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本編
一章二話 召喚。そして遭遇。②ー少女シラティスー
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数分前。
道なき荒野を人間種の少女シラティスは走る。
セドラント王国の北東、ミズカ地方はよく言えば風光明媚。悪い言い方をすればド田舎だ。都市と呼べるものは地方領主が住むエルトゥーカだけ。あとはこじんまりとした村や小さな街、自分たち人間種や妖精族の居住地がポツポツと存在するぐらいだ。
ゴオオオオオオオォォォォォォ…………!!
また聞こえる。大空から聞こえてくる凄まじい轟音に、シラティスは木々の間から見える空をのぞき込んだ。だが、耳をつんざくような爆音ばかりで、何かが視界に飛び込む気配はない。結構歩いたためか、シラティスは一度歩く足を止め息を整えながら額に溜まってくる汗を、オレンジ色の髪をかき上げて拭い去った。
シラティス「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
先程の爆音の大きさから、何かがこの近くを『飛んでいる』ことは間違いないのだ。それも何か人工的な方法で。
シラティス「今の音は間違いない。『廃基地』の方からだ!」
そう言うとシラティスは爆音聴こえた方角へと向かって走り出した。
*
この世界には『機竜』というものがある。元々は飛竜という竜の一種を模して造られた機械兵器であり胸部にある核で動いている、風の魔力を鋼鉄の翼に纏うことで縦横無尽に大空を飛び回り、体内で錬成した魔力の炎を撃ちだす。機動力、火力共に優れた。『超兵器』と言っていい。但し、魔法を使える種族しか扱えない代物だ。
多分、あの基地にある『飛行機械の残骸』も。あの機竜のように……いや、恐らく力学上非常に合理的と考えられるあのボディと推進機構の精密さ、巨大さから考えて機竜よりも速く、あの鳥のような『飛行機械』は大空を飛べるはずなのだ。
つい先程まで、機竜の咆哮が聞こえた………気がする。だが、今は上空の見知らぬ何かが発する凄まじい轟音だけだ。
轟音は、かなり近い。『廃基地』にやって来るのかも。シラティスは、胸が弾んでくるのを感じた。
シラティスは『廃基地』へと急ぐ駆け走る。………あの、今は飛べない飛行機械が格納庫の奥深くで眠る基地へ。
シラティス(凄い音だった。これ以上大きくなると耳の鼓膜が今にでも割れてしまいそうだ。一体、どれだけのエネルギーを噴出したらこれだけの音になるんだ!?)
不意に、視界が一気に開けた。延々と続くような森から唐突に、舗装された巨大な区域が姿を現すのだ。
自分の住むメア村の広さはあると思われる巨大で長大な舗装路。5、6階建てであろう大きな『塔』に、その両脇には、小さい頃に見た耳長族の屋敷が庭付きですっぽりそのまま入ってしまいそうな巨大な、格納庫。格納庫は長大な舗装路の両側にある。
シラティス「!?」
シラティスは驚いた。『廃基地』の前に二つの物体あり。
一つは頭部が失われ、核部を破壊されている。核部を破壊された機竜は全ての機能を停止され動かなくなる。生物で例えるなら『死』を意味する。
もう一つは破壊された機竜の左隣には左翼の折れた鳥のような『飛行兵器』。恐らくあれが機竜を倒したのだろう。
シラティス「もしかして……。あれが機竜を倒したのか?」
いや、厳密に言えば『廃基地』の格納庫にある残骸とは形状がわずかに異なる。空を飛ぶ飛行機械の垂直な尾翼は1つだし、部位ある場所の形状も一つ一つだが違う。一瞬チラリと見えたのだが、風車らしき部品もある、機体の下部に一つしかなかった。格納庫にある飛行機械の残骸にもこういうのは結構ある。垂直な尾翼も。ちゃんと二つだ。
