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第10話 まさかうちの領地で宴をする日がくるなんて(号泣)
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領内の開拓と訓練を進める一方で、問題も見えてきた。
「水路もやっぱりこのままじゃダメだよな……」
俺は領地を流れる水路を見下ろしていた。
一応、川から水を引くために溝を掘ってある。
でも、ただ土を掘っただけだから水が泥だらけだ。到底飲み水には使えない。
「木材か石材で護岸しないと、このままじゃ泥水しか流れないわね」
オルファが隣で言う。
「あと、下水も作りたい。トイレがないのは……さすがにキツい」
「文化的な生活には必要よね…」
今は森の中で用を足している状態だ。
領民が増えてきた今、このままじゃ衛生的にもまずい。
「なんか方法ないかな…田舎の集落とかでは普通どうしてるんだ?」
「一番メジャーなのは"浄化魔法"ね」
ですよね~…
いいなぁ魔法。何かと便利そうで…
「リーシャなら使えると思うけど、それでも毎日かけ続けるわけにもいかないよな…」
「魔石があれば魔力を貯めて一定期間、魔法を発動させ続けられるわよ」
「魔石ね…なんかあったような、なかったような」
俺はこの地に来て初日に出会ったゴーレムの核を思い出した。
「でも、一番手取り早いのはスライムかしら」
「スライム?」
「そう。汚物や死骸なんかを食べて生きてるから、汚水に入れておけば喜んで綺麗にしてくれるわ。下水道で飼っちゃうのが早そうね」
なんだそれ!初耳だ。
スライムにそんな活用法があったなんて。
そうと決まればこうしちゃいられない!
「どこにいるんだ?!?!」
「圧がすごいわね…!森の奥よ。大体湿地帯の近くに棲息しているはずだけど——
」
「よし、捕まえに行ってくる!」
俺はヴォルを呼んだ。
「ヴォル、行くぞ!」
「グルル」と鳴いて、俺の肩に乗る。準備万端だのようだ。
このサイズだと、本当に愛いやつよのう。
こいつがあのドラゴンだとはまるで思えない。
——————————————————————
森の奥。湿地帯。
俺は分身を10人ほど出して、周囲を探索していた。
「スライムって、どんな見た目なんだ?」
「半透明なゼリーみたいなやつよ。動きは遅いから、見つければ簡単に捕まえられるわ」
オルファも一緒に来てくれている。弓を構えて警戒中だ。
「いたぞ!」
分身の1人が叫んだ。
見ると、木の根元に半透明のぷるぷるした物体がいた。
大きさはバスケットボールくらい。確かにスライムだ。
「捕まえろ!」
「「「「「了解!」」」」」
分身が一斉に飛びかかる——
ぶにょん。
スライムの弾力は思っていたより強く、あっさりと跳ね返された。分身が転がる。
「いてっ」
「ぬるっ」
「滑るって」
「うわ、服についた」
「……袋で包め」
俺は持っていた麻袋を数枚投げた。
分身たちがスライムを袋に誘導して、なんとか捕獲成功。
「よし、1匹確保」
「もう何匹か欲しいわね。下水全体をカバーするなら最低でも10匹以上はいないと…」
結局、この日は15匹捕まえて帰った。上々だ。
ついでに、ヴォルと一緒に狩りもした。
スライム捕獲も手伝ってもらったのだが、どうやらスライムは火が苦手らしい。
ヴォルのちょっとしたブレスで呆気なく蒸発してしまった。
負い目を感じたのかしょんぼりしていたので、ヴォルを励ます意味でも
「あの鹿だ!やれ!!」
活躍の場を与えることにしたのだ。
ヴォルが小さく炎を吐く。
鹿が驚いて飛び出す。そこをオルファが射抜いた。
「ナイス連携!」
「……まさかドラゴンと狩りをする日が来るとは思わなかったわ」
オルファが複雑な顔をしている。
鹿3頭に、猪を2頭。
これで当分の食糧問題は大丈夫そうだな。
——————————————————————
拠点に戻ると、リーシャの姿が見当たらない。
「あれ、リーシャは?」
「リーシャさんなら朝から出かけてますよ。『ちょっと用事があるので~』って」
農業班の1人が答える。
用事? 何だろう。まあ、あいつのことだから大丈夫だろう……たぶん。
——3日後。
リーシャが帰ってきた。
「ただいま戻りました~!」
リーシャの後ろに、荷馬車が5台。
馬が10頭に牛まで6頭連れている。
そして——黒ずくめの集団が20人。…増えてる。
なんなんだこの大所帯。
「信徒さんたちが増えました~! あと、馬と牛と馬車と、生活に必要なものを買ってきましたよ!」
馬車の荷台を見ると、武器や工具をはじめとした鉄製品に、布や銀食器、農作物の苗に小麦粉、香辛料、食糧など——ありとあらゆるものが積まれている。
そしてなにより…「酒」!!
