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第9話 ようやく雨風を凌ぐことができそうです(感激)
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ドラゴン戦から数日が経った。
俺は砦の前で分身を出していた。
ボンッ、ボンッ、ボンッ——
12人。
頭がふわっとする——はずだったのだが。
「……あれ?」
いつもの「アホ化」の感覚がない。
思考がクリアだ。指示もスムーズに出せる。
試しにもっと増やしてみる。
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ——
20人。
……ちょっとふわっとする。でも、以前の12人より全然マシだ。
会話もできるし、複雑な指示も通る。
「おい、お前ら。今どんな感じ?」
「普通」
「いけるぞ」
「余裕」
「ちょっと眠い」
「腹減った」
一部怪しいところはあるが全然許容範囲だ。
——なるほど。
やはりドラゴン戦での経験で炎への耐性だけでなく「分身力」も大きく上がったらしい。
12人なら完璧。20人でもちょいアホ程度。
何人まで出せるんだ…?
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ——
50人近くの分身が出せた。
出せはしたが…まったく機能していない。
俺(本体)含めIQが2くらいになってる気がする。サボテン以下だ。
その後しばらくしてオルファが消してくれたから今回は助かったものの、うかつに量産すると自分で自分の領地を滅茶苦茶にしかねない。
今後は余程のことがないかぎり理性のある分身だけを活用することにしよう。
——————————————————————
「今日から本格的に村を作るぞ」
俺は分身たちと領民の皆んなを集めた。
「まずは役割分担だ。ダリオたちは畑を頼む。もっと耕して、作物を植えてくれ。種は確かリーシャが持ってたはずだからもらっておいてくれ」
「了解です、アルト様! 畑仕事なら任せてください!」
ダリオが張り切って返事をする。
元農民だけあって、そっちはプロだ。
「リーシャもいくつかダリオたちに種を」
「わかりました~!」
そういうと使徒たちに手で合図を出した。
「俺の分身は砦跡の改修。森から木を切り出して、ちゃんとした建物にする」
「アルト様のお家ですね! だったら私も手伝わせてください!使徒たちも建築は結構得意なんですよ~?」
リーシャが手を挙げた。
「「「「「我らは影に生きる者……建築も可能です」」」」」
確かに教会本部を作ろうとしてた時は、無駄に仕事が早かったもんな…
「……助かる。じゃあ、俺の分身とリーシャたちで建築班だな!」
俺は分身を増やした。
ボンッ、ボンッ、ボンッ——20人。
「お前ら、森で木を切ってこい。使徒と協力して運んでくれ」
「「「「「了解!」」」」」
「「「「「御意」」」」」
分身と使徒が散っていく。
斧を振るう音。木が倒れる音。丸太を運ぶ声。
一方で、ダリオたちは畑を耕している。鍬を振る音が心地いい。
活気がある。いい感じだ。
——7日後。
砦跡が、見違えるほど立派になった。
崩れていた壁は木材で補強され、穴だらけだった屋根も直った。
2階建ての、まともな建物になっている。
「完成しました~!」
リーシャが誇らしげに報告する。使徒たちも後ろで控えている。
「おお……これはすごい」
俺のずさんな設計図でよくここまで作れたものだ。
正直、こうも立派になるとは全く期待していなかったので感心してしまう。
分身の物量+使徒の技術。この組み合わせはなかなか強いなぁ。
「1階は広間兼食堂にしました~。村のみんなが集まってご飯を食べたり~、話し合ったりできる場所です~」
「いいね!」
「奥に倉庫と料理場。空き部屋も1つあります~」
「最高じゃん!」
「2階は……えーと、アルト様のお部屋を作りました~。奥の一番いい場所なんですよ~」
2階に上がってみる。
確かに、奥の部屋は日当たりが良くて広い。簡易的ではあるが木枠と干し草のベッドまで置いてあるではないか。
「……リーシャ、使徒たち、ありがとう」
「えへへ~、アルト様のためですから~!」
リーシャが嬉しそうに笑う。
使徒たちも無言で頭を下げた。
部屋割りもかなりテキトーだったはずだが…完璧すぎる。
「でもまだ空きはありそうだ——」
「アルト様~!」
階段を駆け上がってくる音に遮られた。
「私のお部屋はどこですか~?」
「え、リーシャの部屋…?」
「設計図には見当たりませんでしたけど~…もちろんあるんですよね?」
「いや、別にリーシャの部屋は——」
「ないんですか~? ひどいです~! 私だけ外で寝ろって言うんですか~?」
「てっきり使徒たちと教会本部に住むのかと…」
リーシャが目を潤ませる。今にも泣き出しそうだ。
「私、アルト様の一番近くにいたいんです~!」
どことなく演技っぽくもあるけれど、完全に無視するのも気が引ける。
