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番外編+SS(本編のネタバレ含みます)
Everything-2
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あれから数ヶ月──当然の如くそれらしいことはない。ともにお風呂に入るだけで。
お陰で赤ちゃんは順調に育ってくれている。この先お腹まで出てくれば今度は物理的に難しくなるのだろう。今だけ、この期間だけなのに、自分から誘うことに躊躇を覚えた。
ねだらずともいつも廉からがつがつ来てくれたため、こういう状況に慣れていないのだ。それに、妊婦にその気が起きないと言われてしまえばそれまでになる。
──察してくれるよね、廉なら。
こちらの呼び声に耳を傾けるようにして、頬の横に顔を近づけてくれている廉。私は少し首を捻り、声の代わりに唇を寄せた。
キスは毎日している。とはいえ再会した時のような性急さはなく、セックス前のエロスも感じない。だからと思いきってこちらから仕掛けてみることにしたのだ。
上唇と下唇を使ってあなたの唇を押し開く。どちらからともなく絡んだ舌でもったりとした蜜をかき回す。時には遠慮がちに舌を吸って控え目にねだる。
──もっと奥……。奥まできて私を溶かしてよ廉……。
「ん……ん。レ……ンっ。なんか熱い、の」
「逆上せる前に出るか」
──違うそうじゃない。鈍感ー!
まぁでも仕方ないのかも知れない。いつから安定期かなど私が口にしなければわからない情報だろうし、ひょっとしたらできる期間がないと思っている可能性だってある。
だとしても、だ。三、四ヶ月も禁欲生活を強いられていて男的に色々大丈夫なものだろうか。
──あ。して、ていうより私がするべきだった? したことないよ。どうやって?
「悠は静かだな。寝たか」
「あ、うん。ここ数日ずっと緊張してたみたいだから。家に溶け込めたことに安心して今夜はぐっすりじゃないかな」
できるのにできなそうで、カラダが疼いてしょうがない。だいぶ手慣れてきた旦那様のドライヤー捌きを鏡越しに見つめているとよけい悶々とする。
お風呂上がりから朝まで廉はだいたいぱんつ一丁なのだ。バキバキに割れた腹筋に、鍛え上げられた胸筋、それにボクサーぱんつを押し上げる──なんて、惜しげもなく露出したパーフェクトボディにうっかり見惚れていた。
──だめ。もういやらしい目でしか見れない……。
「恋」
「はい!」
「顔が赤いな。熱あんじゃねーの。湯冷めしねーうちに早く寝んぞ」
「まだ眠くない……」
常に気にかけてくれている。旦那様……パパとしても満点だ。なのに優しいだけじゃ物足りない。私はいつからこんなに欲張りになったのか。
どんなにあざとかろうが、ナイトブラをせず素肌にネグリジェを着たのだが、そこに一切触れられることもない。
そうこう心中悶々としているうちに、キングサイズのベッドヘッドを背にして脚を伸ばし「こい」と自分の隣をトントン叩いている。いよいよ妊婦寝かしつけの体勢に入ろうとしていた。
もう後はない。あえて横ではなく、伸びた脚を伝って旦那様の体をよじのぼっていく。そうして到着地点の胴体にぴったり体をくっつけてしがみついた。
「れーん。布越しに胸当たってんぞ」
「ん。いーのっ」
「あんま押しつけんな勃つ」
「ん。いーよ?」
「今日はまた随分と甘えただな」
──ベターハーフどこいったのかな!
あれだけ相性が良かったのに今夜はなんでか全くといっていいほど噛み合わない。察してくれる様子もない。
──ねえ。廉……ずっと我慢してたの、私だけ……?
私なりのゴーサインが尽くかわされ、さすがに泣けてきた。
恥ずかしいのに、でももうたまらなくなって──唇を耳に寄せ、消え入りそうな声でようやっと口にした。
「……レ、ン。抱いて? えっち。しよ?」
これが精一杯、もう頑張れない。それなのに廉はうんともすんとも言ってくれないのだ。ただただ沈黙が流れる。
──私やっちゃった? もしかして声が小さすぎて聴こえなかった、とか?
