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2、人の家
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鉄製のサビだらけの階段を上がってくる音が微かに聞こえた。
いざ寝ようと思ってもこう寒くちゃ眠れるものも眠れない。
さっきの人だろうか?また腹立つこと言ったら今度こそぶん殴ってやる。でもあの人私よりずっと大きかったからなぁ。きっと負けちゃう。
私は顔を上げずに寝たふりをしていた。やっぱり何も言わずに私の前を通って自分の家のドアを開けた。
まるで私なんか居ないものみたいに。それが普通なんだろうけどさ。
「家、入れてもらわないんですか?」
ふと聞こえた男の声に顔を上げた。
は?入れてもらう?小さな子どもみたいに泣き叫べっていうわけ?そんな事したら…そしたらさ、もっと痛いことされちゃうんだよ。
「中学生ってのはまだ成長期なの知ってます?だからちゃんと家で寝た方がいいで……」
「は?」
もう我慢がきかなかった。中学生?ふざけんな、こちとら同級生より大人になってるっつーの。
あ、私今うまいこと言ったかも。
「私もう高二ですけど?」
怒ったかな?
先ほどと同じように無表情のまま動かない。だから私もじっと見るだけで何も言わなかった。
「俺の家…入っときますか?寒いでしょう」
え…。
「あなた変態なの?」
心の中で思っただけだったはずの言葉がいつの間にか口から出てしまっていた。
どうする?逃げるか…やっぱ怒らせちゃったよなぁ今のは流石に。
「変た…嫌なら別に、そうしていたいんでしたらそうしててください」
何それ、あんた今どんな心情なんだよ。表情が読めないせいで感情が分からない。
でも動揺した様子を見せたら負な気がして、隠れてはっきりとしない男性の目を見たままそらさなかった。
「条件は?交換条件があった方が安心できるし」
とにかく返答しとこう。
「絵を、君の絵を…描きたい」
そんな条件を出されるなんて全然予想してなかった。普通の人なら言わないだろうからね。そりゃ仕方ないや。
「絵?あぁ、だから絵の具だらけのエプロンしてんだ」
絵かぁ、画家なんだろうか?それにしては若すぎる気もする。若き天才ってやつ?
腹立つ。いい家で育ったの?ふざけんな。
「一日じゃ完成しない、だからいつでもいい。気が向いたら俺の家に来て絵を描かせてほしい。本当、時間なんかはあんたの自由でいいから。」
一日じゃないんだ。…てか絵って何すればいいんだろ。あ、脱げってことか。ヌードとかって言うやつ?あの類いってさ、エロさは求めてないとか純粋なものだとか言ってるけど今のエロ漫画とたいして変わんないよね。結局のところ女の人は素っ裸だしそれ見て画家は書いてんだし。
ただの変態の言い訳だよ。
ま、私の意見だけどさ。
いいよ。裸くらい見せてやっても。痣と傷だらけの汚い体でいいならさ。
その気になれば一発くらいヤらせてやってもいい。どうせ初めてがあんなだったんだもん。今更大切にするもんもないし…。
「顔、ちゃんと見せて。知っておきたいから」
そう言うと男性は私の前にしゃがんだ後、前髪をかきあげて顔を見せてくれた。
男って言うほど大人な顔じゃなかった。私の同級生達みたいな顔。若いや。なんていうかお兄さんって感じ。
「へー、あんたそんなにもモッサイくせに顔イケてるとかムカつく」
一応感想を言っておいた。
「鍵」
開けてたとこ見てたくせに何故かそんなことを聞いてちょっと恥ずかしかった。
「開いてますよ」
だろうね!知ってるよ!
「家主があけてよ」
鍵って聞いた理由みたいにいってみたけど…即興で思いついたんだってバレたかな?
「どうぞ」
私はそのままさっさと中に入った。
知らない男の人の家。男の人なのになんかいい匂いがする家だった。
「あなた案外きれいにしてるのね」
本当に無駄なものがない。ソファーとテーブルとテレビとかそんなものしかない。絵の具と絵が数枚散らばってはいるけれど。
「まぁ、大した物置いてないですからね。あの、風呂たまってるんで入ったらどうですか?」
お風呂…あ、入りたい。ってかやっぱ目的そっちじゃん。嘘つき。
「ラブホに女子高生連れ込んだおじさんみたい」
そう笑って嫌味を言ってやった。
私の長所は笑顔だから。
「鍵開けてますし、手を出すつもりもありません」と答えるお兄さん。
嘘つかなくていいのに。
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
そうだよ。どうせなんだから与えられるものは拒まずに受け取ろう。
お風呂場は家とは比べ物にならないくらいキレイに掃除されていて、なんだか少し気を使ってしまった。
湯船使ってもいいかな?…いいや。入っちゃお。
途中扉の前にお兄さんの影が見えた時はマジかって思った。早いだろって。いくら何でもあがってくるまで待ってくれたっていいのに。それともそういうシチュエーションが好きな人なわけ?
