ドアマットヒロインにはなりません！

リリアナの決断

「完全に我が家を舐めているわよね？」

　王家からの手紙を読んで私は内心腸が煮えくり返っている。

「全くです、ただでさえ家の事でゴタゴタしているのに更に厄介事を押し付けてくるとは……、王家は我が家を軽く見ているんでしょう」

　執事が呆れたような顔をしている。

「お父様は何か言ってるの？」

「受け入れるみたいですよ」

「きっと私に押し付けるつもりよ、あの人はいつもそうなんだから……」

　私だったらなんとかするだろう、と思っているだろうけどまだ学院に入学する前の小娘だ、なんの力も無い。

　しかも王太子との婚約を解消された事で社交界から何を言われるかわからない。

「本当に茨の道よね……」

「どうしましょうか？　いっそクーデターを起こして乗っ取りしますか？　それとも隣国に逃げますか？」

「それ、どれを選んでも後々に遺恨を残す様な結果になりそうなんだけど」

「流石はお嬢様です、まだ冷静でいられていますね」

　執事、試したんかい。

　しかし、この状況をどうすればいいか……。

「いっその事、逃げたい気分よ……、ん？」

　ふと呟いた一言に私はハッとした。

「そっか、逃げれば良いじゃない……、私ったらどうして正面から受け止める事しか考えてなかったのかしら？」

　急にモヤモヤから抜け出した様な気分である。

　私はすぐにお父様の所へと向かった。


「再婚を許してくれるのかっ！？」

「えぇ、お父様の人生ですから」

「そうかそうか、やっと私の愛がわかってくれたんだな、聖女様も受け入れるしきっと我が家は安泰だな」

「そうですね、公爵家の安泰を心からお祈りしております。　……私は籍を抜いて平民になりますので」

「……え？　今なんと？」

「私リリアナは公爵家から籍を抜いて平民として今後を暮らしていきます」

　これが私が下した決断だった。