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番外編+SS(本編のネタバレ含みます)
澤拓の受難ー2
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あの夜、俺はたしかに据え膳を食った。
ああ紛れもなく、めくるめく刺激的な一夜だった……喘ぎまくる俺を凛は可愛い可愛いと言って何度も──
「……やばい。ニヤけちまう」
回想しだすとゆうに半日は惚けていられるので、濃厚なあれこれは割愛しようと思う。
告白。そうだきちんと段階を踏みたくて、俺は事前にベッドに正座して告白しかけた。「付き合ってください」と。ところが俺が許された発言は冒頭の「つき」のみ。凛に「こういう関係がいい」と食い気味に先手を取られてしまったために、俺はその先をぐっと呑み込んだのだった。
事情が事情とはいえ、カラダだけの関係──凛は俺にセフレを所望した。
『ああわかった。カラダから口説いてやる』
廉が言いそうな甘すぎて吐きそうな台詞など、もちろん言えやしない。
立派なのは喘ぎだけ。自分にそこまでの自信もテクもない。情けない話、そこそこの澤拓が凛を繋ぎ止めておくには「セフレ」という不安定な関係を継続するほか術がなかったのである。
その関係性は五年経った今も変わらない。大事なことなので二回言っておく。週一、二発ペースのセフレ歴五年だ。
そうはいっても、こんな不毛な関係が数年も続いているということは、凛にも少なからず愛や執着といった感情が芽生えていると信じたい。なんなら同情でもいい。そう思えてしまうほど、俺はますます凛にどっぷりはまっていた。
「いよいよね。私も緊張してきたー」
「だな。まぁ上手くいくっしょ。廉だし」
本日は、俺らチームの勤務先・ホテルで結城新総帥披露パーティーが開かれる。廉と恋ちゃんにとっては大一番とも言える。
会場にて、恋ちゃんを苦しめていた義母と妹を絶望の淵に堕としてやるのだとか。廉が新総帥就任挨拶を終え、名実ともに結城財閥総帥に就任した暁には、そのままその舞台を拝借して結婚式を挙げるらしい。
──血も涙もね……、廉スマートすぎだろ……。
廉は男の俺から見ても魅力的すぎた。常に自信に満ち溢れており、その自信を裏付ける実力まで兼ね備えている。
そんな無敵男に触発されたのか、俺も今夜、乾坤一擲の大勝負に出る決心をした。結城財閥の式典とあらばあの方も当然会場に現れる。結城現総帥──凛の父親が。
「どうしたの拓真。きっちりタキシードなんて着ちゃったりして」
「あーうん、まぁ、ちょっと思うところがあってだな……」
「ふぅん」
珍しく隠し事をしたために、凛は物言いたげな目をこちらへ向けていた。
たしかに新郎となる廉を差し置いてタキシードはさすがにまずかった。でもこれは俺の覚悟でもあって──
開場までの二時間弱。チームメンバーはパーティー用の装いに着替えたあと、各々の場所でそれぞれの時間を過ごしていた。
凛と俺は、ホテル本館の脇に建ったチャペルで休憩をとることに。凛は長椅子に腰掛け、俺の肩にもたれかかる。
「──好きよ拓真」
自動演奏で流れるパイプオルガンの音色が、透き通った凛の声を優しく包む。
「どっした急に」
「今まではっきり言葉にしたことなかったなって思って。……舐めてあげよっか」
「はっ!? 今? いやここでっ?」
「誰もいないし。喘いでも大丈夫」
「や、待て。お前の口気持ちよすぎてだな、てか好きすぎてもう俺凛にされるとすぐ出──」
「そうやって馬鹿正直に焦っちゃうとこなんかすごく好き」
「りーーん! 俺で遊ぶなっ」
