ペンフレンド~君と綴った季節~

クニ

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98,*二学期*

 二学期が始まった。
 まだまだ、残暑は厳しさを見せ付けて居る。

 転校生、上田舞は周りにそぐわない真新しい制服を着て黒板の前で担任から紹介されて居た。

「てことで、上田さんはあそこの席に~」
「はい」

と、俯き加減で応え、舞が向かった席は窓際の後ろの方であった。


『ついに、来たか』

とは、その二つ隣の席に居たチャコの胸の内である。
 橋本邦から、いわく付きの転校生が来る事を聞かせれて居たが、まさかのまさか、同じクラスに成るとは思いも寄らなかったであろう。

 言って見れば、恋敵の相手の妹である。
 とは言え、それはチャコが勝手に思い込んで居ただけではあるが~。

 チャコこと山崎千亜子は教壇の担任に向って、
「先生!」
「なんや、山崎」

「多分、上田さんの教科書は違って居るやろから、あたしが隣の席に移って見せてあげても良いですか?男子やと何かと~」
「それも、そうやな。なら、そこの席、替わって見るか」

 丁度、舞とチャコの間の席に居た男子は、殊の外可愛いく見えていた舞と隣同士に慣れた事に顔を緩ませて居たのにである。

「え~、なんで俺が替わらあかんのや」

と、彼はぐずって見せたが、そこはチャコのひと睨みで引き下がる他なくなった。
 チャコに逆らうと、後で、何を言われるか分からないからであろう。
 こうしてみると、チャコの教室内での立ち位置はかなりの者のようだ。


 まんまと舞の隣の席をせしめたチャコは早速、
「あたし山崎千亜子。みんなはチャコて呼んでる」

 チャコの馴れ馴れしいその素振りに、舞は軽く頷いただけで応えた。

「先に言うとくな。保険体育は隣の女子と一緒、それは前の学校も同じやったやろ?」
「うん」

「そんでな、ややこしい事に隣のクラスにも(うえだ)さんが居るんや。あっちは田植えの植田やけどな。そやから、うえださんて呼ばれたら、直ぐに返事はせんで、様子を見てからにしぃ~や」
「そ、そうなんや。分かった。ありがとう」

 これが二人の最初の会話であった。

 人見知りをしないチャコに、舞は少し唖然として居たが、その素振りからは悪意を感じずに居た。



「なんや、あの子。初日から授業中に教室、飛び出して行って、どうかしてるな?」
「前の学校でもそうやったんやないか。ちょっと可愛いとすぐあれや!」

 授業の合間に数人の女子がたむろして舞の話を持ち出している。
 見れば、教室の中に舞とチャコが居ない。
 何処へ行ったのかと思いきや、二人は保健室に居た。
 舞はベッドに、チャコはその傍でチョコンと座って居る。

舞  「みんな騒いでるやろな」
チャコ「気にせんとき。そんでも、びっくりしたわ。急に顔色が変わって、どうしたんかな~て
    思てると、飛び出して行ったやろ。生理の時はいつもそうなんか?」

舞  「前はそうやなかった。ただ・・・悔しいな。なんでこうなって仕舞うんやろ?」
チャコ「前の学校で何か有ったんか?」

舞  「何も無かったら、こんな中途半端な時期に転校なんかせえへんやろ」
チャコ「いじめか?」

舞  「そんなもん、なんともない。・・・ごめん。これ以上は喋られへん」
チャコ「うん、分った。誰にも脛(すね)に傷の一つや二つ有るもんや。でも、何かの時はあたし  
    を頼ってな」

舞  「親切やね~。おうた(会った)ばっかりやのに」
チャコ「そ、それは、その~渡る世間に鬼ばかりや無いやろ」

 チャコは橋本邦からの依頼には触れたくないようだ。
『妹にしてこれくらいやと、ここは引き締めてかからな、泣きべそだけは掻きたくないからな』

舞  「どないしたん。急に塞ぎ込んで?」
チャコ「何も有れへん。そんでやけど、あんたの姉ちゃんも結構可愛いんか?」

舞  「えっ、なんで私に姉ちゃんが居る事を知ってるん?」
チャコ「う~ん、なんとなくそんな気がしたんや」
    『しもた。語るに落ちるとこやった』

舞  「そうなんや。私ら、よくウリ二つて言われるけど~」
チャコ「ふ~ん」
    『アホ、感心して居る場合や無いやろ』

チャコ「あたしは教室に戻るけど、舞ちゃん・・舞ちゃんでええよな」
舞  「かまへん。わたしの方はチャコちゃんでええか?」

チャコ「そのチャンは止めてくれへん。チャコだけでええから。
    舞ちゃんはもう少し休んでたらええ。先生にはあたしから話しとくから~」
舞  「ありがとうさん」


 舞にとってそれは決まり事なのであろうか。
 生理の症状が現れると、襲われた時の様子がプレイバックする。 

 前回は酷かったが、叔父である小浜医師の治療のせいも有ってそれよりは軽く治める事ができた。
 わなわなと身震いが襲って来た段階で、舞は教室を飛び出しトイレへと駆け込んだ。
 個室でその恐怖を堪えて居ると、

「上田さ~ん」

と、チャコの声がして来た。
 不思議なもので、その声が忌まわしい場面を遠のかせてくれた。

 舞は初日に目だった真似をして仕舞ったが、その代わりに何かしらの安らぎを与えてくれる存在に行き当たったようだ。

 舞とチャコ、互に性的な暴行を経験していた故か、引き合わせる者が在ったのかも知れない。
 時に人は、目に見えない何者かに操られる。
 それを運命と呼ぶことも出来るのでは無いだろうか。
 この世には偶然とか、たまたまとかの言葉で済まされない事が往々にして在るものだ。




 

 
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