何処かに居そうな人の話

ねこ皇子

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慰めが下手な人

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 僕のスマートフォンに、メッセージが届いた。
 送り主は、睦月という名の友人だ。

『今、電話大丈夫?』

 そんなメッセージを目にした僕は、違和感を覚える。

 普段、睦月というやつは電話していいかの確認などせず、暇があれば傍若無人に電話をしてきていた。
 こんな断りを入れてくるなんて、これから鳴らす電話には絶対に出てもらいたいという意思を感じる。

『大丈夫』

 そう返信する。数秒後、電話が鳴った。

「もしもし、どうした?」
『……仕事でミスして、怒られた』
「なるほど」

 どうやら。慰めて欲しいようだ。
 そのためには。

「どんなミスしたの?」

 詳細を聞けば、なんて事のない。睦月だけが齎したミスではない。
 むしろ、もらい事故。睦月は被害者なまである内容だった。

 睦月自身も、自分だけのミスではない事をわかっている。

 僕は、言葉で慰めるのが滅法下手だ。
 だから僕は、話を聞くのだ。問われた時だけ答えればいいのだ。
 
 睦月と僕との、長い付き合いがあるがこそだが、僕の慰め方は存在する事なのだ。

 元気を出させようだなんて、気の利いたことなどしない。
 落ち込んでいても、病んでいても、僕は存在している事をみせればいい。


 睦月との通話を終え、ふと考える。

 
 人は、自分が弱っているところを見せるものではないと、見せたくないと思っているだろう。
 
 僕を前に睦月は、そんな感覚をもう既に忘れてしまっているだろう。

 他の人はわからない。でも、この睦月という友人に対しては、わかる。
 僕が、しっかり慰める事が出来ているのを。

 感謝の言葉も、他の人はどこまで本心かわからない。
 僕自身が、しっかり力になれたのかわからないから。

 でも、睦月という友人のはわかる。
 感謝の言葉こそないが、わかるのだ。

 きっと、お互い様なのだ。お互い感謝しているのだ。

 悩みも、愚痴も、惚気もすべて。

 聞く側が負担になっているだなんて、とんでもない。

 悩みを聞いてもらっているだなんて、とんでもない。

 相談にのってあげているだなんて、とんでもない。

 心底とんでもない。

 感謝すること。当たり前だと思わない事。輪をかけて感謝する事。

 それさえ心に留めておけば、どんな事でもあれなのだ。

 
 だから僕は、人を慰めるのが下手なのだ。
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