くらうどcafé通信 〜空まで届く木の上にあるひつじ雲のカフェ〜

水玉猫

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目の前真っ赤

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 地面に降り立ったとうもみは、空を見上げた。

 空ではB・Vが、じゅりを捕まえようと悪戦苦闘している。
 しかし、捕まるのはトマトばかり。
 まるで、トマトをおとりにして、じゅりはB・Vから逃げ回っているかのようだ。

 もし、じゅりが気絶していなかったら、完全に悪ふざけ。いや、気絶していようがいまいが、悪ふざけと思われたって仕方がない。命がけだけどね。
 しかし、悲愴感あふれるとうもみの頭には、そんなことは、微塵も浮かばない。

 じゅりが、どんどん地上に近付いてくる。
 この調子で行けば、地上に激突する前にB・Vがじゅりを捕えることは、十中八九無理だろう。

 とうもみは、腹をくくった。
 ここは、自分が犠牲になって、じゅりの命を救うしかない。
 もしかしたら、怪我をして二度と大好きなサックスの演奏ができなくなるかもしれない。
 生まれて初めてできたサックス奏者になるというとうもみの夢が、ここでついえてしまうのだ。

 「それでもいい。ぼくの夢が、じゅりの命と引き換えになるのならば」
 じゅりだけを見つめるとうもみの視界が、涙でにじむ。

 「とうもみ!すまない!じゅりを受け止めてくれ!」
  B・Vの悲痛な声が空から届く。

 じゅりはまっすぐとうもみに向かって落ちてくる。
 「じゅり、来い!」

 じゅりを受け止めようとした瞬間、とうもみの目の前が真っ赤に染まり、腕がくうを切った。



  外した!



 とうもみは、その場に崩れ落ちた。

 ウェイ・ライの叫びが、空と地に響き渡る。
 「じゅり!!!」
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