赤っ恥を晒した俺を、可愛くてたまらないといった顔をして凛がクスクス笑う。この小悪魔的な笑みが、俺の愛を掴んで離さない。
「どうせいつか別れるなら、口に出さないほうがお互いの為だと思ってたのよ。セフレって便利なフレーズよねー。でもね~ダブルれん見てたらそうも言ってられなくなっちゃった。──好き好き拓真大好き!!」
十メートルもの天井高を誇るチャペルに、天の声と言わんばかりに愛が響く。
「どした凛。今日なんかすげー可愛いぞ」
「失礼ね。いつの日も可愛いわよ」
「や見てくれじゃなくて、さ」
微かに頬を膨らませて見せる凛に、俯きがちに照れる俺。
この様子からすると、凛もまた溢れる感情を制御せざるを得なかったのでは、と俺は思い及ぶ。
というのも凛は良家の子女であり、幼い頃から決まった婚約者がいるという。廉と同様に自らの意思で結婚相手を選ぶことができない。それゆえ俺との関係に「セフレ」という枷をはめたのだ。
凛の事情を理解していたからこそ、俺もこの関係に甘んじてきた。
「家を出たって決して血筋からは逃げられないなんて。生まれてくる家間違ったな~。愛する人と結婚……かぁ」
「凛の話?」
「廉の話。どれだけ続くかもわからないって心では理解していても、磁石のS極とM極はどうしようもなく惹きつけあってしまうものよねー」
すかさず「N極な」とツッコミを入れた俺だが、凛は構わず続ける。
「ごめんね。私の事情でまともに付き合えなくて。拓真を手放したくなくてずっと別れを切り出せずにいたのよねー。拓真には拓真の幸せがあるのに」
凛にしては珍しく謙虚な物言いをしてから、重力に従い隣の肩に頭部をおとす。拓真は当然の如く迎え入れ、凛の頭上に頬を寄せた。
感じていた。廉の話をしつつ、どこかこの関係に不安を抱えていることは、いつも。その度に俺はベッドの上で愛を伝えてきたはずだが、やはりカラダだけでは繋がれないものもある。
「あの、さ、一度ちゃんと言っときたかったんだけど。気が強そうで案外情にもろい凛とか、ほんとは甘えたいのにそれができない凛とか全部可愛くて。俺にとっては最初からセフレじゃなかったから。凛がそういうことにしたそうだったからなんも言わなかっただけで」
「拓真……」
「鍛え上げられたM極なめんなよ? 凛が望んでくれんならいつか絶対奪いに行くって決めてんだ俺。だから、頼むから凛と俺の幸せを分けようとすんな」
そう、今日はそのためのタキシード装備だ。凛の父親にきちんと挨拶をして、結婚の許しをもらうための。と、妙に照れくさくなって鼻を擦っていると、凛のスイッチが押される音がどこかで聴こえた。
「……可愛い。やっぱり舐めてあげる」
「はっ!?」
「ここで最後までは無理だから拓真だけでも気持ちよくしてあげるって言ってるの」
「や待て、待て待て待てつーか普通逆だろ男が女をっ」
「いーじゃない。よそはよそ、うちはうち」
半ば強引に押し切られる、いつものことだ。
器用にベルトのバックルを外すと、期待に満ちた欲望にそっと手があてがわれる。傷一つないすらっとした指がまるで音を奏でるように性感帯を弾いた。
「んっぁ。あ、やば……ん。~~~あーもー! これのどこが良家の子女だよ……っ!」
思わせぶりに指を添えつつ、上品な唇が側面を擦っては頭部のでっぱりを吸い上げて……を、巧みに緩急をつけて繰り返される。
ある男は、たまらず頭を押さえつけてさせそうなものだが俺はそうはしない。埋まった凛の頭を壊れ物にでも触れるかのように掌で包み、赤子をあやす手つきで柔く撫でた。
「り……んっ。裏は、筋、やばっぁ……あぁ凛……」
「んっ。たくっま……きもちいい?」
「いい。に、決まってんだろっ凛もうやば、いからっ」
「んーいいよ。そのままいって」
