36 / 49
もう一度
しおりを挟む
彼女は白いパジャマを着て、まだ濡れたままの髪を垂らしたまま焦った顔でこちらを見下ろしていた。私は咳き込みながら呆然とする。
「死にたいのあんた!?」
「……雅、さん……」
「痛いとこない!? どっかぶったんじゃないの?」
焦ったように言う彼女の後ろから、別の人の声がした。
「花音!?」
「どうした!?」
廊下の方から竜崎さんたちの声が聞こえる。私はぼうっとした頭でそれを認識したが、雅さんがキッと向こうを睨みつけて叫んだ。
「男ども来ないでよ!! 中に入らずに待ってなさい!!」
それを聞いてハッと、自分が裸であることを思い出す。ここに竜崎さんたちが飛び込んでいたら大変なことになるところだった。
「手、もう離しても大丈夫?」
「は、はい……」
雅さんは怖い顔をしたまま一旦離れ、バスタオルを持ってきてくれた。
「立てるの?」
「た、多分……」
「とにかく出て!」
雅さんに言われ、私はふらつきながら湯舟から出た。そのまま二人で脱衣所に行き、私は未だぼうっとしながらとりあえず受け取ったバスタオルで体を拭く。
雅さんは仁王立ちで難しい顔をしていた。
「何事なの? ドライヤーで髪を乾かしていたら、急に叫び出すからびっくりしたんだけど。なんかでかい音もしたし」
「えっ……雅さん、一度いなくなりませんでしたか……?」
「なってない! ずっといたわよ!」
ということは、あの時点で完全に霊に引っ張られてしまったのだろうか。
「ていうか早くパンツ履いて! ブラつけて! 服も着る!」
「は、はあ……」
「……雅、僕たちはここにいていいの?」
扉の向こうから困ったような竜崎さんの声がしたので、一気に現実に引き戻される。なんとなく、彼らの前でパンツを履け、と言われたのが恥ずかしくなり、一気に顔が赤くなった。
「一応待ってて」
「……分かった」
私が急いで服を着終え、ようやく扉を開けと、心配そうな竜崎さんと祐樹さんが立って私たちを見ていた。
「すっげー叫び声したけど。何があった? ゴキブリだったとか言うなよ?」
「……あの……窓の外に霊がいまして……」
私はぽつりぽつりと今見たものを話した。雅さんがいなくなったように見え、外から声がして窓を開けたこと。血だらけの男性がこちらを見ていたこと。
竜崎さんは眉間に皺を寄せて何かを考え込み、祐樹さんはぎょっとしたように目を丸くした。
「まじ? この家は竜崎さんが処置してくれてるから普通は何も入れないんだぞ」
それに対し雅さんが声を上げる。
「まあ、入ってはないんじゃない? 呼んだんでしょ。それに答えたこの子が馬鹿なのよ」
「あーなるほど? でも雅がいないように見えたっていうのは、結構影響受けちゃってるじゃん」
「……まあね」
黙っていた竜崎さんが頭を搔きながら言う。
「この家の防御はもう一度やり直してみる。少し弱まっていたのかもしれない。でも、あえて見に行かなければそこまで影響を受けなかったはずだ。わざわざ行くなんて無謀すぎるよ」
「ご、ごめんなさい……」
「とりあえず一旦リビングに戻ろう。花音は髪も乾かしてきて」
そう言って竜崎さんがくるりと向こうを向いたので、私はその背に向かって言う。
「竜崎さん! ……どうしても、私はさっきの霊の声が聞きたかったんです……! ううん、聞くだけじゃなくて……」
三人が私を見つめている。水滴が垂れる髪をそのままに、私はぐっと前を見て言った。
「浅山さんのこと……もう一度、考えてみませんか」
「死にたいのあんた!?」
「……雅、さん……」
「痛いとこない!? どっかぶったんじゃないの?」
焦ったように言う彼女の後ろから、別の人の声がした。
「花音!?」
「どうした!?」
廊下の方から竜崎さんたちの声が聞こえる。私はぼうっとした頭でそれを認識したが、雅さんがキッと向こうを睨みつけて叫んだ。
「男ども来ないでよ!! 中に入らずに待ってなさい!!」
それを聞いてハッと、自分が裸であることを思い出す。ここに竜崎さんたちが飛び込んでいたら大変なことになるところだった。
