あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

優秀なドラゴン

村から出て冒険者となるためにソルートへと向かうティール。
家族やリースにジンと別れを済ませてから順調に進むティールだったが、流石に一日でソルートに到着する程は飛ばさずに一回野営をする事にした。

「良いタイミングで襲ってきてくれたもんだ」

複数のゴブリンとゴブリン・リーダーを倒した後、今度はファットボアがティールに目がけて突進してきた。
突然の襲撃ではあったが木々を抉る音が聞こえており、ファットボアは息を荒くしながら突進してきたがそれに対してティールは慌てることなく躱して右手から魔力の弾丸を放った。

ファットボアはＥランクのモンスターであり、そこまで実力が高い訳では無いがそれでもその突進を食らえば駆け出しの冒険者ならば内臓を潰されてしまう。

そんな突進がファットボアに対し、ティールは魔力の弾丸だけで対処してしまった。

「肉に美味い不味いはそこそこ別れるけど、ファットボアの肉は美味いからな」

修行時代に一般的な魔物の肉は大抵食べて来たティールはどのモンスター肉は美味いのか不味いのかが分る。

（コボルトの肉は食えなくはないけど……固いんだよな。キャット系のモンスターはそもそも食べる気が起きない。というか体が小さいからあんまり食べられる部分は多く無いし。でも、リースさんは案外食べられるとは言っていたっけ）

ネコ科系のモンスターは基本的に食用に適しており、更に上位のモンスターも食すことが出来る。
そして血抜きを完全に終えて水で洗った肉を焼き、腹を満腹にしたティールは寝転がれる程度のマットを取り出して腰を下ろす。

そして酸のアビリティを使い、アシッドドラゴンを生み出す。

「そんじゃ、見張り頼むぞ」

ティールの言葉にアシッドドラゴンは頷き、周囲の警戒を始める。
アイテムバックから毛布も取り出してティールはそのまま夢の中へ突入した。

ソロの冒険時にそもそも野営を行うという事がおかしいのだが、しっかりと睡眠に入ってしまうのはもっとおかしい。
だが、ティールはアシッドドラゴンの有能性を知っているので安心して眠りにつく。

そして完全に太陽が落ちた夜……ティールは完全に寝ていた。
そんなティールを狙うように複数のコボルトが現れる。

そっとそっと、忍び足でティールに近づこうとする。
しかし森から出てくる前にコボルト達にアシッドドラゴンは気が付き、酸の弾丸を放って脳や心臓を的確に狙い撃つ。

一瞬で急所をやられたコボルト達が悲鳴を上げることは無く、小さな呻き声を漏らしながら地面に倒れる。
こうしてアシッドドラゴンはティールの就寝を邪魔する者は全て倒していく。

「……朝か。ん？　ちょっと体積が減ったか？」

夜前にアシッドドラゴンを召還した時と比べて体の体積が少々減ってるのに気が付いたティールは周囲を見渡す。
するとコボルトの死体がいくつか地面に倒れていた。

「お前が倒してくれたのか。ありがとな」

役目を完全に終えたアシッドドラゴンは自ら動いて魔力へと姿を変えてティールの体に戻る。

（……やっぱり酸で作ったモンスターって凄いな。普通はこんな感じに生み出した本人の元に魔力として戻らないってリースさんは言ってたけど、アシッドドラゴンは自分から戻ってくれるし……まっ、あまり深く考えても仕方ないか）

コボルトの死体から魔石を剥ぎ取り、奪取≪スナッチ≫でスキルを奪い終えたティールは布団とマットを水で洗い、火と風の魔力を混ぜて温風を生み出して一気に乾燥させる。

「さて、もうそんなに距離は無いだろうしさっさと着いてしまおう」

魔力は全快しており、ティールは昨日と同様に身体強化のスキルを使用して走り続ける。
普通の冒険者ならば急ぐ用事が無い限り、街から街までダッシュなどしない。

しかしティールはそこら辺の冒険者とは違ってスタミナもしっかりと強化しているので特に問題は無い。
それにどちらかといえば遠距離攻撃よりのステータスなので、急な襲撃にも即反撃が出来る。

走る事約三時間……ようやくソルートの街が見えて来た。

「あそこがソルートか……リースさんから聞いていた印象より結構大きいな」

歩きに変えてソルートへ徐々に近づくティールは街の大きさに驚き、少々開いた口が塞がらなくなっている。

「おっと、あんまり田舎者丸出しは良く無いな。何回も驚くかもしれないけどあんまり間抜け面は晒したくない」

街には居るために並んでいる人達の最後尾にティールも並び、自分の順番になるのを待ち続ける。
そしていよいよティールの順番となった。