あの飛行機械ももしかして機竜と同じく人間が操ってるのかと思いシラティスは直ぐ様飛行機械へと向かって走り出す。
シラティス「んぎゃいん!」
足元を遮る物は何もないはずなのに……思いっきり打った顔面をさすりながら、立ち上がろうとする。
それを今度は、自分以外の何者かの凄まじい力で押し倒され、シラティスは再度「んぎゃいん!」と顔面から舗装路に突っ込むハメになった。
鎧の兵士「はぁ・・・はあ・・・はあ・・・。動くな、劣等種。」
顔の直ぐ側に見せつけられるのは、鋭い切っ先の剣。
恐る恐る顔を上げてみると、そこには…………
*
アイン「誰かいるのか?」
人の気配に気付いたのは、機体を着陸させて直ぐだった。上手くブルーウォーターの機首と左翼と後輪で接地させた後、エンジンの出力を最低まで搾り、ブレーキで減速。およそ1000メートルほどギリギリに滑走した後、適切な速度に落ちた所で誘導路に従って格納庫の方へとブルーウォーターを止めるも代償として大破状態になってしまう。
アインは一応エンジン等全ての機能を停止させ
外の周囲を確認する、格納庫は開いておらず、辺りを見渡すが、誰一人としてやってくる気配が全くない。まるで無人基地のようだ。
アインは直ぐ様ブルーウォーターのキャノピーを上げて外に出る。……念の為だと、自分の拳銃であるヴェブリー・リボルバーを持って行く。……一応戦時前にエドワードと共に観光旅行でアフリカに行き鹿を撃った経験はあるが、射撃は、愛機の操縦と同じくまるでとっくの昔に訓練されてたかのように頭と体に叩き込まれていた。軍でやった射撃訓練の影響か?とアインは思った。
アイン「…………さて。」
とりあえず、さっき人の気配がしたような場所に行った方がいいと思う。もし誰かいれば、ここがどこなのか知ることができると。
アイン(それにしても、かなり大きな基地だ。灯台に格納庫等から見て、何処かの国の空軍基地であることは間違いないだろう。)
だが人影らしき影の形はいない。それに………着陸した時に気付いたのだが、滑走路はガタガタで長らく手入れされていないようだった。足元を見れば、コンクリート舗装の間から雑草が生え始めている。
どうやら、ずっと以前に見捨てられた基地らしい。…………まさか放棄された原因が何らかの実験の可能性もあるだろうとアインは考える……。
???「動くなッ!」
アイン「!」
反射的に体が動いた。鋭く声が走った方向へ瞬時に拳銃を向ける。
女……いや、自分と歳が近いぐらいの女だ。だが、顔から下は重そうな甲冑で覆われ、その手には剣。その切っ先にオレンジ髪の少女が倒れていた。
オレンジ髪の少女は、僅かに顔を上げて真っ青な顔で目の前に突き立てられた剣から目を離せなくなっている。
女兵士「武器を捨てて投降してもらおうか。………劣等種の仲間の命が惜しければな!」
少女は助けてと叫ぶ。何がどういう状況なのか、………。アインは直ぐに理解できなかった。
アイン「…………。」
女兵士「どうした!?その武器を捨てる気がないのなら仲間が死……」
アイン「誰だ?その餓鬼は?」
きょとん、と年相応な表情を見せる女兵士。
人質として押し倒しているその少女が利用価値のないことに気づくまで、およそ1分弱。
てか、この少女は………誰だ?押し倒されてるオレンジ髪の少女も含めて。
女兵士「………ッ!巫山戯やがって!!」
次の瞬間、女兵士が持っていた剣を振り上げた。人質を殺す気だ。
だが剣が振りあがった瞬間、アインは拳銃の引き金を引く。
パン!という軽い銃声。
少女の右手から剣が吹っ飛んだ。
