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【2】
13.もしも、順番が逆だったら
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「買い物に付き合わせちゃってごめんな」
「気にしないでよ。見ながらの方が良い案出るだろうし」
昼飯の後、近くの商業ビルの中を周るのに付き合ってもらった。
平日だけどクリスマスが近いこともあってか、同年代の数が多くそれなりに疲れてしまった俺たちは、駅ナカのカフェに入って休憩をしている。
「それに、飲み物奢ってもらったしおれとしてはラッキーなくらい」
ニコニコと笑いながら、透は紅茶に口を付ける。それくらい当然だよと答えれば、やっぱり透は笑っていた。
「本当に助かったよ。やっぱ透、センスある」
「そう? それなら良かった。候補は絞れた?」
「うん。後はもう少しお店見て決めようかな」
自分の耳を飾るピアスを指先で弄る。
恭ちゃんの綺麗な耳に穴は空いていないから、イヤリングを贈ろうと思う。俺もお揃いに出来るように、ピアスでも同じデザインのものがあればいいけど。
そんなことを考えていたら、隣りに座っていた透が控えめに俺の袖を引っ張った。
「……あのさ、陽。恋人の話聞いても良い?」
「うん、いいよ」
「陽はさ、どういうきっかけでその人と付き合うことになったの?」
「え?」
「だって、やっぱり驚くっていうか……陽なら告白されれば女でも男でもオーケーしそうなとこはあったけど、ハルの方からっていうのは意外だったからさ」
いい加減言われ慣れてしまったから苦笑をこぼしつつ、俺はバーで会ったときのことを思い出す。
大して時間は経っていないのに、随分と昔のことみたいだ。
「元々俺のバイト先の常連さんで、たまに飲みに行くくらいには仲良い人だったんだよ。だから、もっと仲良くなってみたいなって思ったんだ」
今思えば、それが好きという気持ちだったんだと思う。
俺の話に耳を傾けながら、透は不思議そうに小首を傾げている。
「陽って誰と付き合う時もそんな感じだったよね? 何が特別だったんだろう」
「特別かぁ……」
恭ちゃんが今までの相手と何が違うのか。はっきりと特別だと思う気持ちはあるけれど、何がどう違うのかは俺もうまく言葉に出来ない。
「例えばの話だけど」
少し震えた透の声が、俺の思考を遮った。
「おれの方が先にゲイだってわかってたら、陽はおれを好きになってた?」
「え?」
「だって、そういうことじゃない? 男友達も恋愛対象に出来るって気付いて、それでアプローチしたってことでしょ?」
俺を真っ直ぐに見つめる透の眼差しには、責める色が混ざっている。
「そんなの、ずるいよ」
テーブルの上に置かれていた俺の手を握り締める透の姿に、今まで付き合って欲しいと言ってきた子達の姿が重なって見えた。
恭ちゃんが心配していた意味が、今になってよくわかった。
きっと恭ちゃんは、こうなることがわかっていたんだろう。
駄目だな、俺。自分に向けられる好意の質に気が付くことがいつだって出来ずにいる。
「だって、おれ……」
透の言葉に重なるようにして、外に面したガラスがトントンと叩かれた。
「え……恭ちゃん……!」
駅を利用する人たちが行き交う中で、足を止めて目の前に立っていた人の姿に、俺は思わず立ち上がっていた。
ネクタイまでしっかりと締めたスーツ姿で、髪の毛も緩く一つに纏めているから一瞬誰かわからずに反応が遅れてしまった。
恭ちゃんは驚く俺を見て満足気な笑みを浮かべると、スマホの画面をこちらに向ける。
『すぐ会社戻らないとだから話す余裕ないけど顔見れて良かった』
メモ帳に打たれた文字を目で追ってる間に、恭ちゃんはさっさとスマホを胸ポケットにしまって小さく片手を振って改札の方へと歩いていってしまった。
「待って!」
追いかけようと動き出した俺の手を、透が掴む。
「ごめん……行かないでほしい」
元々は透と出掛けていたんだから、いくら恋人と偶然会ったとはいえ透を優先するのは当然のことだった。
「……俺の方こそごめん。透が俺に付き合ってくれてたのに」
一度小さく深呼吸をして、椅子に座り直す。再び改札の方へと目を向けても、もう恭ちゃんは見つけられそうになかった。
さっきの状況は、恭ちゃんにはどう見えていたんだろう。変な誤解を生んでなければいいんだけど。
「陽」
恭ちゃんのことで頭が一杯になっていた俺の手に、再び透の指先が触れた。
「たまたまさっきの人が初めてだったんなら、おれとも試してみてよ」
