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12月23日(日)
第70話
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「そろそろ、夕食の支度を始めてもいいですか?」
時刻は夕方にかかり始めていた。暁斗はおもむろに立ち上がると、両腕をあげて、ぐっと伸びする。
「俺も手伝うよ」
「祐介はくつろいでいてください」
「いつまでもお客さん扱いするなよ。今は上司じゃないんだからさ」
暁斗は「そうですね」と苦笑いを浮かべた。けれど、暁斗とキッチンに立ったところで、今の俺ができることは、ほとんどないに等しかった。どうやら、俺は、自分自身が思っている以上にダメらしい。玉ねぎに包丁を入れたところで、暁斗が顔を青くして、ストップをかけた。
『見ているこっちが恐いので、今度、品数が少ないときに、ゆっくりやりましょう』
暁斗はそんな言葉で、俺の手から包丁を奪い取っていく。そうして、同じ包丁を使っているとは思えないほどに、鮮やかに野菜を切ってしまう。同時進行でコンロの上の鍋を確認し、使った調理器具を洗って、電子レンジのボタンを押して……と、無駄のない動きでドンドン仕事を進めていった。
俺はというと暁斗から言われるままに、野菜を洗ったり、お玉で鍋の中をかき回したり、味見をしたり、そんな簡単な作業しかさせてもらえない。役に立ったのか、と問われると、暁斗の作業のテンポを崩す存在にしかならなかっただろうと思う。それでも、暁斗は鼻歌でも飛び出してきそうなほどに、楽しそうに微笑んでいたから、あまり深く考えないことにした。
テーブルに並べられた本日のディナーは、いつにも増して華やかだった。ローストビーフ、魚介のパエリア、デリサラダ、オニオンスープ。
「ワインにしますか?」
頷くと、暁斗が赤ワインボトルとグラスを持って、ローテーブルの前に腰かけた。グラスに紅玉のような赤い液体が注がれる。ワイングラスを軽くぶつけ合って、乾杯する。
グラスに口をつけると、カシスのような香りが鼻を抜けて、年期の浅い果実らしさを感じた。といっても、ワインはさほど詳しいわけではないけれど。
適度にアルコールが入った身体は、内側からポカポカと火照り、身体の強張りが抜けていくような心地好さがあった。暁斗がパエリアを取り分けてくれて、サフランの香りのする有頭海老の殻を剥いて、口に放り込む。
「パエリアって家で作れるんだな」
「材料と調理器具があれば、ほとんどの料理は家庭で作れますよ」
暁斗が可笑しそうに笑うものだから、むっとする。そもそも作ろうと思うかどうか、という問題かもしれないが。
「食べてくれる人がいるっていいですね」
暁斗は上機嫌でワインを口にしていて、ほんのり頬を染めてた。珍しく酔っているようにみえる。
「俺でよかったら、いつでも暁斗の手料理をご馳走になるよ」
冗談目かして隣の男の腕に肘を軽くぶつけると、暁斗は目を細めて頷いた。ふふっと無邪気に笑う仕草が、どこか女性的で、不覚にもドキリとしてしまった。
時刻は夕方にかかり始めていた。暁斗はおもむろに立ち上がると、両腕をあげて、ぐっと伸びする。
「俺も手伝うよ」
「祐介はくつろいでいてください」
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暁斗は「そうですね」と苦笑いを浮かべた。けれど、暁斗とキッチンに立ったところで、今の俺ができることは、ほとんどないに等しかった。どうやら、俺は、自分自身が思っている以上にダメらしい。玉ねぎに包丁を入れたところで、暁斗が顔を青くして、ストップをかけた。
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暁斗はそんな言葉で、俺の手から包丁を奪い取っていく。そうして、同じ包丁を使っているとは思えないほどに、鮮やかに野菜を切ってしまう。同時進行でコンロの上の鍋を確認し、使った調理器具を洗って、電子レンジのボタンを押して……と、無駄のない動きでドンドン仕事を進めていった。
俺はというと暁斗から言われるままに、野菜を洗ったり、お玉で鍋の中をかき回したり、味見をしたり、そんな簡単な作業しかさせてもらえない。役に立ったのか、と問われると、暁斗の作業のテンポを崩す存在にしかならなかっただろうと思う。それでも、暁斗は鼻歌でも飛び出してきそうなほどに、楽しそうに微笑んでいたから、あまり深く考えないことにした。
テーブルに並べられた本日のディナーは、いつにも増して華やかだった。ローストビーフ、魚介のパエリア、デリサラダ、オニオンスープ。
「ワインにしますか?」
頷くと、暁斗が赤ワインボトルとグラスを持って、ローテーブルの前に腰かけた。グラスに紅玉のような赤い液体が注がれる。ワイングラスを軽くぶつけ合って、乾杯する。
グラスに口をつけると、カシスのような香りが鼻を抜けて、年期の浅い果実らしさを感じた。といっても、ワインはさほど詳しいわけではないけれど。
適度にアルコールが入った身体は、内側からポカポカと火照り、身体の強張りが抜けていくような心地好さがあった。暁斗がパエリアを取り分けてくれて、サフランの香りのする有頭海老の殻を剥いて、口に放り込む。
「パエリアって家で作れるんだな」
「材料と調理器具があれば、ほとんどの料理は家庭で作れますよ」
暁斗が可笑しそうに笑うものだから、むっとする。そもそも作ろうと思うかどうか、という問題かもしれないが。
「食べてくれる人がいるっていいですね」
暁斗は上機嫌でワインを口にしていて、ほんのり頬を染めてた。珍しく酔っているようにみえる。
「俺でよかったら、いつでも暁斗の手料理をご馳走になるよ」
冗談目かして隣の男の腕に肘を軽くぶつけると、暁斗は目を細めて頷いた。ふふっと無邪気に笑う仕草が、どこか女性的で、不覚にもドキリとしてしまった。
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