お前はオレの好みじゃない!

河合青

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【2】

14.誰でもよかったなんて思わない

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 あの後、コーヒーを飲み終わるまで俺と透の間に大した会話はなく、気まずさが残ったままお開きとなった。
 たまたま、初めて出会ったゲイが恭ちゃんだっただけ。透の言っていたことは、俺の中に深くのし掛かっていた。
「ハルちゃんがそんな顔してるなんて珍しいわねぇ」
 一人でバーに訪れれば、ママは笑顔で空いていたカウンター席へと案内してくれた。
 注文しなくても出てくる一杯目は、恭ちゃんが飲んでいるよりも度数を高めに作ってもらっている。
「なぁに? キョーイチと会えなくて落ち込んでるの?」
「会えないことはなんとかなってるんですけど……」
 カウンターの上に置いたスマホに、新しいメッセージの通知はない。
 透と別れた後に、恭ちゃんへあの後何もなかったから心配しないでほしいとメッセージを送ったが、オーケーというスタンプだけが返ってきていた。それだけだと、恭ちゃんが何を考えているのかわからなくて不安になる。
「他の人に言い寄られ掛けてるとこを恭ちゃんに見られちゃって、なんでもないってメッセージは送ったんですけど本当に大丈夫か不安で……」
「キョーイチからは大丈夫って返ってきてるの? それなら平気だと思うけど」
 あの子も子供じゃないんだし、とママは笑いながら俺の肩を叩く。
 確かにこれは、俺が勝手に心配になっているだけのことだ。昼間に会ったときも、恭ちゃんは気にしていない顔をしていた。
「彼氏が女からも男からもアプローチされるって恋人としてはイヤですか?」
「なぁに? ハルちゃん男からも言い寄られてるの? あ、この前の子とか?」
「……ママって何でもお見通しで凄いですね」
「そう? 見るからにハルちゃんに片思いしてます~って顔だったじゃない」
 ママはそう言って頷いていたけど、俺には全然わからなかった。
 こういう鈍さも恭ちゃんを不安にさせるんだと思うと溜息がこぼれる。
「もちろん不安だろうけど、それでもハルちゃんと付き合ってるんでしょ? キョーイチもそこはわかってると思うわよ。そもそもノンケ相手に付き合ってるんだから覚悟の上じゃないかしら?」
 気にすることはないとママは笑っているけれど、そういう不安を与えたくないと思ってしまうんだ。それは、俺じゃ難しいことなんだろうか。
 グラスに口をつけながら、スマホへと目を向ける。やっぱり、あれ以上の言葉は恭ちゃんからは送られてきていなかった。
「ハルちゃんの誰とでも仲良くなれちゃうところは魅力だと思うけどね。キョーイチだって、そういうとこを好きになったんだろうし」
 俺を励ますママの言葉で、落ち込んでいた気持ちは少し楽になった。
 俺が一人で悩んでいても恭ちゃんの気持ちがわかるわけじゃないんだから、うじうじしてても意味なんてないよな。
 あの日、バーの扉を開けた時、俺を見て驚いた顔をしていた恭ちゃんのことを思い出す。
 何でここにお前が、と顔に書いてあったから俺はなんだかほっとしてしまったんだ。
 もしあの時、ここに座っていたのが別の友達だったとしたら、俺は恋に落ちていたんだろうか。
 セフレにはなっていた気がするけれど。でも、好きになったかはわからない。
 あやふやな想い。だけど、その些細な違いが俺には大事だったと思う。
「……会いたいなぁ」
 つい溢れた声は誤魔化しようのない俺の本音。
 一人で悩んでいるのは俺らしくないから、スマホを手に取ると恭ちゃんへと新しくメッセージを送った。
 俺が好きなのは恭ちゃんだけですからね。
 そんなこと、言わなくても当たり前だった。でも、言わないと伝わらないことだってたくさんあるから、こうやって伝えていきたい。
 もう寝ちゃってるかな。そう思ってスマホを伏せようとしたら、恭ちゃんから電話が掛かってきた。
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