それも麦酒と葡萄酒を大樽で5つずつだ!
今日のリーシャは最高すぎるぞ。ここに来てから一番の活躍かもしれない…!マジで。
「ちょっと待て。これ、どうやって買ったんだ?」
オルファがなにやら険しい表情で見つめる。
「ドラゴンの鱗を売りました~」
リーシャが金貨の袋をじゃらりと見せた。
「30枚くらい売ってきました。これがお釣りです~」
「……30枚?」
オルファの顔が曇る。
「ドラゴンの鱗だぞ? 普通は出所を聞かれるし、本物なら高額すぎてその辺りの店では金を用意できないはずだ」
へ~…そうなんだ。
「えへへ~、ちょっとしたコネがありまして~」
リーシャがにこにこ笑う。
……今さら別にいいのだが、改めてリーシャって何者なんだろう。
まさか、どこかの貴族とかお偉いさんじゃあないだろうな…
…もう面倒くさいし考えるのは止めにしよう。
「リーシャ、ありがとう。これで拠点の整備も一気に進むよ!」
「いえいえ~! アルト様のためですから~!」
リーシャが嬉しそうに跳ねる。
「あ、そうだ。『お金が余ったら教会関連の物も買っていい』って言ってましたよね~?」
「言ったっけ? ……まあ、言った気もするし問題はないが」
「なので、信徒を増やしてきました~! 20人になりました~!」
リーシャが後ろの黒ずくめ集団を示す。
「え、使徒って金で買ってるの…?」
「厳密には貧困に喘ぐ皆さんを救済して、その代わりに信仰と布教をしてもらうって感じです~!Win-Winな関係なのです!その中でも今回15名の皆さんが新たに"熱心な"使徒さんになってくれたのです~」
確かに全員痩せてはいるが、装備や服装はしっかりしているし剣や弓を持ってる。これもリーシャが買い与えたのだろう。
教会を守る聖騎士みたいなものか?
"熱心な"のところが少々気にはなるが、灰枝領の戦力が上がるならいいことに違いない!…多分。
「「「我らは影に生きる物!!!」」」
お決まりの唱和も20人集まると大気が僅かに震えた。
これは、いつかやめさせよう。
——————————————————————
その夜。
砦の広間に全員が集まった。
ダリオたち元盗賊の農業班が10人。
信徒が20人。
リーシャ、オルファ、俺。
そしてヴォル。
合計34人+1匹。
丸太で作った荒削りなテーブルには、先日ヴォルたちと狩ってきた鹿と猪肉の燻製。
リーシャが買ってきた白く輝く銀食器。そして柔らかいパンや野菜、スープなどの温かい料理。
そして、ジョッキいっぱいの麦酒に葡萄酒!
間違ない!この地にきて一番のご馳走だ!
そう、今夜は宴なのだ!
