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21、熱
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重かった。教科書を置いてきたとはいえPCにノートに弁当にとその他もろもろ詰め込まれたバックは、小ぶりなわりにかなり重量感があって…。
正直なところかなり体力を消耗することになってしまった。
明日は筋肉痛になるかもしれない。そこまでひ弱なわけじゃないけど気持ち的に。
「…姉さん」
(んー?)
「テレビ付けようか」
(そーだなぁ)
「嫌ぁぁぁぁぁぁっヤダァッ!」
「(は?)」
突然寝室から聞こえてきた声に俺と姉さんは急いで彼女の元へ向かった。
ゴッ。
(何今の音っ)
鈍い音。
扉を開けると彼女がベッドの下に落ちていた。
(大丈夫!?)
「やァァァッ!」
あまりの暴れように姉も手が付けられない様子だった。
夢でも見たのだろうか?幻覚を見ているのだろうか?
怯える彼女の目は焦点がうまく合っていない。
「姉さん、代わって」
この方法は本当は良くないのかもしれないし間違っているのかもしれない。けれど俺は一月前と同じように無理矢理彼女を抱きしめた。
勿論彼女は俺の腕の中で無茶苦茶に暴れている。
「ごめんなさ、イヤッアアァァァッ」
訳もなく謝り続ける彼女に俺も姉さんも何も声をかけなかった。
いや…かけられなかったんだ。
あれから三十分近く彼女は暴れ続けた。
彼女はというと俺のシャツにしがみついたまま寝ている。
(ビックリした…)
「俺もだよ」
シャツから彼女を引き話そうと試みるも、なかなか上手くいかない。
結局俺は彼女を抱いたまま胡座を書いて壁にもたれかかった。
大きな赤ん坊を抱いている気分だ。
(はいこれ)
姉が運んで来た布団で彼女を包む。
(私はそろそろ帰るけど大丈夫?何かわかんない事あったら電話して?)
「大丈夫、用事あるんでしょ?後は自分でやるよ」
姉は一度俺の頭を撫でてからバタバタと急いで帰っていった。
「…早く良くなって下さい、皆心配してるんですから」
静かになると、外から虫の声が聞こえてくる。ここ最近秋の虫が鳴くようになった。
この調子で気温も下がってくれれば良いのだけれど…。
俺は夏より冬の方が幾分か好ましい、比較的静かで何より着込めば暖かいから。夏はいくら脱いでも暑いだろ?
そんな事を色々と考えているうちに寝落ちてしまったらしい、次に目が覚めたときには夜中の二時を過ぎていた。
彼女はぐっすりと眠っている。熱はだいぶ下がっているようだ。
俺も朝まで眠ろう。そうしてもう一度目を閉じた。
ピピピッピピピッピピピッ……。
……。
「ん…」
あー、アラームを消すのを忘れていた。
布団の中の彼女もモソモソと動き出した。
「ふぁー、え…えっうわぁッ」
目を覚ました彼女が一気に俺から距離をとる。
「おはようございます」
彼女は何が何だかわかっていないと言った様子で自分の髪をくしゃりと鷲掴みにしたまま動かない。
「昨日暴れ出したんで無理矢理捕まえて寝かせました。あと今日学校行きます?」
「や、行くよ?行くけどさ……うわぁ、ごめんおにーさん」
「大丈夫ですよ」
そう言いながら立ちあがろうとした瞬間。
「ッ!?」
腰と膝と首、というか身体のあちこちに激痛が走った。一晩中同じ体勢だったせいで身体中バキバキだ。
「…だいじょう…ぶ?」
「…はい」
あー、痛い。
「朝ご飯私作るよ」
「いや、おかゆがあるのでとりあえずそれを食べましょう」
「おっけ、じゃあ先に温めてまってる」
そう言って先に彼女は寝室を出ていった。
俺は時間をかけて立ち上がると、一旦思い切り伸びをした。やはり骨と関節がバキバキと悲鳴を上げる。
リビングで準備を始めていた彼女は昨日の出来事が嘘のようにテキパキと動いて、いつも通りの時間に家を出ていった。
俺も大学に行かなくてはならない。
あ。そういや弁当を持っていかなかったけれどどうするのだろう。買っていくにしても金は?持っているのだろうか?
俺は急いで大学用のバックを持って彼女を追いかけた。
正直なところかなり体力を消耗することになってしまった。
明日は筋肉痛になるかもしれない。そこまでひ弱なわけじゃないけど気持ち的に。
「…姉さん」
(んー?)
「テレビ付けようか」
(そーだなぁ)
「嫌ぁぁぁぁぁぁっヤダァッ!」
「(は?)」
突然寝室から聞こえてきた声に俺と姉さんは急いで彼女の元へ向かった。
ゴッ。
(何今の音っ)
鈍い音。
扉を開けると彼女がベッドの下に落ちていた。
(大丈夫!?)
「やァァァッ!」
あまりの暴れように姉も手が付けられない様子だった。
夢でも見たのだろうか?幻覚を見ているのだろうか?
怯える彼女の目は焦点がうまく合っていない。
「姉さん、代わって」
この方法は本当は良くないのかもしれないし間違っているのかもしれない。けれど俺は一月前と同じように無理矢理彼女を抱きしめた。
勿論彼女は俺の腕の中で無茶苦茶に暴れている。
「ごめんなさ、イヤッアアァァァッ」
訳もなく謝り続ける彼女に俺も姉さんも何も声をかけなかった。
いや…かけられなかったんだ。
あれから三十分近く彼女は暴れ続けた。
彼女はというと俺のシャツにしがみついたまま寝ている。
(ビックリした…)
「俺もだよ」
シャツから彼女を引き話そうと試みるも、なかなか上手くいかない。
結局俺は彼女を抱いたまま胡座を書いて壁にもたれかかった。
大きな赤ん坊を抱いている気分だ。
(はいこれ)
姉が運んで来た布団で彼女を包む。
(私はそろそろ帰るけど大丈夫?何かわかんない事あったら電話して?)
「大丈夫、用事あるんでしょ?後は自分でやるよ」
姉は一度俺の頭を撫でてからバタバタと急いで帰っていった。
「…早く良くなって下さい、皆心配してるんですから」
静かになると、外から虫の声が聞こえてくる。ここ最近秋の虫が鳴くようになった。
この調子で気温も下がってくれれば良いのだけれど…。
俺は夏より冬の方が幾分か好ましい、比較的静かで何より着込めば暖かいから。夏はいくら脱いでも暑いだろ?
そんな事を色々と考えているうちに寝落ちてしまったらしい、次に目が覚めたときには夜中の二時を過ぎていた。
彼女はぐっすりと眠っている。熱はだいぶ下がっているようだ。
俺も朝まで眠ろう。そうしてもう一度目を閉じた。
ピピピッピピピッピピピッ……。
……。
「ん…」
あー、アラームを消すのを忘れていた。
布団の中の彼女もモソモソと動き出した。
「ふぁー、え…えっうわぁッ」
目を覚ました彼女が一気に俺から距離をとる。
「おはようございます」
彼女は何が何だかわかっていないと言った様子で自分の髪をくしゃりと鷲掴みにしたまま動かない。
「昨日暴れ出したんで無理矢理捕まえて寝かせました。あと今日学校行きます?」
「や、行くよ?行くけどさ……うわぁ、ごめんおにーさん」
「大丈夫ですよ」
そう言いながら立ちあがろうとした瞬間。
「ッ!?」
腰と膝と首、というか身体のあちこちに激痛が走った。一晩中同じ体勢だったせいで身体中バキバキだ。
「…だいじょう…ぶ?」
「…はい」
あー、痛い。
「朝ご飯私作るよ」
「いや、おかゆがあるのでとりあえずそれを食べましょう」
「おっけ、じゃあ先に温めてまってる」
そう言って先に彼女は寝室を出ていった。
俺は時間をかけて立ち上がると、一旦思い切り伸びをした。やはり骨と関節がバキバキと悲鳴を上げる。
リビングで準備を始めていた彼女は昨日の出来事が嘘のようにテキパキと動いて、いつも通りの時間に家を出ていった。
俺も大学に行かなくてはならない。
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