女兵士「!?」
何が起こったのか分からず、呆然とする少女。
パン! パン! と再度銃声が響く。アインが撃った二発の銃弾は女兵士の胸と腹に命中。だが、甲冑に弾かれる。
それでも体が受けた衝撃は相当なものだったらしく、グラッと女兵士は体のバランスを崩しそのまま、倒れた。
女兵士が無力化して暫くして、……恐る恐る少女はゆっくりと立ち上がった。
少女「………死んだのか?」
アイン「いや、残念だが気絶させただけだ。……処でだが。気絶した其処の鎧の女とお前はどういった関係だ?」
少女「知らないよ、全くの初対面だし。」
アイン「そうか…。」
少女の方は体に密着するタイプの衣服の上に、上着のようなものを羽織っている。まるで工場で働く作業着みたいだとアインは思った。
そこの、小説の物語に出てきそう鎧の女と比べると、明らかにその衣服は見たことのない素材の様だ。
ただ、少女の方はどうみても人間で、少女の方は、よく見れば耳が長かった。コイツは人間なのかとアインは不思議そうな顔をする。
シラティス「えっと、その。助けてくれて有難うな。アタシの名前はシラティス。種族はご覧の通り人間種。アンタも人間種なんだろ?」
アイン「ひゅーまん?何だそれは?」
シラティス「分からないか?まあ簡単に言うとアタシ達人間って意味だよ。」
アイン「ああ、なる程な。確かに俺は人間だ。」
シラティス「だよね、其処に倒れてるコイツは・・・・・・名前は知らないが恐らく格好から見る限り、耳長族だ。ほら、よく見なって。コイツの耳だけアタシ達より長いだろ。そしてもう一つの特徴である金髪もそうだ。しかもコイツは北帝国の機竜兵だよ。一回、長耳族の街で見たことがあるんだ。」
シラティスは女兵士の長い耳に向け右人差し指を指し触れる。アインはシラティスの言う通りに女兵士の特徴を見る。
アイン「エルフって、よく小説とかに出てくるあの?」
シラティス「この世界で一番強い力を持った種族だよ。とくに魔力の質量がね、数も世界で一番多い。……アタシたち人間種や少数種族を〝劣等種〟だって言って差別するんだ。」
アイン(機竜兵ってことは……なる程、要するにさっきの機械の竜はコイツが乗って操ってたってことか?まるで俺達飛空士みたいだな。)
だが、竜といいエルフといい、此処が何処とかそういう問題じゃ無くなってしまった。嫌な予感しかしない。
ただ、アインは思惑した顔でシラティスに質問をする。
アイン「なあ、処で幾つか質問だ…………此処は一体何処何だ?」
シラティスは、先刻の女兵士と同じようなキョトンとした表情になった。
シラティス「此処のことか?名前は知らないけど、アタシは『廃基地』って呼んでいる。」
アイン「いや、そうではない、この地方の名前。国の名前。世界の名前の方だ。」
シラティス「此処はミズカ地方のセドラント王国。そしてこの世界の名前は。『アルミュラ』だよ。」
アイン「・・・・・・アルミュラ?」
今、彼女は何て言った?この世界の名前は『アルミュラ』だと?
アインは思い出した。敵機の攻撃を受けブルーウォーターが墜落しそうになった瞬間、一瞬、大きな光が現れブルーウォーターが飲まれたことを。気付いたら雲の中だったことを。
まるで子供の頃に読んだ。『オズの魔法使い』や『不思議の国のアリス』の物語の中に入った気分だ。
シラティス「なぁ・・・・・・今度は此方から質問をしていいか?」
アイン「…ああ。構わないぞ。」
シラティス「………まず一番聞きたいのは、あの飛行機械って、どうやって飛ばしてるのってことと、アンタは誰でどこから来たのかってこと。」
アイン(………一番最初に自己紹介を求めないとなは。飛行機械ということはもしかしてブルーウォーターのことか?)
