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3、絵
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お兄さんの用意したパジャマはやっぱり男の人用で、そもそも体の小さな私には異常なまでに大きかった。
ズボンの裾なんていくらまげてもズリズリと引きずってしまう。
「適当にしてて構いませんよ、その姿を描くので。あ、動いてもらっても結構です。」
「わかった。歩いてもいいの?」
「どうぞ?」
本当に絵を描き出したお兄さんはやっぱり無表情。真剣なのかどうなのかすらよくわからない。
私は置いてあったコンビニの袋から勝手にケーキを取り出して食べた。
甘くて美味しい。
あったかい家。美味しい食べ物。普通の家ってこんななのかな。もうまともだった頃のお父さんの記憶なんてないからわからないや。
お兄さんは元が無口なのか何も話さない。
「ねぇ」
あんまりにも沈黙が続くものだから自分から話しかけてみた。
「私の家、いっつも声聞こえてるでしょ」
「まぁ、聞こえます」
だろうね。あんだけ暴れて聞こえてないわけないよ。ここ結構壁薄いし。
「もしさ、また私が殴られてるときにあんた家にいるんだったら壁叩いてくれない?そしたら…来てあげるから」
家にいるよりマシだと思った。
手をあげられてまた無理矢理されるよりも優しくしてくれる人の方がずっといいから。
あれから父親に三回同じことをされそうになった。その度に裸足で外に逃げて、次は逃げられるか分かったものじゃない。
それなら、普段は手を挙げない人と一緒にいる方が幾分かマシでしょ?
「いいですよ。わかりました」
男の人っていうのは最低だ。最低で…大嫌いだ。
お兄さんは学校に通ってるのかなんてことを聞いてきた。もちろん通ってる。そこだけは父に礼が言える。学費を払ってはくれてるから。
それに、学校は好き。友達は多いし、そこだけが救いだと思ってる。これでいじめられたりなんかしちゃったら私自殺しちゃうよ。
「ねぇ、私ん家うるさい?」
「うるさいですよ」
そうなんだ。
「心配してくれたりした?」
お兄さんはすぐには答えなかった。
「少しは」
少し…ね。嘘つけ。今の間は何だったんだっての!
「少しかぁ」
それでもいいよ。
私は笑ったつもりだったんだけどうまく笑えなかった。失敗しちゃったよ、もう。
ちらっとお兄さんを見た時にはもう既に絵を描き進めはじめていた。
「ねぇ」
話しかけるとこの人はちゃんとこっちを見てくれる。律儀な人…。
ちなみにお兄さんが画用紙みたいなのを見ているうちにズボンを脱いだ。
だってするならさっさとして欲しいんだもん。
嫌なことはさっさと終わらせたい。それに、わざわざ物事を遠回りさせるのは好きじゃないから。
「足、こっちの方がよく見えるでしょ?」
お兄さんはこれまた無表情のまま私を見ていた。
「襲っちゃう?いいよ、別に処女じゃないし」
ほら、だから遠慮せずにどうぞ。これって犯罪になっちゃったりするのかな?まぁ、誰にも言う気なんかないからバレないけどさ。
「初めて、誰だと思う?」
ちょっと意地悪な話。
お兄さんはまた絵に視線を戻した。
「彼氏ですか?」
「えー、そんなに興味なさそうに答えなくてもいいじゃん」
私の過去には興味ないですーって?いいよ。それでも話すから。別に哀れんでほしいわけじゃない、ていうかそれは逆に腹が立つ。でもさ、ちょっと邪魔したかったんだ。いたずらごころってやつかな?
「初めてはね、お父さん」
そういった瞬間、お兄さんがこちらを見た。
「お、さすがの無表情おにーさんも驚いた?」
別にお兄さんの表情が変わったわけじゃないけどなんとなくそんな気がした。
「女の人がね、お父さんの愛人ってやつかな、あの日の夜は来なかったの。」
堂々と話してやった。ねぇ、今どんな気持ち?
