全ステFの異世界無双、禁忌スキル【分身】でこの世界を頂きます!

アセチルサリチルさん

文字の大きさ
14 / 17

第13話 俺を殺したクソ女神との再会(大悲報)

 夜。


 漆黒の温泉教会——1階。
 
 湯気が立ち込める大浴場に、全員が集まっていた。
 
 あれから改修を重ね、この大浴場も今では風呂としての役割だけでなく、食事処や休憩所も併設し、ちょっとしたスパリゾートみたいに様変わりしていた。


 そして、今、目の前のテーブルには、鹿肉と猪肉の燻製、柔らかいパンや野菜、スープなどの豪華な料理。ジョッキいっぱいの麦酒エール葡萄酒ヴァイン
 
 間違ない!この地にきて一番のご馳走だ!

 そう、今夜は宴なのだ!


「ではユーヤ様ぁ!乾杯の音頭をお願いします~!」
 
 「え、俺がやんの?」

「当然っすよお頭!新しい仲間も入ってことだし、かっこいいとこ見せてやってくださいーっ!」

「…ふっ。仕方ないな…」


 俺は杯を掲げて悠然と立ち上がった。

「聞けぇい!!この地に集いし者共よォ!!」

 全員の視線が集まる。

 こういうのは向いていない性分なのだが、幸いラノベテンプレで予習済みだ。
 ここは一つ、盛り上げてやろうじゃあないか…!


「我が名はユウヤ!!禁忌の使い手にして——この地の支配者である!!」

「おお……!」

「はあぁあ!ユーヤ様ぁああ……!!」

 うん。なかなかいいリアクションだぞ!
 ……オルファが隅で震えてるのが目に入ったが……今は気にしないでおこう。

「ここに集いし同士たちよっ!!今宵は存分に飲め!!食え!!そして明日からまた、共にこの地に栄光をもたらせようぞっ!!」

「「「「「ヒャッハーーー!!」」」」」
 
 ダリオたちの歓声が湧き立つ。

 ——決まった。完璧だ。俺、天才かもしれん。


「乾杯ィィィ!!」

「「「「「乾杯ィィィ!!」」」」」

 杯がぶつかる音。歓声。肉を頬張る音。
 
 なんかいいな、こういうの…


 
「お頭ァ!最高っすね!!」

「ああ、最高だな」

 湯船の縁に腰掛けて酒を煽る者。
 浅い湯に浸かりながら肉を頬張る者。
 中央の祭壇の周りで静かに杯を傾けている者。

 みんなそれぞれ楽しんできるようだ。

 ヴォル吉くんも湯船の端でぷかぷか浮いているし満足そうだ。
 テラ沢さんは……なにしてるんだ?あれ…鼻だけ出して温泉に沈んでる。…溺れてないだろうな?