拓真は度々戸惑う。このお淑やかな唇を穢していいものか、と。
とはいえこれを口にしたところで凛が引き下がるはずもなく。それは雄が欲情を吐き出すまで容赦なく続く。
「──っ。凛。ちゃんと好きだかんなっ」
俺のうん年越しの告白に、涙をぐっと堪えたような呻きを零す凛。彼女は顎を引いているので、俺はその稀有な表情を拝めない。
ノンストップで駆け上がっていく右肩上がりの曲線が頂きに達する時、俺は思わず、手元に置かれた凛の手を握る。凛の手はどちらも、俺をしっかりと握っていた。
それからさらに二年。凛とカラダの関係をもってからかれこれ七年が経つ。何度でも言う。手に入るかもわからない凛とのセフレ関係に甘んじて、五年の次は二年だ。廉と恋ちゃんの第一子・凱なんてもうすぐ二歳になるというのに。
廉の新総帥披露パーティーでは、凛の父親に全く相手にされなかった。そのため、以降は凛とともにお父上のもとへ足繁く通い、その都度追い返され──を繰り返すこと約二年。ようやく凛との結婚の許しが出た。
「……あーもうやば、俺幸せすぎて泣きそうっ」
ガラスの階段の頂点、祭壇にて、俺の女神と向き合う。
そう、結婚式場は俺らチームが立て直しに成功したホテルの屋上──廉と恋ちゃんが式を挙げたナイトウェディングである。そのウェディングプラン名は「溺恋マリアージュ」というが、今夜の主役は凛と俺だ。
「り……んっ」
泣きそうと言ったそばから、感極まって、感無量で、俺のつぶらな瞳からは涙が溢れてしかたない。それを新婦の凛がシルクのハンカチで拭ってくれていた。
「いいのよ拓真はそのままで。大丈夫。私が拓真を幸せにしてあげる──!」
「りーーん!!」
最後の最後まで、俺という俺は本当に格好がつかない。
七年も待って、待って……耐え忍んで、俺は極上の花嫁を手に入れた。だがここまで待てる俺は、凛が見込んだ通りやっぱりドMなのだと確信した。
【番外編⑥澤拓の受難 ~End~】
めでたしめでたし(???)
次回からは廉恋and more…のSSです! まりる
ああ紛れもなく、めくるめく刺激的な一夜だった……喘ぎまくる俺を凛は可愛い可愛いと言って何度も──
「……やばい。ニヤけちまう」
回想しだすとゆうに半日は惚けていられるので、濃厚なあれこれは割愛しようと思う。
告白。そうだきちんと段階を踏みたくて、俺は事前にベッドに正座して告白しかけた。「付き合ってください」と。ところが俺が許された発言は冒頭の「つき」のみ。凛に「こういう関係がいい」と食い気味に先手を取られてしまったために、俺はその先をぐっと呑み込んだのだった。
事情が事情とはいえ、カラダだけの関係──凛は俺にセフレを所望した。
『ああわかった。カラダから口説いてやる』
廉が言いそうな甘すぎて吐きそうな台詞など、もちろん言えやしない。
立派なのは喘ぎだけ。自分にそこまでの自信もテクもない。情けない話、そこそこの澤拓が凛を繋ぎ止めておくには「セフレ」という不安定な関係を継続するほか術がなかったのである。
その関係性は五年経った今も変わらない。大事なことなので二回言っておく。週一、二発ペースのセフレ歴五年だ。
そうはいっても、こんな不毛な関係が数年も続いているということは、凛にも少なからず愛や執着といった感情が芽生えていると信じたい。なんなら同情でもいい。そう思えてしまうほど、俺はますます凛にどっぷりはまっていた。
「いよいよね。私も緊張してきたー」
「だな。まぁ上手くいくっしょ。廉だし」
本日は、俺らチームの勤務先・ホテルで結城新総帥披露パーティーが開かれる。廉と恋ちゃんにとっては大一番とも言える。
