全ステFの異世界無双、禁忌スキル【分身】でこの世界を頂きます!

アセチルサリチルさん

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第13話 俺を殺したクソ女神との再会(大悲報)

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 夜。


 漆黒の温泉教会——1階。
 
 湯気が立ち込める大浴場に、全員が集まっていた。
 
 あれから改修を重ね、この大浴場も今では風呂としての役割だけでなく、食事処や休憩所も併設し、ちょっとしたスパリゾートみたいに様変わりしていた。


 そして、今、目の前のテーブルには、鹿肉と猪肉の燻製、柔らかいパンや野菜、スープなどの豪華な料理。ジョッキいっぱいの麦酒エール葡萄酒ヴァイン
 
 間違ない!この地にきて一番のご馳走だ!

 そう、今夜は宴なのだ!


「ではユーヤ様ぁ!乾杯の音頭をお願いします~!」
 
 「え、俺がやんの?」

「当然っすよお頭!新しい仲間も入ってことだし、かっこいいとこ見せてやってくださいーっ!」

「…ふっ。仕方ないな…」


 俺は杯を掲げて悠然と立ち上がった。

「聞けぇい!!この地に集いし者共よォ!!」

 全員の視線が集まる。

 こういうのは向いていない性分なのだが、幸いラノベテンプレで予習済みだ。
 ここは一つ、盛り上げてやろうじゃあないか…!


「我が名はユウヤ!!禁忌の使い手にして——この地の支配者である!!」

「おお……!」

「はあぁあ!ユーヤ様ぁああ……!!」

 うん。なかなかいいリアクションだぞ!
 ……オルファが隅で震えてるのが目に入ったが……今は気にしないでおこう。

「ここに集いし同士たちよっ!!今宵は存分に飲め!!食え!!そして明日からまた、共にこの地に栄光をもたらせようぞっ!!」

「「「「「ヒャッハーーー!!」」」」」
 
 ダリオたちの歓声が湧き立つ。

 ——決まった。完璧だ。俺、天才かもしれん。


「乾杯ィィィ!!」

「「「「「乾杯ィィィ!!」」」」」

 杯がぶつかる音。歓声。肉を頬張る音。
 
 なんかいいな、こういうの…


 
「お頭ァ!最高っすね!!」

「ああ、最高だな」

 湯船の縁に腰掛けて酒を煽る者。
 浅い湯に浸かりながら肉を頬張る者。
 中央の祭壇の周りで静かに杯を傾けている者。

 みんなそれぞれ楽しんできるようだ。

 ヴォル吉くんも湯船の端でぷかぷか浮いているし満足そうだ。
 テラ沢さんは……なにしてるんだ?あれ…鼻だけ出して温泉に沈んでる。…溺れてないだろうな?