「のぞきー?」
笑って平気なふりをした。少し怖いけど、弱った所なんて見られたくない。
でもお兄さんは一度ため息をついてからパジャマとタオルです。そう言ってリビングへ戻っていった。常識くらいはある人だった。
そういや私下着ないじゃん。上はいいとして下を二回使うのはちょっと…。
さっき脱いだ服の中から下着の下だけを風呂場で洗った。後は髪を乾かすついでに一緒に乾かして終わり。
さっきまでの寒さが嘘みたいに暖かくて、髪からはこの家の匂いがした。
いざ寝ようと思ってもこう寒くちゃ眠れるものも眠れない。
さっきの人だろうか?また腹立つこと言ったら今度こそぶん殴ってやる。でもあの人私よりずっと大きかったからなぁ。きっと負けちゃう。
私は顔を上げずに寝たふりをしていた。やっぱり何も言わずに私の前を通って自分の家のドアを開けた。
まるで私なんか居ないものみたいに。それが普通なんだろうけどさ。
「家、入れてもらわないんですか?」
ふと聞こえた男の声に顔を上げた。
は?入れてもらう?小さな子どもみたいに泣き叫べっていうわけ?そんな事したら…そしたらさ、もっと痛いことされちゃうんだよ。
「中学生ってのはまだ成長期なの知ってます?だからちゃんと家で寝た方がいいで……」
「は?」
もう我慢がきかなかった。中学生?ふざけんな、こちとら同級生より大人になってるっつーの。
あ、私今うまいこと言ったかも。
「私もう高二ですけど?」
怒ったかな?
先ほどと同じように無表情のまま動かない。だから私もじっと見るだけで何も言わなかった。
「俺の家…入っときますか?寒いでしょう」
え…。
「あなた変態なの?」
心の中で思っただけだったはずの言葉がいつの間にか口から出てしまっていた。
どうする?逃げるか…やっぱ怒らせちゃったよなぁ今のは流石に。
「変た…嫌なら別に、そうしていたいんでしたらそうしててください」
何それ、あんた今どんな心情なんだよ。表情が読めないせいで感情が分からない。
でも動揺した様子を見せたら負な気がして、隠れてはっきりとしない男性の目を見たままそらさなかった。
「条件は?交換条件があった方が安心できるし」
とにかく返答しとこう。
「絵を、君の絵を…描きたい」
そんな条件を出されるなんて全然予想してなかった。普通の人なら言わないだろうからね。そりゃ仕方ないや。
「絵?あぁ、だから絵の具だらけのエプロンしてんだ」
絵かぁ、画家なんだろうか?それにしては若すぎる気もする。若き天才ってやつ?
腹立つ。いい家で育ったの?ふざけんな。
「一日じゃ完成しない、だからいつでもいい。気が向いたら俺の家に来て絵を描かせてほしい。本当、時間なんかはあんたの自由でいいから。」
一日じゃないんだ。…てか絵って何すればいいんだろ。あ、脱げってことか。ヌードとかって言うやつ?あの類いってさ、エロさは求めてないとか純粋なものだとか言ってるけど今のエロ漫画とたいして変わんないよね。結局のところ女の人は素っ裸だしそれ見て画家は書いてんだし。
ただの変態の言い訳だよ。
ま、私の意見だけどさ。
いいよ。裸くらい見せてやっても。痣と傷だらけの汚い体でいいならさ。
その気になれば一発くらいヤらせてやってもいい。どうせ初めてがあんなだったんだもん。今更大切にするもんもないし…。
「顔、ちゃんと見せて。知っておきたいから」
そう言うと男性は私の前にしゃがんだ後、前髪をかきあげて顔を見せてくれた。
男って言うほど大人な顔じゃなかった。私の同級生達みたいな顔。若いや。なんていうかお兄さんって感じ。
「へー、あんたそんなにもモッサイくせに顔イケてるとかムカつく」
一応感想を言っておいた。
「鍵」
開けてたとこ見てたくせに何故かそんなことを聞いてちょっと恥ずかしかった。
「開いてますよ」
だろうね!知ってるよ!
「家主があけてよ」
鍵って聞いた理由みたいにいってみたけど…即興で思いついたんだってバレたかな?
「どうぞ」
私はそのままさっさと中に入った。
知らない男の人の家。男の人なのになんかいい匂いがする家だった。
「あなた案外きれいにしてるのね」
本当に無駄なものがない。ソファーとテーブルとテレビとかそんなものしかない。絵の具と絵が数枚散らばってはいるけれど。
「まぁ、大した物置いてないですからね。あの、風呂たまってるんで入ったらどうですか?」
お風呂…あ、入りたい。ってかやっぱ目的そっちじゃん。嘘つき。
「ラブホに女子高生連れ込んだおじさんみたい」
そう笑って嫌味を言ってやった。
私の長所は笑顔だから。
「鍵開けてますし、手を出すつもりもありません」と答えるお兄さん。
嘘つかなくていいのに。
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
そうだよ。どうせなんだから与えられるものは拒まずに受け取ろう。
お風呂場は家とは比べ物にならないくらいキレイに掃除されていて、なんだか少し気を使ってしまった。
湯船使ってもいいかな?…いいや。入っちゃお。
途中扉の前にお兄さんの影が見えた時はマジかって思った。早いだろって。いくら何でもあがってくるまで待ってくれたっていいのに。それともそういうシチュエーションが好きな人なわけ?
「のぞきー?」
笑って平気なふりをした。少し怖いけど、弱った所なんて見られたくない。
でもお兄さんは一度ため息をついてからパジャマとタオルです。そう言ってリビングへ戻っていった。常識くらいはある人だった。
そういや私下着ないじゃん。上はいいとして下を二回使うのはちょっと…。
さっき脱いだ服の中から下着の下だけを風呂場で洗った。後は髪を乾かすついでに一緒に乾かして終わり。
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