会場にて、恋ちゃんを苦しめていた義母と妹を絶望の淵に堕としてやるのだとか。廉が新総帥就任挨拶を終え、名実ともに結城財閥総帥に就任した暁には、そのままその舞台を拝借して結婚式を挙げるらしい。
──血も涙もね……、廉スマートすぎだろ……。
廉は男の俺から見ても魅力的すぎた。常に自信に満ち溢れており、その自信を裏付ける実力まで兼ね備えている。
そんな無敵男に触発されたのか、俺も今夜、乾坤一擲の大勝負に出る決心をした。結城財閥の式典とあらばあの方も当然会場に現れる。結城現総帥──凛の父親が。
「どうしたの拓真。きっちりタキシードなんて着ちゃったりして」
「あーうん、まぁ、ちょっと思うところがあってだな……」
「ふぅん」
珍しく隠し事をしたために、凛は物言いたげな目をこちらへ向けていた。
たしかに新郎となる廉を差し置いてタキシードはさすがにまずかった。でもこれは俺の覚悟でもあって──
開場までの二時間弱。チームメンバーはパーティー用の装いに着替えたあと、各々の場所でそれぞれの時間を過ごしていた。
凛と俺は、ホテル本館の脇に建ったチャペルで休憩をとることに。凛は長椅子に腰掛け、俺の肩にもたれかかる。
「──好きよ拓真」
自動演奏で流れるパイプオルガンの音色が、透き通った凛の声を優しく包む。
「どっした急に」
「今まではっきり言葉にしたことなかったなって思って。……舐めてあげよっか」
「はっ!? 今? いやここでっ?」
「誰もいないし。喘いでも大丈夫」
「や、待て。お前の口気持ちよすぎてだな、てか好きすぎてもう俺凛にされるとすぐ出──」
「そうやって馬鹿正直に焦っちゃうとこなんかすごく好き」
「りーーん! 俺で遊ぶなっ」
赤っ恥を晒した俺を、可愛くてたまらないといった顔をして凛がクスクス笑う。この小悪魔的な笑みが、俺の愛を掴んで離さない。
「どうせいつか別れるなら、口に出さないほうがお互いの為だと思ってたのよ。セフレって便利なフレーズよねー。でもね~ダブルれん見てたらそうも言ってられなくなっちゃった。──好き好き拓真大好き!!」
十メートルもの天井高を誇るチャペルに、天の声と言わんばかりに愛が響く。
「どした凛。今日なんかすげー可愛いぞ」
「失礼ね。いつの日も可愛いわよ」
「や見てくれじゃなくて、さ」
微かに頬を膨らませて見せる凛に、俯きがちに照れる俺。
この様子からすると、凛もまた溢れる感情を制御せざるを得なかったのでは、と俺は思い及ぶ。
というのも凛は良家の子女であり、幼い頃から決まった婚約者がいるという。廉と同様に自らの意思で結婚相手を選ぶことができない。それゆえ俺との関係に「セフレ」という枷をはめたのだ。
凛の事情を理解していたからこそ、俺もこの関係に甘んじてきた。
「家を出たって決して血筋からは逃げられないなんて。生まれてくる家間違ったな~。愛する人と結婚……かぁ」
「凛の話?」
「廉の話。どれだけ続くかもわからないって心では理解していても、磁石のS極とM極はどうしようもなく惹きつけあってしまうものよねー」
すかさず「N極な」とツッコミを入れた俺だが、凛は構わず続ける。
「ごめんね。私の事情でまともに付き合えなくて。拓真を手放したくなくてずっと別れを切り出せずにいたのよねー。拓真には拓真の幸せがあるのに」
凛にしては珍しく謙虚な物言いをしてから、重力に従い隣の肩に頭部をおとす。拓真は当然の如く迎え入れ、凛の頭上に頬を寄せた。
感じていた。廉の話をしつつ、どこかこの関係に不安を抱えていることは、いつも。その度に俺はベッドの上で愛を伝えてきたはずだが、やはりカラダだけでは繋がれないものもある。
「あの、さ、一度ちゃんと言っときたかったんだけど。気が強そうで案外情にもろい凛とか、ほんとは甘えたいのにそれができない凛とか全部可愛くて。俺にとっては最初からセフレじゃなかったから。凛がそういうことにしたそうだったからなんも言わなかっただけで」
