その転校生、実は許嫁です

紙城香月

文字の大きさ
5 / 6
1章

しおりを挟む
 新学期と言えども何かが特別に変わる訳ではない。
 むしろ日常が帰ってくるだけだ。
 その証拠にホームルーム時の由美先生の表情は去年と変わらず眠そうなままだ。

「ふわぁぁ・・・それじゃホームルーム───」

 心なしかみんな春休み前よりも疲れている気がする。
 倫也に至ってはすでに睡眠の体制に入っていた。

「おっと、その前に喜びなさい男子生徒諸君。なんと今日から転校生がうちのクラスに来るよ!」

 その一言でクラス中の男子たちの眠気は吹っ飛んだようだ。
 各々違うところを見ていた視線が今は先生に集まっている。

「君たち分かりやすいね・・・。まあいいか、入ってきてー」

 先生に呼ばれて教室に入ってきたのは眼鏡をかけたなんだか見覚えのある女子。
 黒板に丁寧な字で自分の名前を書き、振り返る。

「月城風花です。今日からよろしくお願いします。」

 『え・・・な、なんで風花がここに・・・!?』と某恋愛系小説の主人公なら驚いて立ち上がっていたところだろうが、正直なところそんなに驚いていない。
 大体の予想はしていた。
 遠いところから引っ越してきた風花がどこの高校に通うかとなると、この辺だとこの高校くらいしかない。

「じゃあ月城さんはそこの空けている・・・・・席に座ってね」
「はい」

 なるほど、俺の目の前の席が空いていたのは欠席者じゃなくて風花の席だったのか。
 ・・・となると結構前から風花はこの学校に通うことが決まっていたのか。
 そんなことを考えていると前から歩いてきた風花と目が合う。
 しかし、あまり驚いてない様子の俺を見て面白くないと思ったのか、家とは正反対に素っ気ない感じだった。

「じゃ、ホームルーム始めるよー」

 軽いクラス内での自己紹介と委員会決めが始まった。
 風花は余っていた図書委員に無言で手を上げ立候補していた。
 図書委員は昼休みに当番制で本の貸し出し係として図書室に待機することがある。
 昼休みが丸々潰れることもあり、あまり人気がない。
 恐らくそれを分かっていないのだろう。

「他に図書委員になってくれる人いないー?」
「由美先生、俺やります」

 去年も図書委員だったし、図書室の先生と仲のいい俺としてはあまり苦ではない。
 それに風花のことも心配だ。

「ナイス月城くん!図書の先生に成績上げるように言っておくね」
「図書の先生が一体なんの成績上げてくれるんですか・・・」

 今度、図書室の先生に聞いてみようかな。


「じゃあ今日はこれで終わりだから、ささっと帰ってね」

 さて、この後の風花の周りに集まる男子たちに対して風花がどんな反応するか少し楽しみだ。
 といっても女子たちがすぐに男子たちを止めに入るだろうから、何も問題ないと思うが。
 ホームルームが終わり先生が退出すると同時にクラスの男子の大半が風花の周りに群がってきた。
 それぞれ風花と仲良くなりたいのか、興味を引こうと口々に話題を切り出すしているが、いろんな声が合わさってこれではただの騒音だ。
 加えて止める立場の女子まで混じっていた。
 これじゃ止めるやつがいないじゃないか。
 風花もクラスのほぼ全員に囲まれるのは想定外だっただろう。

「おーい和人。帰ろうぜ」

 どうやら俺以外にも混ざっていない男子が他にいたらしい。

「倫也は混ざらなくていいのか」
「何に」

 怪訝そうにしている倫也を見て目の前の集団を無言で小さく指さす。

「ああ、あれのこと。混ざりたくないって言えば嘘になるけど、あれはどう考えても迷惑だろ」
「さすが親友。お前がいいやつで俺は嬉しいよ」
「なんだよ急に。気持ち悪いな」
「というわけで、だ。ごめん倫也、今日は一緒に帰れない」
「どういうわけだよ」

 俺は倫也の質問に答えることなく強引に集団の中に入り、一人の女子の華奢な手を掴んだ。

「月城さんはこの学校初めてだよね?軽く学校を案内させてよ」

 急に手を掴んだ俺に驚く様子もなく、優しく笑い。

「ありがと」

 ただ一言そういった。
 家の中でいつも会っていた風花とはまた別の雰囲気を纏っていてドキッとしたのは秘密だ。

「こういう訳だから先帰っててくれー!」

 俺は倫也に対してそう言い残して風花と二人で教室を後にした。
 クラスメイトの不満な顔?そんなの知ったことじゃない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

モブなので思いっきり場外で暴れてみました

雪那 由多
恋愛
やっと卒業だと言うのに婚約破棄だとかそう言うのはもっと人の目のないところでお三方だけでやってくださいませ。 そしてよろしければ私を巻き来ないようにご注意くださいませ。 一応自衛はさせていただきますが悪しからず? そんなささやかな防衛をして何か問題ありましょうか? ※衝動的に書いたのであげてみました四話完結です。

処理中です...