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とても一緒に行動出来ない
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「領主の娘は無事っぽいんだが、一緒に行動してた女の騎士が連れ去られたみてぇだ」
「なるほど。それでこんなにざわついてるんですね」
冒険者ギルドとしても、領主の娘が連れ去られていないのはホッと一安心。
しかし、全体的に見れば当然、良い結果とは言えない。
(これで落ち込んで部屋に籠ってくれたら一番良いんだけどな)
この日、二人は探索範囲を広げて女性攫いオーガを探すが、武器と戦闘技術を持つオーガは見つからなかった。
「せめて、あの色々と教え込まれたであろうオーガとは遭遇したかったな」
「今度は教え込んでいるであろう、オーガの居場所を聞き出すのか?」
「その手があったか。でも、片言で人の言葉を発するわけではなさそうだから、それはやるだけ無駄な気がするな」
ティールとしては、決戦を迎える前に、少しでも厄介な存在を消しておきたかった。
そんな悔しさとは裏腹に、ついでに受けていた討伐依頼は当然の様に達成し、依頼とは関係無いモンスターも倒しているため、冒険者としては悪くない一日と言える。
しかし翌日……体を動かすのが大好き過ぎる二人は、休息を取ることなくギルドに直行。
どんな依頼を受けようかと考えながらクエストボードへ向かう途中、一人のギルド職員に声を掛けられ、松陰たちが使用する個室へ案内。
そしてデブリフーリルの冒険者ギルドでも、少々役職が上の職員が登場。
「二人は、今騒ぎになっている件に関して、独自に調査をしている……という認識で合っているかな」
「はい、その認識で合ってます。まだこれといって手掛かりは見つかってませんけど」
「二人の行動には非常に期待しているよ……ただ、ギルドとして一つ頼みたい事があるんだ」
嫌な予感がした二人だが、ここで「失礼しました~」と個室から抜けることは出来ない。
「……一応聞きます」
「領主の娘、アミラ・フラウスの件はもう耳にしているか?」
「はい」
「彼女が、件のオーガを討伐するために、冒険者ギルドに使える人材を雇いたいという依頼がきたんだ」
予想通りの言葉が職員の口から出たが、二人はなんとかギリギリ、負の感情を表に出さなかった。
目の前の職員は何も悪くない。
ただ単純に自身の仕事を行っているだけ、という考えを持っており、理不尽に圧を出すようなことはしない。
「そこで、ギルドとしては是非とも君たち二人に頼みたいんだが」
「申し訳ありませんが、丁重に断らせていただきます」
「……もう少し悩んでくれても良いと思うんだが」
強制的な依頼ではない。
そうなれば、ティールとしても受ける必要はない。
冒険者のランクに関しては、今のところ現状で満足しているため、評価など気にすることはない。
「だって、どう考えても領主の娘……アミラさんは復讐のためにこう、血走った状態に近いですよね」
「…………暴走してはいないが、何眼でも自分が、という意志は強いな」
実際にアミラと対面した時に感じた雰囲気を、職員は隠すことなく二人に伝えた。
「まだ十五も超えてない若造がこんなことを言うのはあれだと解ってます。ただ、そういった状態の人と強敵に立ち向かおうとすれば、余計に被害が出るのは目に見えている。俺たちは俺たちだけで解決したいという思いもあります」
生意気にも自分たちだけで、女性攫いオーガの一件を解決すると口にした少年。
そんな少年に対し、職員は暴言を吐くことはなく、諭すように何かを説明し始めることもなかった。
「そうだな……君たちには、それだけの実力がある」
職員は元冒険者といった、少し珍しい経歴の持ち主ではない。
故に、二人と対面したところで、詳しい戦闘力など解るわけがない。
だが……他の冒険者ギルドから伝えられた情報を信じるのであれば、二人の実力は宣言通り、件のオーガを倒せる実力を有している。
結局職員は自身の立場などを利用することはなく、二人にそれ以上は頼むから受けてくれとは言わなかった。
「なるほど。それでこんなにざわついてるんですね」
冒険者ギルドとしても、領主の娘が連れ去られていないのはホッと一安心。
しかし、全体的に見れば当然、良い結果とは言えない。
(これで落ち込んで部屋に籠ってくれたら一番良いんだけどな)
この日、二人は探索範囲を広げて女性攫いオーガを探すが、武器と戦闘技術を持つオーガは見つからなかった。
「せめて、あの色々と教え込まれたであろうオーガとは遭遇したかったな」
「今度は教え込んでいるであろう、オーガの居場所を聞き出すのか?」
「その手があったか。でも、片言で人の言葉を発するわけではなさそうだから、それはやるだけ無駄な気がするな」
ティールとしては、決戦を迎える前に、少しでも厄介な存在を消しておきたかった。
そんな悔しさとは裏腹に、ついでに受けていた討伐依頼は当然の様に達成し、依頼とは関係無いモンスターも倒しているため、冒険者としては悪くない一日と言える。
しかし翌日……体を動かすのが大好き過ぎる二人は、休息を取ることなくギルドに直行。
どんな依頼を受けようかと考えながらクエストボードへ向かう途中、一人のギルド職員に声を掛けられ、松陰たちが使用する個室へ案内。
そしてデブリフーリルの冒険者ギルドでも、少々役職が上の職員が登場。
「二人は、今騒ぎになっている件に関して、独自に調査をしている……という認識で合っているかな」
「はい、その認識で合ってます。まだこれといって手掛かりは見つかってませんけど」
「二人の行動には非常に期待しているよ……ただ、ギルドとして一つ頼みたい事があるんだ」
嫌な予感がした二人だが、ここで「失礼しました~」と個室から抜けることは出来ない。
「……一応聞きます」
「領主の娘、アミラ・フラウスの件はもう耳にしているか?」
「はい」
「彼女が、件のオーガを討伐するために、冒険者ギルドに使える人材を雇いたいという依頼がきたんだ」
予想通りの言葉が職員の口から出たが、二人はなんとかギリギリ、負の感情を表に出さなかった。
目の前の職員は何も悪くない。
ただ単純に自身の仕事を行っているだけ、という考えを持っており、理不尽に圧を出すようなことはしない。
「そこで、ギルドとしては是非とも君たち二人に頼みたいんだが」
「申し訳ありませんが、丁重に断らせていただきます」
「……もう少し悩んでくれても良いと思うんだが」
強制的な依頼ではない。
そうなれば、ティールとしても受ける必要はない。
冒険者のランクに関しては、今のところ現状で満足しているため、評価など気にすることはない。
「だって、どう考えても領主の娘……アミラさんは復讐のためにこう、血走った状態に近いですよね」
「…………暴走してはいないが、何眼でも自分が、という意志は強いな」
実際にアミラと対面した時に感じた雰囲気を、職員は隠すことなく二人に伝えた。
「まだ十五も超えてない若造がこんなことを言うのはあれだと解ってます。ただ、そういった状態の人と強敵に立ち向かおうとすれば、余計に被害が出るのは目に見えている。俺たちは俺たちだけで解決したいという思いもあります」
生意気にも自分たちだけで、女性攫いオーガの一件を解決すると口にした少年。
そんな少年に対し、職員は暴言を吐くことはなく、諭すように何かを説明し始めることもなかった。
「そうだな……君たちには、それだけの実力がある」
職員は元冒険者といった、少し珍しい経歴の持ち主ではない。
故に、二人と対面したところで、詳しい戦闘力など解るわけがない。
だが……他の冒険者ギルドから伝えられた情報を信じるのであれば、二人の実力は宣言通り、件のオーガを倒せる実力を有している。
結局職員は自身の立場などを利用することはなく、二人にそれ以上は頼むから受けてくれとは言わなかった。
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