視える僕らのシェアハウス

橘しづき

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帰宅

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「うそ、幸太郎だ!」

 優香さんが慌てた様子で立ち上がる。私たちを呼んでいることは、夫である幸太郎さんに内緒だったはずだ。普通なら夕方くらいに帰宅してくるはずの幸太郎さんが、予想外に早く帰ってきてしまったのだろう。

 祐樹さんが素早く取り仕切る。

「落ち着いてください、優香さん。俺たちは友人ってことにしましょう。そうだな、学生時代の……は無理があるか。最近、近くのカフェで出会ったってことで!」

「は、はい」

 優香さんがそう返事をしたと同時に、リビングの扉が勢いよく開いた。スーツを着たサラリーマンが顔を見せる。

「優香? 誰か来てるの?」

 入ってきたのは、黒髪短髪の、人がよさそうな男性だった。少し細めの目は垂れ気味で、なんだかこちらの警戒心を解いてくれる優しい目元に見える。『いい旦那さん』と言われて思い浮かべるなら、こういう感じの人だろう。特別男前だとか、高身長だとかそういう感じではないが、とにかく穏やかそうな人だ。案外、竜崎さんよりこういう人の方がモテたりするのかもしれない。

 優香さんはすぐに表情を取り繕う。

「おかえりなさい。友達が遊びに来てて」

「そうなの? 聞いてなかったから帰って来ちゃったよ」

「ごめんね伝えるの忘れてて……」

 頭を搔きながら、幸太郎さんが私たちに挨拶をしてくれる。

「夫の幸太郎です。ええと、妻とは一体どういったご関係で?」

 すかさず祐樹さんが一歩前に出て、笑顔で対応してくれる。

「初めまして、お邪魔してしまってすみません! 中川といいます。こっちは竜崎と安藤。実は、優香さんとは少し前にカフェで出会いまして……この安藤がコーヒーをひっくり返した時に手伝ってもらったのがきっかけで知り合いまして」

「へえ」

 私がドジをしたことにされている。でもまあ、無難だろう。やりそうだもんな、私。

「まだ知り合って間もないんですが、遊びに来させてもらいました」

 祐樹さんの言葉を聞いて、少し幸太郎さんの表情が曇った気がしてどきりとする。もしやばれてしまったのだろうか……?

 けれど、彼はにっこり笑った。

「そうなんですね。ごゆっくりどうぞ」

「あーいえ! そろそろ昼時だし、失礼しようかと思ってたんですよ! 長々とすいませんね優香さん。ありがとうございました!」

「い、いいえ。来てくれてありがとう」

 これ以上一緒にいるところを見られては、確実にボロが出る。そう判断した私たちはそそくさと家から出ることにした。荷物を持って挨拶をすると、逃げるように外へと出て行く。

 見送りに来てくれた優香さんは、私たちに申し訳なさそうな視線を送ってくれた。それに対して私たちも『大丈夫です、また来ます』の視線を返し、すぐさま車に乗り込んだ。

 結局、今日は男の霊らしきものを一体見ただけで、調査は終了してしまったのだ。




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