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A Ridiculous Thief
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ペダルがないのよ、と妻は家に戻るなり大声で言った。
僕は、彼女がすでに出かけたものだとばかり思っていたので、何か重大なトラブルにみまわれて帰ってきたのだと思って、慌てた。
彼女は息を切らしてなにやら尋常でない様子だったし、口ぶりもまるで子供がさらわれたかのような大袈裟なものだったので、僕は思わずソファーから跳ね上がるように立ち上がってしまった。その拍子に膝の上で眠っていた猫はカーペットに転げ落ち、ふぎぃと奇妙な声を発した。猫は動物的に危険を察知して瞬時に身を翻し、妻の足元をぬけてリビングを出て行ってしまった。
しかし、落ち着いて考えればペダルがないというだけの話なのだ。そう慌てふためくようなことではない。
「ペダルがないって、自転車の?」
僕は落ち着き払って、そう言った。
「そうよ、わたしの自転車のペダルがないの」
妻は肩に下げていたバッグを地面にぼとりと落とし、床に力なくへたり込んだ。彼女がそこまで動揺している姿を目にするのは初めてだった。
僕が知っている妻は、家の中で彼女が嫌いな虫を見かけても、特に声を上げることもなく、机に置かれた最も不要なチラシを選別し、虫をチラシにそっと包んで外に出してあげるような、そんな人間だ。
だから、単にペダルが無くなったというだけではなく、それに付随する何らかの事情があるのではないかと考えた。それで、ひとまず彼女が平静を取り戻すまで待ち、ソファーに座らせてから時間をかけて熱いコーヒーを淹れた。
「それで、ペダルが無くなったっていうのは?」
コーヒーに口をつけた彼女に向かって、僕は尋ねた。
「買い物に行こうと思って、外の駐車場に行ってみたら、自転車のペダルがなかったの。ペダルがないと自転車を動かすことはできないでしょう。それで、周りをくまなく探してみたんだけれど、見つからなくって」
「ペダル……サドルじゃなくて?」
「そうよ、左右それぞれのペダルがないの。まるで最初からそこになかったみたいに」
自転車のサドルが盗まれるというケースはよく聞くけれども、ペダルだけが盗られるという話はあまり聞いたことが無い。それに、僕は昨日子供とサイクリングに出かけたときまでは、しっかりペダルはついていたのだ。
となれば、昨晩から今朝にかけて、誰かがペダルを奪い去っていったということになる。あるいは、跡形も無く消滅してしまったかのどちらかだ。
以前、車のワイパーが無くなってしまったことがあった。同じく、朝起きてみると無くなっていた。無くなっていたとはいっても、根元からポッキリ折られてしまっていたというだけのことだった。おそらく、酒に酔った誰かが悪ふざけで折っていったのではないか。腹はたったが、だからといって折られてしまったものはどうしようもないし、警察に届け出るほど大それたことでもなかったから、そのまま修理に持っていった。
ポリバケツのふたを持ち去られたということもあった。こちらはまあ、ポリバケツのふたが無くて困った誰かが盗んでいったのだろう。
それらの出来事をよく思い返してみると、無くなったことを発見したのは僕のほうだった。どちらも妻に報告はしたが、今回のように彼女が動揺するようなことはなかった。
僕は妻をリビングに残したまま駐車場に行ってみた。自動車が一台と、大人用と子供用の自転車が二台、いつもと同じように置かれている。それらに特別な変化はない。
しかし、大人用の自転車に近寄って確認すると、確かにペダルは両方とも無くなっていた。それも、じっくり観察すると、ペダルの破片のようなものは一切残されておらず、きれいに無くなっていた。芸術的といってもいいほど跡形も無く消え去っていた。