アイン「どうやってって。そりゃあエンジンを出力してその加速で翼が揚力……。」
シラティス「メカニズムは知ってるんだ!何を使って飛んでるかってことだよ!つまり動力源!」
アイン「動力源?ああ、燃料ってことか?俺達が使われてるのは150オクタン燃料でな……。」
シラティス「おくたん?成分は!?どういう元素形状をしてるの!?それに………。」
さっきからシラティスの目が星の様にキラキラと光り輝いている。
恐らくシラティスは理系の質問をしていることにようやく気付き、アインは小さく溜息をしてから答えた。
アイン「残念だが俺は理系は専門外だから……。本来なら一般人にコイツの中身を見せたくないが、お前が興味あるなら少し見てみるか?もう飛ぶことも出来ないしよ。」
百聞は一見にしかず。
仮にもこのブルーウォーターは元々は英国空軍が使用した機体だが、アインはこのブルーウォーターを自らの給金で購入し戦闘毎に機体の性能を少しずつ強化させた自分だけの専用機だからだ。
本来なら軍の上層部や政府にも絶対に見せられない機密の塊だが、異常事態だ。せめて翼内の燃料タンクぐらいなら見せても問題ないだろうとアインは仕方なく、ついて来い、と大破状態のブルーウォーターへとシラティスを連れて行き、翼内燃料タンクのバルブを開けて中を見せる。
シラティス「この匂いって。それに、………もしかして液体か!?」
アイン「え?あ、ああ液体だな。」
シラティス「それに油の匂い!そうか!燃焼性の高い液体を燃やすことによって熱と水蒸気を発生させて、そのエネルギーと圧力であの推進装置を動かしてたのか!」
理系には理系にしか分からないことがあるとはいえ、どうやら彼の一番の問題は解決したらしかった。
シラティス「そうと決まれば早速家に帰って燃焼性の高い液体………そうだな、高密プラズマを水素/液体性処理してハイレベル燃焼を持たせて。それで……あ、そういえばアンタの名前聞いてなかったな?どっから来たんだ?」
盛大にずっこけそうになった。
それは、もっと早く聞いて欲しいとアインは心の中で呟き答えた。
アイン「あー。俺はアイザック。アイザック=フォフナーだ。イギリスという国で軍人をやって其処に倒れてる相棒、ブルーウォーターの飛空士を勤めている。階級は二等空士。地球から来た。」
シラティス「アイザック=フォフナー?チキューって世界の名前?しかもイギリスって名の国から来た………?」
アイン「そうだ。短いなら俺の呼び名はアインでいい。皆、そう呼んでいる。」
シラティス「…………どこ?」
アイン「つまり俺は此処じゃない別の所からやって来たことになるな。」
シラティス「どうやってだ?」
アイン「分からない、気付いたら雲の中に飛んでいた。」
んんんん???とアインに代わって頭をひねり始めたシラティス。
シラティス「つまりアイザック、アインは………ここじゃない世界から来て………あれ?でもこの飛行機械は此処にあって。廃基地の中にも……。」
アイン「!!」
今、彼女は何て言った。格納庫に別の機体がある?まさか、自分以外にもこの世界に来ている人間がいるのかと、アイン其れよりも格納庫のシラティスに
アイン「ちょっと待て。その廃基地に別の機体があるのか?」
驚いた。この世界の事情はほとんど理解できてないが、放棄されたのなら、普通機体も一緒に持って行くはずだ。
もし、それが叶わないなら敵対勢力ないし第三者に持って行かれないよう解体か爆弾で破壊をするか。
シラティス「うんあるよ。尾翼が二つあるのもあるし、風車見たいな部品もあるよ、他にも結構色々あるけれど、全部壊れてるよ。」
頭の中で該当する戦闘機が幾つも浮かび現れてきた。他国の戦闘機の部品は………結構ある。
アイン(もしかしたら大破されたブルーウォーターを直せるかもしれない、可能性があるなら。)
この基地と言い、謎がさらに謎を呼んでる気がする。
アイン「なあシラティス。その格納庫…廃基地の中を俺に見せてもらってもいいか?」
シラティス「もちろん!動力源の秘密も教えてくれたし。此方だよ!ついて来て!」
今度はシラティスが手招きする番だった。向かうのは廃基地と呼ばれた格納庫。航空機が出入りする大扉ではなく、人が出入りするための脇にある小さなドアへと二人は入って行った。
道なき荒野を人間種の少女シラティスは走る。
セドラント王国の北東、ミズカ地方はよく言えば風光明媚。悪い言い方をすればド田舎だ。都市と呼べるものは地方領主が住むエルトゥーカだけ。あとはこじんまりとした村や小さな街、自分たち人間種や妖精族の居住地がポツポツと存在するぐらいだ。
ゴオオオオオオオォォォォォォ…………!!
また聞こえる。大空から聞こえてくる凄まじい轟音に、シラティスは木々の間から見える空をのぞき込んだ。だが、耳をつんざくような爆音ばかりで、何かが視界に飛び込む気配はない。結構歩いたためか、シラティスは一度歩く足を止め息を整えながら額に溜まってくる汗を、オレンジ色の髪をかき上げて拭い去った。
シラティス「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
先程の爆音の大きさから、何かがこの近くを『飛んでいる』ことは間違いないのだ。それも何か人工的な方法で。
シラティス「今の音は間違いない。『廃基地』の方からだ!」
そう言うとシラティスは爆音聴こえた方角へと向かって走り出した。
*
この世界には『機竜』というものがある。元々は飛竜という竜の一種を模して造られた機械兵器であり胸部にある核で動いている、風の魔力を鋼鉄の翼に纏うことで縦横無尽に大空を飛び回り、体内で錬成した魔力の炎を撃ちだす。機動力、火力共に優れた。『超兵器』と言っていい。但し、魔法を使える種族しか扱えない代物だ。
多分、あの基地にある『飛行機械の残骸』も。あの機竜のように……いや、恐らく力学上非常に合理的と考えられるあのボディと推進機構の精密さ、巨大さから考えて機竜よりも速く、あの鳥のような『飛行機械』は大空を飛べるはずなのだ。
つい先程まで、機竜の咆哮が聞こえた………気がする。だが、今は上空の見知らぬ何かが発する凄まじい轟音だけだ。
轟音は、かなり近い。『廃基地』にやって来るのかも。シラティスは、胸が弾んでくるのを感じた。
シラティスは『廃基地』へと急ぐ駆け走る。………あの、今は飛べない飛行機械が格納庫の奥深くで眠る基地へ。
シラティス(凄い音だった。これ以上大きくなると耳の鼓膜が今にでも割れてしまいそうだ。一体、どれだけのエネルギーを噴出したらこれだけの音になるんだ!?)
不意に、視界が一気に開けた。延々と続くような森から唐突に、舗装された巨大な区域が姿を現すのだ。
自分の住むメア村の広さはあると思われる巨大で長大な舗装路。5、6階建てであろう大きな『塔』に、その両脇には、小さい頃に見た耳長族の屋敷が庭付きですっぽりそのまま入ってしまいそうな巨大な、格納庫。格納庫は長大な舗装路の両側にある。
シラティス「!?」
シラティスは驚いた。『廃基地』の前に二つの物体あり。
一つは頭部が失われ、核部を破壊されている。核部を破壊された機竜は全ての機能を停止され動かなくなる。生物で例えるなら『死』を意味する。
もう一つは破壊された機竜の左隣には左翼の折れた鳥のような『飛行兵器』。恐らくあれが機竜を倒したのだろう。
シラティス「もしかして……。あれが機竜を倒したのか?」
いや、厳密に言えば『廃基地』の格納庫にある残骸とは形状がわずかに異なる。空を飛ぶ飛行機械の垂直な尾翼は1つだし、部位ある場所の形状も一つ一つだが違う。一瞬チラリと見えたのだが、風車らしき部品もある、機体の下部に一つしかなかった。格納庫にある飛行機械の残骸にもこういうのは結構ある。垂直な尾翼も。ちゃんと二つだ。
あの飛行機械ももしかして機竜と同じく人間が操ってるのかと思いシラティスは直ぐ様飛行機械へと向かって走り出す。
シラティス「んぎゃいん!」
足元を遮る物は何もないはずなのに……思いっきり打った顔面をさすりながら、立ち上がろうとする。
