歌うたいの猫

水玉猫

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ひまわり

夏のある日Ⅰ

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 それでは、ここで、また地上の船着場に戻ってみましょう。
 ひとりの渡し守が、しきりに地上からの道を気にしています。
 どうやら、その船の乗客が出航時間になっても、やってこないようなのです。



  ***



 船着き場では、虹の橋へ向かう涙色の船が、次々に旅立っていきます。

 でも、いつまでたっても、出発する様子のない船がありました。
 とうに、出航の時間は過ぎているのに、この船の乗客たちが来ないのです。

 渡し守は、乗客たちがやってくる山沿やまぞいの道を見ました。
 もう幾度、その道に目をやったことでしょう。
 でも、依然、この船に乗る予定のふたりは、やってくる気配さえありません。

 船着場に続く山々の間で、ひまわりの花の黄色が見え隠れしています。
 それらのお花は、遠く離れた船着場からでも、まるでお日様やお月様の光のようにキラキラと輝いて見えました。

 それは、あの花たちが、もともとは虹の橋に咲く花だったからなのです。

 虹の橋の花は、希望の花。

 青い鳥が、虹の橋から運んだ種子たねが、この山間やまあいで花開いたのです。

 ひまわりを見ていた渡し守は、はたと思い当たったように船のさおを置きました。
 棹の先に着いた鈴が澄んだ音を立てました。

 渡し守はその鈴の音に見送られるように船着場を後にして、地上に続く山沿いの道を歩き始めました。

 これから船に乗るために船着場に向かう客たちは、不思議そうに、渡し守を振り返りました。
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