「……分かった分かった。2階の空いてる部屋なら使っていいから!」
「やったぁ~! アルト様大好きです~!」
リーシャが飛び跳ねて喜ぶ。
「ちょっと待って!」
オルファが割り込んできた。
「リーシャだけ? …私は?」
「え、オルファも部屋いるの?…ていうか灰枝領に住むの?」
「当然でしょ。監視役なんだから、ターゲットの近くにいないと意味ないじゃない!」
「ターゲットって……」
「それに、私だってこの地のために頑張ってきたでしょ?」
まるでリーシャだけ優遇されるのは不公平だ!と言わんばかりの視線だ。
実際、ここ数日建築にかかりきりだった俺やリーシャたちの食糧は、オルファは狩ってきてくれていた。
「……分かったよ。2階のもう1つの部屋はオルファに——」
「やったぁ!!」
さっきまでの膨れっ面がウソのように明るくなる。
「よかったですね~!オルファ」
「ああ!ありがとうアルト!」
珍しくリーシャと二人でキャイキャイ喜び回っている。
いつもこうしてくれれば可愛いんだけどなぁ…
結局、2階は俺とリーシャとオルファで埋まった。
ダリオたちには1階の部屋を使ってもらおうと思ったのだが——
「いえいえ、俺たちは今の小屋で十分です! 領主様のお側に押しかけるなんて恐れ多い!」
と、全力で辞退された。
結局、1階は広間、倉庫、料理場、空き部屋という構成に落ち着いた。
なんだか気が引けるので、今度ダリオたちにもちゃんとした家を建ててあげよう。
——————————————————————
最低限の拠点が整ったきたところで、次の課題だ。
「分身の教育を始めようと思う」
「教育?」
オルファが首を傾げる。
「ドラゴン戦で分かったんだ。分身に技術を学ばせたり訓練させれば、解除したときに俺に経験が戻ってくる。採掘もそうやって覚えられたしね」
「……なるほど。それで?」
「次は弓を覚えたい。オルファ、教えてくれないか?」
オルファが少し考える顔をした。
「……いいけど。こう見えて弓って簡単じゃないわよ?"あの"分身で大丈夫?」
「今の俺なら20人くらい問題ないよ。しっかり頭も回るし、毎日回収するから着実に上達するはずだ」
「分かったわ。じゃあ、午後から訓練場でやりましょう!」
こうして、空いてる分身5人とオルファによる弓の訓練が新しい日課になった。
「構えが甘い。もっと肘を上げて」
「「「「「こう?」」」」」
「全員同じ角度で間違えるのやめて」
オルファの指導は厳しい。でも的確だ。
分身たちは最初こそグダグダだったが、夕方には的に当たるようになってきている。
「なかなか筋がいいわね。……分身だから当然か」
「どういう意味?」
「本体の運動神経は悪くないってこと。褒めてるのよ」
よせやい。
俺は砦の前で分身を出していた。
ボンッ、ボンッ、ボンッ——
12人。
頭がふわっとする——はずだったのだが。
「……あれ?」
いつもの「アホ化」の感覚がない。
思考がクリアだ。指示もスムーズに出せる。
試しにもっと増やしてみる。
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ——
20人。
……ちょっとふわっとする。でも、以前の12人より全然マシだ。
会話もできるし、複雑な指示も通る。
「おい、お前ら。今どんな感じ?」
「普通」
「いけるぞ」
「余裕」
「ちょっと眠い」
「腹減った」
一部怪しいところはあるが全然許容範囲だ。
——なるほど。
やはりドラゴン戦での経験で炎への耐性だけでなく「分身力」も大きく上がったらしい。
12人なら完璧。20人でもちょいアホ程度。
何人まで出せるんだ…?
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ——
50人近くの分身が出せた。
出せはしたが…まったく機能していない。
俺(本体)含めIQが2くらいになってる気がする。サボテン以下だ。
その後しばらくしてオルファが消してくれたから今回は助かったものの、うかつに量産すると自分で自分の領地を滅茶苦茶にしかねない。
今後は余程のことがないかぎり理性のある分身だけを活用することにしよう。
——————————————————————
「今日から本格的に村を作るぞ」
俺は分身たちと領民の皆んなを集めた。
「まずは役割分担だ。ダリオたちは畑を頼む。もっと耕して、作物を植えてくれ。種は確かリーシャが持ってたはずだからもらっておいてくれ」
「了解です、アルト様! 畑仕事なら任せてください!」
ダリオが張り切って返事をする。
元農民だけあって、そっちはプロだ。
「リーシャもいくつかダリオたちに種を」
「わかりました~!」
そういうと使徒たちに手で合図を出した。
「俺の分身は砦跡の改修。森から木を切り出して、ちゃんとした建物にする」
「アルト様のお家ですね! だったら私も手伝わせてください!使徒たちも建築は結構得意なんですよ~?」
リーシャが手を挙げた。
「「「「「我らは影に生きる者……建築も可能です」」」」」
確かに教会本部を作ろうとしてた時は、無駄に仕事が早かったもんな…