「手、もう離しても大丈夫?」
「は、はい……」
雅さんは怖い顔をしたまま一旦離れ、バスタオルを持ってきてくれた。
「立てるの?」
「た、多分……」
「とにかく出て!」
雅さんに言われ、私はふらつきながら湯舟から出た。そのまま二人で脱衣所に行き、私は未だぼうっとしながらとりあえず受け取ったバスタオルで体を拭く。
雅さんは仁王立ちで難しい顔をしていた。
「何事なの? ドライヤーで髪を乾かしていたら、急に叫び出すからびっくりしたんだけど。なんかでかい音もしたし」
「えっ……雅さん、一度いなくなりませんでしたか……?」
「なってない! ずっといたわよ!」
ということは、あの時点で完全に霊に引っ張られてしまったのだろうか。
「ていうか早くパンツ履いて! ブラつけて! 服も着る!」
「は、はあ……」
「……雅、僕たちはここにいていいの?」
扉の向こうから困ったような竜崎さんの声がしたので、一気に現実に引き戻される。なんとなく、彼らの前でパンツを履け、と言われたのが恥ずかしくなり、一気に顔が赤くなった。
「一応待ってて」
「……分かった」
私が急いで服を着終え、ようやく扉を開けと、心配そうな竜崎さんと祐樹さんが立って私たちを見ていた。
「すっげー叫び声したけど。何があった? ゴキブリだったとか言うなよ?」
「……あの……窓の外に霊がいまして……」
私はぽつりぽつりと今見たものを話した。雅さんがいなくなったように見え、外から声がして窓を開けたこと。血だらけの男性がこちらを見ていたこと。
竜崎さんは眉間に皺を寄せて何かを考え込み、祐樹さんはぎょっとしたように目を丸くした。
「まじ? この家は竜崎さんが処置してくれてるから普通は何も入れないんだぞ」
それに対し雅さんが声を上げる。
「まあ、入ってはないんじゃない? 呼んだんでしょ。それに答えたこの子が馬鹿なのよ」
「あーなるほど? でも雅がいないように見えたっていうのは、結構影響受けちゃってるじゃん」
「……まあね」
黙っていた竜崎さんが頭を搔きながら言う。
「この家の防御はもう一度やり直してみる。少し弱まっていたのかもしれない。でも、あえて見に行かなければそこまで影響を受けなかったはずだ。わざわざ行くなんて無謀すぎるよ」
「ご、ごめんなさい……」
「とりあえず一旦リビングに戻ろう。花音は髪も乾かしてきて」
そう言って竜崎さんがくるりと向こうを向いたので、私はその背に向かって言う。
「竜崎さん! ……どうしても、私はさっきの霊の声が聞きたかったんです……! ううん、聞くだけじゃなくて……」
三人が私を見つめている。水滴が垂れる髪をそのままに、私はぐっと前を見て言った。
「浅山さんのこと……もう一度、考えてみませんか」
30
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
見上げた空は、今日もアオハルなり
木立 花音
青春
──私の想いは届かない。私には、気持ちを伝えるための”声”がないから。
幼馴染だった三人の少年少女。広瀬慎吾(ひろせしんご)。渡辺美也(わたなべみや)。阿久津斗哉(あくつとおや)。そして、重度の聴覚障害を抱え他人と上手くうち解けられない少女、桐原悠里(きりはらゆうり)。
四人の恋心が激しく交錯するなか、文化祭の出し物として決まったのは、演劇ロミオとジュリエット。
ところが、文化祭の準備が滞りなく進んでいたある日。突然、ジュリエット役の桐原悠里が学校を休んでしまう。それは、言葉を発しない彼女が出した、初めてのSOSだった。閉ざされた悠里の心の扉をひらくため、今、三人が立ち上がる!
これは──時にはぶつかり時には涙しながらも、卒業までを駆け抜けた四人の青春群像劇。
※バレンタイン・デイ(ズ)の姉妹作品です。相互にネタバレ要素を含むので、了承願います。
※表紙画像は、ミカスケ様にリクエストして描いて頂いたフリーイラスト。イメージは、主人公の一人悠里です。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる