聖魔騎士

黒狐白魔

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教師

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 見回りの任を終えると、空はすっかり薄暗くなっていた。
 街で出会った少女、さすがにあのままには出来ず、メアリと話し合い、とりあえず学園へとつれて帰ることにした。
 だが、少女は眠っており、歩けるはずもない。そこでメアリに協力してもらい、なんとか背負うと、俺たちは学園へ徒歩を進めた。

…   …   …

 街を出てから10分程時間がたつと、薄暗かった空が真っ暗な闇に変わった。
 見回りに行く前に渡されたライトがあったが、少女を背負っている状態では使うことができず、メアリにライトを出すように伝え、ライトで前方を照らしてもらう。だが、それでもあまり明るいとはいえない。
 30分をかけ、何とか学園にたどり着くと、任務の報告をするため、職員室へ向かった。

…   …   …

 職員室に着くと、室内には誰もいなかった。照明はついてるから誰かがいたのだと思うが……。とりあえず誰か来ないかと待っていると、スライド式のドアが開く音が聞こえた。
「おぉ、やっと帰っててきたか」
 入ってきたのは、少し太っているがそんなに太ってはいない、いわゆる平均的な体系の中年男性。
 クラス担任のサトウだ。その手には湯気が出ているティーカップが握られていた。
 サトウは俺たちを確認すると、ねぎらいの言葉を告げ、自分の席へとつく。
 俺たちはそれを確認するとサトウの前に立ち、報告を開始した。

…   …   …

「そうか、そんなことが……」

 報告を聞くとサトウも驚いたようで、報告を聞く前は笑顔でいた顔が、今では悲しそうな顔になっていた。
 だが、すぐにいつものような優しい顔に戻すと、「ごくろうさん」と告げる。
 俺はその一言がうれしく、俺たちはその言葉に「はい!」と返した。

「あ~、ところで」
「はい?」
「その子は、どうしたんだ?」
 そういうと、サトウは俺に背負われたまま眠っている少女を指差す。
 そのことに俺は正直に話すべきかどうか悩んだ。さすがに黒い箱の中で眠っていた。なんて信じてもらえるかわからなかったからだ。
 それを見ていたサトウは、少し首をかしげていた。が、すぐに表情を戻す。

「ま、いいや。お前たちのことだから誘拐とかではないだろう」
「……すみません」
「なに、教師は生徒を信じるもんだ」

 そう言い、サトウは笑顔になる。
 その言葉に礼を告げ、俺たちは職員室を後にした
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