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光の戦士
第118幕
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本条千晴は、献身的な看護師である。怪我や病で苦しむ入院患者の心に寄り添い、温かい笑みを浮かべて身の回りの世話をする。452号室に足を踏み入れてから、オメガの少年の食事の配膳と入浴時の補助は、宮沢医師から、本条看護師の役目に移行していた。
ベッドの横にあるテーブルには、半分も残してある病院食が置かれており、看護師は小さく溜め息を吐く。
「食欲がないのかな?」
看護師の問いかけに返事はなく、虚しい独り言となった。薫はベッドに横になったまま、テレビをぼんやりと見つめていた。
「ねえ、一緒にプリン食べない?」
今度は、少し大きな声で問いかけられて、薫は看護師を見上げた。年上のオメガは、プリンを二つ取り出して、悪戯っ子のように微笑んでいる。
「甘いもの嫌いかな?」
「いえ、ありがとうございます」
薫は、小さく笑って頷いた。看護師はベッド脇の丸椅子に押しかけて、薫にプリンとスプーンを手渡した。新しく担当することとなった患者と、少しばかり雑談でもできればと思ったが、少年はスプーンを口に運びながらも、視線はテレビに釘付けであった。仕方なく、看護師も一緒にテレビを観ることにする。
テレビの向こう側では、世界を闇で覆い尽くそうと企てる怪獣と、地球の平和を守る正義のヒーローが激戦を繰り広げていた。
『サンシャインバースト!!!』
必殺技の光線が放たれて、怪獣が派手に爆発すれば、世界に光が射し込んでいく。ヒーローを見つめる少年の瞳が、僅かに輝いて見えた。
「特撮、好きなんだね、」
本条は可笑しそうに微笑んだ。薫はびくりと肩を震わせる。
「いや、そういうわけじゃ……、たまたま再放送をしてて。小さい頃に好きだったから、懐かしくて、」
薫は言い訳がましい言葉を並べながら、頬を赤らめた。高校生にもなって、こんな子供向けの番組に見入ってしまうなんて、幼稚だと思われてしまっただろうか。
「僕も子供の頃は、大好きだったなぁー」
照れ臭そうに微笑む少年に、本条はクスクスと楽しそうに笑った。生気が薄い少年にも、興味を惹くものがあるのだと思うと、少しばかり安堵する。
怪獣を見事に倒したヒーローは、変身を解くと、一人の青年の姿に戻った。胸には、地球を守る隊員のバッジが光る。同じ隊員の制服を纏った仲間たちが勝利を称えるために、彼の元に駆け寄ってくれば、光の戦士は満面の笑みを浮かべて決め台詞を発した。鍛え上げられた逞しい肉体と、さわやかな笑顔は、華やかで人目を惹き付ける。
「隼人、」
思わず、薫の唇から見知った男の名前が溢れ落ちた。
「ん?」
「……ぁ、……えっと、知ってる人に少し似てたから、」
薫は思わず口元を押さえた。
河島隼人に対する仄かな羨望は、幼少期に夢中になっていた『光の戦士』に、どことなく似ていたからであろうか。
幼い頃は、あんな風に世界を守れるような強い男になりたいと思っていた。小柄で臆病な子供だった癖に、どうしてそんな憧れを持っていたのだろうか。あんなに大事にしていた隊員バッジは、どこにいってしまったのだろう。
『薫、好きだ、』
真っ直ぐな隼人の瞳を思い出して、薫は息が詰まった。抱き締められた逞しい腕を拒んだのは、他でもない自分自身であった。傷ついた隼人の顔を思い出す。あの二人で夜毎を過ごしてきた部屋は、既に空き部屋になってしまったのだろうか。
苦痛でしかなかったセックスさえも、戻ることのできない過去になってしまえば、美化された甘い思い出になりつつあった。
隼人は、もう前を向いて歩き出しているのかもしれない。その瞳に光を取り戻せば、きっと、隼人は世界を照らすような頼もしい男になるのだろう。薫には、その姿を見ることはできないだろうけれど。
「この俳優さん、カッコイイね」
年齢不詳の看護師が、艶っぽく微笑む。
「そう、ですね、」
薫は、ぎこちなく頷いた。
ベッドの横にあるテーブルには、半分も残してある病院食が置かれており、看護師は小さく溜め息を吐く。
「食欲がないのかな?」
看護師の問いかけに返事はなく、虚しい独り言となった。薫はベッドに横になったまま、テレビをぼんやりと見つめていた。
「ねえ、一緒にプリン食べない?」
今度は、少し大きな声で問いかけられて、薫は看護師を見上げた。年上のオメガは、プリンを二つ取り出して、悪戯っ子のように微笑んでいる。
「甘いもの嫌いかな?」
「いえ、ありがとうございます」
薫は、小さく笑って頷いた。看護師はベッド脇の丸椅子に押しかけて、薫にプリンとスプーンを手渡した。新しく担当することとなった患者と、少しばかり雑談でもできればと思ったが、少年はスプーンを口に運びながらも、視線はテレビに釘付けであった。仕方なく、看護師も一緒にテレビを観ることにする。
テレビの向こう側では、世界を闇で覆い尽くそうと企てる怪獣と、地球の平和を守る正義のヒーローが激戦を繰り広げていた。
『サンシャインバースト!!!』
必殺技の光線が放たれて、怪獣が派手に爆発すれば、世界に光が射し込んでいく。ヒーローを見つめる少年の瞳が、僅かに輝いて見えた。
「特撮、好きなんだね、」
本条は可笑しそうに微笑んだ。薫はびくりと肩を震わせる。
「いや、そういうわけじゃ……、たまたま再放送をしてて。小さい頃に好きだったから、懐かしくて、」
薫は言い訳がましい言葉を並べながら、頬を赤らめた。高校生にもなって、こんな子供向けの番組に見入ってしまうなんて、幼稚だと思われてしまっただろうか。
「僕も子供の頃は、大好きだったなぁー」
照れ臭そうに微笑む少年に、本条はクスクスと楽しそうに笑った。生気が薄い少年にも、興味を惹くものがあるのだと思うと、少しばかり安堵する。
怪獣を見事に倒したヒーローは、変身を解くと、一人の青年の姿に戻った。胸には、地球を守る隊員のバッジが光る。同じ隊員の制服を纏った仲間たちが勝利を称えるために、彼の元に駆け寄ってくれば、光の戦士は満面の笑みを浮かべて決め台詞を発した。鍛え上げられた逞しい肉体と、さわやかな笑顔は、華やかで人目を惹き付ける。
「隼人、」
思わず、薫の唇から見知った男の名前が溢れ落ちた。
「ん?」
「……ぁ、……えっと、知ってる人に少し似てたから、」
薫は思わず口元を押さえた。
河島隼人に対する仄かな羨望は、幼少期に夢中になっていた『光の戦士』に、どことなく似ていたからであろうか。
幼い頃は、あんな風に世界を守れるような強い男になりたいと思っていた。小柄で臆病な子供だった癖に、どうしてそんな憧れを持っていたのだろうか。あんなに大事にしていた隊員バッジは、どこにいってしまったのだろう。
『薫、好きだ、』
真っ直ぐな隼人の瞳を思い出して、薫は息が詰まった。抱き締められた逞しい腕を拒んだのは、他でもない自分自身であった。傷ついた隼人の顔を思い出す。あの二人で夜毎を過ごしてきた部屋は、既に空き部屋になってしまったのだろうか。
苦痛でしかなかったセックスさえも、戻ることのできない過去になってしまえば、美化された甘い思い出になりつつあった。
隼人は、もう前を向いて歩き出しているのかもしれない。その瞳に光を取り戻せば、きっと、隼人は世界を照らすような頼もしい男になるのだろう。薫には、その姿を見ることはできないだろうけれど。
「この俳優さん、カッコイイね」
年齢不詳の看護師が、艶っぽく微笑む。
「そう、ですね、」
薫は、ぎこちなく頷いた。
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