お前はオレの好みじゃない!

河合青

文字の大きさ
34 / 60
【2】

8.友達

しおりを挟む
 学食内で話をして誰かに聞かれるのは避けたかったから、コンビニで昼飯を買って中庭にあるベンチへと腰を下ろす。
 十二月に入ったとはいえ日差しはそれなりに暖かく、風さえ吹かなければしばらくは座っていられそうだった。
「ホントびっくりした。まさか陽が男と付き合うなんてさ」
「俺だって透もそうだったのは驚きだよ。それ、悠一も知ってるの?」
「知ってるよ。だからおれには女の子紹介したり出会い目的の飲み会は誘ってこないんだよね」
 そういう気遣いが出来るのは意外だった。だったら悠一は俺にももう少し気を遣って良いと思う。
「あ、そうだ透。このことは……」
「わかってるよ。誰にも言わない……あ、あんまりにもユウがしつこかったらユウだけは言っておいてもいいかも。わかってくれるだろうから」
 考えとく、と苦笑と共に頷いて、俺は買ってきたサンドイッチにかぶりついた。
 頬に刺さる透の視線を感じながらも、気付いていないふりをする。
 聞きたいことがありそうだったから、透が話し出すのを待った。
「陽は……ゲイでは、ないよね」
「まぁ、うん。同性と付き合うっていうのも今回が初めて」
 頷いて、透はカップのコーヒーに口をつけた。そわそわと落ち着かない様子で、俺の表情を窺っている。
「びっくりした?」
「え? そりゃもちろん……いやでも、陽ならありえる」
「なんだよそれ」
 透は静かに微笑んで、陽は来るもの拒まずだからと小さく溢した。
 その言葉が、胸の中に落ちてくる。
 雪が降り積もるように、そっと。音もなく俺の中に沈んでいった。
「彼氏、すごいカッコいい人だったよね。先輩ってことはもう社会人?」
「透もそう思う? 恭ちゃんほんとカッコいいんだよね。本人自覚ないけど……。恭ちゃんの職場と俺のバイト先が近いんだ」
「バイト先って定食屋? あの辺オフィス街だもんね。バリバリ仕事してるのカッコいいだろうなぁ」
 にこにこと俺の話を聞き、相槌を打つ透。
 誰かに恋人のことを話したいと思う気持ちも俺には初めてで、自分がいつもより饒舌になっていることに気付くまでには随分とかかった。
「……でも、実際大変なことも多くない? 元々陽は女の子と付き合ってたんだし、慣れるまではきついよね」
「俺はそんなに大変なことはないかな。恭ちゃんの方がしんどそう」
 透は驚いた様子で目を見張ると、近くに人なんていないのに声を潜めて俺との距離を詰めた。
「もしかして、陽がタチなの?」
「うん。……あ、それも意外だった?」
「タチっぽい彼氏だったから……そっか、陽はそっちなんだ」
 俺も最初は抱かれてもいいって言い寄ったから透がそう思う気持ちもわからなくはない。
 透は嬉しそうに微笑むと、両手で俺の手を取り子供みたいに上下に振った。
「今まで周りにゲイの友達っていなくてさ……もちろん陽はゲイってわけじゃないけど、お互いに気持ちもわかる部分はあると思うし……」
 不意に透の声のトーンが落ちていき、さっきまで元気だった指先は不安げに震えていた。
 俺には透の気持ちを全部わかってやることは出来ないけど、恭ちゃんと一緒にいて、恭ちゃんがたくさんのことに傷付いてきたことはわかる。
 きっと、透もそうなんだろう。俺は透の手をぎゅっと握り返すと、同じようにブンブンと振ってみせる。
「俺もわかんないこととか色々あるし、困った時に相談させてよ」
 ずっと一緒にいた悠一が理解を示してくれていたとしても、透の中に孤独感のようなものはきっとあったんだろう。
 ほっとしたように頬を緩める透に、俺も自然と笑みが溢れた。
 友達だから、笑っていてほしいと思うのは当然のことだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

透けるほどうすい/溶けるほどあつい

鴻上縞
BL
 日々何をするでもなく適当に生きていた真柴久志が知人の紹介で入った会社で真柴の教育係になった堂前哲は、仕事は出来るが口調は荒く乱暴で無愛想な取っ付きづらい男だった。しかし歓迎会の席で明かされた哲の驚くべき過去は、真柴の若い好奇心を掻き立てた。  歓迎会の後、真柴は好奇心を抑えきれず、酔に任せて哲に手を出してしまう。  一夜明けて酔いが覚め、気まずさを抱え一応謝罪をしたものの、哲の態度が負けず嫌いな真柴に火を付けて────。  足場鳶職人達の、身体から始まる軽薄で微かに純情な恋物語。

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

処理中です...