「ユーヤ様~、お肉どうぞ~」

 リーシャが焼いた猪肉を差し出してきた。

「ああ、ありが————」

 その時だった。

 窓の外が、金色に光った。


「……なんだ?」


 光がどんどん強くなる。夜なのに、外が昼みたいに明るい。


「魔物か!?」

 全員が身構えた——その瞬間。

 教会の扉がバァンと開いた。


「ちょっとあんたァ!!」


 金髪の女が怒鳴りながら入ってきた。

 白いドレス。頭に光の輪。

 「——げっ…」

「何が『げっ』よ!!あんたのせいで私の信仰心が3%も減ったの!!謝って!」

 この憎ったらしい顔。こいつは————俺をこの地に送りこんだ女神ソフィアのビッチ野郎だ。


「……なにしきたんだよお前。俺たちの宴会を邪魔しやがって!」

「邪魔って何よ!!あんたのせいでヒドイことになったんだから…!はやく頭を垂れて謝罪しなさい!」

「知らねえよ。ここは関係者以外立入禁止だぞ!ほら、帰った帰った」

 俺は手をひらひらと振った。

「関係者って何よ!?私は女神なのよ!?」

 キーキーとやかましい女神だな…


「あ~、これが噂のクソ女神ですか~」

 リーシャがにこにこしながら近づいてきた。


「『クソ女神』ですってェ~!?」

「六属性至上主義で、禁忌持ちを迫害してる『ファルミス教』が崇める諸悪の根源……まさかご本人をお目にかかれるとは!光栄です~」

 一見ひどい言いようだが、その通りなんだよなあ。


「お頭、あの頭のおかしなファルミス教徒、知り合いなんすか?」

 ダリオが首を傾げている。

「まあ。昔ちょっとな…」

「だァれが頭のおかしなファルミス教徒よ!私は本物の女神ソフィアよ!さっさと平伏しなさい?」

「お頭、あいつ自分のこと『女神』とかいってやすぜ…?女神があんなボロボロなわけないっすよね~?」

 そういうとダリオたちは一斉に笑い出した。


 耐えられなくなったのか、ソフィアが俺の方を向いて———

「ちょっと!!ちゃんと説明しなさいよ!!」
 
 必死の形相で迫り来た。


「はぁ……」

 めんどくせえ……でもこのまま騒がれても、せっかくの宴会が台無しだな。


「……わかった。聞いてやるから、とりあえず座れよ」

「え……?」

 ソフィアが目を丸くした。

「いいの……?」

「いいから座れって。ヤルダヴォート教徒のみなさんの邪魔になるだろ」

「……じゃあ、ちょっとだけ……」

 ソフィアが恐る恐るテーブルに着いた。

 リーシャが杯を差し出す。

「はい、どうぞ~女神様~」

「あ、ありがと……」


 ソフィアが一口飲んだ。


「……美味しい」

「だろ?」

「お酒なんて久しぶりだわ……もう一杯」

 …たしかに、あの天界(?)にはなにもなかったもんな。



 ——そこから、ソフィアは飲み始めた。

 それはもう、飲み始めた。

 そして…

「私への信仰心がさぁ~……3%も減ったのよぉ~……」

 出来上がった。
 ソフィアの顔が赤くなっている。完全に酔っ払いだ。

「見なさいよこのドレス~……ほつれてんのよ~……信仰心が減るとこうなるの~」

「へえ、大変だな」

「大変なのよぉ~!!あんたたちのせいよぉ~……私、このままボロボロに朽ちて…消えていくんだぁああ~!!」

 女神は泣き上戸らしい。涙がぼろぼろ流れている。


「私、一生懸命やってるのにぃ~……なんでみんな私から離れていくのよぉ~……」

「はいはい」

「はいはいって何よぉ~!!ちゃんと聞いてよぉ~!!」

「聞いてる聞いてる」


「女神が他責って…聞いて呆れますね~」

 リーシャが横から煽る。

「なによあんた~!!馬鹿にしてんのぉ~!!」

「してませんよ~?」

「してるぅ~!!絶対してるぅ~!!」


 ダリオがこっちを見た。

「めんどくせえ酔っ払いっすね……」

「ああ……本当に勘弁してほしい……」


 ソフィアはさらに飲み続けた。

「私だってぇ~……頑張ってるのにぃ~……」

「……」

「誰も認めてくれないのよぉ~……」

「……」

「あんたたちなんかぁ~……私の可愛い信者たちがぁ~……すぐ潰して……やるん……だから……」


 ——ガクッ。


 ソフィアが崩れ落ちた。

「……」

 完全に寝落ちしている。寝息を立てている。

 こいつ、マジで何しに来たんだよ…


「……オルファ」

「なに?」

「悪いけど、こいつ2階に運んでくれないか」

「……私が?」

「頼む」

「……はぁ」


 オルファがため息をついて、ソフィアを担ぎ上げた。

「重いわね……自称女神のくせに」

「何気にお前が一番ひどいこと言うな…」

 オルファが女神を連れて2階に消えていった。