「ユーヤ様~、お肉どうぞ~」

 リーシャが焼いた猪肉を差し出してきた。

「ああ、ありが————」

 その時だった。

 窓の外が、金色に光った。


「……なんだ?」


 光がどんどん強くなる。夜なのに、外が昼みたいに明るい。


「魔物か!?」

 全員が身構えた——その瞬間。

 教会の扉がバァンと開いた。


「ちょっとあんたァ!!」


 金髪の女が怒鳴りながら入ってきた。

 白いドレス。頭に光の輪。

 「——げっ…」

「何が『げっ』よ!!あんたのせいで私の信仰心が3%も減ったの!!謝って!」

 この憎ったらしい顔。こいつは————俺をこの地に送りこんだ女神ソフィアのビッチ野郎だ。


「……なにしきたんだよお前。俺たちの宴会を邪魔しやがって!」

「邪魔って何よ!!あんたのせいでヒドイことになったんだから…!はやく頭を垂れて謝罪しなさい!」

「知らねえよ。ここは関係者以外立入禁止だぞ!ほら、帰った帰った」

 俺は手をひらひらと振った。

「関係者って何よ!?私は女神なのよ!?」

 キーキーとやかましい女神だな…


「あ~、これが噂のクソ女神ですか~」

 リーシャがにこにこしながら近づいてきた。


「『クソ女神』ですってェ~!?」

「六属性至上主義で、禁忌持ちを迫害してる『ファルミス教』が崇める諸悪の根源……まさかご本人をお目にかかれるとは!光栄です~」

 一見ひどい言いようだが、その通りなんだよなあ。


「お頭、あの頭のおかしなファルミス教徒、知り合いなんすか?」

 ダリオが首を傾げている。

「まあ。昔ちょっとな…」

「だァれが頭のおかしなファルミス教徒よ!私は本物の女神ソフィアよ!さっさと平伏しなさい?」

「お頭、あいつ自分のこと『女神』とかいってやすぜ…?女神があんなボロボロなわけないっすよね~?」

 そういうとダリオたちは一斉に笑い出した。


 耐えられなくなったのか、ソフィアが俺の方を向いて———

「ちょっと!!ちゃんと説明しなさいよ!!」
 
 必死の形相で迫り来た。


「はぁ……」

 めんどくせえ……でもこのまま騒がれても、せっかくの宴会が台無しだな。


「……わかった。聞いてやるから、とりあえず座れよ」

「え……?」

 ソフィアが目を丸くした。

「いいの……?」

「いいから座れって。ヤルダヴォート教徒のみなさんの邪魔になるだろ」

「……じゃあ、ちょっとだけ……」

 ソフィアが恐る恐るテーブルに着いた。

 リーシャが杯を差し出す。

「はい、どうぞ~女神様~」

「あ、ありがと……」


 ソフィアが一口飲んだ。


「……美味しい」

「だろ?」

「お酒なんて久しぶりだわ……もう一杯」

 …たしかに、あの天界(?)にはなにもなかったもんな。



 ——そこから、ソフィアは飲み始めた。

 それはもう、飲み始めた。

 そして…

「私への信仰心がさぁ~……3%も減ったのよぉ~……」

 出来上がった。
 ソフィアの顔が赤くなっている。完全に酔っ払いだ。

「見なさいよこのドレス~……ほつれてんのよ~……信仰心が減るとこうなるの~」

「へえ、大変だな」

「大変なのよぉ~!!あんたたちのせいよぉ~……私、このままボロボロに朽ちて…消えていくんだぁああ~!!」

 女神は泣き上戸らしい。涙がぼろぼろ流れている。


「私、一生懸命やってるのにぃ~……なんでみんな私から離れていくのよぉ~……」

「はいはい」

「はいはいって何よぉ~!!ちゃんと聞いてよぉ~!!」

「聞いてる聞いてる」


「女神が他責って…聞いて呆れますね~」

 リーシャが横から煽る。

「なによあんた~!!馬鹿にしてんのぉ~!!」

「してませんよ~?」

「してるぅ~!!絶対してるぅ~!!」


 ダリオがこっちを見た。

「めんどくせえ酔っ払いっすね……」

「ああ……本当に勘弁してほしい……」


 ソフィアはさらに飲み続けた。

「私だってぇ~……頑張ってるのにぃ~……」

「……」

「誰も認めてくれないのよぉ~……」

「……」

「あんたたちなんかぁ~……私の可愛い信者たちがぁ~……すぐ潰して……やるん……だから……」


 ——ガクッ。


 ソフィアが崩れ落ちた。

「……」

 完全に寝落ちしている。寝息を立てている。

 こいつ、マジで何しに来たんだよ…


「……オルファ」

「なに?」

「悪いけど、こいつ2階に運んでくれないか」

「……私が?」

「頼む」

「……はぁ」


 オルファがため息をついて、ソフィアを担ぎ上げた。

「重いわね……自称女神のくせに」

「何気にお前が一番ひどいこと言うな…」

 オルファが女神を連れて2階に消えていった。



