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傍観者のジレンマ
第40幕
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窓の外は重い雨が降り頻り、耳鳴りのような重低音が断続的に響いていた。寮長たちによる夜八時の点呼が終わり、部屋の扉が閉まれば、静寂の中で一層、雨音が強調されるようであった。
隼人は、自身と扉の間に立っている細身の背中を愛しそうに見つめていた。薫は、背後から向けられる熱っぽい視線を浴びながら、身体を硬直させていた。
ピンと張り詰めた緊張感に、薫は息を吐くことすら躊躇う程であった。
隼人が手を伸ばせば、細身の身体は簡単に抱きすくめられる。薫はビクリと肩を揺らして、小さく身動いだが、逞しい男の腕はがっしりと強く、抜け出すことは叶いそうになかった。
「薫、」
掠れたような低い声で囁かれて、薫は目を瞑って、小さく息を吐いた。
薫には選択肢など存在しない。
薫は顔だけ振り返って、微笑んだ。隼人は、薫の作り出した微笑みに息を飲む。妖艶でありながら、どこか壊れそうな儚げな微笑みに隼人は胸を焦がした。
隼人の腕の力が弱まったことを察して、薫は隼人に向き直ると、自ら男に身を寄せた。ジャージの上から股間に手を添えれば、若いベータの雄が、既に固く熱を帯始めている。
薫は目を伏せて、その場で膝をつく。そうして、迷わずに、男のジャージと下着をずり下げると、雄の臭いを放つぺニスを露にした。
「……ぁ、」
隼人は僅に動揺を見せて、一歩後退ったが、薫は構わず、滾ったぺニスを握ると、淫らな舌先を這わせた。薫の愛撫に呼応するように、ピクピクと脈打つ熱い肉棒は、嫌悪の対象でしかなかったけれど、それでも薫は懸命に奉仕する。
隼人との距離を戻すことができたばかりであった。だから、薫が隼人を拒むことなど、できようもないのだ。そもそも、この狭い檻の中で、逃げ場など在りはしない。
薫の幸の薄い唇が、亀頭に口付けするように触れて飲み込んでいく。熱く濡れた口内に招き込まれれば、若い雄は、ひとたまりもなかった。
もし、隼人に言い訳が許されたなら「そんなつもりではなかった」と言葉にしただろう。ただ、腕の中に薫を抱きすくめて、その体温を感じたかった。ただ、薫がここに居るのだと、その存在を確かめたかった。
けれど、雌の肢体に触れることに堪えてきた隼人にとって、薫の淫靡な愛撫は抗えられるものではなかった。
「……は、……ぁ、」
隼人の熱の籠った息遣いを聞きながら、薫は窺うように隼人を見上げる。隼人は薫の前髪に触れ、そっと掻き上げた。薫の潤んだ瞳には、隼人の悩ましげに眉を歪める顔が映り込む。
「……ぁ、……ッ……」
隼人は直ぐにでも達しそうになったけれど、薫は男の様子を窺いながら、焦らすように動きを緩めた。そうして、固く滾らせたぺニスから、薫は唇を放して微笑んだ。薫は立ち上がると、隼人に背中を向けて、扉に左腕を預けると、空いた手でゆっくりと自らのジャージのズボンと下着を下げた。薫の臀部には、痛々しいミミズ腫れの痕が残る。それでも、薫は美しく淫靡であった。
「隼人、来ていいよ、」
薫は顔だけ振り返り、口角を持ち上げた。唇にはコンドームの袋を咥えて、上目遣いに隼人を見上げる。その瞳は、どこか挑発的な眼差しだった。
隼人は高一の頃の薫を思い出した。妖艶で、強かで、隼人を誘惑してくる薫に、隼人は甘い溜め息を吐いた。あの頃は、隼人と薫の間には何者の介入もなく、二人だけの世界に浸ることができた。
隼人は、薫の口からコンドームを奪い取った。
「……ひ、……ぁ、」
隼人は、小振りの腰を掴んで、固く勃起したぺニスを薫のアナルに宛がった。そうして、ゆっくりと薫の体内に侵入する。熱く太い杭が身体を割って入る痛みに、薫は思わず腰が逃げた。隼人は薫の熱い膣内に歓喜して、小さく呻きながら腰を打ち付ける。乾いた肉壁は、直ぐにでも愛液が溢れだして、ぐちゅぐちゅと濡れた卑猥な音が室内に響き渡る。
オメガの防衛本能は、痛みを和らげ、雄を悦ばすことに長けていた。それでも、薫の心臓は凍え、寒気に身体が震える。
「あ、あ、ん、あ……ああッ……」
薫の身体は番ではない隼人を拒絶して、それでも、快楽の要所を擦られれば甘い矯声を奏でた。痛みと快楽に悶えながら、薫は扉に身体を預けて唇を噛んだ。
体内を抉られる度に、薫の心は少しずつ削られて磨耗していくようだった。
「……薫、」
隼人は、眼前の開いた襟口から、薫の肩に顔を埋めて、動きを緩めた。できうる限り達することを遅らせようと試みる。けれど、薫の首筋からは甘い香りが沸き立ち始め、隼人の鼻腔をくすぐって、雄の衝動を悪戯に掻き立てる。隼人は動きたい衝動を必死に抑えるように、薫の冷たく濡れた白い肌に唇を寄せて、小さく吸い付いた。
隼人は、薫といつまでも繋がっていたかった。
薫は冷や汗を滴ながら唇を噛み締めて、膣を締め付けながら隼人の射精を促した。隼人はうねりながら締め付けてくる肉壁に堪えきれずに、ゆっくりと腰を打ち付け始める。
