お前はオレの好みじゃない!

河合青

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【1】

6.星空は二人の手の中にある

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「……本当に悪かった」
「恭ちゃん先輩仕事大変って言ってましたもんね」
 プラネタリウムの上映が終わり、ぞろぞろと出ていく人波の中、オレは両手で頭を抱えながら隣で笑う高瀬へと謝罪の言葉を口にする。
「あれは寝ちゃうのもしょうがないですよ。シートふかふかでしたし、俺も結構うとうとしてました」
「正直、かなり気持ちよかった」
「あはは。音楽もですけど、ナレーションも優しい眠りに誘う感じでしたし、寝ない方が無理じゃないですか?」
 折角高瀬が席を取ってくれたのに、気付いたら寝てしまっていてプラネタリウムの内容は全く頭に入っていない。
 流石にこれは人としてどうなんだろう。
 高瀬は一人どんな気持ちでプラネタリウムを見ていたのかを考えると申し訳無さしかなかった。
「いびきが煩くて周りに迷惑掛けたとかじゃないですし、気にしないでいいと思いますよ」
「気にするって……」
「えぇ~……あ、ギフトショップありますよ! 見てきません?」
 パッと表情を明るくした高瀬は、オレの袖を引くと同じフロア内にあったギフトショップを指差した。
 断る理由なんてない。頷くオレの袖を掴んだまま、高瀬は楽しそうにお店へと足を向けた。
「星がモチーフのものって何でもオシャレって感じしますよね」
「そうだな。神秘的でいいよな」
 店内には星や惑星をモチーフにしたアクセサリーやキーホルダー、アロマや紅茶などが並べられている。値段も学生でも手軽にお土産で買っていけそうなものから、やや高級なものまで幅広く揃っていた。
「せっかくだし、何か買ってきませんか?」
「いいな」
「お揃いで」
「お揃いって……」
 それはさすがに恥ずかしいだろ。オレが嫌な顔をしたのを目にしても高瀬は臆することなく、星座をモチーフにした時計のキーホルダーを手に取った。
「さっき寝ちゃったお詫びってことで、どうですか?」
「……お前って結構ずるいよな」
 高瀬は小さく笑うと、物はオレが選んでいいですよと声を弾ませた。
「デートの思い出、欲しいじゃないですか」
 ずるいヤツだけど、同じくらいいいヤツだ。オレがさっきのことを気にしなくて済むようにと提案してくれているんだろうから。
「そうだな……」
 お土産なら、手軽にキーホルダー辺りが丁度いいだろうか。デザインもオシャレなものが多いから、成人男性が持ち歩いていてもおかしくはない。
 ただ、最近はキーホルダーを付けるような持ち物がないから買って使わなくなってしまいそうだ。それはもったいない気がする。
「……あ」
 棚に並んでいた商品を眺めていたら、季節の星空をモチーフにしたマグカップのペアセットが目に入った。
 光沢のある赤と青で描かれた対になっている春の星空を両手に包み込む幻想的なデザイン。
「高瀬って春生まれだったよな?」
「え? はい、四月なんで」
 オレは三月だから、三月から五月頃までの春の星座が描かれたマグカップなら丁度いいんじゃないか。
「マグカップ、ですか?」
「ん。うちにあったやつ職場に持ってっちゃったから家用のやつ新しく買いたかったんだよな」
 いまいち反応が良くない高瀬の様子を窺えば、高瀬はオレへと苦笑を浮かべていた。
「なんだよ、イヤか?」
「お揃いを渋ってたのに結局選ぶのがマグカップって……恭ちゃん先輩って不思議ですよね」
「はぁ? 高瀬が選んでいいって言ったんだろ?」
 じゃあいいよ。マグカップの前を離れようとしたら、高瀬にしっかりと腕を掴まれる。
「嫌じゃないです! 紅茶とかコーヒーみたいな無くなっちゃうもの選ぶと思ってたから、形の残るものを選んで貰えたのが嬉しくて……」
 そう言うと高瀬は、さっさと棚からマグカップのセットを手に取った。
「俺、これがいいです!」
 クリスマスプレゼントをもらった子供のような顔で笑うから、オレまで驚いてしまう。
 ペアのマグカップなんて、高瀬みたいにモテるヤツからしたら大したものじゃないだろうに。
「こんなのお前なら沢山貰ってきただろ?」
「全然。俺、彼女でもそうでない子でもお揃いのものってもらったことないですよ」
 すぐ離れていきそうってわかるんでしょうね、と高瀬はいつもの調子で笑う。
「女避けの意味でアクセサリーなんかをくれる子はいましたけど、別にそれ付けてたからって俺がその子一人のものになるわけじゃないですし。俺に声掛けてくる子って、基本浅く付き合いたいっていう子なんですよねー」
「……高瀬はそれでいいのか?」
「いいも悪いも俺から付き合いたいって言ったわけじゃないですから。……あ、だから自分からデートに誘ったのって恭ちゃん先輩が初めてです」
 高瀬は決して、寂しそうな顔では笑わない。それが当然のことのように微笑んでいるから、オレの方が複雑な気持ちになってしまった。
「初めてがオレで残念だったな」
 なんて言葉を掛けるのがいいかもわからなくて、オレは高瀬の前髪をくしゃっと撫でて笑顔を作った。
 くすぐったそうに頬を緩めた高瀬の手からマグカップを奪う。
「あ、お金……」
「いいよ。さっきのお詫びと今日のお礼」
 本当にこういうことに慣れてないのか、高瀬はどうしていいかわからない様子で首の後ろを掻いていた。
 意外な一面が見れたこと。なんだかそれが妙に嬉しかった。
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