「……さて」

 俺は杯を掲げた。

「再開するぞぉ!俺たちの宴は、ここからだァ!!」

「「「「「おおおお!!」」」」」


 ——宴会は、夜遅くまで続いた。



————————————————————



 翌朝。


「いって……頭痛え……」

 二日酔いだ。飲みすぎた。


「ユーヤ様~、こっちへ~」

 リーシャが俺の頭に手を当てた。黒紫の光が広がり——頭痛が消えていく。

「さっすがリーシャ先生、今日も助かります!」

「えへへ~」


 俺は体を起こした。

 周りに目をやると、酔い潰れたダリオや使徒たちがそこら辺で転がってる。

 昨日はみんな、結構飲んでたからなぁ~


 ———その時


「ふわぁあああ……」

 金髪の女が目を擦りながら降りてきた。

 ……こいつ、まだいたのか。


「なによここ、どこなの……?」

「うちの温泉教会だよ」

「え……?」

 ソフィアが数秒固まる。


「……あ」

 顔が真っ赤になった。状況が理解できたようだ。


「あ、あああああ!?私、昨日、何して…!?」

「飲んで愚痴って泣いて寝た」

「う、嘘でしょ……!?」

 ソフィアが頭を抱えた。


「……その……昨日は……迷惑、かけたわね……」

 おや?意外と素直じゃん。


「酒に潰れる女神とか、ありえないですよね~」

 リーシャがにこにこしながら言った。


「……っ!」

「恥ずかしくないんですか~?女神が酔っ払って泣き潰れるなんて~」

「う、うるさいわね!!たまたまよ!!」

「へ~~~?」

「その『へ~』っていうのやめなさい!不愉快よ!!」

 ソフィアとリーシャが睨み合っている。


「あんた、私を馬鹿にしてるでしょ!!」

「事実を言ってるだけですよ~」

「事実じゃないわよ!!」

「あれぇ…?昨日『私だってぇ~頑張ってるのにぃ~』ってびーびー泣いてたのは、どこの誰でしたっけで~?」

「っ……!!」


 ソフィアの顔がさらに赤くなった。

 恥ずかしさと怒りが混ざっている。


「も、もういいわ!!私帰るっ!」

 ソフィアが立ち上がった。


「覚えてなさいよ!!すぐに私の可愛い信者たちが、あんたたちなんか潰してやるんだから!!」

「へ~~~」

「その『へ~』やめろって言ってんでしょおおおお!!」


 ソフィアの体が光り始めた。


「次会った時は覚悟しなさいよねぇぇぇ!!」


 ——ボンッ。

 金色の光と共に、泣きながら消えていった。


 ……。


「……行ったか」

「行きましたね~」

 リーシャがにこにこしている。

「面白い女神様でしたね~」


 ——本当になんだったんだ、あれ。

 もう二度と来ないでほしい。




————————————————————



 ——同じ頃。

 ゲルツ男爵領。領主の館。


「なんだと……?」

 中年の、脂ぎった男が、報告を聞いて顔を歪めた。


「また逃げたのかッ!!」

「は、はい……30人ほどが、夜の間に……」

「30人だとォ!?」


 ゲルツが机を叩いた。


「どこへ逃げた!!」

「お、おそらく……隣のグラウエルかと……」

「グラウエル……?あの廃棄された土地か?」

「は、はい。最近、人が増えているという噂が……」

「俺の領民を……盗みやがったな……許さんぞ……!!」

 ゲルツが椅子を蹴って立ち上がった。


「クレア!」

「……はっ」

 部屋の隅に控えていた女騎士が、一歩前に出た。

 銀髪のショートカット。凛とした顔立ち。騎士の鎧を纏った、20代前半の女。

 クレア=ヴァンガード。バロン=ゲイツ配下の騎士団長だ。


「グラウエルを偵察しろ。あの地で何が起きているか、詳細を調べ上げてこい」

「……はっ」


「それと——」

 バロンの目が、嫌な光を帯びた。

「問題があれば、排除してかまわん。誰であろうと私の税収を下げる奴は死罪だ!」

「……承知しました」

 クレアは一礼して、部屋を出た。



 廊下を歩きながら、クレアは考えていた。

 ——領民を「盗んだ」、か。

 違う。逃げたのだ。

 ゲルツの暴政に耐えかねて、命懸けで逃げ出したのだ。

 クレアはそれを知っている。

 税制地獄。見せしめの処刑や奴隷落ち。

 すべて、クレア自身が見てきたことだ。


 グラウエル。

 噂では、禁忌スキル持ちの少年が支配しているという。

 ——どんな奴なのか。

 
 「この目で見定めさせてもらうぞ」


 曇り空。重い雲が垂れ込める中、クレアは屋敷を後にした。

 
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。