それを今度は、自分以外の何者かの凄まじい力で押し倒され、シラティスは再度「んぎゃいん!」と顔面から舗装路に突っ込むハメになった。
鎧の兵士「はぁ・・・はあ・・・はあ・・・。動くな、劣等種。」
顔の直ぐ側に見せつけられるのは、鋭い切っ先の剣。
恐る恐る顔を上げてみると、そこには…………
*
アイン「誰かいるのか?」
人の気配に気付いたのは、機体を着陸させて直ぐだった。上手くブルーウォーターの機首と左翼と後輪で接地させた後、エンジンの出力を最低まで搾り、ブレーキで減速。およそ1000メートルほどギリギリに滑走した後、適切な速度に落ちた所で誘導路に従って格納庫の方へとブルーウォーターを止めるも代償として大破状態になってしまう。
アインは一応エンジン等全ての機能を停止させ
外の周囲を確認する、格納庫は開いておらず、辺りを見渡すが、誰一人としてやってくる気配が全くない。まるで無人基地のようだ。
アインは直ぐ様ブルーウォーターのキャノピーを上げて外に出る。……念の為だと、自分の拳銃であるヴェブリー・リボルバーを持って行く。……一応戦時前にエドワードと共に観光旅行でアフリカに行き鹿を撃った経験はあるが、射撃は、愛機の操縦と同じくまるでとっくの昔に訓練されてたかのように頭と体に叩き込まれていた。軍でやった射撃訓練の影響か?とアインは思った。
アイン「…………さて。」
とりあえず、さっき人の気配がしたような場所に行った方がいいと思う。もし誰かいれば、ここがどこなのか知ることができると。
アイン(それにしても、かなり大きな基地だ。灯台に格納庫等から見て、何処かの国の空軍基地であることは間違いないだろう。)
だが人影らしき影の形はいない。それに………着陸した時に気付いたのだが、滑走路はガタガタで長らく手入れされていないようだった。足元を見れば、コンクリート舗装の間から雑草が生え始めている。
どうやら、ずっと以前に見捨てられた基地らしい。…………まさか放棄された原因が何らかの実験の可能性もあるだろうとアインは考える……。
???「動くなッ!」
アイン「!」
反射的に体が動いた。鋭く声が走った方向へ瞬時に拳銃を向ける。
女……いや、自分と歳が近いぐらいの女だ。だが、顔から下は重そうな甲冑で覆われ、その手には剣。その切っ先にオレンジ髪の少女が倒れていた。
オレンジ髪の少女は、僅かに顔を上げて真っ青な顔で目の前に突き立てられた剣から目を離せなくなっている。
女兵士「武器を捨てて投降してもらおうか。………劣等種の仲間の命が惜しければな!」
少女は助けてと叫ぶ。何がどういう状況なのか、………。アインは直ぐに理解できなかった。
アイン「…………。」
女兵士「どうした!?その武器を捨てる気がないのなら仲間が死……」
アイン「誰だ?その餓鬼は?」
きょとん、と年相応な表情を見せる女兵士。
人質として押し倒しているその少女が利用価値のないことに気づくまで、およそ1分弱。
てか、この少女は………誰だ?押し倒されてるオレンジ髪の少女も含めて。
女兵士「………ッ!巫山戯やがって!!」
次の瞬間、女兵士が持っていた剣を振り上げた。人質を殺す気だ。
だが剣が振りあがった瞬間、アインは拳銃の引き金を引く。
パン!という軽い銃声。
少女の右手から剣が吹っ飛んだ。
女兵士「!?」
何が起こったのか分からず、呆然とする少女。
パン! パン! と再度銃声が響く。アインが撃った二発の銃弾は女兵士の胸と腹に命中。だが、甲冑に弾かれる。
