ドアマットヒロインにはなりません！

リリアナ・ヘンデル公爵令嬢

　私リリアナ・ヘンデルはリーガイル王国の公爵家に長女として生まれた。

　お母様は体が弱くずっとベッドで寝たきり状態、クズのお父様はそんなお母様を放置して家には帰って来なかった。

　まぁ原因は明らかに愛人宅でもう一つの家族に愛を捧げていたんだろう。

　幼い頃に王太子であるリーゼル様と婚約した、関係は悪くないと思っている。

　で、ここで問題になってくるのが私が読んでいる小説である。

　タイトルは『マリーガルの魔女』という話で、内容は家庭内で不遇な扱いを受けているヒロインが隣国の王太子に見初められて幸せになっていく、というある意味王道である。

　このヒロインは母親が亡くなってから父親が連れてきた義母と義妹に虐められ奴隷扱いを受けている。

　正にこの状況になりつつあるかもしれないのだ。

「勘弁してほしいわ……、フィクションだから楽しめる訳で現実になったらはた迷惑だわ」

　私は自室でため息を吐きながらその小説を読んでいた。

　あ、お父様に関しては執事に任せました。

「これからどうすれば良いのかしら……、相手の出方次第だし」

　そう、まずはその私の母親にと妹になるかもしれない人達と１度顔を合わせた方が良いかもしれない。

　ただ、当人だけでは心細いので誰か立ち合って貰わないといけない。

　お父様には長年の裏切りに対する処分を受けて貰わないといけない。

「リース、いるかしら？」

「はい、お嬢様、お呼びでしょうか？」

　私はメイドのリースを呼んだ。

「状況はわかっていると思うけど……、調査をお願いしたいの」

「旦那様の浮気相手ですね？　直ちに取り掛かります」

　彼女、メイドとしても優秀だけどスパイとしても優秀なのよね。

　執事も武芸に長けているしこの家って戦力が十分なのよね……。

　お祖父様が『その気があれば国を乗っ取る事が出来るぞ』とか豪快に笑っていたけど冗談ではないよね。

　だからこそ王家も私を婚約者にしたんだろうけど。