「えーと……」
俺は立ち上がった。全員の視線が集まる。
「今日まで、本当にいろいろあった」
言葉が上手く出てこない。こういうの苦手なんだよな…
「初めはこんな何もない土地に俺一人。家から追放されて…その日生きるのも必死だった」
大変だったなぁ、本当に。
「そしたら、なぜかリーシャと使徒のみんなが転がりこんできた。正直、最初はマジに頭がおかしいヤツだと思ったよ」
「——アルト様~!ひどいです~!!」
広間に笑いが起こる。
今でもちょっと頭がアレだと疑っていることは内緒にしておこう。
「その次に、オルファ。君は俺の調査に来たんだっけか?禁忌かどうかとか…」
「まだ監視中ではあるけどね!」
今日はオルファもご機嫌なようだ。
「そしてダリオたちは…そうだ!盗賊として襲って来たんだったな!」
「「「その節は、本当にすいやせんでしたー!!」」」
ダリオやその部下たちが全力土下座をし出したので慌てて止める。
「そして、最後になんとなんとー…ドラゴンの襲撃を受けてしまいました!!」
俺に掲げ上げられたヴォルが気まずそうにしながらこっちを見てくる。
「あれはヤバかったっすね~!」
「本当に死ぬかと思いやした!」
広間の空気が一段と明るくなる。
「そんなみんなも、今では大切な仲間だ……だから、えーと、その」
ダメだ。全然まとまらない。
「……要するに!」
俺は酒の入った杯を掲げた。
「俺は決めたぞォ!この灰枝領を民が安心して暮らせる最高の場所にする!だからみんな、よろしくゥ!」
「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」
半ば強引な気もしたが、歓声は鳴り響いた。
「乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
杯がぶつかる音。笑い声。肉を頬張る音。
少し前まで、本当に何もなかったのに…
しつこいくらい物思いに耽っていると
「アルト様~、お酒どうぞ~」
リーシャが隣に座って、俺の杯に酒を注ぐ。
「ありがとう」
「えへへ~。今日のアルト様、かっこよかったです~」
「挨拶グダグダだったろ?」
「そういうところがいいんですよ~」
リーシャがにこにこ笑う。
……よく分からないが、まあいいか。
「アンタ、次は何する気?」
オルファが反対側から声をかけてきた。
「次、かぁ……」
拠点は整った。下水はスライムでなんとかなりそうだし、食料も当面は大丈夫。
足りないもの…ね
あ!
「風呂だ!」
「……風呂?」
「ああ。ここに来てから、まともに体を洗えてない。川で水浴びはしたけど、冷たいし。……ちゃんとした風呂が欲しい」
オルファが少し考える顔をした。
「……確かに、お風呂はあった方がいいわね」
「だろ? 文化的な生活には風呂が必要不可欠だ」
「賛成です~! アルト様と一緒にお風呂入りたいです~!」
「いや、それはちょっと…」
リーシャの頬が少しむくれる。
「よし、決まりだ」
俺は杯を掲げた。
「次の目標——お風呂を作るぞー!」
「「「「「おおおおお!!」」」」」
なぜか全員が盛り上がった。
風呂、そんなに需要あったのか。
灰枝領。
住民10人。信徒20人。邪教教祖1人。レンジャー1人。
——そしてドラゴンが1匹。
俺の領地は、着実に成長している。
「水路もやっぱりこのままじゃダメだよな……」
俺は領地を流れる水路を見下ろしていた。
一応、川から水を引くために溝を掘ってある。
でも、ただ土を掘っただけだから水が泥だらけだ。到底飲み水には使えない。
「木材か石材で護岸しないと、このままじゃ泥水しか流れないわね」
オルファが隣で言う。
「あと、下水も作りたい。トイレがないのは……さすがにキツい」
「文化的な生活には必要よね…」
今は森の中で用を足している状態だ。
領民が増えてきた今、このままじゃ衛生的にもまずい。
「なんか方法ないかな…田舎の集落とかでは普通どうしてるんだ?」
「一番メジャーなのは"浄化魔法"ね」
ですよね~…
いいなぁ魔法。何かと便利そうで…
「リーシャなら使えると思うけど、それでも毎日かけ続けるわけにもいかないよな…」
「魔石があれば魔力を貯めて一定期間、魔法を発動させ続けられるわよ」
「魔石ね…なんかあったような、なかったような」
俺はこの地に来て初日に出会ったゴーレムの核を思い出した。
「でも、一番手取り早いのはスライムかしら」
「スライム?」
「そう。汚物や死骸なんかを食べて生きてるから、汚水に入れておけば喜んで綺麗にしてくれるわ。下水道で飼っちゃうのが早そうね」
なんだそれ!初耳だ。
スライムにそんな活用法があったなんて。
そうと決まればこうしちゃいられない!
