その転校生、実は許嫁です

紙城香月

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1章

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 さて、どうしたものか。
 教室から飛び出してきたが、風花は先ほどから黙ったまま下を向いている。
 もしかして実はあの集団の中にいたかったのだろうか。

「あ、あのさ、学校案内って言って強引に連れ出したけど、もしかして余計なお世話だった?」
「全然。むしろあの集団の中から助けてくれて嬉しかった。ありがとう和人君・・・

 家で過ごしているときとは違い、髪を一本に結って黒縁の眼鏡をかけており、呼び方も『かずくん』だったはずが『和人君』に変わっている。
 なんだか新鮮な感覚を通り越して別人に思えてきた。

「学校案内はあそこから離れるための口実だし無理に校内を見て回る必要はないけど、どうする?」
「せっかくだから案内してくれると嬉しい」
「分かった。じゃあ取りあえず近くにある情報教室から案内するよ」



***『月城風花』***

 私は学校というところはあんまり好きではない。
 まあ学校が好きな人もあまりいない気がするけど。
 どうしても萎縮して別人格のようになってしまう。
 前の学校で仲のよかった友人にも「学校とプライベートでキャラ違いすぎない!?」と驚かれた。
 かずくんは学校モードの私を見ると驚くだろうか。
 緊張する反面、少し楽しみだったりもする。

 教室に入るとみんなが私の方を向いていた。
 転校は初めてだったけど正直クラスで自己紹介するだけなら緊張することないと思っていた。
 でもかずくん以外は全員知らない人だと思うとすごく緊張する。
 うぅ・・・心なしかお腹が痛く感じる。

「月城風花です。よろしくお願いします」

 自己紹介が極端に短かかったためか、教室内が少しざわついている。
 前の学校でもこんな感じだったし、学校内での私としては噛まずに言えただけでも及第点だ。

「じゃあ月城さんはそこの空けている席に座ってね」
「はい」

 先生が指さした席を見ると、そこはかずくんの目の前の席だった。
 同じ月城同士だから席が前後になるのは薄々予想していたけど、やっぱり現実は物語のように上手くは進んでくれないらしい。
 席に向かって真っ直ぐ歩いていた私はかずくんと目が合った。
 かずくんは何故か無言で私の目をじっと見てくる。
 次第に恥ずかしくなってきた私は顔が赤くなる前に目を逸らし、速やかに椅子に座った。
 大丈夫だよね?私の顔、赤くなってないよね!?

「じゃ、ホームルーム始めるよー」

 それからみんなの自己紹介を聞いた後で、委員会決めが始まった。
 各々が希望の委員会で挙手し、かぶった人たちは熾烈な戦いじゃんけんを繰り広げる中、一個だけ何故か誰も立候補しない委員会があった。
 私はどれでも良かったのでそれ《・・》を選んだ。
 すると、クラスで「おぉー」という賞賛の声が一部で上がった。

「他に図書委員になってくれる人いないー?」

 誰も手を上げようとしない。
 そんなに人気のない委員会なのだろうか。それとも私が嫌がられているのだろうか。
 そんな不安が増幅していくと同時に、クラス内は静寂に包まれようとしていた。
 しかし、完全に静かになる前に私の後ろから一人の声がした。

「由美先生、俺やります」

 かずくんだった。
 あまりよく知らない人と二人で委員会は辛いと思っていたからかなり嬉しい。
 さすがかずくん。もう今すぐにでも飛びつきたい。

「ナイス月城くん!図書の先生に成績上げるように言っておくね」

 この学校の図書室の先生は二年生の何かの教科を担当している人なのかな。

「図書の先生が一体なんの成績上げてくれるんですか・・・」

 どうやら由美先生の冗談だったらしい。
 普通に騙された。

「じゃあ今日はこれで終わりだから、ささっと帰ってね」

 みんな帰宅の準備をしている。
 私も先生が教室から退出するのを横目に、帰宅の準備をしようと鞄を机の上に置いたときだった。

───私はパニックになった。
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