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番を棄てたアルファ
第31幕
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番の契約とは神からの祝福である。
番の契約を取り交わした者たちには、生涯の不変的な幸福が約束される。それは、恋人関係や婚姻関係よりも強固な絆であることは、周知の事実であった。
神崎響とその実弟の例を挙げよう。
響が高校二年生になったばかりの春のことである。ベータ性であるはずの中学生の弟が、なんの前触れもなく目の前で発情期を迎え、アルファ性である響を誘惑した。抗うことなどできるはずもなく、響は弟を組み敷いて、実の兄弟でありながら、番の契約を果たしてしまった。発展途上の弟の身体は、番の契約により、響以外の全ての雄を拒絶し、響のぺニスを受け入れるためだけに誂えた膣に変質した。甘い花のような香りのフェロモンは、熟した果実のような香りに変化を遂げ、響以外の男を惑わすことはなくなった。
響は、実弟に自らの子を孕ませて生涯愛し続けることを熱望した。彼の実弟もまた、盲目的に実兄である響を、唯一無二の雄として切望した。何かに取り憑かれたように、彼等は激しく惹かれ合い、二人だけの世界に酔いしれる。
番の繋がりとは、そのような崇高で、悪魔的な呪縛であった。
「ん、あ、」
薫は胸の突起を舌先で転がされて、ぴくりと上半身を震えさせた。
助手席のシートは半分倒され、押さえつけられるように寝かされている。紺のカーディガンとカッターシャツのボタンは全て外され、下に着ていた黒いTシャツは胸の上まで捲り上げられていた。
片方の乳首は舌で弄ばれ、もう片方は指で焦らすように乳輪を撫でられる。薫は男の骨格に、女の肌を持ち、中性的な危うい色香を放つ。胸板は薄いにも関わらず、乳首を立たせて、肌を湿らせ、ほんのり赤く上気していた。
止めどなく降り続ける雨は、ザーザーと音を当ててフロントガラスを濡らし、車内の淫らな熱気に内側の窓ガラスはじんわりと汗を流す。
「ん、も、や、……」
薫が手の甲で目元を覆った。敏感な突起を、摘ままれて、転がされれば、悶えるしかない。じんじんと肌が火照り、股間が疼く。足の間には響の片膝が差し込まれ、閉じることも叶わない。
「ん、ん、……あ、」
執拗に胸を責められて、腰が小刻みに揺れ、知らず知らずのうちに、響の膝に股間を擦り付け始める。雌の穴も期待にひくつき、奥から愛液が溢れてくるようで、薫の頭の中は霞みがかる。体が熱くなるにつれ、内股に打たれた鞭痕が甘痒く疼き、薫は博己のことを思い出して、涙が溢れそうになった。
「薫、苦しいか?」
黒い学生服のズボンのファスナーを下げられ、薫は小さく息を飲む。ズボンと下着を脱がされれば、薫の切なく勃起してペニスが露になる。けれど、それよりも、その周囲に散りばめられた新旧の傷跡が、響の目を引いた。
「酷いこと、するな、」
響は、痛ましい鞭痕を優しく撫でた。その仕草とは裏腹に、響の胸の奥に熱い怒りが沸き上がる。
大切な弟に傷を負わされた。けれど、それよりも、自らの番に対する凌辱の証を目の当たりにさせられたことによる怒りであった。アフターピルを服用しているという状況証拠ではなく、実際に幾度となく抱かれた物的証拠を突き付けられたような錯覚に陥った。
まるで、薫を自分のであるとでも誇示するように、執拗に刻まれた鞭痕に、響は、顔も知らない男の、歪んだ独占欲のようなものを垣間見た気がしたのであった。
番の契約を取り交わした者たちには、生涯の不変的な幸福が約束される。それは、恋人関係や婚姻関係よりも強固な絆であることは、周知の事実であった。
神崎響とその実弟の例を挙げよう。
響が高校二年生になったばかりの春のことである。ベータ性であるはずの中学生の弟が、なんの前触れもなく目の前で発情期を迎え、アルファ性である響を誘惑した。抗うことなどできるはずもなく、響は弟を組み敷いて、実の兄弟でありながら、番の契約を果たしてしまった。発展途上の弟の身体は、番の契約により、響以外の全ての雄を拒絶し、響のぺニスを受け入れるためだけに誂えた膣に変質した。甘い花のような香りのフェロモンは、熟した果実のような香りに変化を遂げ、響以外の男を惑わすことはなくなった。
響は、実弟に自らの子を孕ませて生涯愛し続けることを熱望した。彼の実弟もまた、盲目的に実兄である響を、唯一無二の雄として切望した。何かに取り憑かれたように、彼等は激しく惹かれ合い、二人だけの世界に酔いしれる。
番の繋がりとは、そのような崇高で、悪魔的な呪縛であった。
「ん、あ、」
薫は胸の突起を舌先で転がされて、ぴくりと上半身を震えさせた。
助手席のシートは半分倒され、押さえつけられるように寝かされている。紺のカーディガンとカッターシャツのボタンは全て外され、下に着ていた黒いTシャツは胸の上まで捲り上げられていた。
片方の乳首は舌で弄ばれ、もう片方は指で焦らすように乳輪を撫でられる。薫は男の骨格に、女の肌を持ち、中性的な危うい色香を放つ。胸板は薄いにも関わらず、乳首を立たせて、肌を湿らせ、ほんのり赤く上気していた。
止めどなく降り続ける雨は、ザーザーと音を当ててフロントガラスを濡らし、車内の淫らな熱気に内側の窓ガラスはじんわりと汗を流す。
「ん、も、や、……」
薫が手の甲で目元を覆った。敏感な突起を、摘ままれて、転がされれば、悶えるしかない。じんじんと肌が火照り、股間が疼く。足の間には響の片膝が差し込まれ、閉じることも叶わない。
「ん、ん、……あ、」
執拗に胸を責められて、腰が小刻みに揺れ、知らず知らずのうちに、響の膝に股間を擦り付け始める。雌の穴も期待にひくつき、奥から愛液が溢れてくるようで、薫の頭の中は霞みがかる。体が熱くなるにつれ、内股に打たれた鞭痕が甘痒く疼き、薫は博己のことを思い出して、涙が溢れそうになった。
「薫、苦しいか?」
黒い学生服のズボンのファスナーを下げられ、薫は小さく息を飲む。ズボンと下着を脱がされれば、薫の切なく勃起してペニスが露になる。けれど、それよりも、その周囲に散りばめられた新旧の傷跡が、響の目を引いた。
「酷いこと、するな、」
響は、痛ましい鞭痕を優しく撫でた。その仕草とは裏腹に、響の胸の奥に熱い怒りが沸き上がる。
大切な弟に傷を負わされた。けれど、それよりも、自らの番に対する凌辱の証を目の当たりにさせられたことによる怒りであった。アフターピルを服用しているという状況証拠ではなく、実際に幾度となく抱かれた物的証拠を突き付けられたような錯覚に陥った。
まるで、薫を自分のであるとでも誇示するように、執拗に刻まれた鞭痕に、響は、顔も知らない男の、歪んだ独占欲のようなものを垣間見た気がしたのであった。
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