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7.オレとお前は違う
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プラネタリウムの後は高瀬が服を見たいと言うから、商業施設の中を気ままに歩き回った。
「恭ちゃん先輩って本当に陸人さんのこと好きなんですね」
「なんだよいきなり」
「服見てたときも好みの服装って真面目そうな感じっていうか……店長がよく着てるような感じでしたし」
さっき、高瀬に試着をさせたときのことを思い出す。
オレの好みで選んでみてほしいと言われて渡した服は確かに落ち着きのある大人びた服装だった。そして、高瀬にとてもよく似合っていたけれど、普段の高瀬とは全然違う格好だった。そして、確かに陸人さんがよく着ている格好でもある。
「……好きって言っても本当にただの好みのタイプってだけで、あの人とどうこうなりたいとかは思ってねーよ」
「でも、陸人さんが結婚したときショック受けてたじゃないですか。しばらくお店来なかったですよね」
それも事実だったから反論することが出来ず、オレは黙って高瀬から目を逸らす。というか、気付かれていたのか。
「あの時は何で最近来ないのかなーって思ってたけど、今やっと理由がわかりましたよ」
「まぁ、仕事が忙しかったっていうのもあったけどな……」
密かに片思いしていた相手が結婚をしてショックを受けたのも本当だし、仕事が忙しくてキャパオーバーになりかけていたのも本当だ。
だから高瀬が考えてるほどのダメージは受けてないし、気持ちを伝えておけば良かったとかの後悔もない。
「最初から無理だとも思ってたからな。そんなもんだろって割り切ってるよ」
これは別に陸人さんに限った話じゃない。自分から良いなって思った相手は大抵恋愛対象が女性で、オレなんて最初からその対象に入れていないことばかり。
いつだってオレの片想いは諦めるとこから始まっている。そういうもんだって、わかってるんだ。
真っ直ぐに向けられる高瀬の眼差しが、今は少し痛い。
「恭ちゃん先輩は本気の恋愛をしたい人なんですよね」
「お前は逆だもんな」
「……はい。そもそも、俺は」
自虐的な笑みを浮かべて、高瀬は目を伏せる。高瀬もそんな寂しげな表情を見せることがあるなんて、思いもしなかった。
「あれ、高瀬じゃん! うわ、イケメンもいる!」
続く言葉を掻き消す声に、オレと高瀬は揃って声の方へと顔を向けた。
赤みがかった茶色に染めた髪を緩く巻いた綺麗めな女の子が手を振りながら駆け寄ってくる。多分、高瀬の大学の友達だ。
「マジでカッコいいね! 高瀬の友達?」
「うん、地元の先輩」
バイト先の常連さんだと説明が面倒くさいとしても、大分誤魔化した説明をしたな。
地元が同じなのは嘘じゃないから、広い意味では地元の先輩で間違ってないのかもしれないけど。
「なんか珍しいね。高瀬っていつも大人数で遊んでるイメージだった」
「そりゃ大学の友達は大体が共通の友達だからね。先輩はそういうのじゃないし」
「あー、そっか。あ、もし良かったら先輩さんも一緒にご飯行かない? これからサークルの飲み会なんだ!」
「オレ? いや、そういうの部外者が行ったら迷惑になるだろ?」
「いーのいーの、知らん人が増えてるのなんていつものことだから!」
確かに大学生の頃の飲み会ってそんなノリではあったが、オレの方は知らん飲み会に飛び入り参加出来るほどのコミュ力はない。
「オレはいいよ。高瀬、行ってきたら?」
「え? いや、でも」
「高瀬が来たら早雪も喜ぶよー! あの子まだ未練あるみたいだし」
早雪、と知らない名前に聞き返してしまったのが悪かった。
高瀬が一瞬顔をしかめたのが見えたけど、それも彼女の勢いに流されてしまう。
「先月まで高瀬と付き合ってたんだよねー。自分から高瀬のこと振ったのにまだ好きみたいで悩んでるんだって」
「へぇ……」
高瀬が女の子と付き合っていたことなんて今さら過ぎる話なのに、何故かそれがオレの喉をきつく締め付けるようで息苦しかった。
同性が恋愛対象のオレと違って、高瀬は相手に困ることなんてない。
高瀬から迫らなくたって、相手の方からこうして追いかけてくるくらいだ。
オレがゲイだってことに偏見がないのは本当だと思う。
でも、高瀬がオレに興味を持っているのはオレ自身がどうこうという話じゃなくて、オレが今まで周りにいなかった珍しい相手だからなんだろう。
ゲイではない相手に受け入れられたことが初めてだったから、そんな簡単なことにも気が付かないふりをして浮かれていた。
高瀬は、まだ若い。
興味本位で動くのはいいけど、後悔してからじゃ遅い。
終わらせるなら、早いほうがいい。切り出すのは、オレの方からだ。
「……行ってこいよ」
「え?」
