも自分一人の力で解決に導いたかのような口ぶり。腹に据えかねるものがあったのは私だけではない。だからこそ、今回私はこれほど多くの仲間を集めることができたのだ」
川矢「ちょっと待て。探偵の態度が警察を軽んじるものだったことと、それに君たち警察が腹を立てたことまでは理解できる。だが、それが何故この殺人ゲームに繋がるんだ?」
川矢が問うと、桃貫はそれまでの重々しい表情から一転、不敵というより悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
桃貫「つまりこういうことだ……私たちは、君たち名探偵が我々のように汗を流してヒイコラ言いながら駆けずり回る姿を見たかったのさ」
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