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12月10日(月)
第36話
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社内恋愛は禁止されていない。業務に支障がなければ。
つまりは、当社では、過去には社内恋愛によって業務に支障をきたした事例があるということを意味する。
他者の色恋沙汰には、あまり興味はないが、職場は仕事をする場所なのだから、業務に支障をきたすような恥ずかしい真似をする社員は、その人間性に問題があるのだろうと冷ややかに見下していた。
どちらにしろ、自分には無縁の他人事なので、深く考えたことなどなかったのだ。
いつものように始業時間の一時間前に出社して、コーヒーを淹れたり、メールをチェックしたりする。ついでに、トイレで用も足しておく。いつもの朝のルーティンと何も変わらない。
「おはようございます」
洗面台で手を洗っていると背後から声がかかった。顔をあげると、鏡越しの矢口と目が合った。ふわりと微笑んだ顔に、こちらの頬も緩んでしまう。矢口は、俺の背後に立つと、腰に手を回してきた。
「なんだよ」
「やっぱり、スーツ姿もいいなって」
耳元で囁かれて、思わず押し返すと、矢口の眉が小さく動く。頭は冴えているはずなのに、胸が苦しくなって、どうしても心が浮わついてしまう。まだ始業前だから、なんて男の腕を引いてしまった。
男の背を押して、一番奥の個室に入ると、後ろ手で鍵をかける。それだけで狭い密室ができあがる。
便座に座っている男が見上げてくる。その後頭部を撫でると、柔らかな細い髪質で。その薄い唇に自身の唇を重ねて、唇の温かい感触を味わう。小さな震えから、暁斗の動揺が伝わってくる。
「暁斗、好きだよ」
不安げな瞳に、情欲の色が宿る。
「佑介」
暁斗の唇が動き出して、奪い合うように唇を重ねる。片足を便座に乗せて、体を密着させると、暁斗の腕が腰を引き寄せた。
股間を擦り合わせると布越しでも、お互いが熱く滾っていくのがわかる。くすりと笑いあって、唇を重ねる。朝っぱらから、会社のトイレで、こんなことしてるなんて、頭が沸いているとしか思えないのに、そう思えば思うほど、余計に興奮してしまう。
「もしかしたら、週末のことは夢だったのかなって思ってたんです」
「夢じゃないよ」
暁斗が瞳を潤ませる。男の背中に腕を回して、スーツの上から、その肉体の体温を感じる。暁斗の手が、俺の股間に伸びて、ビクリと腰が揺れた。
ゆっくりと撫でられて、それだけで、固く勃起していくのがわかる。耳元で、暁斗の浅くなった息遣いを感じてしまうと、背筋にゾクゾクと痺れが走った。
けれど、始業のベルが遠くから聞こえてくれば、さすがに我に返るしかない。慌てて暁斗の胸を押して退けて、身体を離した。それでも、手を取られて、甲に唇を寄せられる。熱っぽい眼差しに、名残惜しさを感じたが、これ以上ここにいてはいけない。
「ミーティングを始めなきゃ」
恨めしそうな暁斗の手を振り払って、頭を無理やりオフィシャルに切り替える。
――――なにをやっているんだろう。年上なんだから。上司なんだから。俺が、しっかりしなければならないのに。
つまりは、当社では、過去には社内恋愛によって業務に支障をきたした事例があるということを意味する。
他者の色恋沙汰には、あまり興味はないが、職場は仕事をする場所なのだから、業務に支障をきたすような恥ずかしい真似をする社員は、その人間性に問題があるのだろうと冷ややかに見下していた。
どちらにしろ、自分には無縁の他人事なので、深く考えたことなどなかったのだ。
いつものように始業時間の一時間前に出社して、コーヒーを淹れたり、メールをチェックしたりする。ついでに、トイレで用も足しておく。いつもの朝のルーティンと何も変わらない。
「おはようございます」
洗面台で手を洗っていると背後から声がかかった。顔をあげると、鏡越しの矢口と目が合った。ふわりと微笑んだ顔に、こちらの頬も緩んでしまう。矢口は、俺の背後に立つと、腰に手を回してきた。
「なんだよ」
「やっぱり、スーツ姿もいいなって」
耳元で囁かれて、思わず押し返すと、矢口の眉が小さく動く。頭は冴えているはずなのに、胸が苦しくなって、どうしても心が浮わついてしまう。まだ始業前だから、なんて男の腕を引いてしまった。
男の背を押して、一番奥の個室に入ると、後ろ手で鍵をかける。それだけで狭い密室ができあがる。
便座に座っている男が見上げてくる。その後頭部を撫でると、柔らかな細い髪質で。その薄い唇に自身の唇を重ねて、唇の温かい感触を味わう。小さな震えから、暁斗の動揺が伝わってくる。
「暁斗、好きだよ」
不安げな瞳に、情欲の色が宿る。
「佑介」
暁斗の唇が動き出して、奪い合うように唇を重ねる。片足を便座に乗せて、体を密着させると、暁斗の腕が腰を引き寄せた。
股間を擦り合わせると布越しでも、お互いが熱く滾っていくのがわかる。くすりと笑いあって、唇を重ねる。朝っぱらから、会社のトイレで、こんなことしてるなんて、頭が沸いているとしか思えないのに、そう思えば思うほど、余計に興奮してしまう。
「もしかしたら、週末のことは夢だったのかなって思ってたんです」
「夢じゃないよ」
暁斗が瞳を潤ませる。男の背中に腕を回して、スーツの上から、その肉体の体温を感じる。暁斗の手が、俺の股間に伸びて、ビクリと腰が揺れた。
ゆっくりと撫でられて、それだけで、固く勃起していくのがわかる。耳元で、暁斗の浅くなった息遣いを感じてしまうと、背筋にゾクゾクと痺れが走った。
けれど、始業のベルが遠くから聞こえてくれば、さすがに我に返るしかない。慌てて暁斗の胸を押して退けて、身体を離した。それでも、手を取られて、甲に唇を寄せられる。熱っぽい眼差しに、名残惜しさを感じたが、これ以上ここにいてはいけない。
「ミーティングを始めなきゃ」
恨めしそうな暁斗の手を振り払って、頭を無理やりオフィシャルに切り替える。
――――なにをやっているんだろう。年上なんだから。上司なんだから。俺が、しっかりしなければならないのに。
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