しかしながら、自転車に傷つけることなくペダルだけをすっぽり持ち去っていくなんて、なかなかできることではない。誰かが持ち去ったとすれば、それ相応の工具をきちんと準備して、人通りの少ない夜中の時間帯に自転車と向かい合い、ライトで手元を照らしながら外していったと考えるのが妥当なところだ。しかし一体何のために、そいつはペダルなんて盗んでいったのだろう。ごく普通の自転車の、なんの変哲もないペダルに、いったいどんな価値を見出したのか理解しかねる。
リビングに戻ると妻はいくぶん正気を取り戻していた。両の頬に涙の痕が残っていた。彼女はペダルが無くなったというだけで涙を流したのだ。客観的に考えると、その状況はとてもおかしいものだった。それで、僕は少しだけ笑ってしまった。それを表情に出したのがまずかった。
「なんで笑っているの?」
僕の表情を見咎めて、そう口を開いた妻の声は少しだけ震えていた。彼女は本気で怒っているのだ。また混乱されると面倒なので、僕はなるべく穏やかさを繕ってなだめにかかる。
「ちがうよ。ペダルが無くなって悲しむ君の気持ちはわからないでもないし、それでどれだけショックを受けたかということも、君の姿から想像はできる」
「じゃあどうして、あなたはわたしを見て笑ったの。おかしくなかったら笑うはずはないわ。なにがおかしかったの。わたしがペダルくらいで混乱したのが馬鹿らしかったの?」
僕はその問いに対して何も応えることができなかった。まさしく僕には、ペダル程度で何をそれほど動揺しているのかというあきれた気持ちがあった。彼女の指摘は図星だったのだ。しかし、ペダルくらいホームセンターで買ってきて取り付ければ済む話ではないか。なにも泣いて取り乱すことはない。
しかしいくら正論を言ったところで事態は収まりそうにない。なにしろ、じきに小学校から子供も帰ってくる。子供がいきなりこの状態を見れば、僕と妻が喧嘩をした挙句に彼女を泣かせたものだと思うだろう。仮に言葉を尽くして説明したとしても、子供にこの状況を理解してもらえるはずがない。むしろ大人にだって不可能だ。いずれにしろ彼女には元の状態に回復してもらわなければならなかった。
「よし、わかった。じゃあ約束するよ。僕は今から車でホームセンターに行って自転車用のペダルを買う。元のペダルと同じものを。そのついでにスーパーに寄って買い物もする。帰ってきてから、僕が責任をもって自転車を直す。しっかり元通りに、ね」
「でも……」
彼女が言葉を発そうとするのをおしとどめ、僕は続ける。
「そして、君はこの件に関してなんら責任はない。君が悪かったわけでもないし、僕の態度が君の混乱を招いたことを深く反省している。今後、二度とこのようなことが繰り返されないように、自転車は玄関に入れよう。そうすれば誰かが勝手にペダルを盗んでいくなんて事はできない。」
彼女はようやく落ち着きを取り戻したようだった。
しばらくして僕たちは自動車に乗り込み、自転車屋でペダルを買い求め、スーパーマーケットで食材も買った。今夜はポトフを作ることにした。これから手の込んだ料理をする気には到底なれなかった。僕はとても疲れていた。休日だというのになんだってこんな妙な事態に見舞われなければならないのだ。赤信号で停車し、目の前の横断歩道を次々に人が渡っていくのを眺めながら、そう愚痴りたい気になった。
「わたし、これまで一度たりとも物をなくしたことって、なかったのよ」
不意に助手席の妻がそう言った。僕は油断して聞き流しそうになったが、彼女の口ぶりからするとどうやら本気で言っているらしかった。
「一度も? 子供のときに遊んでいた玩具がどこかへいってしまったたりとか、鉛筆や消しゴムといった文房具がなくなったりしたことも?」
そう僕が訪ねると、ふむ、と妻は考え込んでから、
「ないわ。少なくとも無くなったと思って探してみたらすぐに見つかるなんてことばかりだったから」
