1 / 5
1、父
しおりを挟む
痛い。
強く掴まれた腕も、蹴られたお腹も、殴られた顔も。
身体中が鈍い痛みに襲われて、最近は自分のどこに痣や切り傷ができているか分からなくなってきた。
私の初めての相手は父親だ。あの日、父との約束を破って家に来なかった女の代わりにあの男は無理矢理私を抱いた。
それまで父が私に手を上げるのはしょっちゅうだったから殴られても特に何も思うことなんかなかった。そりゃあ痛いし殴られたくはなかったけれど、なんとなく諦めがついていたから。
けど…あの日は違った。怖かった。必死に抵抗して…。当たり前のことだ。それでも父の力には勝てっこなかった。
痛かった。自分のものではない何かが私の中に無理矢理入ろうとしてくる感覚がどうしようもなく怖かった。
気持ちいいだなんて一ミリも思わなくて、ただただ恐怖と痛みといろんな人に対する恨みだけが私を支配していった。
こんな酷いことをする父とか私を捨てた母とかあの香水臭い女とか、もはやそいつらに関係する人間全員だよね。
いつの間にか私は気を失ってしまっていて、目を覚ますと私は床に放置されたままだった。
身体中痛くて、乾いた私の血と父のモノが張り付いていた。それに…中にまだ何かが入っているような気がして吐き気がした。
ふと私の近くに無造作に置いてあった小さな箱には避妊薬が入っていて、初めて自分にアイツの子供ができるかもしれないという可能性を認識した。
子供なんかできてどうすんだって話だ。
もしアイツとの子供が出来たら…か……。
そうしたら自分の腹にナイフ突き刺してこの手で握り潰してやる。そのままあの男に見せつけてやるんだ。ぐちゃぐちゃになった子どもの残りを。
どんな顔をするだろうか。
まぁそんな事しないけど。
すぐに私は薬を飲んだ。子どもに罪はない。だから私が殺さなくていいように。
あれから二年。
今も父に殴られている。壁にぶつかって骨がきしんだ。
痛いなぁ。
(ッのクソガキ!顔見せんなっつってただろうがよッ!)
はいはい。出てけってね…。あー、外雨降ってんのになぁ。
玄関まで来たところで突然後ろから蹴られて勢いをつけたまま外へ転がり出た。
思い切りドアにぶち当たったせいで肩がズキズキと痛い。痣になるパターンな気がする。
コンクリートの地べたは有り得ないほど冷たくて、ビッチョリと濡れていた。
父がドアを閉めて鍵をかける音がする。あぁ、風邪ひくなぁこれは。
起き上がろうとして人の足があることに気がついた。
上を見あげると…そこには私とは正反対の真っ白な髪をした男が立っている。
…綺麗だった。
神だとか天使だとか信じたことはないけれど、そのくらい綺麗だった。
微かに見える表情は無表情。私をどんなふうに見てるんだろう。可哀想だと哀れんでる?誰だろうかと疑問に思ってる?汚いと見下してる?