「……さて」

 俺は杯を掲げた。

「再開するぞぉ!俺たちの宴は、ここからだァ!!」

「「「「「おおおお!!」」」」」


 ——宴会は、夜遅くまで続いた。



————————————————————



 翌朝。


「いって……頭痛え……」

 二日酔いだ。飲みすぎた。


「ユーヤ様~、こっちへ~」

 リーシャが俺の頭に手を当てた。黒紫の光が広がり——頭痛が消えていく。

「さっすがリーシャ先生、今日も助かります!」

「えへへ~」


 俺は体を起こした。

 周りに目をやると、酔い潰れたダリオや使徒たちがそこら辺で転がってる。

 昨日はみんな、結構飲んでたからなぁ~


 ———その時


「ふわぁあああ……」

 金髪の女が目を擦りながら降りてきた。

 ……こいつ、まだいたのか。


「なによここ、どこなの……?」

「うちの温泉教会だよ」

「え……?」

 ソフィアが数秒固まる。


「……あ」

 顔が真っ赤になった。状況が理解できたようだ。


「あ、あああああ!?私、昨日、何して…!?」

「飲んで愚痴って泣いて寝た」

「う、嘘でしょ……!?」

 ソフィアが頭を抱えた。


「……その……昨日は……迷惑、かけたわね……」

 おや?意外と素直じゃん。


「酒に潰れる女神とか、ありえないですよね~」

 リーシャがにこにこしながら言った。


「……っ!」

「恥ずかしくないんですか~?女神が酔っ払って泣き潰れるなんて~」

「う、うるさいわね!!たまたまよ!!」

「へ~~~?」

「その『へ~』っていうのやめなさい!不愉快よ!!」

 ソフィアとリーシャが睨み合っている。


「あんた、私を馬鹿にしてるでしょ!!」

「事実を言ってるだけですよ~」

「事実じゃないわよ!!」

「あれぇ…?昨日『私だってぇ~頑張ってるのにぃ~』ってびーびー泣いてたのは、どこの誰でしたっけで~?」

「っ……!!」


 ソフィアの顔がさらに赤くなった。

 恥ずかしさと怒りが混ざっている。


「も、もういいわ!!私帰るっ!」

 ソフィアが立ち上がった。


「覚えてなさいよ!!すぐに私の可愛い信者たちが、あんたたちなんか潰してやるんだから!!」

「へ~~~」

「その『へ~』やめろって言ってんでしょおおおお!!」


 ソフィアの体が光り始めた。


「次会った時は覚悟しなさいよねぇぇぇ!!」


 ——ボンッ。

 金色の光と共に、泣きながら消えていった。


 ……。


「……行ったか」

「行きましたね~」

 リーシャがにこにこしている。

「面白い女神様でしたね~」


 ——本当になんだったんだ、あれ。

 もう二度と来ないでほしい。




————————————————————



 ——同じ頃。

 ゲルツ男爵領。領主の館。


「なんだと……?」

 中年の、脂ぎった男が、報告を聞いて顔を歪めた。


「また逃げたのかッ!!」

「は、はい……30人ほどが、夜の間に……」

「30人だとォ!?」


 ゲルツが机を叩いた。


「どこへ逃げた!!」

「お、おそらく……隣のグラウエルかと……」

「グラウエル……?あの廃棄された土地か?」

「は、はい。最近、人が増えているという噂が……」

「俺の領民を……盗みやがったな……許さんぞ……!!」

 ゲルツが椅子を蹴って立ち上がった。


「クレア!」

「……はっ」

 部屋の隅に控えていた女騎士が、一歩前に出た。

 銀髪のショートカット。凛とした顔立ち。騎士の鎧を纏った、20代前半の女。

 クレア=ヴァンガード。バロン=ゲイツ配下の騎士団長だ。


「グラウエルを偵察しろ。あの地で何が起きているか、詳細を調べ上げてこい」

「……はっ」


「それと——」

 バロンの目が、嫌な光を帯びた。

「問題があれば、排除してかまわん。誰であろうと私の税収を下げる奴は死罪だ!」

「……承知しました」

 クレアは一礼して、部屋を出た。



 廊下を歩きながら、クレアは考えていた。

 ——領民を「盗んだ」、か。

 違う。逃げたのだ。

 ゲルツの暴政に耐えかねて、命懸けで逃げ出したのだ。

 クレアはそれを知っている。

 税制地獄。見せしめの処刑や奴隷落ち。

 すべて、クレア自身が見てきたことだ。


 グラウエル。

 噂では、禁忌スキル持ちの少年が支配しているという。

 ——どんな奴なのか。

 
 「この目で見定めさせてもらうぞ」


 曇り空。重い雲が垂れ込める中、クレアは屋敷を後にした。

 
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