視える僕らのシェアハウス

橘しづき

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もう一度

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 彼女は白いパジャマを着て、まだ濡れたままの髪を垂らしたまま焦った顔でこちらを見下ろしていた。私は咳き込みながら呆然とする。

「死にたいのあんた!?」

「……雅、さん……」

「痛いとこない!? どっかぶったんじゃないの?」

 焦ったように言う彼女の後ろから、別の人の声がした。

「花音!?」

「どうした!?」

 廊下の方から竜崎さんたちの声が聞こえる。私はぼうっとした頭でそれを認識したが、雅さんがキッと向こうを睨みつけて叫んだ。

「男ども来ないでよ!! 中に入らずに待ってなさい!!」

 それを聞いてハッと、自分が裸であることを思い出す。ここに竜崎さんたちが飛び込んでいたら大変なことになるところだった。

「手、もう離しても大丈夫?」

「は、はい……」

 雅さんは怖い顔をしたまま一旦離れ、バスタオルを持ってきてくれた。

「立てるの?」

「た、多分……」

「とにかく出て!」

 雅さんに言われ、私はふらつきながら湯舟から出た。そのまま二人で脱衣所に行き、私は未だぼうっとしながらとりあえず受け取ったバスタオルで体を拭く。

 雅さんは仁王立ちで難しい顔をしていた。

「何事なの? ドライヤーで髪を乾かしていたら、急に叫び出すからびっくりしたんだけど。なんかでかい音もしたし」

「えっ……雅さん、一度いなくなりませんでしたか……?」

「なってない! ずっといたわよ!」

 ということは、あの時点で完全に霊に引っ張られてしまったのだろうか。

「ていうか早くパンツ履いて! ブラつけて! 服も着る!」

「は、はあ……」

「……雅、僕たちはここにいていいの?」

 扉の向こうから困ったような竜崎さんの声がしたので、一気に現実に引き戻される。なんとなく、彼らの前でパンツを履け、と言われたのが恥ずかしくなり、一気に顔が赤くなった。

「一応待ってて」

「……分かった」

 私が急いで服を着終え、ようやく扉を開けと、心配そうな竜崎さんと祐樹さんが立って私たちを見ていた。

「すっげー叫び声したけど。何があった? ゴキブリだったとか言うなよ?」

「……あの……窓の外に霊がいまして……」

 私はぽつりぽつりと今見たものを話した。雅さんがいなくなったように見え、外から声がして窓を開けたこと。血だらけの男性がこちらを見ていたこと。

 竜崎さんは眉間に皺を寄せて何かを考え込み、祐樹さんはぎょっとしたように目を丸くした。

「まじ? この家は竜崎さんが処置してくれてるから普通は何も入れないんだぞ」

 それに対し雅さんが声を上げる。

「まあ、入ってはないんじゃない? 呼んだんでしょ。それに答えたこの子が馬鹿なのよ」

「あーなるほど? でも雅がいないように見えたっていうのは、結構影響受けちゃってるじゃん」

「……まあね」

 黙っていた竜崎さんが頭を搔きながら言う。

「この家の防御はもう一度やり直してみる。少し弱まっていたのかもしれない。でも、あえて見に行かなければそこまで影響を受けなかったはずだ。わざわざ行くなんて無謀すぎるよ」

「ご、ごめんなさい……」

「とりあえず一旦リビングに戻ろう。花音は髪も乾かしてきて」

 そう言って竜崎さんがくるりと向こうを向いたので、私はその背に向かって言う。

「竜崎さん! ……どうしても、私はさっきの霊の声が聞きたかったんです……! ううん、聞くだけじゃなくて……」

 三人が私を見つめている。水滴が垂れる髪をそのままに、私はぐっと前を見て言った。

「浅山さんのこと……もう一度、考えてみませんか」




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