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Ⅰ 舞い戻る
#5 正体
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「能力」は、「能力者」の個性が出ると言われている。
堂崎魁斗は「能力者」である。しかし、その「能力」の正体は本人と1人しか知らないようだ。
しかし今、その事実は砕け散ってしまった。
謎の女に、それは知られていた。
最も知られたくない「能力」を。
今、目の前には確かにあの顔が、あの目が、あの仕草があった。迷っている時にフードを触る癖が。
確かに、目の前にいる堂崎魁斗は、間違いなく、私の人生を壊した男だ。
でも、正直確信が持てない。
間違いなく、あのとき私を殺した男なのに。
私は…何を迷っているんだろう?
今すぐに手を出せる状態なのに。
何故だ。何故だ。
「…………何してるの」
「見ればわかるだろ。休んでんだよ。なんだか疲れちまって。出口探しはその後だな。」
「聞きたいことがあるんだけど」
「……なんだ」
「私が死んだのは魁斗のせいなの?」
…………否定はしたかった。
刹那が聞いてくる前から。ずっと。
「今はそんなの、問題じゃないだろ。」
「じゃあいいよ。後で聞くね。」
あれ、結構あっさりだな。
「もうひとつ、いいかな?」
「ああ………」
………え?
「なんで、その事を隠していたの?」
まさか、さっきの話、聞いてたのか__
「ごめんね。魁斗」
まさかの謝罪。刹那らしい…な。まあ。
さっきの生気がない目とは違い、うるうると目に水が…
泣いてるじゃないか!?
「ちょ、俺は大丈夫だから。泣くなって」
「だって…さっき休んでたっていうのは嘘なんでしょ?本当は傷とか…応急処置してて、そのタイミングで私が来たから…」
「休んでたってのは本当だぞ。確かに怪我はしてたけど、かすっただけだって」
はあ…なんだか、申し訳な。
「……ところで、さ」
…………本心が出てくるな。
「さっき、魁斗“hrd”って呼ばれてたでしょ…?どういう意味?誤魔化すのはなしだからね。」
…さて、一番厄介なそれが来たな。
どう答えようか。
「……やっぱり、私がしたことは正しかったんでしょ?」
俺を殺すため、あの日からずっと俺を追って、復讐するため…
にしても、流石、暗殺業をやっているだけあるな。表情を隠すのが非常にうまい。俺には意味が無いんだが。
「いいや、正しくないな。そもそも、何の話をしているんだ?全くもって分からないな。」
「誤魔化すつもり?私を殺したのは……殺したの………は………」
刹那は泣き出してしまった。
刹那にとっても、俺にとっても…
唯一の、友人だったもんな。
「改造は失敗したのね…やっぱり、人間関係も重要視しないと…」
どこかで聞いた声。
あの時_____
「お前の標的は堂崎魁斗だ。」
まだそんなつもりじゃなかったのに。
一番近くにいた人が、私の復讐すべき標的だなんて思ってもいなかったのに。
思い出させてくれた。
この感謝は…どこから生まれたの?まるで、“改造”されたような感情。
何の根拠もないのに、急に魁斗を殺すべきだと感じてしまった。
私に一体…何が起こったの?
「…………なんだろ、ここ」
暗闇の中に立っていた。とてつもなく暗かった。目の前が見えない。やばい場所に迷い込んでしまった、と直感で感じた。
「初めて来た場所だぁ…楽しそうなところだなぁ」
滝根 准は、北へ歩き始めた。
続こ
堂崎魁斗は「能力者」である。しかし、その「能力」の正体は本人と1人しか知らないようだ。
しかし今、その事実は砕け散ってしまった。
謎の女に、それは知られていた。
最も知られたくない「能力」を。
今、目の前には確かにあの顔が、あの目が、あの仕草があった。迷っている時にフードを触る癖が。
確かに、目の前にいる堂崎魁斗は、間違いなく、私の人生を壊した男だ。
でも、正直確信が持てない。
間違いなく、あのとき私を殺した男なのに。
私は…何を迷っているんだろう?
今すぐに手を出せる状態なのに。
何故だ。何故だ。
「…………何してるの」
「見ればわかるだろ。休んでんだよ。なんだか疲れちまって。出口探しはその後だな。」
「聞きたいことがあるんだけど」
「……なんだ」
「私が死んだのは魁斗のせいなの?」
…………否定はしたかった。
刹那が聞いてくる前から。ずっと。
「今はそんなの、問題じゃないだろ。」
「じゃあいいよ。後で聞くね。」
あれ、結構あっさりだな。
「もうひとつ、いいかな?」
「ああ………」
………え?
「なんで、その事を隠していたの?」
まさか、さっきの話、聞いてたのか__
「ごめんね。魁斗」
まさかの謝罪。刹那らしい…な。まあ。
さっきの生気がない目とは違い、うるうると目に水が…
泣いてるじゃないか!?
「ちょ、俺は大丈夫だから。泣くなって」
「だって…さっき休んでたっていうのは嘘なんでしょ?本当は傷とか…応急処置してて、そのタイミングで私が来たから…」
「休んでたってのは本当だぞ。確かに怪我はしてたけど、かすっただけだって」
はあ…なんだか、申し訳な。
「……ところで、さ」
…………本心が出てくるな。
「さっき、魁斗“hrd”って呼ばれてたでしょ…?どういう意味?誤魔化すのはなしだからね。」
…さて、一番厄介なそれが来たな。
どう答えようか。
「……やっぱり、私がしたことは正しかったんでしょ?」
俺を殺すため、あの日からずっと俺を追って、復讐するため…
にしても、流石、暗殺業をやっているだけあるな。表情を隠すのが非常にうまい。俺には意味が無いんだが。
「いいや、正しくないな。そもそも、何の話をしているんだ?全くもって分からないな。」
「誤魔化すつもり?私を殺したのは……殺したの………は………」
刹那は泣き出してしまった。
刹那にとっても、俺にとっても…
唯一の、友人だったもんな。
「改造は失敗したのね…やっぱり、人間関係も重要視しないと…」
どこかで聞いた声。
あの時_____
「お前の標的は堂崎魁斗だ。」
まだそんなつもりじゃなかったのに。
一番近くにいた人が、私の復讐すべき標的だなんて思ってもいなかったのに。
思い出させてくれた。
この感謝は…どこから生まれたの?まるで、“改造”されたような感情。
何の根拠もないのに、急に魁斗を殺すべきだと感じてしまった。
私に一体…何が起こったの?
「…………なんだろ、ここ」
暗闇の中に立っていた。とてつもなく暗かった。目の前が見えない。やばい場所に迷い込んでしまった、と直感で感じた。
「初めて来た場所だぁ…楽しそうなところだなぁ」
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