「つまり今回のように物を無くしたというのは初めての経験だった、ってこと?」
つまらない冗談を言うような雰囲気ではなかったし、頷く妻の表情におどけたような様子は全くなかった。
仮に物がなくなったという経験がないとすれば、その事態に対する免疫がなかった妻が混乱したというのも、わからない話ではない。
親から手をあげられたことのない子供が先生から叩かれると、深いショックを受けるのと、似たようなものだ。問題は彼女が子供でなく立派な大人であることだ。だが、むしろ大人になるまで叩かれたことのない人間が叩かれれば、同じ条件の子供以上に深く傷つくかもしれない。そして、今まで物を無くしたことがないというのは奇跡的なめぐりあわせであり、ある意味では悲劇だったのかもしれないのだ。そして、そのことについて彼女に責任はない。
僕はそのように自分を納得させるしかなかった。
家に帰ると、僕は約束どおりペダルを修理した。元に戻った自転車を見せると、妻の顔はようやくほころんだ。
帰ってきていた子供も母親の顔の険しさがなくなったことで、喜んだ。
厄介事を乗り切って、僕もようやくほっと一息をついた。
それから彼女は夕食の準備にとりかかり、僕は子供と一緒にお風呂に入った。あがってからビールを飲み、先に出来上がった前菜などをつついていた。ようやく落ち着いて家族そろってくつろいでいると、妻が猫に餌をやり忘れたことに気づいた。朝食と夕食の際、猫に餌をやることにしているのだ。たまには高い缶詰の餌でもあげるといい、と僕は言う。
妻が猫の名前を呼んだ。いつもなら名前を呼ぶ前にリビングで待機しているのに、珍しい。妻はキャットフードの缶詰を片手に部屋を出て行く。子供が僕の隣の席に座って、まだ食べないのと机に箸を突き立てた。
もうすぐ。
お母さんが猫に餌をあげたら、それから食べよう。
ポトフはコンロの上でぐつぐつと煮立っていた。どう考えても火が強いような気がしたので、弱火にする。
つけっぱなしにしていたテレビから、キャットフードのCMが流れる。
そして僕は、膝から落としてリビングを出ていったきり、猫の姿を見ていないことに気づく。
僕は、彼女がすでに出かけたものだとばかり思っていたので、何か重大なトラブルにみまわれて帰ってきたのだと思って、慌てた。
彼女は息を切らしてなにやら尋常でない様子だったし、口ぶりもまるで子供がさらわれたかのような大袈裟なものだったので、僕は思わずソファーから跳ね上がるように立ち上がってしまった。その拍子に膝の上で眠っていた猫はカーペットに転げ落ち、ふぎぃと奇妙な声を発した。猫は動物的に危険を察知して瞬時に身を翻し、妻の足元をぬけてリビングを出て行ってしまった。
しかし、落ち着いて考えればペダルがないというだけの話なのだ。そう慌てふためくようなことではない。
「ペダルがないって、自転車の?」
僕は落ち着き払って、そう言った。
「そうよ、わたしの自転車のペダルがないの」
妻は肩に下げていたバッグを地面にぼとりと落とし、床に力なくへたり込んだ。彼女がそこまで動揺している姿を目にするのは初めてだった。
僕が知っている妻は、家の中で彼女が嫌いな虫を見かけても、特に声を上げることもなく、机に置かれた最も不要なチラシを選別し、虫をチラシにそっと包んで外に出してあげるような、そんな人間だ。
だから、単にペダルが無くなったというだけではなく、それに付随する何らかの事情があるのではないかと考えた。それで、ひとまず彼女が平静を取り戻すまで待ち、ソファーに座らせてから時間をかけて熱いコーヒーを淹れた。
「それで、ペダルが無くなったっていうのは?」
コーヒーに口をつけた彼女に向かって、僕は尋ねた。
「買い物に行こうと思って、外の駐車場に行ってみたら、自転車のペダルがなかったの。ペダルがないと自転車を動かすことはできないでしょう。それで、周りをくまなく探してみたんだけれど、見つからなくって」
「ペダル……サドルじゃなくて?」