「どこにいるんだ?!?!」
「圧がすごいわね…!森の奥よ。大体湿地帯の近くに棲息しているはずだけど——
」
「よし、捕まえに行ってくる!」
俺はヴォルを呼んだ。
「ヴォル、行くぞ!」
「グルル」と鳴いて、俺の肩に乗る。準備万端だのようだ。
このサイズだと、本当に愛いやつよのう。
こいつがあのドラゴンだとはまるで思えない。
——————————————————————
森の奥。湿地帯。
俺は分身を10人ほど出して、周囲を探索していた。
「スライムって、どんな見た目なんだ?」
「半透明なゼリーみたいなやつよ。動きは遅いから、見つければ簡単に捕まえられるわ」
オルファも一緒に来てくれている。弓を構えて警戒中だ。
「いたぞ!」
分身の1人が叫んだ。
見ると、木の根元に半透明のぷるぷるした物体がいた。
大きさはバスケットボールくらい。確かにスライムだ。
「捕まえろ!」
「「「「「了解!」」」」」
分身が一斉に飛びかかる——
ぶにょん。
スライムの弾力は思っていたより強く、あっさりと跳ね返された。分身が転がる。
「いてっ」
「ぬるっ」
「滑るって」
「うわ、服についた」
「……袋で包め」
俺は持っていた麻袋を数枚投げた。
分身たちがスライムを袋に誘導して、なんとか捕獲成功。
「よし、1匹確保」
「もう何匹か欲しいわね。下水全体をカバーするなら最低でも10匹以上はいないと…」
結局、この日は15匹捕まえて帰った。上々だ。
ついでに、ヴォルと一緒に狩りもした。
スライム捕獲も手伝ってもらったのだが、どうやらスライムは火が苦手らしい。
ヴォルのちょっとしたブレスで呆気なく蒸発してしまった。
負い目を感じたのかしょんぼりしていたので、ヴォルを励ます意味でも
「あの鹿だ!やれ!!」
活躍の場を与えることにしたのだ。
ヴォルが小さく炎を吐く。
鹿が驚いて飛び出す。そこをオルファが射抜いた。
「ナイス連携!」
「……まさかドラゴンと狩りをする日が来るとは思わなかったわ」
オルファが複雑な顔をしている。
鹿3頭に、猪を2頭。
これで当分の食糧問題は大丈夫そうだな。
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拠点に戻ると、リーシャの姿が見当たらない。
「あれ、リーシャは?」
「リーシャさんなら朝から出かけてますよ。『ちょっと用事があるので~』って」
農業班の1人が答える。
用事? 何だろう。まあ、あいつのことだから大丈夫だろう……たぶん。
——3日後。
リーシャが帰ってきた。
「ただいま戻りました~!」
リーシャの後ろに、荷馬車が5台。
馬が10頭に牛まで6頭連れている。
そして——黒ずくめの集団が20人。…増えてる。
なんなんだこの大所帯。
「信徒さんたちが増えました~! あと、馬と牛と馬車と、生活に必要なものを買ってきましたよ!」
馬車の荷台を見ると、武器や工具をはじめとした鉄製品に、布や銀食器、農作物の苗に小麦粉、香辛料、食糧など——ありとあらゆるものが積まれている。
そしてなにより…「酒」!!
それも麦酒と葡萄酒を大樽で5つずつだ!
今日のリーシャは最高すぎるぞ。ここに来てから一番の活躍かもしれない…!マジで。
「ちょっと待て。これ、どうやって買ったんだ?」
オルファがなにやら険しい表情で見つめる。
「ドラゴンの鱗を売りました~」
リーシャが金貨の袋をじゃらりと見せた。
「30枚くらい売ってきました。これがお釣りです~」
「……30枚?」
オルファの顔が曇る。
「ドラゴンの鱗だぞ? 普通は出所を聞かれるし、本物なら高額すぎてその辺りの店では金を用意できないはずだ」
へ~…そうなんだ。
「えへへ~、ちょっとしたコネがありまして~」
リーシャがにこにこ笑う。
……今さら別にいいのだが、改めてリーシャって何者なんだろう。
まさか、どこかの貴族とかお偉いさんじゃあないだろうな…
…もう面倒くさいし考えるのは止めにしよう。
「リーシャ、ありがとう。これで拠点の整備も一気に進むよ!」
「いえいえ~! アルト様のためですから~!」
リーシャが嬉しそうに跳ねる。
「あ、そうだ。『お金が余ったら教会関連の物も買っていい』って言ってましたよね~?」
「言ったっけ? ……まあ、言った気もするし問題はないが」
「なので、信徒を増やしてきました~! 20人になりました~!」
リーシャが後ろの黒ずくめ集団を示す。
「え、使徒って金で買ってるの…?」
「厳密には貧困に喘ぐ皆さんを救済して、その代わりに信仰と布教をしてもらうって感じです~!Win-Winな関係なのです!その中でも今回15名の皆さんが新たに"熱心な"使徒さんになってくれたのです~」
確かに全員痩せてはいるが、装備や服装はしっかりしているし剣や弓を持ってる。これもリーシャが買い与えたのだろう。
教会を守る聖騎士みたいなものか?