「……ッ……は、か、薫……ッ……」
「ひ、あん、あ、あ、あ……ーーーッ」
薫は甘く鳴きながら、早くこの苦痛が終わってくれることだけを切に祈っていた。
隼人は、自身と扉の間に立っている細身の背中を愛しそうに見つめていた。薫は、背後から向けられる熱っぽい視線を浴びながら、身体を硬直させていた。
ピンと張り詰めた緊張感に、薫は息を吐くことすら躊躇う程であった。
隼人が手を伸ばせば、細身の身体は簡単に抱きすくめられる。薫はビクリと肩を揺らして、小さく身動いだが、逞しい男の腕はがっしりと強く、抜け出すことは叶いそうになかった。
「薫、」
掠れたような低い声で囁かれて、薫は目を瞑って、小さく息を吐いた。
薫には選択肢など存在しない。
薫は顔だけ振り返って、微笑んだ。隼人は、薫の作り出した微笑みに息を飲む。妖艶でありながら、どこか壊れそうな儚げな微笑みに隼人は胸を焦がした。
隼人の腕の力が弱まったことを察して、薫は隼人に向き直ると、自ら男に身を寄せた。ジャージの上から股間に手を添えれば、若いベータの雄が、既に固く熱を帯始めている。
薫は目を伏せて、その場で膝をつく。そうして、迷わずに、男のジャージと下着をずり下げると、雄の臭いを放つぺニスを露にした。
「……ぁ、」
隼人は僅に動揺を見せて、一歩後退ったが、薫は構わず、滾ったぺニスを握ると、淫らな舌先を這わせた。薫の愛撫に呼応するように、ピクピクと脈打つ熱い肉棒は、嫌悪の対象でしかなかったけれど、それでも薫は懸命に奉仕する。
隼人との距離を戻すことができたばかりであった。だから、薫が隼人を拒むことなど、できようもないのだ。そもそも、この狭い檻の中で、逃げ場など在りはしない。
薫の幸の薄い唇が、亀頭に口付けするように触れて飲み込んでいく。熱く濡れた口内に招き込まれれば、若い雄は、ひとたまりもなかった。
もし、隼人に言い訳が許されたなら「そんなつもりではなかった」と言葉にしただろう。ただ、腕の中に薫を抱きすくめて、その体温を感じたかった。ただ、薫がここに居るのだと、その存在を確かめたかった。
けれど、雌の肢体に触れることに堪えてきた隼人にとって、薫の淫靡な愛撫は抗えられるものではなかった。
「……は、……ぁ、」
隼人の熱の籠った息遣いを聞きながら、薫は窺うように隼人を見上げる。隼人は薫の前髪に触れ、そっと掻き上げた。薫の潤んだ瞳には、隼人の悩ましげに眉を歪める顔が映り込む。
「……ぁ、……ッ……」
隼人は直ぐにでも達しそうになったけれど、薫は男の様子を窺いながら、焦らすように動きを緩めた。そうして、固く滾らせたぺニスから、薫は唇を放して微笑んだ。薫は立ち上がると、隼人に背中を向けて、扉に左腕を預けると、空いた手でゆっくりと自らのジャージのズボンと下着を下げた。薫の臀部には、痛々しいミミズ腫れの痕が残る。それでも、薫は美しく淫靡であった。
「隼人、来ていいよ、」
薫は顔だけ振り返り、口角を持ち上げた。唇にはコンドームの袋を咥えて、上目遣いに隼人を見上げる。その瞳は、どこか挑発的な眼差しだった。
隼人は高一の頃の薫を思い出した。妖艶で、強かで、隼人を誘惑してくる薫に、隼人は甘い溜め息を吐いた。あの頃は、隼人と薫の間には何者の介入もなく、二人だけの世界に浸ることができた。
隼人は、薫の口からコンドームを奪い取った。
「……ひ、……ぁ、」
隼人は、小振りの腰を掴んで、固く勃起したぺニスを薫のアナルに宛がった。そうして、ゆっくりと薫の体内に侵入する。熱く太い杭が身体を割って入る痛みに、薫は思わず腰が逃げた。隼人は薫の熱い膣内に歓喜して、小さく呻きながら腰を打ち付ける。乾いた肉壁は、直ぐにでも愛液が溢れだして、ぐちゅぐちゅと濡れた卑猥な音が室内に響き渡る。
オメガの防衛本能は、痛みを和らげ、雄を悦ばすことに長けていた。それでも、薫の心臓は凍え、寒気に身体が震える。
「あ、あ、ん、あ……ああッ……」
薫の身体は番ではない隼人を拒絶して、それでも、快楽の要所を擦られれば甘い矯声を奏でた。痛みと快楽に悶えながら、薫は扉に身体を預けて唇を噛んだ。
体内を抉られる度に、薫の心は少しずつ削られて磨耗していくようだった。
「……薫、」
隼人は、眼前の開いた襟口から、薫の肩に顔を埋めて、動きを緩めた。できうる限り達することを遅らせようと試みる。けれど、薫の首筋からは甘い香りが沸き立ち始め、隼人の鼻腔をくすぐって、雄の衝動を悪戯に掻き立てる。隼人は動きたい衝動を必死に抑えるように、薫の冷たく濡れた白い肌に唇を寄せて、小さく吸い付いた。
隼人は、薫といつまでも繋がっていたかった。
薫は冷や汗を滴ながら唇を噛み締めて、膣を締め付けながら隼人の射精を促した。隼人はうねりながら締め付けてくる肉壁に堪えきれずに、ゆっくりと腰を打ち付け始める。
「……ッ……は、か、薫……ッ……」
「ひ、あん、あ、あ、あ……ーーーッ」
薫は甘く鳴きながら、早くこの苦痛が終わってくれることだけを切に祈っていた。
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