「そうよ、左右それぞれのペダルがないの。まるで最初からそこになかったみたいに」
自転車のサドルが盗まれるというケースはよく聞くけれども、ペダルだけが盗られるという話はあまり聞いたことが無い。それに、僕は昨日子供とサイクリングに出かけたときまでは、しっかりペダルはついていたのだ。
となれば、昨晩から今朝にかけて、誰かがペダルを奪い去っていったということになる。あるいは、跡形も無く消滅してしまったかのどちらかだ。
以前、車のワイパーが無くなってしまったことがあった。同じく、朝起きてみると無くなっていた。無くなっていたとはいっても、根元からポッキリ折られてしまっていたというだけのことだった。おそらく、酒に酔った誰かが悪ふざけで折っていったのではないか。腹はたったが、だからといって折られてしまったものはどうしようもないし、警察に届け出るほど大それたことでもなかったから、そのまま修理に持っていった。
ポリバケツのふたを持ち去られたということもあった。こちらはまあ、ポリバケツのふたが無くて困った誰かが盗んでいったのだろう。
それらの出来事をよく思い返してみると、無くなったことを発見したのは僕のほうだった。どちらも妻に報告はしたが、今回のように彼女が動揺するようなことはなかった。
僕は妻をリビングに残したまま駐車場に行ってみた。自動車が一台と、大人用と子供用の自転車が二台、いつもと同じように置かれている。それらに特別な変化はない。
しかし、大人用の自転車に近寄って確認すると、確かにペダルは両方とも無くなっていた。それも、じっくり観察すると、ペダルの破片のようなものは一切残されておらず、きれいに無くなっていた。芸術的といってもいいほど跡形も無く消え去っていた。
しかしながら、自転車に傷つけることなくペダルだけをすっぽり持ち去っていくなんて、なかなかできることではない。誰かが持ち去ったとすれば、それ相応の工具をきちんと準備して、人通りの少ない夜中の時間帯に自転車と向かい合い、ライトで手元を照らしながら外していったと考えるのが妥当なところだ。しかし一体何のために、そいつはペダルなんて盗んでいったのだろう。ごく普通の自転車の、なんの変哲もないペダルに、いったいどんな価値を見出したのか理解しかねる。
リビングに戻ると妻はいくぶん正気を取り戻していた。両の頬に涙の痕が残っていた。彼女はペダルが無くなったというだけで涙を流したのだ。客観的に考えると、その状況はとてもおかしいものだった。それで、僕は少しだけ笑ってしまった。それを表情に出したのがまずかった。
「なんで笑っているの?」
僕の表情を見咎めて、そう口を開いた妻の声は少しだけ震えていた。彼女は本気で怒っているのだ。また混乱されると面倒なので、僕はなるべく穏やかさを繕ってなだめにかかる。
「ちがうよ。ペダルが無くなって悲しむ君の気持ちはわからないでもないし、それでどれだけショックを受けたかということも、君の姿から想像はできる」
「じゃあどうして、あなたはわたしを見て笑ったの。おかしくなかったら笑うはずはないわ。なにがおかしかったの。わたしがペダルくらいで混乱したのが馬鹿らしかったの?」
僕はその問いに対して何も応えることができなかった。まさしく僕には、ペダル程度で何をそれほど動揺しているのかというあきれた気持ちがあった。彼女の指摘は図星だったのだ。しかし、ペダルくらいホームセンターで買ってきて取り付ければ済む話ではないか。なにも泣いて取り乱すことはない。
しかしいくら正論を言ったところで事態は収まりそうにない。なにしろ、じきに小学校から子供も帰ってくる。子供がいきなりこの状態を見れば、僕と妻が喧嘩をした挙句に彼女を泣かせたものだと思うだろう。仮に言葉を尽くして説明したとしても、子供にこの状況を理解してもらえるはずがない。むしろ大人にだって不可能だ。いずれにしろ彼女には元の状態に回復してもらわなければならなかった。
「よし、わかった。じゃあ約束するよ。僕は今から車でホームセンターに行って自転車用のペダルを買う。元のペダルと同じものを。そのついでにスーパーに寄って買い物もする。帰ってきてから、僕が責任をもって自転車を直す。しっかり元通りに、ね」
「でも……」
彼女が言葉を発そうとするのをおしとどめ、僕は続ける。
「そして、君はこの件に関してなんら責任はない。君が悪かったわけでもないし、僕の態度が君の混乱を招いたことを深く反省している。今後、二度とこのようなことが繰り返されないように、自転車は玄関に入れよう。そうすれば誰かが勝手にペダルを盗んでいくなんて事はできない。」
彼女はようやく落ち着きを取り戻したようだった。
しばらくして僕たちは自動車に乗り込み、自転車屋でペダルを買い求め、スーパーマーケットで食材も買った。今夜はポトフを作ることにした。これから手の込んだ料理をする気には到底なれなかった。僕はとても疲れていた。休日だというのになんだってこんな妙な事態に見舞われなければならないのだ。赤信号で停車し、目の前の横断歩道を次々に人が渡っていくのを眺めながら、そう愚痴りたい気になった。
「わたし、これまで一度たりとも物をなくしたことって、なかったのよ」
不意に助手席の妻がそう言った。僕は油断して聞き流しそうになったが、彼女の口ぶりからするとどうやら本気で言っているらしかった。
「一度も? 子供のときに遊んでいた玩具がどこかへいってしまったたりとか、鉛筆や消しゴムといった文房具がなくなったりしたことも?」
そう僕が訪ねると、ふむ、と妻は考え込んでから、
「ないわ。少なくとも無くなったと思って探してみたらすぐに見つかるなんてことばかりだったから」
「つまり今回のように物を無くしたというのは初めての経験だった、ってこと?」
つまらない冗談を言うような雰囲気ではなかったし、頷く妻の表情におどけたような様子は全くなかった。
仮に物がなくなったという経験がないとすれば、その事態に対する免疫がなかった妻が混乱したというのも、わからない話ではない。
親から手をあげられたことのない子供が先生から叩かれると、深いショックを受けるのと、似たようなものだ。問題は彼女が子供でなく立派な大人であることだ。だが、むしろ大人になるまで叩かれたことのない人間が叩かれれば、同じ条件の子供以上に深く傷つくかもしれない。そして、今まで物を無くしたことがないというのは奇跡的なめぐりあわせであり、ある意味では悲劇だったのかもしれないのだ。そして、そのことについて彼女に責任はない。
僕はそのように自分を納得させるしかなかった。
家に帰ると、僕は約束どおりペダルを修理した。元に戻った自転車を見せると、妻の顔はようやくほころんだ。
帰ってきていた子供も母親の顔の険しさがなくなったことで、喜んだ。
厄介事を乗り切って、僕もようやくほっと一息をついた。
それから彼女は夕食の準備にとりかかり、僕は子供と一緒にお風呂に入った。あがってからビールを飲み、先に出来上がった前菜などをつついていた。ようやく落ち着いて家族そろってくつろいでいると、妻が猫に餌をやり忘れたことに気づいた。朝食と夕食の際、猫に餌をやることにしているのだ。たまには高い缶詰の餌でもあげるといい、と僕は言う。
妻が猫の名前を呼んだ。いつもなら名前を呼ぶ前にリビングで待機しているのに、珍しい。妻はキャットフードの缶詰を片手に部屋を出て行く。子供が僕の隣の席に座って、まだ食べないのと机に箸を突き立てた。
もうすぐ。
お母さんが猫に餌をあげたら、それから食べよう。
ポトフはコンロの上でぐつぐつと煮立っていた。どう考えても火が強いような気がしたので、弱火にする。
つけっぱなしにしていたテレビから、キャットフードのCMが流れる。
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