お前はオレの好みじゃない!

河合青

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【2】

7.案外、珍しい話でもない

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 十二月に入ると本当に恭ちゃんは忙しくなり、メッセージを送れば返事はあるけど時間は遅いことばかり。朝起きて返信に気付くことが多くなった。
「社会人って本当に大変なんだなぁ……」
 正直、少し甘く見ていたかもしれない。
 俺の考える忙しいと、恭ちゃんの言う忙しいは全然違っていた。
 バイトとテストとレポートが重なったとしても、調整することはそんなに難しくないし、時間を作ろうと思えばなんとでもなる。
 でも、仕事は中々そうはいかない。実際に恭ちゃんが忙しい時期にはお昼食べに来る時間すら取れなくなっていたことを知っていたはずなのに、すっかり頭から抜けてしまっていた。
 社会人の彼氏がいる友達が嘆いている理由が、今になってようやくわかる。
 放っておかれてると泣き付かれたこともあったけど、あれら大袈裟な言い分ではなかったようだ。
「陽」
「わっ! ……って、透か。驚かせないでよ」
 突然掛けられた声に、俺は慌てて手にしていたスマホを伏せる。恭ちゃんへのメッセージは、既読が付いてそのままだった。
「あれ? 透って次の時間空いてなかったっけ?」
「うん。ユウに代わりに出てくれーって頼まれて」
「あはは、結局出てあげるんだ」 
 普段は母親のように厳しいのに、と冗談めかして笑ってみせたが、透は浮かない表情のまま俺の隣の席に腰を下ろす。
 気分でも悪いのだろうか。いつもとは違う様子の透に、俺も心配になってくる。
「透? どうかした?」
「……あのさ、陽。おれの勘違いかもなんだけどこの間の人が陽の恋人?」
 この間の人。透にそう言われて思い当たる人は一人しかいない。
「えっと……それって透のバイト先で会ったときの話?」
「うん」
 恭ちゃんのことだ。なんでわかったんだろう。
 会話が聞こえる距離じゃなかったはずなのに。そもそも、透は人の会話を盗み聞きするような奴ではない。
 違う、とは嘘でも言いたくない。だけど、肯定してしまったら恭ちゃんを困らせることになるのではないかと頷くことを迷ってしまった。
 その沈黙が、十分過ぎる答えとなる。透は申し訳無さそうに笑ってみせると、ごめんと片手を振った。
「こんなとこで話せないよね。陽、午後は授業ないならお昼一緒に食べない?」
「あぁ、うん……ていうか、なんでわかったの?」
 透はまばたきを繰り返し、キョロキョロと辺りを見回した。
 そして、俺たちの席の周りには誰も座っていないことを確認すると、俺の耳元へと顔を寄せた。
「……おれもゲイだから」
 思いがけない発言に、俺は驚いて透の顔をまじまじと見つめてしまった。
 透は気まずそうに、でもどこか安心した様子で微笑んでいた。
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