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泥舟に乗っている気分です

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「で、その方とは私と結婚する前からのお付き合いだったのですね?」

「は、はい……」

「シェーナが産まれた時に立ち合わなかったのはその方と一緒にいた、という事ですね?」

「……」

「で、その方が最近おなくなりになりその忘れ形見を受け入れてほしい、というお話ですか」

「その……、流石に一人ぼっちにさせるのはどうかと思うし……」

「そうですわね、確かに子供を一人にさせるのはどうかと思いますわ」

「それじゃあ……」

「ですが、私とシェーナはどうなるのです? いきなり隠し子を受け入れろ、と言われて納得できる、と思います? 貴方は私達を長年裏切ってきたんですよ、そんな人の言い分を聞き入れると思います?」

「……」

 お母様の厳しい尋問にお父様は黙ってしまいます。

 まぁ口ではお母様には勝てませんからね。

「しかし……もう受け入れる手続きをしてしまったんだ」

「私やシェーナの意見を聞かずにですか、貴方は本当に自分の事しか考えてないんですね?」

「うぐ……」

 お母様の棘のある言葉にお父様は返す言葉もありません。

「残念ですが私はその子を受け入れる事はできません。シェーナと共にこの家から出ていきます」

「そ、そんなっ……!?」

 お父様は顔面蒼白になっています、て言うか私も出ていくのは確定ですか。 

「シ、シェーナはどうしたいんだっ!? 公爵令嬢として暮らしたいんだろ?」

 私にすがるような目をしてお父様は言います。

「……私も私達を裏切っていたお父様を許すわけにはいきません」

 そう言うとお父様は絶望的な顔をした、いやよく受け入れてくれると思いましたね。

「かと言ってお母様についていく気もありませんわ」

「シェーナ?」

 お母様は何を言ってるの?的な表情をしていますが、私はこれから爆弾を投下しようと思います。

「お母様も他に好きな方がいらっしゃるようですし? 私は多分邪魔になりそうなのでお祖父様の家にお世話になろうかな、と思っています。では」

 そうです、お母様も愛人がいらっしゃるんです、しかも舞台俳優にお熱をあげて金銭的にサポートしているのです。

 何故知っているか、と言えばお母様と一緒にその俳優さんが出ているお芝居を見に行った時にお母様と俳優がただならぬ雰囲気を出していたからです。

 子供だからと油断していた、と思いますが私はしっかりと理解していました。

 私は言い終えた後、すぐに自室に戻りましたがその直後に激しい怒号が響き渡ったのです。
 

  
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