「拓真……」
「鍛え上げられたM極なめんなよ? 凛が望んでくれんならいつか絶対奪いに行くって決めてんだ俺。だから、頼むから凛と俺の幸せを分けようとすんな」
そう、今日はそのためのタキシード装備だ。凛の父親にきちんと挨拶をして、結婚の許しをもらうための。と、妙に照れくさくなって鼻を擦っていると、凛のスイッチが押される音がどこかで聴こえた。
「……可愛い。やっぱり舐めてあげる」
「はっ!?」
「ここで最後までは無理だから拓真だけでも気持ちよくしてあげるって言ってるの」
「や待て、待て待て待てつーか普通逆だろ男が女をっ」
「いーじゃない。よそはよそ、うちはうち」
半ば強引に押し切られる、いつものことだ。
器用にベルトのバックルを外すと、期待に満ちた欲望にそっと手があてがわれる。傷一つないすらっとした指がまるで音を奏でるように性感帯を弾いた。
「んっぁ。あ、やば……ん。~~~あーもー! これのどこが良家の子女だよ……っ!」
思わせぶりに指を添えつつ、上品な唇が側面を擦っては頭部のでっぱりを吸い上げて……を、巧みに緩急をつけて繰り返される。
ある男は、たまらず頭を押さえつけてさせそうなものだが俺はそうはしない。埋まった凛の頭を壊れ物にでも触れるかのように掌で包み、赤子をあやす手つきで柔く撫でた。
「り……んっ。裏は、筋、やばっぁ……あぁ凛……」
「んっ。たくっま……きもちいい?」
「いい。に、決まってんだろっ凛もうやば、いからっ」
「んーいいよ。そのままいって」
拓真は度々戸惑う。このお淑やかな唇を穢していいものか、と。
とはいえこれを口にしたところで凛が引き下がるはずもなく。それは雄が欲情を吐き出すまで容赦なく続く。
「──っ。凛。ちゃんと好きだかんなっ」
俺のうん年越しの告白に、涙をぐっと堪えたような呻きを零す凛。彼女は顎を引いているので、俺はその稀有な表情を拝めない。
ノンストップで駆け上がっていく右肩上がりの曲線が頂きに達する時、俺は思わず、手元に置かれた凛の手を握る。凛の手はどちらも、俺をしっかりと握っていた。
それからさらに二年。凛とカラダの関係をもってからかれこれ七年が経つ。何度でも言う。手に入るかもわからない凛とのセフレ関係に甘んじて、五年の次は二年だ。廉と恋ちゃんの第一子・凱なんてもうすぐ二歳になるというのに。
廉の新総帥披露パーティーでは、凛の父親に全く相手にされなかった。そのため、以降は凛とともにお父上のもとへ足繁く通い、その都度追い返され──を繰り返すこと約二年。ようやく凛との結婚の許しが出た。
「……あーもうやば、俺幸せすぎて泣きそうっ」
ガラスの階段の頂点、祭壇にて、俺の女神と向き合う。
そう、結婚式場は俺らチームが立て直しに成功したホテルの屋上──廉と恋ちゃんが式を挙げたナイトウェディングである。そのウェディングプラン名は「溺恋マリアージュ」というが、今夜の主役は凛と俺だ。
「り……んっ」
泣きそうと言ったそばから、感極まって、感無量で、俺のつぶらな瞳からは涙が溢れてしかたない。それを新婦の凛がシルクのハンカチで拭ってくれていた。
「いいのよ拓真はそのままで。大丈夫。私が拓真を幸せにしてあげる──!」
「りーーん!!」
最後の最後まで、俺という俺は本当に格好がつかない。
七年も待って、待って……耐え忍んで、俺は極上の花嫁を手に入れた。だがここまで待てる俺は、凛が見込んだ通りやっぱりドMなのだと確信した。
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