視える僕らのシェアハウス

橘しづき

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勝負とは??

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「……だって……ずっと三人でやってきたんじゃん……急に新しい子とか、信じられないから……しかも女の子だし……」

「もう決まったことだから」

 竜崎さんはそう言い捨てると、再び箸を持って食べ始めた。雅さんは泣きべそをかきながらしばらく黙り込んだ後、残りのご飯を凄い速さでかきこみ、立ち上がってリビングから出て行ってしまった。

「あ、雅さん……!」

 呼び止めたが彼女は止まらず、さっさといなくなってしまう。私は困って竜崎さんを見たが、彼はゆっくりご飯を頬張っているだけで何も反応しなかった。

……なんて言うか、本当にいつでも動じないなあこの人……。私はこんなに狼狽えてしまっているのに。

「いいんでしょうか? 雅さん、すごく怒ってましたけど……」

「いいんだ。雅は昔からちょっと頑固でね。それにやたら僕に近づく女性に敵意を向ける」

 それって、竜崎さんのことが好きということでは??

……と思ったが、口には出さないでおく。

「でも、私が入ったのが原因ですし……」

「許可したのは僕だ。まあ、確かに最初は名前がきっかけで入ってもらったけど、たとえ手足だけでもしっかり霊の姿を見てくれたり、仕事だけじゃなく依頼人の心理的サポートに回ったり、こうしてご飯作ってくれたりと助かってるから、入ってもらってよかったと思ってるんだ」

 竜崎さんは何一つ表情を変えずにそう言った。私は驚きで食べる手を止め、彼をじっと見てしまう。

 そんな風に見られていたなんて知らなかった。私なんて全然役に立ててないし、むしろ突然飛び出したりして竜崎さんを巻き込んでいるというのに。

 予想外に褒められて顔が熱くなり、私は小さくなって俯いた。嬉しさと恥ずかしさが相まって、心臓がうるさく鳴ってしまう。

「まあ時間が解決すると思う。花音もちょっと困ることがあるだろうけど、何かあったら僕に言って」

「は、はい。でも雅さんは悪い人じゃないっていうのは分かります。私の事怒ってるはずなのに、ご飯は全部食べてくれたから……」

 ちらりと空になった器を見てそう言った。嫌ってる人間が作ったご飯なんていらない、と言われることも覚悟していたので、最後まできっちり完食してくれたことは嬉しいと思った。こういうところに、人間性は出ると思っている。

 すると竜崎さんが、わずかにだが口角を持ち上げて優しく微笑んだ。

「……いい視点だ。ちょっと子供っぽいけど、悪い子じゃないんだ。花音がそういうところに気づいてくれる子でよかったと思ってる」

「い、いえ、私なんて……」

「まだ雅は仕事中みたいだから、すぐに家を出る。終わったらもっとゆっくり話そう。僕も責任を持って参加するから」

「はい。よろしくお願いします」

 私が頭を下げたところで、リビングの扉が勢いよく開いて心臓が跳ねた。そこには、手にボストンバッグを持ってむすっとした雅さんが立っている。

「仕事があるから一旦離れるけど、私がいない間に奏多に触ったらただじゃおかないから!」

 触るって。人を痴女みたいに。

「触りませんよ……」

「どうだか。まあ祐樹がいるからいいと思うけど、あいつはまた調査? すぐ帰ってくるはずだから、油断しないこと!」

「は、はあ……」

「ふん。帰ってきたらもう一回、勝負よ!」

 何を勝負するというのだ。しかももう一回って、さっき勝負なんかしてないと思うのだが。

 でもそんなことを言ってもしょうがないので、私は素直にうなずいておいた。雅さんはそれを確認すると、そのまま慌ただしく家から出て行ってしまった。

 彼女がいなくなると一気に家は静かになり沈黙が流れる。まだ残っているご飯を食べながら、私はぼんやりと言う。

「お仕事大変そうですね、雅さん……。ずっと帰ってきてなかったのに、着替えだけ取に来てまた行くなんて。泊まり込みってことですよね」

「あの子はまた特殊な力があるからね」

「特殊な力?」

「雅は……」

 言いかけたところで、どこからか電話の音が聞こえてきた。竜崎さんがポケットを漁り、スマホを取り出して画面をのぞき込む。

「あ、優香さんだ」

「優香さんですか!」

 竜崎さんはすぐに電話に出たので、私も箸を置いてそれを見守る。幸太郎さんとの話し合いの結果についてだろう。

 竜崎さんは少し話した後、分かりやすく眉を顰める。

「待ってください。それでいいんですか?」

 珍しく困っているようだ。その様子にただならぬ空気を感じ、不安が募る。そして彼は一旦電話を離し、私に小声で言う。

「花音からも話してみて」

「え、私?」

「僕より話しやすいと思う」

 そう言ってスピーカーにしてくれた竜崎さんのスマホからは、なんだか疲れた様子の優香さんの声が流れてきた。
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