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なにかと一緒
失踪宣告
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なにかが家族の一員になってから、わたしとジェイの啀み合いはめっきり少なくなった。
急遽決まったペット可の物件への引っ越準備や慣れない仔猫の世話で忙しかったせいもあるが、何より、なにかの愛らしい仕草がわたしたちの心を和ませてくれることが大きかった。
なにかのための転居は、破綻寸前だったわたしたちの関係を修復する恰好の機会にもなっていた。
仕事の駆け引きなら、わたしは手練手管に長けている。必要ならば狡猾な手段を使うことも、ためらわない。わたしは、自他共に認める優秀な弁護士だ。
でも、ジェイとの間では、そうはいかなかった。ジェイが指摘したように、仕事上のわたしと私生活のわたしは正反対だった。仕事では有能であっても、私生活では無様極まりなかった。
ジェイには、わたしの訓練された職務上の冷徹さは、まるで通用しなかった。
年は離れていても、二人はあくまで対等だった。社会人と学生という立場の違いも、関係なかった。
ジェイは、鏡に映ったわたし自身だった。ゲイだということ。死の匂いを纏っていること。
ジェイの前では、否が応でも武装を解かざるを得なかった。
しかし、心にまとう鎧を脱ぐということは、感情が剥き出しになるということだ。
向かい合わせの鏡に映った感情は、初めは些細なことであってさえ、どこまでも反復して拡張して行く。
出会ったときは確かに愛であったものも、鏡の間で迷子になった。
このままでは、わたしたちの愛は失踪宣告がなされてしまうだろう。
頭の片隅に残った冷静さが、警告を鳴らす。早急に探し出さなければならないのは、ネクタイではなく、二人の愛なのだと。
しかし、今、目の前にある押し問答を止める手立てを、わたしは完全に見失っている。いや、わかってはいる。わたしから先にジェイに謝れば済むことなのだ。それでも、ジェイが突っかかってきたら、軽くいなしておけばいいだけだ。仕事の上ではなんでもないことでも、ジェイという鏡の前では、それができない。ジェイが向きになればなるほど、わたしも向きにならざるを得ない。
助けを求めて得られるのなら、誰でもいい、わたしたちを助けてくれ。わたしと彼との間に入る調停者となってくれ。
「ジェイ、減らず口はいい加減にしろ」そう言い掛けたとき、わたしたちの間を弾丸が走り抜けて行った。
急遽決まったペット可の物件への引っ越準備や慣れない仔猫の世話で忙しかったせいもあるが、何より、なにかの愛らしい仕草がわたしたちの心を和ませてくれることが大きかった。
なにかのための転居は、破綻寸前だったわたしたちの関係を修復する恰好の機会にもなっていた。
仕事の駆け引きなら、わたしは手練手管に長けている。必要ならば狡猾な手段を使うことも、ためらわない。わたしは、自他共に認める優秀な弁護士だ。
でも、ジェイとの間では、そうはいかなかった。ジェイが指摘したように、仕事上のわたしと私生活のわたしは正反対だった。仕事では有能であっても、私生活では無様極まりなかった。
ジェイには、わたしの訓練された職務上の冷徹さは、まるで通用しなかった。
年は離れていても、二人はあくまで対等だった。社会人と学生という立場の違いも、関係なかった。
ジェイは、鏡に映ったわたし自身だった。ゲイだということ。死の匂いを纏っていること。
ジェイの前では、否が応でも武装を解かざるを得なかった。
しかし、心にまとう鎧を脱ぐということは、感情が剥き出しになるということだ。
向かい合わせの鏡に映った感情は、初めは些細なことであってさえ、どこまでも反復して拡張して行く。
出会ったときは確かに愛であったものも、鏡の間で迷子になった。
このままでは、わたしたちの愛は失踪宣告がなされてしまうだろう。
頭の片隅に残った冷静さが、警告を鳴らす。早急に探し出さなければならないのは、ネクタイではなく、二人の愛なのだと。
しかし、今、目の前にある押し問答を止める手立てを、わたしは完全に見失っている。いや、わかってはいる。わたしから先にジェイに謝れば済むことなのだ。それでも、ジェイが突っかかってきたら、軽くいなしておけばいいだけだ。仕事の上ではなんでもないことでも、ジェイという鏡の前では、それができない。ジェイが向きになればなるほど、わたしも向きにならざるを得ない。
助けを求めて得られるのなら、誰でもいい、わたしたちを助けてくれ。わたしと彼との間に入る調停者となってくれ。
「ジェイ、減らず口はいい加減にしろ」そう言い掛けたとき、わたしたちの間を弾丸が走り抜けて行った。
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