「……助かる。じゃあ、俺の分身とリーシャたちで建築班だな!」
俺は分身を増やした。
ボンッ、ボンッ、ボンッ——20人。
「お前ら、森で木を切ってこい。使徒と協力して運んでくれ」
「「「「「了解!」」」」」
「「「「「御意」」」」」
分身と使徒が散っていく。
斧を振るう音。木が倒れる音。丸太を運ぶ声。
一方で、ダリオたちは畑を耕している。鍬を振る音が心地いい。
活気がある。いい感じだ。
——7日後。
砦跡が、見違えるほど立派になった。
崩れていた壁は木材で補強され、穴だらけだった屋根も直った。
2階建ての、まともな建物になっている。
「完成しました~!」
リーシャが誇らしげに報告する。使徒たちも後ろで控えている。
「おお……これはすごい」
俺のずさんな設計図でよくここまで作れたものだ。
正直、こうも立派になるとは全く期待していなかったので感心してしまう。
分身の物量+使徒の技術。この組み合わせはなかなか強いなぁ。
「1階は広間兼食堂にしました~。村のみんなが集まってご飯を食べたり~、話し合ったりできる場所です~」
「いいね!」
「奥に倉庫と料理場。空き部屋も1つあります~」
「最高じゃん!」
「2階は……えーと、アルト様のお部屋を作りました~。奥の一番いい場所なんですよ~」
2階に上がってみる。
確かに、奥の部屋は日当たりが良くて広い。簡易的ではあるが木枠と干し草のベッドまで置いてあるではないか。
「……リーシャ、使徒たち、ありがとう」
「えへへ~、アルト様のためですから~!」
リーシャが嬉しそうに笑う。
使徒たちも無言で頭を下げた。
部屋割りもかなりテキトーだったはずだが…完璧すぎる。
「でもまだ空きはありそうだ——」
「アルト様~!」
階段を駆け上がってくる音に遮られた。
「私のお部屋はどこですか~?」
「え、リーシャの部屋…?」
「設計図には見当たりませんでしたけど~…もちろんあるんですよね?」
「いや、別にリーシャの部屋は——」
「ないんですか~? ひどいです~! 私だけ外で寝ろって言うんですか~?」
「てっきり使徒たちと教会本部に住むのかと…」
リーシャが目を潤ませる。今にも泣き出しそうだ。
「私、アルト様の一番近くにいたいんです~!」
どことなく演技っぽくもあるけれど、完全に無視するのも気が引ける。
「……分かった分かった。2階の空いてる部屋なら使っていいから!」
「やったぁ~! アルト様大好きです~!」
リーシャが飛び跳ねて喜ぶ。
「ちょっと待って!」
オルファが割り込んできた。
「リーシャだけ? …私は?」
「え、オルファも部屋いるの?…ていうか灰枝領に住むの?」
「当然でしょ。監視役なんだから、ターゲットの近くにいないと意味ないじゃない!」
「ターゲットって……」
「それに、私だってこの地のために頑張ってきたでしょ?」
まるでリーシャだけ優遇されるのは不公平だ!と言わんばかりの視線だ。
実際、ここ数日建築にかかりきりだった俺やリーシャたちの食糧は、オルファは狩ってきてくれていた。
「……分かったよ。2階のもう1つの部屋はオルファに——」
「やったぁ!!」
さっきまでの膨れっ面がウソのように明るくなる。
「よかったですね~!オルファ」
「ああ!ありがとうアルト!」
珍しくリーシャと二人でキャイキャイ喜び回っている。
いつもこうしてくれれば可愛いんだけどなぁ…
結局、2階は俺とリーシャとオルファで埋まった。
ダリオたちには1階の部屋を使ってもらおうと思ったのだが——
「いえいえ、俺たちは今の小屋で十分です! 領主様のお側に押しかけるなんて恐れ多い!」
と、全力で辞退された。
結局、1階は広間、倉庫、料理場、空き部屋という構成に落ち着いた。
なんだか気が引けるので、今度ダリオたちにもちゃんとした家を建ててあげよう。
——————————————————————
最低限の拠点が整ったきたところで、次の課題だ。
「分身の教育を始めようと思う」
「教育?」
オルファが首を傾げる。
「ドラゴン戦で分かったんだ。分身に技術を学ばせたり訓練させれば、解除したときに俺に経験が戻ってくる。採掘もそうやって覚えられたしね」
「……なるほど。それで?」
「次は弓を覚えたい。オルファ、教えてくれないか?」
オルファが少し考える顔をした。
「……いいけど。こう見えて弓って簡単じゃないわよ?"あの"分身で大丈夫?」
「今の俺なら20人くらい問題ないよ。しっかり頭も回るし、毎日回収するから着実に上達するはずだ」
「分かったわ。じゃあ、午後から訓練場でやりましょう!」
こうして、空いてる分身5人とオルファによる弓の訓練が新しい日課になった。
「構えが甘い。もっと肘を上げて」
「「「「「こう?」」」」」
「全員同じ角度で間違えるのやめて」
オルファの指導は厳しい。でも的確だ。
分身たちは最初こそグダグダだったが、夕方には的に当たるようになってきている。
「なかなか筋がいいわね。……分身だから当然か」
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