"熱心な"のところが少々気にはなるが、灰枝領の戦力が上がるならいいことに違いない!…多分。
「「「我らは影に生きる物!!!」」」
お決まりの唱和も20人集まると大気が僅かに震えた。
これは、いつかやめさせよう。
——————————————————————
その夜。
砦の広間に全員が集まった。
ダリオたち元盗賊の農業班が10人。
信徒が20人。
リーシャ、オルファ、俺。
そしてヴォル。
合計34人+1匹。
丸太で作った荒削りなテーブルには、先日ヴォルたちと狩ってきた鹿と猪肉の燻製。
リーシャが買ってきた白く輝く銀食器。そして柔らかいパンや野菜、スープなどの温かい料理。
そして、ジョッキいっぱいの麦酒に葡萄酒!
間違ない!この地にきて一番のご馳走だ!
そう、今夜は宴なのだ!
「えーと……」
俺は立ち上がった。全員の視線が集まる。
「今日まで、本当にいろいろあった」
言葉が上手く出てこない。こういうの苦手なんだよな…
「初めはこんな何もない土地に俺一人。家から追放されて…その日生きるのも必死だった」
大変だったなぁ、本当に。
「そしたら、なぜかリーシャと使徒のみんなが転がりこんできた。正直、最初はマジに頭がおかしいヤツだと思ったよ」
「——アルト様~!ひどいです~!!」
広間に笑いが起こる。
今でもちょっと頭がアレだと疑っていることは内緒にしておこう。
「その次に、オルファ。君は俺の調査に来たんだっけか?禁忌かどうかとか…」
「まだ監視中ではあるけどね!」
今日はオルファもご機嫌なようだ。
「そしてダリオたちは…そうだ!盗賊として襲って来たんだったな!」
「「「その節は、本当にすいやせんでしたー!!」」」
ダリオやその部下たちが全力土下座をし出したので慌てて止める。
「そして、最後になんとなんとー…ドラゴンの襲撃を受けてしまいました!!」
俺に掲げ上げられたヴォルが気まずそうにしながらこっちを見てくる。
「あれはヤバかったっすね~!」
「本当に死ぬかと思いやした!」
広間の空気が一段と明るくなる。
「そんなみんなも、今では大切な仲間だ……だから、えーと、その」
ダメだ。全然まとまらない。
「……要するに!」
俺は酒の入った杯を掲げた。
「俺は決めたぞォ!この灰枝領を民が安心して暮らせる最高の場所にする!だからみんな、よろしくゥ!」
「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」
半ば強引な気もしたが、歓声は鳴り響いた。
「乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
杯がぶつかる音。笑い声。肉を頬張る音。
少し前まで、本当に何もなかったのに…
しつこいくらい物思いに耽っていると
「アルト様~、お酒どうぞ~」
リーシャが隣に座って、俺の杯に酒を注ぐ。
「ありがとう」
「えへへ~。今日のアルト様、かっこよかったです~」
「挨拶グダグダだったろ?」
「そういうところがいいんですよ~」
リーシャがにこにこ笑う。
……よく分からないが、まあいいか。
「アンタ、次は何する気?」
オルファが反対側から声をかけてきた。
「次、かぁ……」
拠点は整った。下水はスライムでなんとかなりそうだし、食料も当面は大丈夫。
足りないもの…ね
あ!
「風呂だ!」
「……風呂?」
「ああ。ここに来てから、まともに体を洗えてない。川で水浴びはしたけど、冷たいし。……ちゃんとした風呂が欲しい」
オルファが少し考える顔をした。
「……確かに、お風呂はあった方がいいわね」
「だろ? 文化的な生活には風呂が必要不可欠だ」
「賛成です~! アルト様と一緒にお風呂入りたいです~!」
「いや、それはちょっと…」
リーシャの頬が少しむくれる。
「よし、決まりだ」
俺は杯を掲げた。
「次の目標——お風呂を作るぞー!」
「「「「「おおおおお!!」」」」」
なぜか全員が盛り上がった。
風呂、そんなに需要あったのか。
灰枝領。
住民10人。信徒20人。邪教教祖1人。レンジャー1人。
——そしてドラゴンが1匹。
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