「オレのことは気にしなくていいからさ。それじゃ、また今度な」
二人へと片手を挙げると、オレは高瀬と目を合わせずに背を向けた。
「恭ちゃん先輩って本当に陸人さんのこと好きなんですね」
「なんだよいきなり」
「服見てたときも好みの服装って真面目そうな感じっていうか……店長がよく着てるような感じでしたし」
さっき、高瀬に試着をさせたときのことを思い出す。
オレの好みで選んでみてほしいと言われて渡した服は確かに落ち着きのある大人びた服装だった。そして、高瀬にとてもよく似合っていたけれど、普段の高瀬とは全然違う格好だった。そして、確かに陸人さんがよく着ている格好でもある。
「……好きって言っても本当にただの好みのタイプってだけで、あの人とどうこうなりたいとかは思ってねーよ」
「でも、陸人さんが結婚したときショック受けてたじゃないですか。しばらくお店来なかったですよね」
それも事実だったから反論することが出来ず、オレは黙って高瀬から目を逸らす。というか、気付かれていたのか。
「あの時は何で最近来ないのかなーって思ってたけど、今やっと理由がわかりましたよ」
「まぁ、仕事が忙しかったっていうのもあったけどな……」
密かに片思いしていた相手が結婚をしてショックを受けたのも本当だし、仕事が忙しくてキャパオーバーになりかけていたのも本当だ。
だから高瀬が考えてるほどのダメージは受けてないし、気持ちを伝えておけば良かったとかの後悔もない。
「最初から無理だとも思ってたからな。そんなもんだろって割り切ってるよ」
これは別に陸人さんに限った話じゃない。自分から良いなって思った相手は大抵恋愛対象が女性で、オレなんて最初からその対象に入れていないことばかり。
いつだってオレの片想いは諦めるとこから始まっている。そういうもんだって、わかってるんだ。
真っ直ぐに向けられる高瀬の眼差しが、今は少し痛い。
「恭ちゃん先輩は本気の恋愛をしたい人なんですよね」
「お前は逆だもんな」
「……はい。そもそも、俺は」
自虐的な笑みを浮かべて、高瀬は目を伏せる。高瀬もそんな寂しげな表情を見せることがあるなんて、思いもしなかった。
「あれ、高瀬じゃん! うわ、イケメンもいる!」
続く言葉を掻き消す声に、オレと高瀬は揃って声の方へと顔を向けた。
赤みがかった茶色に染めた髪を緩く巻いた綺麗めな女の子が手を振りながら駆け寄ってくる。多分、高瀬の大学の友達だ。
「マジでカッコいいね! 高瀬の友達?」
「うん、地元の先輩」
バイト先の常連さんだと説明が面倒くさいとしても、大分誤魔化した説明をしたな。
地元が同じなのは嘘じゃないから、広い意味では地元の先輩で間違ってないのかもしれないけど。
「なんか珍しいね。高瀬っていつも大人数で遊んでるイメージだった」
「そりゃ大学の友達は大体が共通の友達だからね。先輩はそういうのじゃないし」
「あー、そっか。あ、もし良かったら先輩さんも一緒にご飯行かない? これからサークルの飲み会なんだ!」
「オレ? いや、そういうの部外者が行ったら迷惑になるだろ?」
「いーのいーの、知らん人が増えてるのなんていつものことだから!」
確かに大学生の頃の飲み会ってそんなノリではあったが、オレの方は知らん飲み会に飛び入り参加出来るほどのコミュ力はない。
「オレはいいよ。高瀬、行ってきたら?」
「え? いや、でも」
「高瀬が来たら早雪も喜ぶよー! あの子まだ未練あるみたいだし」
早雪、と知らない名前に聞き返してしまったのが悪かった。
高瀬が一瞬顔をしかめたのが見えたけど、それも彼女の勢いに流されてしまう。
「先月まで高瀬と付き合ってたんだよねー。自分から高瀬のこと振ったのにまだ好きみたいで悩んでるんだって」
「へぇ……」
高瀬が女の子と付き合っていたことなんて今さら過ぎる話なのに、何故かそれがオレの喉をきつく締め付けるようで息苦しかった。
同性が恋愛対象のオレと違って、高瀬は相手に困ることなんてない。
高瀬から迫らなくたって、相手の方からこうして追いかけてくるくらいだ。
オレがゲイだってことに偏見がないのは本当だと思う。
でも、高瀬がオレに興味を持っているのはオレ自身がどうこうという話じゃなくて、オレが今まで周りにいなかった珍しい相手だからなんだろう。
ゲイではない相手に受け入れられたことが初めてだったから、そんな簡単なことにも気が付かないふりをして浮かれていた。
高瀬は、まだ若い。
興味本位で動くのはいいけど、後悔してからじゃ遅い。
終わらせるなら、早いほうがいい。切り出すのは、オレの方からだ。
「……行ってこいよ」
「え?」
「オレのことは気にしなくていいからさ。それじゃ、また今度な」
二人へと片手を挙げると、オレは高瀬と目を合わせずに背を向けた。
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