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アルカンシエルの港街
歌うたいの猫−1
「ねぇねぇ、ルカにいちゃんも、うちらといっしょに、人間のたまご、探そうよ!」
ロロが、ルカの腕を持って、ねだった。
「人間のたまご? そんなものを探しに、船着場まで来たのか、ロロ」
「だって、ジルにいちゃんが、人間のたまごを見付けたところに連れて行ってくれるって、言ったんだもん」
ルカは、ジルを見た。ジルは、肩をちょっとすくめた。
ララが、ルカのもう一方の腕をつかむ。
「探す人手は、多い方がいいよ。歓迎のお歌がすんだんだから、ルカにいちゃんも、うちらの自由研究、手伝ってよぉ」
「観念した方がいい、ルカ。こいつらに取っ捕まったら最後だ。もう、逃げられないぞ」
「なによぉ、うちらをアリ地獄みたいに」
「仕方がないなあ。わかったよ、ララ。で、どこまで行くんだ?」
「ジルにいちゃん、ここから、どっちに行くの?」
「もう少し先だ。船着場から出た岩場。洞窟のある辺りだ」
「わかった! 早く行こう!」
「リンちゃんも早く、早く」
三人の女の子たちはリンを急き立てて、岩場の方に走って行った。
子どもたちの後に付いて行きながら、ルカがジルに言った。
「ぼくは、あの子の舟が着いたときのことを、何一つ覚えていないんだ。あの子に会ったのも、今日が初めてだ」
「あの子って、リンのこと?」
「それ以外、誰がいる」
ルカは不機嫌な顔で、女の子たちと駆けて行くリンの後ろ姿を見ている。
ルカが『砂時計屋のリン』のことを初めて知ったのは、例の噂話でだった。
ルカだけではなく、街の住民たちは誰一人として、リンの姿を見たことがない。リンの顔を知っているのは、砂時計屋のおじいと丘の上の学校の先生ぐらいだった。
ただ、リンの名前だけは、その噂のせいで街中の誰もが知っていた。あまりにも不吉で悍ましい噂話に、リンという少年が本当に実在するのかどうか、ルカは半信半疑だった。
そもそも、この街に『歌うたいの猫』のルカが出迎えなかった子どもが存在すること自体、信じられなかった。今、こうして、リンの姿を目の前にしてさえ、何かの間違いか手違いだとしか思えなかった。
ロロが、ルカの腕を持って、ねだった。
「人間のたまご? そんなものを探しに、船着場まで来たのか、ロロ」
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ルカは、ジルを見た。ジルは、肩をちょっとすくめた。
ララが、ルカのもう一方の腕をつかむ。
「探す人手は、多い方がいいよ。歓迎のお歌がすんだんだから、ルカにいちゃんも、うちらの自由研究、手伝ってよぉ」
「観念した方がいい、ルカ。こいつらに取っ捕まったら最後だ。もう、逃げられないぞ」
「なによぉ、うちらをアリ地獄みたいに」
「仕方がないなあ。わかったよ、ララ。で、どこまで行くんだ?」
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「わかった! 早く行こう!」
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三人の女の子たちはリンを急き立てて、岩場の方に走って行った。
子どもたちの後に付いて行きながら、ルカがジルに言った。
「ぼくは、あの子の舟が着いたときのことを、何一つ覚えていないんだ。あの子に会ったのも、今日が初めてだ」
「あの子って、リンのこと?」
「それ以外、誰がいる」
ルカは不機嫌な顔で、女の子たちと駆けて行くリンの後ろ姿を見ている。
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ルカだけではなく、街の住民たちは誰一人として、リンの姿を見たことがない。リンの顔を知っているのは、砂時計屋のおじいと丘の上の学校の先生ぐらいだった。
ただ、リンの名前だけは、その噂のせいで街中の誰もが知っていた。あまりにも不吉で悍ましい噂話に、リンという少年が本当に実在するのかどうか、ルカは半信半疑だった。
そもそも、この街に『歌うたいの猫』のルカが出迎えなかった子どもが存在すること自体、信じられなかった。今、こうして、リンの姿を目の前にしてさえ、何かの間違いか手違いだとしか思えなかった。
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