Darkness.

ささささのは

文字の大きさ
上 下
10 / 23
Ⅱ 遅かった

#10 自我

しおりを挟む
私は一般人。
そこらへんにいる、つまらない、それぞれ目的を持っている人間。そう思って生きてきた。

けれど。


あの“事件”から、私は______












西崎家の人間だと知った。
そして、それが何を意味しているのかも知った。

私が本家らしい。
それを知った日から、私は偽名を使うことにした。
幾つもの顔を持ち歩いて、今日もこの街を歩く。











 
そして現在。
私…一応、「西荻すばる」としてこの真っ暗な場所にいる。

そして今。
なんかピカピカな場所にいる。すごい怪しいけど、優しい人について行ったら、私の頭と同じぐらいの所に、一つの光を帯びた扉みたいなのを中心にして、そこから光が広がっている場所に来た。



「さあ出ましょう。あなたの意識から。」

「え…」

何言ってるんだろう?よく聞こえなかった。

「もう一回、言って頂けます?すみません。」

そんなことより、なんか不思議。眩しいって訳じゃあないんだけど。なんか、なんていうか………ピカピカだなあ、と。

「…ふふ。あなた、自我が強いタイプかしら?」

えっ、特にそういう者じゃないです。というか急だなあ。

「あら…そうなの。じゃあやっぱり…本家の血、とかなのかしら?」

「………何を言っているのか、さっぱり。」

「あら、そうなの?……………本当に?」

「本当に。分かりませんね。」

「………そう。」

まさに図星。
さすがに偽名はバレてないよね…?

「それじゃあ、質問を変えましょう。あなたの名前は…本当に、西荻さん、なの?」

うわぁ。ダメだこれ。

「何言ってるんですか。偽名もなんも…」

「実は、ここだけの話…私、心読めるの。」

「………は、はへ~。意外ですね~」

反応に困った。さすがに。そんなことだろうなーとは思っていたが、本当にそうだとは。

「意外?あら、そうなのかしら?まるで“能力”の事を知っていそうな言い草ね。」

「………………」

「さて…まあ、本題に移りましょうか。」

本題じゃあ…なかったのか。
全部ハッタリだったのか…?だとしても的を射すぎていた気もするが。

「本題…?私をここから出してくれるっていうのがそうじゃないんですか…?」

「その通りよ。だけど、間違えちゃったみたい。ごめんなさいね。次行く場所は絶対出れるわ。」

まさかの複数出口があるタイプの場所だった。そういうタイプってあるのかな?

「ああ…ありがとうございます。」

「そうそう。あと、ここは実はすごい危なくて。ちゃんとついてきなさい。」

うーん、別に1人でもいいんだけどなあ…
まあ、それならそれで、別にいっか。






という、意識から出る…?どういう意味だったんだろう。


この人凄く怪しいけど。


どういうこと………?















間違いなく。

私の求めていた者が。

求めていた者から来てくれた。

あなたのおかげで。

私は_____________




「どうした」

「特に。」

「俺には分かるぞ。その嬉しそーな表情を見れば、心なんか読まなくてもな…」

「さすがね。」

数ヶ月前。この子を完璧に“改造”して、一番親しい仲になった。少なくとも、この子と一緒にいると、悪い気分にはならない。嬉しくなる。

一番“改造”に時間がかかったのも納得が行く。
こんなにも「自我」が強い子にも、私の“改造”が通じたのは奇跡だと思う。

一番信頼できる子。同い年だけど。

「全く…結局、あれはあんまり意味がなかったって事なんだな?」

「……さあ。少しは影響があるんじゃないかしら。あの“事件”の後から、私の計画は変わったのよ?」

「…まあ、それなら。」

少しどころか、一番影響がある。あの“事件”のおかげで、目的に五歩は近づけた。

やっぱり、あなたは手離したくない。

「……滝根、准っていう、俺の友人がいるんだが…」

初耳ね。

「それがどうかした?」

「……あの、“事件”を起こした時。さすがに1人じゃあキツイからあいつを呼んだんだが…」

「…それで?」

「なんというか…………あの“事件”の後、会ってないんだよ。」

「そうなの。それがどうかした…?」

「いや…えーと…だな…誠に言い難いんだが…」

「…?」

「盟奈のこと…バレてるかも、なんて、な。」

「……ああ。そんなこと。大した話題じゃあないわね。」

「いいのか…?」

「気にしてないわ」

「そ……そうか。」








なんか僕の話題が出てる~…
さすがに盗み聞きしてたらまずいかな~…
ここから動けないなあ…
バレたら殺されるなあ…
詰んだかな…?







続く!
しおりを挟む

処理中です...