それでも体が受けた衝撃は相当なものだったらしく、グラッと女兵士は体のバランスを崩しそのまま、倒れた。
女兵士が無力化して暫くして、……恐る恐る少女はゆっくりと立ち上がった。
少女「………死んだのか?」
アイン「いや、残念だが気絶させただけだ。……処でだが。気絶した其処の鎧の女とお前はどういった関係だ?」
少女「知らないよ、全くの初対面だし。」
アイン「そうか…。」
少女の方は体に密着するタイプの衣服の上に、上着のようなものを羽織っている。まるで工場で働く作業着みたいだとアインは思った。
そこの、小説の物語に出てきそう鎧の女と比べると、明らかにその衣服は見たことのない素材の様だ。
ただ、少女の方はどうみても人間で、少女の方は、よく見れば耳が長かった。コイツは人間なのかとアインは不思議そうな顔をする。
シラティス「えっと、その。助けてくれて有難うな。アタシの名前はシラティス。種族はご覧の通り人間種。アンタも人間種なんだろ?」
アイン「ひゅーまん?何だそれは?」
シラティス「分からないか?まあ簡単に言うとアタシ達人間って意味だよ。」
アイン「ああ、なる程な。確かに俺は人間だ。」
シラティス「だよね、其処に倒れてるコイツは・・・・・・名前は知らないが恐らく格好から見る限り、耳長族だ。ほら、よく見なって。コイツの耳だけアタシ達より長いだろ。そしてもう一つの特徴である金髪もそうだ。しかもコイツは北帝国の機竜兵だよ。一回、長耳族の街で見たことがあるんだ。」
シラティスは女兵士の長い耳に向け右人差し指を指し触れる。アインはシラティスの言う通りに女兵士の特徴を見る。
アイン「エルフって、よく小説とかに出てくるあの?」
シラティス「この世界で一番強い力を持った種族だよ。とくに魔力の質量がね、数も世界で一番多い。……アタシたち人間種や少数種族を〝劣等種〟だって言って差別するんだ。」
アイン(機竜兵ってことは……なる程、要するにさっきの機械の竜はコイツが乗って操ってたってことか?まるで俺達飛空士みたいだな。)
だが、竜といいエルフといい、此処が何処とかそういう問題じゃ無くなってしまった。嫌な予感しかしない。
ただ、アインは思惑した顔でシラティスに質問をする。
アイン「なあ、処で幾つか質問だ…………此処は一体何処何だ?」
シラティスは、先刻の女兵士と同じようなキョトンとした表情になった。
シラティス「此処のことか?名前は知らないけど、アタシは『廃基地』って呼んでいる。」
アイン「いや、そうではない、この地方の名前。国の名前。世界の名前の方だ。」
シラティス「此処はミズカ地方のセドラント王国。そしてこの世界の名前は。『アルミュラ』だよ。」
アイン「・・・・・・アルミュラ?」
今、彼女は何て言った?この世界の名前は『アルミュラ』だと?
アインは思い出した。敵機の攻撃を受けブルーウォーターが墜落しそうになった瞬間、一瞬、大きな光が現れブルーウォーターが飲まれたことを。気付いたら雲の中だったことを。
まるで子供の頃に読んだ。『オズの魔法使い』や『不思議の国のアリス』の物語の中に入った気分だ。
シラティス「なぁ・・・・・・今度は此方から質問をしていいか?」
アイン「…ああ。構わないぞ。」
シラティス「………まず一番聞きたいのは、あの飛行機械って、どうやって飛ばしてるのってことと、アンタは誰でどこから来たのかってこと。」
アイン(………一番最初に自己紹介を求めないとなは。飛行機械ということはもしかしてブルーウォーターのことか?)
