僕は何度も

宮川 涙雨

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2、焦り

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10月18日…朝
テレビでは朝のニュースが始まっていた。
いかにも朝が来たと告げるように清々しい、ニュースキャスターの声と顔。
僕はテレビのリモコンを手にとるとdと書いてあるボタンを軽く押す。
ティトン という音と共に、開いた画面から昨夜のニュースの覧を確認した。
目に入ったのは、○○市××町の路地で通り魔にあった学生(17)が重体であるというニュース。
冷や汗が滲んだ。片手に持っていたマグカップを床に落としてしまう。
ゴッ という衝撃音の後に、軽い陶器の割れる音がリビングの中に響き渡った。
新聞を読んでいた父と、朝食の準備をしていた母の視線が一斉にこちらへと集まる。
「どうしたの!大丈夫?!」
母の問いかけ。僕は…無視をした。
急いで廊下の電話機までむかう。
掛けようとするももの、焦る指はなかなか言うことを聞かない。
3度目でやっと正確な番号へと掛かった。
後ろから父の低い声。
「なんだその態度はッ!」
電話は繋がらない。続いて別の番号へと掛け直す。
トゥルルルル…1回。
トゥルルルル…2回。
トゥルルルル…3回。
4回、5回、6回……
父がとうとうしびれを切らして、僕の肩をがしりと掴んだ。
「おいッ」
「黙っててくれ父さんッ!!」
初めて父へ反論をした。
父は僕がそう叫ぶと「何かあったのか…?」と一言呟いて手を引いた。
相変わらず電話は繋がらない。

13回、コール音が13回を越えたところで突如電話は繋がった。
電話の相手は幼馴染みの美夜(みや)だった。
○○市××町は僕の住んでいる町。
この小さな町に17才、僕と同い年の学生は…美夜しかいない。
「はい、山内です。」
「おはようございますおばさん、上田です。」
「あぁ、上田さん家の。」
電話に出たのは美夜の母だった。その声は美夜本人にとても似ている。
「あ、あの…美夜さん…家に居ますよね?」
「……」
短い沈黙。
受話器を落としそうになるほど手がじっとりと湿っている。
「元気…ですよね?」
僕はもう一度問い返す。
「元気…よ。」
僕は確信した。美夜が刺されたいうこと、そして死んではいないと言うこと。
「どこの病院ですか?」
               ・・・
1時間後、父と母にあらためて事情を話した僕は、教えてもらった△△△病院に来ていた。
「603号室はどこですか?」 
受付カウンターの看護師に問いかけると答えはすぐに返ってきた。603号室は個室らしい。
大きな音を出さないようにそっと扉をたたく。
扉に手をかけてゆっくりと横にスライドさせると、ほとんどの物が真っ白で統一された病室の奥に、美夜とその両親が見えた。

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