だとしても二度も言う勇気はない。恐る恐る廉の様子を窺う。すると何故か満足げな顔があってきょとんとするしかないのだった。
「やっと言ったな?」
「──え?」
──ええ。
お陰で赤ちゃんは順調に育ってくれている。この先お腹まで出てくれば今度は物理的に難しくなるのだろう。今だけ、この期間だけなのに、自分から誘うことに躊躇を覚えた。
ねだらずともいつも廉からがつがつ来てくれたため、こういう状況に慣れていないのだ。それに、妊婦にその気が起きないと言われてしまえばそれまでになる。
──察してくれるよね、廉なら。
こちらの呼び声に耳を傾けるようにして、頬の横に顔を近づけてくれている廉。私は少し首を捻り、声の代わりに唇を寄せた。
キスは毎日している。とはいえ再会した時のような性急さはなく、セックス前のエロスも感じない。だからと思いきってこちらから仕掛けてみることにしたのだ。
上唇と下唇を使ってあなたの唇を押し開く。どちらからともなく絡んだ舌でもったりとした蜜をかき回す。時には遠慮がちに舌を吸って控え目にねだる。
──もっと奥……。奥まできて私を溶かしてよ廉……。
「ん……ん。レ……ンっ。なんか熱い、の」
「逆上せる前に出るか」
──違うそうじゃない。鈍感ー!
まぁでも仕方ないのかも知れない。いつから安定期かなど私が口にしなければわからない情報だろうし、ひょっとしたらできる期間がないと思っている可能性だってある。
だとしても、だ。三、四ヶ月も禁欲生活を強いられていて男的に色々大丈夫なものだろうか。
──あ。して、ていうより私がするべきだった? したことないよ。どうやって?
「悠は静かだな。寝たか」
「あ、うん。ここ数日ずっと緊張してたみたいだから。家に溶け込めたことに安心して今夜はぐっすりじゃないかな」
できるのにできなそうで、カラダが疼いてしょうがない。だいぶ手慣れてきた旦那様のドライヤー捌きを鏡越しに見つめているとよけい悶々とする。
お風呂上がりから朝まで廉はだいたいぱんつ一丁なのだ。バキバキに割れた腹筋に、鍛え上げられた胸筋、それにボクサーぱんつを押し上げる──なんて、惜しげもなく露出したパーフェクトボディにうっかり見惚れていた。
──だめ。もういやらしい目でしか見れない……。
「恋」
「はい!」
「顔が赤いな。熱あんじゃねーの。湯冷めしねーうちに早く寝んぞ」
「まだ眠くない……」
常に気にかけてくれている。旦那様……パパとしても満点だ。なのに優しいだけじゃ物足りない。私はいつからこんなに欲張りになったのか。
どんなにあざとかろうが、ナイトブラをせず素肌にネグリジェを着たのだが、そこに一切触れられることもない。
そうこう心中悶々としているうちに、キングサイズのベッドヘッドを背にして脚を伸ばし「こい」と自分の隣をトントン叩いている。いよいよ妊婦寝かしつけの体勢に入ろうとしていた。
もう後はない。あえて横ではなく、伸びた脚を伝って旦那様の体をよじのぼっていく。そうして到着地点の胴体にぴったり体をくっつけてしがみついた。
「れーん。布越しに胸当たってんぞ」
「ん。いーのっ」
「あんま押しつけんな勃つ」
「ん。いーよ?」
「今日はまた随分と甘えただな」
──ベターハーフどこいったのかな!
あれだけ相性が良かったのに今夜はなんでか全くといっていいほど噛み合わない。察してくれる様子もない。
──ねえ。廉……ずっと我慢してたの、私だけ……?
私なりのゴーサインが尽くかわされ、さすがに泣けてきた。
恥ずかしいのに、でももうたまらなくなって──唇を耳に寄せ、消え入りそうな声でようやっと口にした。
「……レ、ン。抱いて? えっち。しよ?」
これが精一杯、もう頑張れない。それなのに廉はうんともすんとも言ってくれないのだ。ただただ沈黙が流れる。
──私やっちゃった? もしかして声が小さすぎて聴こえなかった、とか?
だとしても二度も言う勇気はない。恐る恐る廉の様子を窺う。すると何故か満足げな顔があってきょとんとするしかないのだった。
「やっと言ったな?」
「──え?」
──ええ。
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