アイン「どうやってって。そりゃあエンジンを出力してその加速で翼が揚力……。」
シラティス「メカニズムは知ってるんだ!何を使って飛んでるかってことだよ!つまり動力源!」
アイン「動力源?ああ、燃料ってことか?俺達が使われてるのは150オクタン燃料でな……。」
シラティス「おくたん?成分は!?どういう元素形状をしてるの!?それに………。」
さっきからシラティスの目が星の様にキラキラと光り輝いている。
恐らくシラティスは理系の質問をしていることにようやく気付き、アインは小さく溜息をしてから答えた。
アイン「残念だが俺は理系は専門外だから……。本来なら一般人にコイツの中身を見せたくないが、お前が興味あるなら少し見てみるか?もう飛ぶことも出来ないしよ。」
百聞は一見にしかず。
仮にもこのブルーウォーターは元々は英国空軍が使用した機体だが、アインはこのブルーウォーターを自らの給金で購入し戦闘毎に機体の性能を少しずつ強化させた自分だけの専用機だからだ。
本来なら軍の上層部や政府にも絶対に見せられない機密の塊だが、異常事態だ。せめて翼内の燃料タンクぐらいなら見せても問題ないだろうとアインは仕方なく、ついて来い、と大破状態のブルーウォーターへとシラティスを連れて行き、翼内燃料タンクのバルブを開けて中を見せる。
シラティス「この匂いって。それに、………もしかして液体か!?」
アイン「え?あ、ああ液体だな。」
シラティス「それに油の匂い!そうか!燃焼性の高い液体を燃やすことによって熱と水蒸気を発生させて、そのエネルギーと圧力であの推進装置を動かしてたのか!」
理系には理系にしか分からないことがあるとはいえ、どうやら彼の一番の問題は解決したらしかった。
シラティス「そうと決まれば早速家に帰って燃焼性の高い液体………そうだな、高密プラズマを水素/液体性処理してハイレベル燃焼を持たせて。それで……あ、そういえばアンタの名前聞いてなかったな?どっから来たんだ?」
盛大にずっこけそうになった。
それは、もっと早く聞いて欲しいとアインは心の中で呟き答えた。
アイン「あー。俺はアイザック。アイザック=フォフナーだ。イギリスという国で軍人をやって其処に倒れてる相棒、ブルーウォーターの飛空士を勤めている。階級は二等空士。地球から来た。」
シラティス「アイザック=フォフナー?チキューって世界の名前?しかもイギリスって名の国から来た………?」
アイン「そうだ。短いなら俺の呼び名はアインでいい。皆、そう呼んでいる。」
シラティス「…………どこ?」
アイン「つまり俺は此処じゃない別の所からやって来たことになるな。」
シラティス「どうやってだ?」
アイン「分からない、気付いたら雲の中に飛んでいた。」
んんんん???とアインに代わって頭をひねり始めたシラティス。
シラティス「つまりアイザック、アインは………ここじゃない世界から来て………あれ?でもこの飛行機械は此処にあって。廃基地の中にも……。」
アイン「!!」
今、彼女は何て言った。格納庫に別の機体がある?まさか、自分以外にもこの世界に来ている人間がいるのかと、アイン其れよりも格納庫のシラティスに
アイン「ちょっと待て。その廃基地に別の機体があるのか?」
驚いた。この世界の事情はほとんど理解できてないが、放棄されたのなら、普通機体も一緒に持って行くはずだ。
もし、それが叶わないなら敵対勢力ないし第三者に持って行かれないよう解体か爆弾で破壊をするか。
シラティス「うんあるよ。尾翼が二つあるのもあるし、風車見たいな部品もあるよ、他にも結構色々あるけれど、全部壊れてるよ。」
頭の中で該当する戦闘機が幾つも浮かび現れてきた。他国の戦闘機の部品は………結構ある。
アイン(もしかしたら大破されたブルーウォーターを直せるかもしれない、可能性があるなら。)
この基地と言い、謎がさらに謎を呼んでる気がする。
アイン「なあシラティス。その格納庫…廃基地の中を俺に見せてもらってもいいか?」
シラティス「もちろん!動力源の秘密も教えてくれたし。此方だよ!ついて来て!」
今度はシラティスが手招きする番だった。向かうのは廃基地と呼ばれた格納庫。航空機が出入りする大扉ではなく、人が出入りするための脇にある小さなドアへと二人は入って行った。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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