「もういいです」
お兄さんは話を切った。
最初は意地悪するつもりだったのに何かもう…泣いちゃいそう。
「……っ、痛かったなぁ…」
笑わなきゃ、そう思うのにうまく顔が動いてくれない。
お兄さんはここで初めて手から筆をはなした。
「だからさ、いいよ。ベッドがいいな。また床でするのは痛い……から。それともここがいい?」
どうだっていい。もうどうにでもなっちゃえ。
だけどさ、痛いのは…やだなぁ。
ズボンの裾なんていくらまげてもズリズリと引きずってしまう。
「適当にしてて構いませんよ、その姿を描くので。あ、動いてもらっても結構です。」
「わかった。歩いてもいいの?」
「どうぞ?」
本当に絵を描き出したお兄さんはやっぱり無表情。真剣なのかどうなのかすらよくわからない。
私は置いてあったコンビニの袋から勝手にケーキを取り出して食べた。
甘くて美味しい。
あったかい家。美味しい食べ物。普通の家ってこんななのかな。もうまともだった頃のお父さんの記憶なんてないからわからないや。
お兄さんは元が無口なのか何も話さない。
「ねぇ」
あんまりにも沈黙が続くものだから自分から話しかけてみた。
「私の家、いっつも声聞こえてるでしょ」
「まぁ、聞こえます」
だろうね。あんだけ暴れて聞こえてないわけないよ。ここ結構壁薄いし。
「もしさ、また私が殴られてるときにあんた家にいるんだったら壁叩いてくれない?そしたら…来てあげるから」
家にいるよりマシだと思った。
手をあげられてまた無理矢理されるよりも優しくしてくれる人の方がずっといいから。
あれから父親に三回同じことをされそうになった。その度に裸足で外に逃げて、次は逃げられるか分かったものじゃない。
それなら、普段は手を挙げない人と一緒にいる方が幾分かマシでしょ?
「いいですよ。わかりました」
男の人っていうのは最低だ。最低で…大嫌いだ。
お兄さんは学校に通ってるのかなんてことを聞いてきた。もちろん通ってる。そこだけは父に礼が言える。学費を払ってはくれてるから。
それに、学校は好き。友達は多いし、そこだけが救いだと思ってる。これでいじめられたりなんかしちゃったら私自殺しちゃうよ。
「ねぇ、私ん家うるさい?」
「うるさいですよ」
そうなんだ。
「心配してくれたりした?」
お兄さんはすぐには答えなかった。
「少しは」
少し…ね。嘘つけ。今の間は何だったんだっての!
「少しかぁ」
それでもいいよ。
私は笑ったつもりだったんだけどうまく笑えなかった。失敗しちゃったよ、もう。
ちらっとお兄さんを見た時にはもう既に絵を描き進めはじめていた。
「ねぇ」
話しかけるとこの人はちゃんとこっちを見てくれる。律儀な人…。
ちなみにお兄さんが画用紙みたいなのを見ているうちにズボンを脱いだ。
だってするならさっさとして欲しいんだもん。
嫌なことはさっさと終わらせたい。それに、わざわざ物事を遠回りさせるのは好きじゃないから。
「足、こっちの方がよく見えるでしょ?」
お兄さんはこれまた無表情のまま私を見ていた。
「襲っちゃう?いいよ、別に処女じゃないし」
ほら、だから遠慮せずにどうぞ。これって犯罪になっちゃったりするのかな?まぁ、誰にも言う気なんかないからバレないけどさ。
「初めて、誰だと思う?」
ちょっと意地悪な話。
お兄さんはまた絵に視線を戻した。
「彼氏ですか?」
「えー、そんなに興味なさそうに答えなくてもいいじゃん」
私の過去には興味ないですーって?いいよ。それでも話すから。別に哀れんでほしいわけじゃない、ていうかそれは逆に腹が立つ。でもさ、ちょっと邪魔したかったんだ。いたずらごころってやつかな?
「初めてはね、お父さん」
そういった瞬間、お兄さんがこちらを見た。
「お、さすがの無表情おにーさんも驚いた?」
別にお兄さんの表情が変わったわけじゃないけどなんとなくそんな気がした。
「女の人がね、お父さんの愛人ってやつかな、あの日の夜は来なかったの。」
堂々と話してやった。ねぇ、今どんな気持ち?
「もういいです」
お兄さんは話を切った。
最初は意地悪するつもりだったのに何かもう…泣いちゃいそう。
「……っ、痛かったなぁ…」
笑わなきゃ、そう思うのにうまく顔が動いてくれない。
お兄さんはここで初めて手から筆をはなした。
「だからさ、いいよ。ベッドがいいな。また床でするのは痛い……から。それともここがいい?」
どうだっていい。もうどうにでもなっちゃえ。
だけどさ、痛いのは…やだなぁ。
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