5 / 60
【1】
5.待ち合わせ時間よりも早く
しおりを挟む高瀬との約束の時間まであと十五分。余裕を持って家を出てきたら、思ったよりも待ち合わせ場所に早く着いてしまった。
待たせるよりは待つ方がマシだと思ってるけど、こんなに早く着いてしまうと待ちきれないみたいでちょっとイヤだ。
どこかの店に入るほどの時間ではなく、だけどただ待ち合わせ場所で待つには暇過ぎる。
中途半端な時間をどう潰そうか、一人頭を悩ませていた。
「あれ、恭ちゃん先輩? もう来てたんですか?」
「うわっ、高瀬……?」
後ろから声が掛けられて、慌てて振り返れば派手なだて眼鏡を掛けた高瀬がニコニコと片手を挙げている。
高瀬はざっとオレの全身を見渡して、いつもと変わらないですねと笑った。
「仕事行くときと同じ格好じゃないですか?」
「うちの職場は私服だから自然と会社に着てける服ばっかになるんだよ」
「普段着見てみたかったなぁ……あ、そういうシュッとした格好ももちろん似合ってますけどね」
「高瀬も……そんなに変わんないな。小物が派手になったくらいか?」
バイト中には見たことのないリングや眼鏡は、落ち着いた雰囲気を放つ高瀬とは正反対の印象を与えるのに驚くくらいによく似合っていた。
「お前って元が良いから何着けても似合うんだろうなぁ」
何気なく口にした言葉に、高瀬は目を丸くして固まってしまう。
見慣れない反応だ。不思議に思って高瀬の様子を見守っていたら、高瀬は照れ臭そうに眉を潜めて顔を俯けてしまった。
「高瀬?」
「普段からそういうことあんまり言われないんで、なんて返せばいいのか」
「そうなのか? なんか意外だな」
「いい人そうとか、優しそうとか、そういうのはよく言われます」
苦笑を浮かべた高瀬は腕時計で時間を確認すると、行きましょうかと歩き出す。
「ちょっと早く着いちゃったからどうしようかなって思ってたんですけど、恭ちゃん先輩も早く来てくれて助かりました」
「まぁ……待たせるのも嫌だったしな」
「やっぱ先輩って真面目ですよね。俺は楽しみで早く着いちゃっただけなのに」
オレは素直に認められない感情も、高瀬は平気な顔で口にする。そこに他意がないことはわかっているけど、楽しみだと言われて嬉しくないわけがない。
コイツのそういうとことが良いなと思うから、ただの行きつけの定食屋のバイトの大学生なのに一緒に過ごしている。だからオレも、少しくらい高瀬を見習って素直になってみたい。
「……オレだって楽しみにはしてたよ」
オレがゲイだと知っても、変わらない態度で接してくれる高瀬のことを有り難いと思っている。
セックスを迫られるのは想定外だったけど。だけどそれだって、高瀬がオレを見る目が変わってしまったからではなく、変わらず一緒にいると楽しい相手だと思ってくれているからこその行動だってことはわかっている。
だからオレも、高瀬が遠慮なく迫ってくることに対しての嫌悪感はないんだろう。
「ありがとな。今日、誘ってくれて」
さっきのようにぽかんとオレを見つめ返した高瀬は、ほんのりと桃色に染まった頬を緩めてはにかみながら頬を掻いていた。
その姿が可愛いなと思ったけれど、それはオレの胸にしまっておいた。
32
あなたにおすすめの小説
透けるほどうすい/溶けるほどあつい
鴻上縞
BL
日々何をするでもなく適当に生きていた真柴久志が知人の紹介で入った会社で真柴の教育係になった堂前哲は、仕事は出来るが口調は荒く乱暴で無愛想な取っ付きづらい男だった。しかし歓迎会の席で明かされた哲の驚くべき過去は、真柴の若い好奇心を掻き立てた。
歓迎会の後、真柴は好奇心を抑えきれず、酔に任せて哲に手を出してしまう。
一夜明けて酔いが覚め、気まずさを抱え一応謝罪をしたものの、哲の態度が負けず嫌いな真柴に火を付けて────。
足場鳶職人達の、身体から始まる軽薄で微かに純情な恋物語。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる