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nao@そのエラー完結

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12月12日(水)

第41話

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 名ばかりのプロジェクト報告会が終わると、連れ立って居酒屋へと向かった。神戸での忘年会には、細川リーダーと俺以外は地元の人間が十名程いるようである。

 大方の席が埋まると、岡本氏が乾杯の音頭を取り、プロジェクトの今後の成功を祈りつつ、ビールの注がれたグラスを掲げた。わいわいと関西らしい騒がしさで、鍋を囲みながら、ビールを煽る。酒豪が多いらしく、どんどん空のビール瓶が積み上がる。

「瀬川くん、飲んどぉ?」

 俺と細川リーダーの間に、図体のデカイ男が無理やり割り込んできた。

「飲んでるよ。でも、もう限界かな」

 酒で焼けた赤い顔の男に、苦笑いする。あまり減っていないグラスに、更に注ぎ込まれそうになって、やんわりと手の平でグラスに蓋をした。疑わしそうな視線で、瞳を覗き込まれた。

「まだ限界ちゃうやろ? 抱きついてきたり、甘えてこうへんもんな」
「ん?」
「なんもない。気にしんとぅ」

 細川リーダーが湯川氏の脇腹を肘で突いた。二人で顔を見合わせて、目配せで会話をしている。正確な意味は読み取れなかったが、とても嫌な予感がした。まさか、俺は酔うと、見境なく誰かに誰かに抱きついたり、甘えたりしているのだろうか。ゾワッと鳥肌が立った。

「篠田さん欠席なん、残念やなぁ」

 目の前の岡本氏が口をへの字にして不満をこぼすので、細川リーダーが「すみません」と苦笑いを浮かべて謝った。

「いや、謝らんでええんやけど、瀬川くんをプロジェクトから抜こうなんて、どういうことかぁー? って問い詰めよう思とうてん。瀬川くんからも、このプロジェクトから抜けとうないって、篠田さんに言っとぅ」

 岡本氏に凄まれて、ビシッと箸の先を向けられる。返す言葉が見つからず、苦笑いを浮かべるしかない。

「瀬川くん抜けんとぉ?」
「わ、」

 腹に冷たいものを浴びて、ビクリと体が揺れた。見上げると、湯川氏の持っていたグラスが傾き、ビールが溢れている。

「わー、ごめん!」

 俺のネクタイとシャツがビールに濡れているのを目にして、大柄の男は自分の粗相に気がついた。慌ててグラスをテーブルに置くと、おしぼりを俺の腹に押し当てた。そのまま、男から、ぬるくなったおしぼりを受け取って、自分で拭う。けれど、これがなんの慰めになるのか。

「なにやっとうのや、ダボ」

 呆れたように、岡本氏が叱責する。

「すぐ洗わないと染みになるよ」

 細川リーダーが、心配そうに口を挟む。

「ちょっと、トイレ行ってきます」
「ご、ごめんなぁ、やってもうた……」
「替えのシャツあるし、大丈夫だから」

 荷物になるからと悩んだが、着替えを持ってきて正解だった。ビジネスバッグから、Yシャツを取り出して立ち上がると、湯川氏も合わせるように立ち上がる。

「いいよ、湯川くんは呑んでてくれ」
「せやかて」

 制止をしたけれど、岡本氏が「せや、責任とったれ」と湯川氏を後押ししたので、溜め息を吐いて、長身の男の好きにさせることにした。



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