その手はすぐに離れ、物憂げにテーブルの上で拳の形を作っていた。
「気にしないでよ。見ながらの方が良い案出るだろうし」
昼飯の後、近くの商業ビルの中を周るのに付き合ってもらった。
平日だけどクリスマスが近いこともあってか、同年代の数が多くそれなりに疲れてしまった俺たちは、駅ナカのカフェに入って休憩をしている。
「それに、飲み物奢ってもらったしおれとしてはラッキーなくらい」
ニコニコと笑いながら、透は紅茶に口を付ける。それくらい当然だよと答えれば、やっぱり透は笑っていた。
「本当に助かったよ。やっぱ透、センスある」
「そう? それなら良かった。候補は絞れた?」
「うん。後はもう少しお店見て決めようかな」
自分の耳を飾るピアスを指先で弄る。
恭ちゃんの綺麗な耳に穴は空いていないから、イヤリングを贈ろうと思う。俺もお揃いに出来るように、ピアスでも同じデザインのものがあればいいけど。
そんなことを考えていたら、隣りに座っていた透が控えめに俺の袖を引っ張った。
「……あのさ、陽。恋人の話聞いても良い?」
「うん、いいよ」
「陽はさ、どういうきっかけでその人と付き合うことになったの?」
「え?」
「だって、やっぱり驚くっていうか……陽なら告白されれば女でも男でもオーケーしそうなとこはあったけど、ハルの方からっていうのは意外だったからさ」
いい加減言われ慣れてしまったから苦笑をこぼしつつ、俺はバーで会ったときのことを思い出す。
大して時間は経っていないのに、随分と昔のことみたいだ。
「元々俺のバイト先の常連さんで、たまに飲みに行くくらいには仲良い人だったんだよ。だから、もっと仲良くなってみたいなって思ったんだ」
今思えば、それが好きという気持ちだったんだと思う。
俺の話に耳を傾けながら、透は不思議そうに小首を傾げている。
「陽って誰と付き合う時もそんな感じだったよね? 何が特別だったんだろう」
「特別かぁ……」
恭ちゃんが今までの相手と何が違うのか。はっきりと特別だと思う気持ちはあるけれど、何がどう違うのかは俺もうまく言葉に出来ない。
「例えばの話だけど」
少し震えた透の声が、俺の思考を遮った。
「おれの方が先にゲイだってわかってたら、陽はおれを好きになってた?」
「え?」
「だって、そういうことじゃない? 男友達も恋愛対象に出来るって気付いて、それでアプローチしたってことでしょ?」
俺を真っ直ぐに見つめる透の眼差しには、責める色が混ざっている。
「そんなの、ずるいよ」
テーブルの上に置かれていた俺の手を握り締める透の姿に、今まで付き合って欲しいと言ってきた子達の姿が重なって見えた。
恭ちゃんが心配していた意味が、今になってよくわかった。
きっと恭ちゃんは、こうなることがわかっていたんだろう。
駄目だな、俺。自分に向けられる好意の質に気が付くことがいつだって出来ずにいる。
「だって、おれ……」
透の言葉に重なるようにして、外に面したガラスがトントンと叩かれた。
「え……恭ちゃん……!」
駅を利用する人たちが行き交う中で、足を止めて目の前に立っていた人の姿に、俺は思わず立ち上がっていた。
ネクタイまでしっかりと締めたスーツ姿で、髪の毛も緩く一つに纏めているから一瞬誰かわからずに反応が遅れてしまった。
恭ちゃんは驚く俺を見て満足気な笑みを浮かべると、スマホの画面をこちらに向ける。
『すぐ会社戻らないとだから話す余裕ないけど顔見れて良かった』
メモ帳に打たれた文字を目で追ってる間に、恭ちゃんはさっさとスマホを胸ポケットにしまって小さく片手を振って改札の方へと歩いていってしまった。
「待って!」
追いかけようと動き出した俺の手を、透が掴む。
「ごめん……行かないでほしい」
元々は透と出掛けていたんだから、いくら恋人と偶然会ったとはいえ透を優先するのは当然のことだった。
「……俺の方こそごめん。透が俺に付き合ってくれてたのに」
一度小さく深呼吸をして、椅子に座り直す。再び改札の方へと目を向けても、もう恭ちゃんは見つけられそうになかった。
さっきの状況は、恭ちゃんにはどう見えていたんだろう。変な誤解を生んでなければいいんだけど。
「陽」
恭ちゃんのことで頭が一杯になっていた俺の手に、再び透の指先が触れた。
「たまたまさっきの人が初めてだったんなら、おれとも試してみてよ」
その手はすぐに離れ、物憂げにテーブルの上で拳の形を作っていた。
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