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幕間 リコット、正式に伯爵になる

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 貴族会議が行われる前日、リコットは城に呼び出された。

(一体何を言われるんだろうか……、まさかお取り潰しになるんじゃ……)

 王都に来てからリコットの胃はキリキリして痛む一方、内心では早く領地に帰りたい、と涙目になっていた。

 兵士に案内され廊下を歩き会議室の前にやってきた。

「失礼致します。リコット・リディアール伯爵子息を連れて参りました」

「入れ」

 兵士がドアを開け中に入るとそこには一人の男性がいた。

「宰相のステファン・トレスです。どうぞそちらの椅子におかけください」

 トレス家といえばレスナーの元実家であるティアント家の次に権力を持つ公爵家である。

 このステファンという人物はなかなかのキレ者で有名で王妃から信頼を得ている。

「リコット・リディアールです、失礼致します」

「まぁ緊張なさらずに、この度は大変でしたね」

「こちらこそ両親が多大なるご迷惑をかけて申し訳ありません」

「いえいえ、リディアール伯爵の悪い噂は王都の貴族間では有名ですよ、それと同時に貴方の良い噂も聞こえています」

「良い噂、ですか……」

「えぇ、『鳶が鷹を生む』とは正にこの事だ、ともっぱらの噂ですよ、それだけ貴方の優秀さは評価されているのです」

「いえ、私はやれる事をやっているだけなので……」

「その謙虚さも素晴らしい。今の若い貴族はプライドが高かったり身分が下の者に対しての礼儀がなっていなかったりと問題がある者が多いのです」

 なんかかなり過大評価されてないか?

 リコットの不安はますます増えていくばかりだった。

「我が国としては貴方の様な優秀な人材にもっと活躍してもらいたい。ですが貴方はまだ代行であり正式な伯爵ではない。そこで……」

 ステファンは書類を取り出した。

「これは貴方を正式にリディアール伯爵と認める証明書です。本日から貴方はリディアール伯爵と名乗るの事を許可します」

「え、えぇっ!?」

 リコットは驚きの声を上げた。

 本来は親から言われ国に書類を出し正式に跡継ぎとして認められる。

「あ、あの両親の許可は……」

「前伯爵は療養施設に入っていただきます。残念ながら彼等に貴族としての役割を全うする能力はないと判断しました」

 そこまでの状態だったのか。

 リコットは改めて呆れてしまった。

 こうしてリコットは正式に伯爵と名乗る事になった。
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