「……何?」
その無表情から何かを読み取るのは不可能だった。
哀れまれてると思ったら腹が立つ。訳もなくぶん殴ってやろうかと思うくらいに。
あ。あるか。腹がたったってことが理由だわ。
そんな事を考えているというのにそいつは「いきなり追い出されてるからただ見物してるんだー」ってなことを言いやがった。
さっきの三つの選択肢の中にはない答えだけれどこれも十分ムカつく。
私は立ち上がって一度睨んでからいつものようにドアの前に寄りかかって体育座りをした。
男はそれ以上何も言わずちらりと一瞬私を見ただけ。
その後二秒もたたないうちに私の前を通って階段を下りていった。
あー。
「寒い…」
夏なのにどうしてこんなに寒い思いしなくちゃいけないんだろ。せめてタオルとかだけでもこっそり持ってくればよかった。
そんな事したら泥棒だとかなんだとか言われて半殺しかな?…いっそ殺してくれればいいのに。
まぁ、凍死する寒さじゃないし…少し寝よう。眠って起きたら朝が来てるといいな。夜中に目覚めるなんてのは寂しいし…ちょっと…怖いから。
強く掴まれた腕も、蹴られたお腹も、殴られた顔も。
身体中が鈍い痛みに襲われて、最近は自分のどこに痣や切り傷ができているか分からなくなってきた。
私の初めての相手は父親だ。あの日、父との約束を破って家に来なかった女の代わりにあの男は無理矢理私を抱いた。
それまで父が私に手を上げるのはしょっちゅうだったから殴られても特に何も思うことなんかなかった。そりゃあ痛いし殴られたくはなかったけれど、なんとなく諦めがついていたから。
けど…あの日は違った。怖かった。必死に抵抗して…。当たり前のことだ。それでも父の力には勝てっこなかった。
痛かった。自分のものではない何かが私の中に無理矢理入ろうとしてくる感覚がどうしようもなく怖かった。
気持ちいいだなんて一ミリも思わなくて、ただただ恐怖と痛みといろんな人に対する恨みだけが私を支配していった。
こんな酷いことをする父とか私を捨てた母とかあの香水臭い女とか、もはやそいつらに関係する人間全員だよね。
いつの間にか私は気を失ってしまっていて、目を覚ますと私は床に放置されたままだった。
身体中痛くて、乾いた私の血と父のモノが張り付いていた。それに…中にまだ何かが入っているような気がして吐き気がした。
ふと私の近くに無造作に置いてあった小さな箱には避妊薬が入っていて、初めて自分にアイツの子供ができるかもしれないという可能性を認識した。
子供なんかできてどうすんだって話だ。
もしアイツとの子供が出来たら…か……。
そうしたら自分の腹にナイフ突き刺してこの手で握り潰してやる。そのままあの男に見せつけてやるんだ。ぐちゃぐちゃになった子どもの残りを。
どんな顔をするだろうか。
まぁそんな事しないけど。
すぐに私は薬を飲んだ。子どもに罪はない。だから私が殺さなくていいように。
あれから二年。
今も父に殴られている。壁にぶつかって骨がきしんだ。
痛いなぁ。
(ッのクソガキ!顔見せんなっつってただろうがよッ!)
はいはい。出てけってね…。あー、外雨降ってんのになぁ。
玄関まで来たところで突然後ろから蹴られて勢いをつけたまま外へ転がり出た。
思い切りドアにぶち当たったせいで肩がズキズキと痛い。痣になるパターンな気がする。
コンクリートの地べたは有り得ないほど冷たくて、ビッチョリと濡れていた。
父がドアを閉めて鍵をかける音がする。あぁ、風邪ひくなぁこれは。
起き上がろうとして人の足があることに気がついた。
上を見あげると…そこには私とは正反対の真っ白な髪をした男が立っている。
…綺麗だった。
神だとか天使だとか信じたことはないけれど、そのくらい綺麗だった。
微かに見える表情は無表情。私をどんなふうに見てるんだろう。可哀想だと哀れんでる?誰だろうかと疑問に思ってる?汚いと見下してる?
「……何?」
その無表情から何かを読み取るのは不可能だった。
哀れまれてると思ったら腹が立つ。訳もなくぶん殴ってやろうかと思うくらいに。
あ。あるか。腹がたったってことが理由だわ。
そんな事を考えているというのにそいつは「いきなり追い出されてるからただ見物してるんだー」ってなことを言いやがった。
さっきの三つの選択肢の中にはない答えだけれどこれも十分ムカつく。
私は立ち上がって一度睨んでからいつものようにドアの前に寄りかかって体育座りをした。
男はそれ以上何も言わずちらりと一瞬私を見ただけ。
その後二秒もたたないうちに私の前を通って階段を下りていった。
あー。
「寒い…」
夏なのにどうしてこんなに寒い思いしなくちゃいけないんだろ。せめてタオルとかだけでもこっそり持ってくればよかった。
そんな事したら泥棒だとかなんだとか言われて半殺しかな?…いっそ殺してくれればいいのに。
まぁ、凍死する寒さじゃないし…少し寝よう。眠って起きたら朝が来てるといいな。夜中に目覚めるなんてのは寂しいし…ちょっと…怖いから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる